物間こころの生存戦略 作:こころたん
飛行機が落ちてくる。ハイジャックしたとネットで犯行声明が出され、目的地と言われた場所にいた人々は街角で必死に助けを願う中、空に膨大な炎が現れた。
そして、飛行機が停止したのか、報道のヘリコプターが近付いてその様子を捉える。そこには小さなヒーローの女の子が背中から巨大な炎の翼を広げて必死に飛行機を動かしていた。
「誰だよ、あの子……」
「ヒーローなんだよな?」
「ホークスもいるけど、手を出せてないな」
「炎のせいだろう」
そんな風に見ていると、女の子の表情がどんどん悪くなっていく。それはそうだろう。いくらなんでも、小さな女の子があんな巨大な物を壊さずに持ち運ぶなど無理だ。そんな時、歌が聞こえてくる。
こころ
頑張っているけど、海までは出力が全然足りない。人を救助するという誓約がある限り、こればかりはどうしようもない。不死鳥の出力も足りていない。私の身体がまだ使いこなせていないのだと思う。だからか、限界を超えて炎を出し続けていると、身体が焼けて炎になってくる。このままじゃ身体が持たない。
『これはどうなるんだい?』
『死にはしない。身体が炎で構成されるようになるだけだ。アタシの力はここからが本番だ』
『でも、それって人間を確実に止めてますわよね?』
『当然。文字通りの生ける炎になるからな』
それでも、助けるまでは止まるつもりはない。そう私が決めて感情を操作し、固定した。だから――
「……まだ、まだ……いける……」
――諦めない。諦めるなんて選択肢は存在しない。人から外れる? そんなもの、千変万化で人の形を整えればいいだけ。むしろ、生きることを最優先にするのならば好都合。
「だから、身体を燃やせ、不死鳥っ!」
『ったく、どうなっても知らねえぞ』
それが人々に望まれているヒーローという存在。私が目指し、憧れているのだから仕方ない。
『面白い。ならば力を貸してやろう。不死鳥、お前がメインだ』
『わかった』
『こころ、詠唱をする。行くぞ』
「うん」
身体の中から聞こえてくる二人の声を聞きながら、一緒に詠唱をしていく。
「『『天昇せよ、我等が守護星――鋼の
唱えだすと身体の中で何かが変わった。まるで三人が一つになるみたいに。
「『『荘厳な
その状態で身体が作り替わっていく。まるで炎を使うための身体になるみたい。
「『『絶滅せよ、破壊の巨神。
合わさり一つになった。私は彼女で、彼女は私。家族を殺されたことで自らを復讐の炎と化した存在。その彼女を私の力を持って光の存在に作り替える。
「ゆえに邪悪なるもの、一切よ。ただ安らかに息絶え、我が力となれ。我等は天空を統べるが如く、銀河に羽ばたけ不滅の不死鳥。果てなき未来をいざ往かん―――
周りに火の粉が舞い、私の全身から炎を噴き出させて翼の出力を上げる。翼の炎は30メートルを超えるほど大きくなる。一度羽ばたくだけでかなり移動できる。
『完成?』
『これ、不死鳥と完全融合かい』
『そうだが、まだだな。やれるところまで試してみよう。こころ、いけるな?』
「いける。私は止まらない」
『よかろう』
英雄の仮面をつけ、詠唱を始める。
「『創生せよ。天に描いた星辰を――我らは煌めく流れ星。巨神が担う覇者の王冠。太古の秩序が暴虐ならば、その圧制を我らは認めず是正しよう。勝利の光で天地を照らせ。清浄たる王位と共に、新たな希望が訪れる。
百の腕持つ番人よ、汝の鎖を解き放とう。鍛冶司る独眼よ、我が手に炎を宿すがいい。大地を、宇宙を、混沌を――偉大な雷火で焼き尽くさん。
聖戦は此処に在り。さあ人々よ、この足跡に続くのだ。約束された繁栄を新世界にて齎そう。
炎の翼が虹色の翼に変化した。それは触れたありとあらゆるモノを撃ち滅ぼす破滅の翼。放射能分裂光と炎が一体化した戦略兵器。どちらもとっても相性がいいからできたみたい。
「……月光蝶……?」
綺麗な蝶の羽にしてみたらとっても綺麗だった。でも、同時に身体の中から引き裂かれて塩漬けにされ、ドリルで掻き回されるような激痛が襲ってくる。それでもしっかりと耐える。
『これはやばいのか、わからないね。正直、劣化している感じもするが……』
『不死性を得ていますし、触れたら終わりの面攻撃と見えない光線の攻撃。どちらも危険ですわね♡』
「『『どうでもいい』』」
『そうですわね。どちらにせよ、後ろの炎が振れないようにしないと汚染されて周りが死の大地と化しますよ』
「『『了解』』」
海の近くまで飛んでいき、飛行機を降ろす。すぐに
身体を確認すると色んなところから出血している。でも、炎が噴き出して治療されていくので放置でいい。軽く身体を動かしてみるけど、今まで以上に身体が動いていく。
『どんな感じだい?』
「今までよりはいいよ。動きやすい」
『そうか』
『君の身体の中に変な物体ができているのだが……』
『そうですわね。これはなんなのでしょうか?』
『それなら私が知っている。俺が物間こころの体内にオリハルコンを生成し、骨と置き換えた』
『なんだい、それは?』
『簡単に言えば"個性"の因子を増幅する物質だと思ってくれていい。俺が研究し、作り上げたデータを基にしている。当然、俺の体内にも設置して研究を重ねていた』
『安全なのか?』
『安全だと思うか? 身体の中に異物があるのだぞ?』
『こころはいいのか?』
「私は問題ない。それに不死鳥がいれば大丈夫」
『そ、そうか……これは少し嬉しいな』
とりあえず、救助活動を手伝う。ゆっくりと怪我なく、確実に救助するために歌に乗せて感情を操作し、安心させて避難させる。
その日、飛行機を気にして空を見詰めていた人々やテレビを見ていた人は見た。炎の化身……そんな馬鹿みたいな存在。圧倒的な存在感と膨大な熱量を放っている。まるでそれは太陽のようで、近づけばそれだけで蝋の翼は溶けて消えていく。
実際、ホークスも近づけずに距離を取っていた。飛行機、ジャンボジェット機をこころが持っていた場所は溶けて変形している。いや、それは前だけではなく全部だ。ただ、内部まではたっしていなかった。
「まるで神話のようだ……」
「あの子、なんなんだ……」
理解できない。人の力を軽く超えている。それでも恐れるのは一部の人達のみで、ある程度の人々は歓迎する。なぜなら、オールマイトという平和の象徴がいるからだ。それも普段なら受け入れられず、化け物のように思われる可能性があった。だが、現状はオールマイトがもう戦えなくなって引退し、日本中に不安が渦巻いている。そこに同じヒーローであり、オールマイト並みの規格外が現れたのだ。彼等は物間こころに希望を見る。それによって感情がこころに集まることで彼女の行動方針が決まっていく。
ヘリオスが不死鳥にあってると思ったからやった。今では後悔して……
正義のためならば、身体の改造など容易く行い耐えろ。閣下ならできたぞ。
生きたままオリハルコンを肉体に埋め込むなど過度の強化を施すのは凄まじい激痛に襲われるのだが、閣下は気合で耐えたぞ。
通常の状態でこの"個性"ガンマ・レイを発動した場合、自らも被爆するという欠陥品以外の何物でもない欠点を閣下なら・・・以下略。
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こころちゃんの個性因子が一時的に激減しました。
肉体が異形型に変更されました。
こころちゃんの属性が無属性から光に変更されました。
こころちゃんは悪の敵となることを誓いました。
こころちゃんは必殺技【超新星――森羅超絶、赫奕と煌めけ怒りの救世主】を習得しました。
こころちゃんは必殺技【超新星───天霆の轟く地平に、闇はなく】を一部習得しました。
こころちゃんは必殺技【月光蝶(?)】を習得しました。