物間こころの生存戦略   作:こころたん

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第4話

 

 

 アメリカから帰ってきて久しぶりに安心して眠れた。そのはずが周りが暗い。それにいっぱい仮面が浮いている。

 

「……なにこれ……?」

 

 ぐるぐると回っている様々な仮面。その仮面には一つ一つ感情が存在している感じがする。一つ一つにこころが集めた"個性"が入っているみたい。仮面を手に取って確認してみると、不思議な感じがする。

 とりあえず、合成してみよう。筋力増加など増強系を合わせて金剛力、回復系や治療系など作っていく。それに秦こころっぽい"個性"を組み合わせる。感情を操るだけじゃなくて、飛翔の"個性"や弾幕を作る"個性"を作る。防御系も障壁や精神耐性を習得した。複数あった仮面が一つになった。秦こころの力を持つからか、仮面という感じになっているみたい。

 まあ、もう使うこともほとんどないかもしれない。強力な"個性"も手に入れたし、襲われても撃退できる。オール・フォー・ワンだけじゃ足りなかった部分を補えた。オール・フォー・ワンだけだとひょんなことで攻撃されて、身体が吹き飛んでも再生できないしね。でも、今なら大丈夫。精神系の対策もできたし、操られることもない。そして、何より"個性"を奪われることもない。

 なんという素晴らしきことか。これでなんの恐怖も抱かず遊べる。友達も作れるし、表情を動かすために頑張れる。友達に関しては寂しくても作らなかった。友達になって人質にされたら大変だしね。お母さん達はどうにか助けられるとは思うけど、それも運が良ければだし、守るものは少ない方がいいからね。

 こころは本物の秦こころと違って妖怪でもなければ付喪神でもない。ただの非力な人間。それを補うために頑張ったし、沢山の"個性"を集めた。守る力は充分。

 

「こころ、起きなさい」

 

 声が聞こえてきたので、目が覚める。この歳になって一緒に寝るのは恥ずかしい。

 

「おはよう……」

「おはよう。ご飯を食べましょう」

「……うん……」

 

 食事をしてから、お母さんと食事をしていると電話がかかってきた。それはヒーロー公安委員会からだった。

 

『ヒーロー公安委員会です。物間こころさんですか』

 

 ヒーロー公安委員会なら、お茶目にこころちゃんっぽく挨拶した方がいいよね。これからこころっぽくするのだから。演じる必要はないのだろうけど、はっちゃける。

 

「ふっ、ふっ、ふっ、我こそは物間こころなるぞ」

『随分とお茶目ですね。もっと危ない人かと思っていたのですが~』

「余裕がでたからね!」

『なるほど。まあ、いいでしょう。えー免許などについてお話がありますので、こちらに来ていただきたいのです。あ、それと入国管理局と警察の方にもこちらに来ていただいていますので、そのつもりでお願いしますね。迎えもよこしますんで』

「拒否権はあるのー?」

『ありますが、手続きを色々としてもらわないといけません。主に爆破事件についての調査や漂流者扱いですので、署名を頂かないといけない書類があります』

「いっきまーす」

『はい、お願いしますね』

 

 食事を終えたので部屋の中でお出かけの準備をする。こころの、私の正装である秦こころの服装に着替えるよ。着物はコスチュームなだけだし。あ、ちゃんとお面は頭に斜めでつけておく。後、念の為に防犯ブザーも持たされているので、そっちも装備しておく。今のこころちゃんはこいしと変わらない身長だしね。

 

「お母さんはどうするのー?」

 

 リビングに戻ってお母さんの入れてくれたミルクを飲む。それからテーブルにぐてーと身体を預ける。

 

「なんだか雰囲気がかわったわね」

「もう怖いのはなくなったからー」

 

 ふにゃふにゃになりながら、返事をする。こころとして生きてきた十四年間。ずっと気を張って訓練ばかりをしてきたしね。

 

「そうなのね。まあいいわ、私もいくわ。こころはまだ未成年なんだから」

「ん~ありがとー」

 

 久しぶりにお母さんとお出掛け。結構楽しみ。お母さんはぐてーとしている私の後ろで髪の毛を梳いて整えてくれる。しばらくして迎えがきたので、ヒーロー公安委員会に向かっていく。

 

 

 

 そこでやってきていた入国管理局の人には漂流したことで書かなきゃいけない書類があった。主に失くしたパスポートの再発行をお願いしたり、警察の人と一緒に事情説明だね。この時に爆弾のことも聞かれた。最後にヒーロー免許について説明を受ける。

 

「さて、物間こころさん。ヒーローネーム、秦こころ。アメリカのヒーロー免許は……ありませんよね」

「吹っ飛んだからねー」

「よく無事でしたね、本当に」

「感情を操って限界を超えればなんとかなるよー。ためしてみる?」

「それはいいです。それよりも免許についてですが……限定つきでお願いできますか?」

「限定つき?」

「あなたの"個性"は危険すぎます。まず一つとして他人への使用は限定させていただきます」

「そうだよね」

「はい。他人に使う時は他のヒーローの許可をもらってください。あ、ちなみに許可なく一般人に使用した場合、容赦なくぶち込みます。(ヴィラン)に関しては使用していただいてかまいません。ただ、感情を破壊するのは許可がないと駄目です」

「はーい」

「それと、こちらでも監獄にいる凶悪犯の対処をお願いしたいのですが……」

「う、うん、大丈夫だよ……」

 

 オール・フォー・ワンに会いたくない。でも、仕方ないね。

 

「それと試験を受けてもらいますし、雄英高校にも通ってもらいます。あそこにはイレイザーヘッドがいますからね」

「私の"個性"を消せるからだねー」

「そうです。つまり、ヒーローとしての活動は放課後限定といった感じになりますが、あなたはまだ中学生ですからね。義務教育がありますのでそちらは諦めてください。幸い、あなたは中学生三年生だ。見学といった感じにさせてもらいます。ただ、決して入学ではありませんので、席は前の学校のままです」

「……お母さん、いい……?」

「ええ、構いませんよ」

「ありがとう」

「では、これでいきますね。いや~よかったよかった。あ、一つ忘れていました」

「?」

 

 小首をかしげる。

 

「それとその限定免許では事務所は持てません。ちゃんとしたヒーロー免許ではないので、他のヒーロー、この場合はイレイザーヘッドや雄英高校の教師達、ヒーロー公安委員会であなたの活動を審査してから限定を外させていただきます。これはアメリカと日本との違いからでる処置ですので、ご理解とご協力をお願いします。なので活動はこちらが用意するヒーローの事務所と協力してお願いします。頑張ってくださいね」

「は~い」

 

 あと契約書なども書いて免許を準備してもらう。これで"個性"を発動できる。ただし、一般人への使用は禁止。これは元々なので大丈夫。活動が放課後限定で、どこかの事務所に所属しないと駄目。でも、逆に言えばヒーローとして活動しなかったらいいだけなんだよねー。

 

「ああ、そうそう……あなた、神野にいたそうですね」

「……うん、いたけど……」

「そこで怪しい人をみませんでしたか? 警察官が一人、襲われたみたいなんです」

「みてないよ?」

 

 怪しい人? 私、こころのことだから見てはいない。

 

「そうですか。あなたは"個性"を消すことができるそうですね」

「正確には使えなくするってだけだよ」

「なるほどなるほど。わかりました。それでは本日はありがとうございました。免許ができるまでお待ちください」

「はい」

 

 それから、ヒーロー公安委員会で待っている。お母さんはお仕事の電話で外にでていった。暇なので足をぶらぶらさせていると、向こうから骸骨の人がやってきた。

 

「やぁ、こんにちはお嬢さん」

「ひっ!?」

 

 "個性"はまだ免許を貰っていないので使えないし、防犯ブザーの紐を握ってじりじりと下がる。

 

「待ってっ! それちょーまって! 私、ヒーローだから!」

「ヒーローにも変態はいるっ! 私を誑かしてお持ち帰りする気なんだ!」

「ないから、ないから!」

「じゃあ、偽物?」

「本物だよ! ほら、これ免許!」

 

 オールマイトの免許を見せてもらうけど、どう見ても別人だよね。

 

「やっぱり偽物っ!」

「勘弁してよ! というか、気付いてるよね! そろそろガチで止めて! 視線がかなり痛いんだよ!」

「は~い。楽しかったー」

「ほっ」

 

 防犯ブザーから手を離す。

 

「改めて自己紹介をしようか。私は雄英高校に勤めているオールマイトだ。こちらに来ていると知って資料を渡しにきたよ」

「そうなんだ、ありがとう」

「ちゃんとお礼が言えて偉いねー」

 

 オールマイトが自然な感じで私に触れてきた。頭を撫でてこようとしたので弾く。

 

「こころ……私、こう見えても14歳なんだけどー」

「それはごめんね……」

 

 オールマイトを見上げると、こちらを怖い表情で睨んでいた。見詰め返すと、すぐに優しい感じになった。

 

「もしかして、やっぱりロリコン? 結婚したとかしらないし」

「違うよ! それより、君には一応カウンセリングを受けてもらう。これは教師を含めて全員が受けているよ。色々とありましたからね」

「はーい。あ、そうだ。どうせなら、雄英高校にお兄ちゃんがいるんだけど、それを教えてよー」

「いいよ。物間少年は……」

 

 

 

 

 

 

 オールマイト

 

 

 

 私の話に楽しそうに聞いていく彼女は無表情だが一見普通の幼い女の子のようだ。だが、その精神性には歪さがある。オール・フォー・ワンに告げられた神野の悪夢に介入し、私達を出し抜いた第三者の存在。その者が何をしたのかはわからなかったが、オール・フォー・ワンが僕のあずかり知らない後継と言ったことから、奪われたのは奴の"個性"だろう。

 ありえない。そう思いたかった。だが、調べないわけにはいかない。そこで塚内君に頼んで神野の悪夢について調べ直した。するとそこに緑谷少年達以外に物間少年と物間少女がいたことが確認されている。

 そこで皆で考えた。物間少年の"個性"を使えばオール・フォー・ワンを奪えるのではないか、と。天文学的な可能性ではあるが、あの場に彼がいたのなら偶然に偶然が重なって可能だったんだろう。いや、そうじゃない。警官のことも考えると事前に予定されていたことだろう。

 次に調べたのは神野の悪夢以降に"個性"が消えたりした存在がいないかということ。調べていくと日本にはいなかった。そう日本には。アメリカにいたのだ。"個性"を消すことが可能な存在が。それが彼女、物間少年の妹、物間こころ。感情を操る危険な"個性"を持ち、あの場にいてオール・フォー・ワンを手に入れることが可能な存在。兄から譲られたのなら、全てはわかる。それに神野の悪夢以降、物間少年の身体能力は格段に上がっている。だが、それだけだ。故に一番怪しいのはこの一見、十一歳前後に見える幼い少女のみ。彼女の危険性はアメリカでの活動が証明している。

 たった二ヵ月足らずでアメリカのトップヒーローの一人になっている。もっともこちらは凶悪犯の自白を引き出した功績からだ。それでも彼女自身の力はあの動画をみるかぎり、恐ろしい力だ。

 いや、彼女がオール・フォー・ワンを手に入れていたのなら、もっと強力になっているだろう。なにせ凶悪犯から自白を引き出す時に触れて"個性"を消しているようだから、かなりの数の"個性"が彼女に渡っているはずだ。それも凶悪犯の"個性"が、だ。

 

「なんですか、そんなに見詰めてきて……やっぱり、ロリコン?」

「違うから! まったく……それより、君達は神野にいたんだよね? そこで救助活動をしていた」

「そうだよーお兄ちゃんがヒーロー志望だからね」

「しかし、何故アメリカにいったんだい?」

「日本だと"個性"が使えないし、どうせ家にいても一人だから試してみたくなったの」

「なるほど……」

 

 これは厄介だ。もし、どちらにしても神野の悪夢のすぐ後ならばそこまで問題じゃなかった。容易くどうにかできた。だが、既に複数の"個性"を大量に所持しているとなると話が変わってくる。もしも戦えば被害がかなりでてしまう。ましてや、アメリカでも凶悪な犯罪者として名をあげた連中の個性ならなおさらだ。私はすでに動けなくなった。もちろんエンデヴァー達でどうにかできるかもしれん。だが、物間少年と同じく彼女はまだ幼い少女だ。まだ矯正はできる可能性が十分に高い。

 

「こころ」

「お母さん」

「あなたは……オールマイトっ!」

「これははじめまして。実は雄英高校の資料を持ってきましてね」

 

 しっかりと挨拶してこれからのとを話して別れる。それからヒーロー公安委員会の建物からでて、待っていた塚内君の車に乗って移動する。

 

「どうでしたか、彼女は……」

「限りなく黒に近いが、灰色かな。そっちはどうだった?」

「こちらも調査が終わった。物間寧人君の調査は正直、空振りだった。彼はコンプレックスこそあるが、至って普通の少年だったよ」

「では、やはり……」

「ああ、問題は物間こころの方だ。彼女の成績は至って普通。だが、教師達に確認したら、彼女の成績は全てテストの成績だった。テストの時以外は常に抜け出し、運動場やプールでひたすら運動を続けていたり、"個性"を使って訓練をしていたようだ。それも四歳の時から毎日、狂ったように」

「それは……」

「止めようとしても、感情を操られたのか基本的に教師達は無関心を突きとおした。また、この"個性"の関係上、証拠もあげられない。録画映像も存在しないし、基本的に内面にしか発動しないからね。

 そして、神野の悪夢に兄を利用したのか、協力したのかはわからないが、オール・フォー・ワンを手に入れたんだろう。それからアメリカに渡り、"個性"を手に入れた。これが日本で行われたのなら、まだ気づけて止められたんだが……」

「まさか、海外で堂々と"個性"集めをするとは思わなかったからね」

「やっぱり彼女が一番怪しい。状況証拠でしかない。それも"個性"を集めることにかんしては犯罪ではなく、政府機関からの依頼という合法的な手段だ。特に洗脳系の"個性"は証拠をみつけるのがほぼ無理にちかい。それこそ殺人などの大きな犯罪を犯していないとね」

 

殺人なら精神鑑定を行い、今までの性格と乖離していたらそこから切り込める。ただ、それも洗脳などの場合だ。物間少女の場合はあくまでも感情を操って結果を導き出しているだけで、あくまでも外からしたら本人の行動と思われるので現行犯で逮捕するしかない。といっても、証拠能力は低い。それこそ機械を使って操られたことを証明しないといけない。

 

「どちらにせよ、彼女も少年も未成年だ。これから上手く導けばいい。それに思っていたよりも明るいようだ」

「こちらが聞いた限り、暗い少女で何かに追われているような感じだったらしいが……」

「もしかしたら、オール・フォー・ワンのことを知っていたりしたのかな?」

「はっはっは、それはないだろう」

「そうかな。全ては計画されていたことだとしたら、どうやって彼女達はそれを知ったのだ?」

「……これはまだまだ調査が必要だな。アメリカにも人をやらねばならない。忙しくなるぞ」

「そちらは任せたよ。私は彼女のことを相澤君に伝えないと……」

「それもそうだが、もう一つ。彼女をどこのヒーロー事務所に接触させるんだい? へたなところに入れたら危険だろう」

「サーのところを紹介するよ。彼ならどうにかやってくれるだろう」

 

 彼には緑谷少年のことも含めて迷惑をかけるだろうが、頑張ってもらうしかない。それに私達もこのまま黙ってみているつもりはない。精神操作を立証する方法だって事前に準備しておけばしっかりとあるのだから。

 

 

 

 

 




日本の警察、舐めちゃ駄目。バレてます。そりゃ、神野の悪夢の後で海外とはいえ個性を消していたら、知ってる人には怪しまれるでしょう。こころちゃんは心の安静を手に入れるために"個性"を手に入れるのを優先したのが駄目でしたね。
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