物間こころの生存戦略 作:こころたん
荒い息が聞こえてきた。意識を覚醒させる。目の前には身体の中、精神世界で見た金髪のお兄ちゃんの一人が涙を流しながら、私の手を引いて通路を壁に手をつきながら歩いている。身体はぼろぼろで、もう限界みたい。なぜぼろぼろになってまで頑張るのかは全然わからない。
『わからなくていいよ。彼等は愚か者だからね』
『そうですわ』
『いや、駄目だろ』
『ヒーローだからこそ、命を賭けて頑張っているんだ。君を助けようとしている。しかし、この程度では駄目だな。もっと限界を超えねば……』
『いや、見た限りだと肋骨は折れているし、血液も大分失っているのだが……』
『どうとでもなる。決めたのならば成し遂げるだけだろう』
『『一理ある』』
『ないわよ♡ それ超越者だからこそいえるだけなのよん?』
いつの間にか周りに青い炎を纏いながら浮かびだした四個の仮面が好き勝手に言ってくれる。
「こころちゃん……身を……隠し……後続を、待つんだ……! 大丈夫、何十人って人が、君を助けようと動いて……いる……だから、君は大丈夫だ……」
隠れる? 隠れて待てばいいの? でも、それは駄目だよね。決めたもん。ヒーローのお兄ちゃんはここにおいていっても大丈夫だと思うし、いこう。
「壞理の偽物っ! お前のせいでこいつらが、一般人が大勢死ぬ! 壞理を取り戻すまで俺は止まらないっ! 戻ってこいっ! そうしたら貴様だけで許してやるっ! それとも大量に人が死ぬのが望みか!」
声が聞こえてきて、身体の底からわからないものが湧き上がってくる。身体が勝手に震えて歯がガチガチと鳴って涙がでてくる。
「大丈夫、だ。君は俺達が守る、から! 君のヒーローになるんだっ!」
抱きしめられ、震えが収まってくる。
「……わかった……」
「よかった。じゃあ、隠れ……」
「ばいばい」
「え?」
彼の手を離し、そのまま通路を戻っていく。
「まっ、待つんだっ! 行っちゃ駄目だっ!」
通路を歩き、光が漏れている明るい場所にでる。そこは地面が割れて無数の杭や崩れた瓦礫ばかりで歩きにくい。
「なんでっ! 駄目だ! 先輩と一緒に逃げてっ!」
緑色の髪の毛の人がこちらに叫んできた。たしか、緑谷出久だったかな。彼の記憶で見た。
「……」
「流石は英雄症候群の病人。一般人の犠牲は許容できないか。なら、望み通り殺してやる」
「……? 望んでないよ……?」
「なに? こいつ一人でどうにかなると思っているのか?」
白いスーツ姿の人は死にそうで、もう一人の人も死にそう。上で何かしているみたいだけど、どうなるかわからない。
「思わない……」
「なら、お前はどうするべきだ?」
「……倒す……? お前、許さない。バラバラにした……」
「ほう。俺もお前を許せない」
「……そう……」
「ああ、だから死ね」
「駄目だっ、僕が相手をする!」
「黙ってろ」
「……逃げるんだっ! 彼女をたたかわせてはっ、ごほっ!?」
「サーっ!」
血を吐いて必死に止めようとしながら近付いてくる人。私はそれを無視して宙に浮かびながら、互いに仮面をぶつけあってる中から一つを手に取り、それを右の頭につける。装備した仮面はマスクみたいな機械みたいな仮面。
「『ふふふ、ふははははははははっ』」
「なんだ? この声、聞き覚えが……」
「狂ったか?」
私の声と同時に仮面からしっかりとして声が聞こえる。それは青年の声ではなく、機械の合成っぽい変な声。
「『狂った? ああそうだね。狂ったよ。君のお蔭だ。感謝しよう。何故ならこれで僕は復活でき――あいたっ!?』」
みると、他の仮面が彼の仮面をげしげしと叩いてきている。
「『嫉妬は見苦しいぞっ!』」
『黙れっ、貴様などにやるわけないだろう!』
「五月蠅い、真面目にやれ」
仮面を掴んでペシンと地面に投げつけようとする。
「『待った待ったっ! わかったよ、真面目にやる』」
「皆も真面目にする」
仮面達が頷いて大人しくなったので、改めてあちらを見ると怒り狂ったように地面に四本もある手を突き、分解と再構築を行ってこちらに杭を放ってくる。
「『ふむ。これは燃やすか? いや、彼の"個性"で吹き飛ばせば……』」
身体が勝手に動いて手をむける。でも、何も起こらない。
「『君達、力を貸してくれないかな?』」
『『だが断る』』
「『ほう……いいのかね? このままだと大切な僕達の身体が傷付くが……?』」
「別にいい」
『ちっ』
背中から炎が溢れでて翼を形成し、羽ばたいて距離を取る。
「馬鹿なっ、"個性"が二つだと!?」
「"個性"が二つ? それにあの声……まさかっ!?」
「『おや、気付いたかい? 緑谷出久。そうだ、僕だ』」
「まっ、まさかっ、オール・フォー・ワンっ!」
「『正解だ』」
楽しそうに笑う彼が私の"個性"を使った。彼等の知らない感情を増幅したみたい。それだけで彼等は顔を真っ青にしていく。
「オール・フォー・ワン、これ、なに?」
「『教えてあげるから僕のことは先生と呼びなさい。これは恐怖と絶望だ。今、彼等にとってここは数十倍に高められた重圧が押しかかっている』」
「これが恐怖と絶望……覚えた。違う、思いだした」
地面に這いつくばり、ガタガタと震える羽虫共とヒーロー。ヒーローまでやったのは何故かわからないけど、あの人は死にそうだからヒーローは解除して対象からはずす。
「『おや? 何故……』」
「ヒーロー、助ける」
「『むっ、そうか。いいだろう。物間こころがそれを望むのならば、僕はそれに応えよう。では、身体を本格的に操作させてもらうよ』」
「ん」
身体が勝手に動いて、アイツ、オーバーホールの下へと歩いていく。
「オール・フォー・ワンんんんんんんんんんんんんっ!!!!!!!!!」
「『なにっ!?』」
右の頬っぺたを緑谷出久に思いっきり殴られ、私は錐揉み状に吹き飛んでいく。杭をいくつも破壊し、壁に激突して腕が折れ、首が変な方向にいってとまった。
「お前にこれ以上、"個性"を奪わせ……あれ?」
身体中からどばどばと血がでて意識が遠のいていく。身体が勝手に動いて身体中に痛みを感じる中、起き上がって頭を掴んで位置を調整していく。
『代われっ!』
「『ああ、頼む。かよわい少女の身体というのを忘れていたよ』」
『失策だな』
『これは手厳しい。ここまでもろいとは思わなかったんだ』
お面が炎の翼があしらわれて白い可愛らしい仮面に変わる。同時に身体が炎に包まれて綺麗に
「……はっ、はだかぁぁぁぁぁっ!?」
「『あー服までは作れん』」
『しかたないですわね♡』
今度は狐の仮面になって身体が変化していく。狐耳と尻尾が生えて巫女服になった。
「何故、巫女服?」
「『趣味ですが、なにか?』」
「趣味なら仕方ない」
『『いいのか!?』』
別にいい。それよりも今はわからない。なんで攻撃された? ヒーローなのに? ヒーローから攻撃された? ううん、なぜ、殺された? 助けにきたヒーローに? それにオーバーホールの味方をした。
『ああ、それはね……』
「……そうか、あのヒーローは偽物か……」
「え?」
「なら、排除しよう。英雄の仮面。敵を排除して……全力でやっちゃえ、
『了解した。我が依代よ』
『あー服は維持しておいてさしあげますわ♡』
「『頼む』」
私の口から男性の声が出る。そして、虚空に掌を突き出して握り込むと光の薙刀が出現する。
「『薙刀は使いずらい。刀でいかせてもらう』」
「好きにして」
薙刀が二本の刀となる。そして、駆け抜けようと英雄さんが一歩を踏み出し、力を入れて――こけた。
「痛い」
『なにやってますの!』
『おいこら』
『これはない』
あちら側も唖然としている。私は思わず涙目になりがら、震える声で呟いてしまった。
「『身体がひ弱すぎる上に身長もかなり下がっている。感覚が狂いすぎているのが原因か』」
『なら、アタシがやってやろうか?』
「『いや、必要ない。なに近接戦闘ができないのなら放てばいいだけだ。それに感覚が狂っているのなら適応させればいいだけだ。“勝つ” のは俺だ。それはなにもかわらん』」
そう言ってから、最適化をはじめだした。
「『俺は、おまえ達のために生き、おまえ達のために死のう。この身のすべては皆を幸福にするために在る。 輝く明日を、誰もが笑顔で生きられるように……願うからこそ、必ず往こう。未来をこの手で切り拓くのだ』」
身体の中から力が溢れ出してくる。同時に身体が黄金色に光り輝いていく。それはまるでお星さまのようでとっても綺麗。
「『創生せよ。天に描いた星辰を――我らは煌めく流れ星。巨神が担う覇者の王冠。太古の秩序が暴虐ならば、その圧制を我らは認めず是正しよう。勝利の光で天地を照らせ。清浄たる王位と共に、新たな希望が訪れる。
百の腕持つ番人よ、汝の鎖を解き放とう。鍛冶司る独眼よ、我が手に炎を宿すがいい。大地を、宇宙を、混沌を――偉大な雷火で焼き尽くさん。
聖戦は此処に在り。さあ人々よ、この足跡に続くのだ。約束された繁栄を新世界にて齎そう。
黄金色の光熱が刀身を纏い、それを構える。
「覚悟はいいか、偽物のヒーローとオーバーホールよ。ここが貴様等の終わりだ」
『これ、詠唱は必要なのかね?』
『イメージを固めるためですのよ』
『自己暗示か。なるほど』
振るわれた一撃は偽物とオーバーホールに対して、その場から一振り。ただそれだけ。だけど、黄金の極光は全てを透過して焼き払う致死の一撃。
回避不可能なそれは、上からの一撃で天井が壊れることで降り注ぐ瓦礫に命中し、透過する。しかし、それはあくまでも黄金の極光だけ。狙った対象は別なので瓦礫が彼等にあたって位置がずれた。それと私の両腕が沸騰して爆発した。すぐに新しくなったけど。
「『ふむ。幼子の身体では強化をしても無理か』」
英雄さんは努力して努力して地獄を超えるような特訓で身体を鍛え、さらには強化を沢山重ね続けて戦ってきた人だから仕方ない。
『当たり前だ馬鹿者! ああもう、まともな奴がいない!』
『聞き捨てなりませんね。私が代わってさしあげましょう』
『ろくな戦闘能力ないだろ』
『おほほほほ』
『アタシが出る』
『いや、僕がもう一度……』
「わかった。順番。不死鳥の仮面」
背中に炎の翼がでてくる。それから周りを見渡してから空を飛んでいく。まず向かったのは怪我人のところ。
「『おい、大丈夫か?』」
「……やは、り……おー、るふぉー、わんを……」
「『喋るな。いいか、我慢しろよ』」
「ナイトアイになにをしているっ!」
小さな手で白いスーツの人の傷口に触れて、そこを燃やしていく。
「がはっ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっっ!!!」
偽物が飛び込んでくる。でも、不死鳥の仮面なら大丈夫。
「『アタシに任せな』」
「オールフォーワンンンンンンンンンンンンンンンンっ!!!」
一瞬で炎の壁ができて防いでくれる。その間に白いスーツの人を抱き上げて翼を広げる。
「『脱出先はあそこか。飛ぶぞ』」
「ん、お願い」
翼を使って浮き上がり、炎を噴出しながら進む。すると炎の壁が風圧で吹き飛ばされた。
「まてぇええええぇぇぇっ!」
「『鬱陶しいな』」
炎をたっぷりと放つと、相手が風圧で吹き飛ばしてくる。それで下にいくのに、今度は風圧を下に向かって放って追いついてくる。でも、こっちも風圧で吹き飛ばされてきた炎を翼で受けてさらに上昇する。
「逃がすかっ! ごみ共がっ!」
オーバーホールもこちらを追ってくる。逃げられるよりはましだからいい。
「あそこに救急車」
「『わかった。ありがとう』」
「助ける。こころはヒーローみたいだから」
「『ああ、それがいい。私のオリジナルもそっちの方が喜ぶだろう』」
「ん」
壞理ちゃんも喜んでくれるし、一石二鳥とかいう奴。加速して救急車の前に降り立つ。
「『要救助者一名。大量出血と臓器破損。一応、焼いて止血をしてあるが、すぐに輸血を頼む』」
「りょ、了解しました!」
「急げっ!」
「ま……待って……」
「『アタシは
「お気をつけて!」
空に飛び上がると、戦況は混沌としている。地面が壊れてヒーローが突入したのに、対象二人が上にでてきて暴れている。一人はオーバーホール。仲間の
「『さて、どうするか……どうしたい?』」
「ん~オーバーホールは潰す」
「『それは大前提だ』」
『提案がある』
「なに?」
『オーバーホールを奪おう。あの力は使える』
「やだ」
『駄々をこねないでくれ。いいかい、あの力は攻撃にも治療にも使えるんだ。わかるかい? ヒーローになるにも、
先生に言われたことで、決めた。嫌だけれど、人命優先。記憶は消去してやったらいい。
「でも、どうやって近付く?」
「『それはアタシとこころが協力すればいい。感情を操ってやればいいだろう』」
「無理。あのおっきいの、ぐちゃぐちゃ、よくわからない」
『他人を取り込んだせいで割合が崩れている可能性がある』
『感情がいっぱいですのね♡』
『というか、今は感情が理解できていないようだから、無意識を操ることは難しいのではないかね? 無関心にかかわる感情、興味をどうやって教えるのだね? 短時間では難しいだろう』
『ですわね』
『だからこそ、僕は正面突破といこうじゃないか』
『作戦プランは?』
『このまま上空まで上がって全力で降下。途中で狐に代わって肉体を杭に変更。徹底的に硬くなって相手の体内に入る。そこでおそらく壊れたり死ぬだろうから、不死鳥で復活。その後は僕が"個性"を奪う』
「『アタシの力があればできるが、痛いぞ。こころは我慢できるか?』」
「できる」
『これはこころ自身にやらせるべきだろう。私達はあくまでサポートに回ろう。そうでなくては成長しない』
『まあ、いいだろう』
他の皆も納得してくれたので、主導権を私が取る。壞理ちゃんは大人しくしているけど、彼女にも頼もう。
「壞理ちゃん、あれ戻して分離させるよ」
『うん。お姉ちゃんに任せる。えりもあいつ嫌いだし』
「ん、やっちゃおう」
『やっちゃう』
翼を広げて全力で飛び上がる。雲の上についたら、Uターンして降下する。翼から炎を噴出させ、加速する。速度が乗ったら千変万化で硬くて重い金属に変化して落下。気分は隕石。
目標は偽物と戦っているから、それでいい。巻き込んでもいいので始末する。
「お前達は壞理の力をわかっていない! 壞理は単に肉たちを巻き戻すだけではない。もっと大きな流れ、種としての変異が起こる前に戻せるのだ! この間違った世界から個性因子を消すことで正常な人類へと戻すことができる、世を正す力だ! 価値もわからん餓鬼に利用できる代物じゃない!」
「関係あるかっ! 目の前にいる小さな女の子一人救えないで――皆を助けるヒーローになれるか! あの子も、オール・フォー・ワンから助け出してみせる!」
全力で殴り飛ばされる瞬間、オーバーホールに私が着弾して身体を炎に変える。そのタイミングで偽物が殴り飛ばしてきた。
『偽物というわけではないんだが、面白そうだから黙っていよう』
オーバーホールの中でごろごろと転がりながら、中を燃やして奴の"個性"を貰う。
『慰謝料ですわね。乙女の身体を弄りまわした代金は高いのでわよ♡』
『拷問された上に"個性"を一度壊されたしな』
『どうでもいい』
『貰える物は貰っていこうじゃないか』
『それがいい』
全会一致なので、オーバーホールを手に入れた。それから壞理ちゃんの"個性"で撒き戻してオーバーホールをバラバラにする。
『ああ、どうせならこうするといい』
「ん」
それから、試しに分解と再構築で手足がない状態にして死なないようにして放置する。
「お前の"個性"は頂いた。これから無個性として生きるといいよ」
「おっ、オール、フォー、ワンンンンンンンンンンンンンンンンッ!!!」
オーバーホール、治崎から離れて次は偽物を無力化しに進む。といっても、すでに足は壊れて折れているし、変色している。腕も同じく。ぼろぼろの巫女服は廃棄し、自分のヒーローとしての姿に変化する。蝶々があしらわれた黒い着物に赤いスカート。薙刀を作り出して、ゆっくりと近付いていく。
「偽物、排除しなきゃ……」
「デク君!」
「麗日さん離れてっ! この子はオール・フォー・ワンに操られてる!」
「? 操られてなんてないよ?」
言われた言葉に小首をかしげる。
『操ってはいないね』
「じゃあ、まさか自分の意思で……」
「これは、この子達は私の大切な"個性"なんだから。そんなことよりも、オーバーホールの内通者、
「まっ」
「?」
手にあった薙刀が消滅していた。それどころか、仮面も消えている。不思議に思ってみると、麗日と呼ばれた女の人が男性を抱え上げていた。
「物間こころ、緑谷が
「オーバーホールを無力化し、捕らえようとしたら邪魔をされた」
「それは……」
「殴り飛ばされて一度死んだ。だから、
「わかった」
「「先生っ!」」
「まあ待て。緑谷、話してみろ。なにがあった?」
「実は、彼女はオール・フォー・ワンに操られていて……」
「もしかして、奴と同じ"個性"を持っているということか?」
「違います! いえ、それもあるんですが、それどころじゃないんです! 彼女の仮面にオール・フォー・ワンが入っていて、僕に話しかけてきたんです! それにあの場にいた全員に対して"個性"を使ってきて、ものすごい恐怖と絶望が襲ってきて……その後オーバーホールの”個性”を奪って殺そうとしたんです! だから、それを止めようと殴り飛ばして……その、オール・フォー・ワンじゃあれぐらい平気なはずなのに予想以上に飛んで行って……」
「再生系が無ければ即死だった。違う、死んで蘇ったからこれも正しくない?」
でも、よくよく考えたら仮面を狙って殴ってきたのかもしれない。
「物間こころ、オール・フォー・ワンの人格は出せるか?」
「だせる」
「操られたりは? 奴は悪の親玉だ」
「しない。身体を使わせても優先的制御権は私にある。それに私の中にはヒーローもいる」
「わかった。聞いた話じゃ、どっちもやっちまってるじゃねえか。とりあえずだ、物間こころ。緑谷は
「
「そうだ。だが、罰は与えないといけないかもしれん。しかし、それはお前もだ。申請されていない”個性”。それやオール・フォー・ワンについてだ。神野の悪夢についても……」
「覚えていない」
「は?」
「よく覚えていない。オーバーホールに壞理ちゃんに再構築された。そのせいで記憶を喪失してあやふやに思いだした。でも、その後に個性を破壊する弾丸を撃たれた。どうにか修復できたけど、ぼろぼろ」
「おい、待て。まさか……」
「すくなくとも、感情はわからない。訂正。恐怖は覚えて。絶望はまだよくわからない」
「そういうことか……わかった。これだけは聞きたい。お前は何をめざす? ヒーローか?
「おかしなことを聞く。そんなのはすでに決まっている」
偽物……じゃない。緑谷出久に触れて巻き戻す。腕も怪我も綺麗に治して、答えずに踵を翻してこの場を去る。いかないといけないところがある。
「待って! そのごめん。僕は……」
「いい。
「で、でも……」
何か言われる前にこっちから聞きたいことを聞こう。
「あの金髪のヒーローのお兄ちゃん、どこ?」
「先輩のこと?」
「それ。治療する」
「それなら、あっちやで」
「ありがとう」
移動したら、すでにいなかった。探しまわってもどこにもいない。聞いてみたら、病院に向かったみたい。なので、私もそちらに移動する。
「未来は変わった。本当なら緑谷は黄金の光に包まれて……死んでいた。ミリオも手足がなくなっていた。だが、この通りだ。ミリオ、緑谷。君達が未来をかえた。大丈夫。お前は誰よりも立派なヒーローになっている……未来だって変えられる。だが、この……未来だけは……変えてはいけない……だから、笑って……」
「「「うう……」」」
「元気とユーモアのない世界に明るい未来はやって来ない」
「『ふはははは、実にいい。実にいい表情だよ、オールマイトォ!』」
「っ!?」
病室の窓を分解して中に入り、再構築して元に戻す。炎の翼も消してやる。
「その声、その喋り方はオール・フォー・ワンっ!」
「『そうだ。僕だ。せっかくなので見学にきてやったよ。お涙頂戴の三文芝居をね』」
「貴様っ!」
「こころちゃん……?」
「いや、彼女は……」
「あの、もしかしてこころちゃんだったらナイトアイを助けられますか!」
「『ああ、可能だ。だが、僕がそれをすると思うのかい? オールマイトが苦しんでいる姿が大好きな僕が? ありえないね! ああ、そうだとも。僕だったらありえない』」
喋っているのを無視して、ナイトアイに近付く。彼は私をしっかりと見詰めてくる。
「『僕がここに来たのは彼の"個性"を貰うためだ!』」
「させないぞ、亡霊めっ!」
身体に触れて分解し、再構築する。
「『あ、それ間違ってるよ。そこはだね……』」
先生に教えてもらいながら、悪いところは全部綺麗にして身体を作りなおす。筋肉も増やしておく。
「やっぱり……」
「ど、どういうことだ?」
「確かにオール・フォー・ワンは治療しないでしょう。でも、彼女、こころちゃんは違うんです。僕だって治してもらいました」
「治療完了。これで多分、きっと大丈夫」
「『感謝するがいい。僕が……って、何をする! まだ話していたんだ!』」
仮面を掴んで外し、私の身体の中に入れる。次に取り出すのは壞理ちゃんの仮面。エネルギーは使えなかった"個性"の欠片でいい。そもそも私の中の個性因子はいっぱいある。”個性”を奪うというのは個性因子を奪うことなのだから。
「次、金髪のお兄ちゃん、たしかルミリオン」
「あ、ああ……」
「助けてくれてありがとう」
「ヒーローとして当然だよ。でも、僕は君をちゃんと助けることができなかった」
「ううん、そんなことはない。あそこで、無個性の状態でも頑張ってくれたからこそ、私は、私達はこのままヒーローとしていくことにした」
ルミリオンに抱き着いて、壞理ちゃんの"個性"、巻き戻す個性を発動させる。戻すのは個性が壊れる前まで。結構な量の個性因子が非活性化していく。でも、しっかりと個性は戻った。
「凄いと思ったから。多分、これは……憐憫?」
「「「ちがうよ!」」」
「憧れだと思うな……」
「憧れ……これが……」
「ところで、その、その姿のままなのかね?」
「? 再構築していないだけ。変化もしていない。壞理ちゃんと遊ぶならこのままがいいのかもしれないから」
「そうか。それでお願いがあるんだ。私の身体は治せないかな?」
『絶対に駄目だ。断固拒否しなさい』
「……先生が嫌だって駄々を捏ねてる」
『こねてない!』
「そっか、だめか……」
「でも、そんなの私の知ったことじゃない」
『ちょっ!?』
「ヒーローなら助ける。だから、治してあげる」
「「本当!」」
「それはすごく助かる」
「でも今は駄目。ナイトアイは緊急事態。オールマイトは緊急じゃない。だから、人体構造の勉強をしっかりとしてからじゃないと駄目。オールマイトの治療は先生は手伝ってくれない。だから、待ってて」
「わかった。そういうことなら、待っていよう」
「治療行為をするには医師免許が必要。頑張らないと」
「アタシが教えてあげるよ。その"個性"は便利だからねえ」
「いいこと教えてあげる。材料を用意したら、若返りが可能」
「っ!? いいね、いいね! よろしく頼むよ!」
「ん」
助けるべき人は助けた。お礼をしないといけない人にもちゃんとした。これで後は壞理ちゃんに"個性"を返すだけ。心に穴が空くけれど仕方ない。
緑谷君の行動ですが、まず感情を操られて冷静ではなくなっています。絶望と恐怖の中でなんとしても助け、オーバーホールを奪われることを防ぐために死力を尽くして限界を超えて動きました。そうじゃないと、解除されたとはいえ影響が色濃く残っている状態では動けません。
また、問答でオール・フォー・ワンだと認めているのも理由の一つです。以上のことから"個性"を複数持ち、肉体的にも強いと判断してかなりの力で殴りました。
ですが四歳児の身体では岩盤を割るような威力に多少強化しても耐えられるはずなどなく、即死ダメージです。ましてや、長年の筋トレなど筋肉狂化などすべてresetされているのでこころちゃん、身体では最弱です。
ただ、不死鳥の"個性"でアレイズ、蘇生復活が働きます。完全に治すには不死鳥の仮面が必要です。
ちなみに閣下は閣下ですが、完全に本人というわけではないとお思いください。再現するのは難しいのです。
ちなみに内部良心仮面は不死鳥の仮面こともこたんのみ。閣下こと英雄の仮面はあれです。言われる通りに進んだら、犠牲がいっぱいでる。正義の味方はどこかで狂ってますからね。衛宮しかり、閣下しかり。自己犠牲の精神が半端ないです。