IS(インフィニット・ストラトス)~騎士の物語 作:武御雷参型
月日は流れ、五月となった。
「山本支部長、その話は本当ですか?」
『ああ。君には私のボディーガードを頼みたい』
龍聖は睦月から対抗戦の観戦の際、ボディーガードをすることを頼まれていた。
「それは構いませんが………でも、天照隊は表上では飛龍さんがすることになっていませんでしたか?」
龍聖は天照隊に配属されていないことになっている。その為、龍聖が睦月のボディーガードをしていても大丈夫なのか心配であった。
『その点に関しては問題ないよ。君は黒崎重工の企業代表でもあり、国際IS委員会日本支部代表でもあるんだ。だから、そこまで気負う必要はない』
睦月の言葉に龍聖は納得する。
「判りました。では、当日。自分は睦月さんの近くにいます」
「そうしてくれ……そうしてくれた方が、彼女も喜ぶと思うし』
「? 睦月さん、何か言いましたか?」
『いや、何も言っていないよ。さて、私も多忙でな。また、連絡する』
そう言うと睦月は電話を切った。
「睦月さんは何が良いんだろうか?」
龍聖は睦月の言葉に引っかかりを感じ、忘れられなかった。
睦月は龍聖との電話を切ると、すぐに違う場所へと電話を掛け始めた。
「国際IS委員会日本支部、支部局長の山本睦月と申します。西木野院長はおられますか?」
睦月が電話を掛けたのは、真姫の両親が営む病院であった。
『……西木野です。まさか、そちらから電話を掛けてくるとは思ってもみませんでした』
「国際IS委員会日本支部とは関わりの少ない、西木野病院に連絡をすることは本来であればありません…が、ある一人の少年となれば、話は別です」
『まさか、龍聖君に何かあったのですか?』
真は龍聖の身に何かあったのかと心配するが、睦月は否定する。
「いえ、そう言う事ではありません。彼が通っている国際IS学園で催しがありまして………そこにご息女を招きたいと思っているのですよ」
睦月が龍聖にボディーガードを頼むのは、このことが関係していたのである。滅多に会う事が出来ない二人にサプライズをする為に。
『なぜ、真姫を連れて行く必要がありますか? 私には判らないのですが?』
真は睦月の真意を確かめた。
「なに、彼とご息女とは会う事が滅多に出来ない身分…………大人の我儘ですよ」
『………そう言う事ですか……』
漸く真も理解する。龍聖と真姫は許嫁である。だが、真姫は一般人でしかない。その為、龍聖と会う機会が少ないのは確かな事である。何かを理由にしない事には、二人が会う機会が作れないのである。それこそ、大型連休などの休みを使う他無いのである。
『いいでしょう。本来であれば、私や美姫を連れて行きたいのですが、時間的に余裕がありません。ですので、そちらで護衛を付けてもらう事を前提であれば、真姫をお連れすることを許可しようと思います』
真は真姫一人が学園に行く事を良しとしなかった為、睦月の条件を付けて、許可を出したのである。
「その点についてはご安心を。彼が隊長を務めている部隊を連れて行くことにしていますので、彼女ならばご息女とは面識がありますから、安心でしょう」
睦月の言葉を聞き、真は許可を出すのであった。
『解りました。では、真姫の事をよろしくおねがいします』
こうして、二人が知らないうちに話が進んでいくのであった。
そして、クラス代表対抗試合の当日となった。一夏と鈴は一緒に対戦相手を確認していた。
「とうとうこの日になったわね」
「ああ、お互いに悔いのない試合をしよう」
二人はそう言ってモニターを見ると、そこには組み合わせが終わったことを知らせる表示がされていた。
「「え⁉」」
二人がモニターに映し出された組み合わせに驚きを隠せずにいた。
第一試合
1年1組 織斑一夏 対 1年2組 鳳鈴音
第一試合は一夏と鈴の対戦であった。
「………誰かがこういう組み合わせをした、としか思えないわね」
「………ああ、だが、俺が負けないからな‼」
「望むところよ‼」
二人はそう言って、硬く手を結ぶのであった。
「ところで、この組み合わせをしたのはあなたですか?」
個室に通された国際IS委員会日本支部支部局長、山本睦月の傍らには表上では、黒崎重工と国際IS委員会日本支部代表であり、裏では国際IS委員会日本支部所属対IS部隊“天照隊”の隊長を務める黒崎龍聖の姿がある。また、その近くには龍聖の許嫁である西木野真姫と天照隊の姿があった。
「僕は何もしていないよ。厳選された抽選結果でこういう結果になったんだ………黒崎隊長、憶測で物を言うのは如何な物かと僕は思うけどね」
睦月はアリーナに顔を向けそう言う。一方の龍聖も睦月がこの抽選結果に関わっていないことは判っているのだが、場の空気を和らげようとする龍聖の冗談であった。だが、近くにいる真姫はそうではなかった。
「(いつもの雰囲気じゃない……何、この空気は)」
真姫からすれば、いつもの二人ではないことに気付いていたのである。
「隊長、そろそろご機嫌を直してください。真姫さんが驚いていますよ?」
二人の仲介に入ったのは、天照隊に新たに配属となった杏美であった。と、同時に新たに配属となった瑠美と恵美が頷いていた。この三人は、過去に龍聖を襲った三人であり、三人は姉妹である。
「……そう言うが、ボディーガードをすると聞いていたのに、蓋を開けてみれば、お前たちがいるし、真姫までいる。ところが、俺は何も聞かされていない……これが怒らずにいられるか?」
普段の龍聖とは違い、不機嫌さを醸し出していたのである。
「確かにその通りではあります。ですが、隊長と真姫さんの事を考えた上での行為とみれば、そう怒る必要はないと私は思いますが?」
瑠美は龍聖を落ち着かせようとする。
「………そう……だな……」
龍聖も思うところがあるのか、漸く不機嫌さを直そうとしていた。
「まっ、瑠美の言う通りだな。すまないな、真姫」
龍聖は漸くいつもの状態に戻り、真姫に謝罪する。
「い、良いわよ、別に」
真姫は龍聖に謝罪されたのが、擽ったいのか顔を背け、龍聖の謝罪を受けたのである。
「フフ、そろそろ試合が始まるようですよ」
睦月と龍聖の間にあった
「さて、一夏君。君の力を私たちに見せてくれ」
睦月はそう言って真剣に試合を観戦するのであった。
所変わり、アリーナでは一夏と鈴が対峙していた。
「一夏‼ 正々堂々と戦うわよ‼」
「ああ‼ 当り前だ‼」
一夏と鈴は己の武器を展開させ、時が満ちるのを待った。
『これより、1年1組クラス代表、織斑一夏と1年2組クラス代表、鳳鈴音のクラス代表対抗試合第一回戦を行います‼』
管制室には3年生による実況が始まる。
『では、時間が参りましたので…………インフィニット・ストラトスファイト―………レディーゴー‼』
「「何かが違う⁉」」
実況のボケに一夏と鈴はツッコミを入れつつ、試合を開始した。
まず初めに先制攻撃をしたのは、鈴であった。
「一夏ぁぁぁぁ‼」
鈴は雄叫びを上げ、一夏に迫っていく。鈴が使う
「チッ‼」
対する一夏は、国際IS委員会日本支部IS研究所で開発された第三世代機“白式”である。原作とは違い、篠ノ之束博士が仕上げをしてはいないが、そこはIS委員会の力である。千冬の弟と言う事もあり、千冬の元専用機“暮桜”に搭載されていた武装の発展型を搭載している。また、一夏であって千冬ではないと言う事を考慮し、ハンドガンを数丁、搭載されているのである。
そして、一夏はハンドガンを展開させると、迫る鈴に対してけん制攻撃を交え引き金を引いていく。
「そんな弾、当たらないわよ‼ 射撃武装はね、こう使うのよ‼」
「グッ⁉ 今の攻撃は………」
一夏はいきなりの衝撃に驚きを隠せずにいた。
「これが、甲龍が持つ最大の武装“龍咆”よ‼」
鈴はそう言うと続けざまに一夏に対し、龍砲による射撃を行っていく。
「クッ、近づけやしない………こうなったら、イチかバチかだ‼ 鈴、行くぞ‼」
一夏はそう言うと、ハンドガンを量子変換させ代わりに雪片弐型を展開させた。
「いっくぜぇぇぇぇぇっ‼」
一夏は雄叫びを上げ、鈴へと迫っていく。
「来なさい、一夏ぁぁぁぁぁ‼」
対する鈴も一夏を迎え撃つ準備をしており、青龍刀を構え一夏を待った。
だが、その時であった。
突如、アリーナを覆う天井の一部が爆発したかと思われた瞬間、一筋のビームがアリーナの地上を焼いた。
「な、なに⁉」
「な、なんだこれ⁉」
二人は思いがけない攻撃に、その場で止まってしまった。
すると、上空から一機のISがゆっくりと降下し、一夏と鈴の前へと立ち塞がったのである。
「I……S?」
「だが、こんなIS見たことないわよ‼」
一夏と鈴の前に現れた未確認のISは
「誰だ、アンタは‼」
一夏は未確認ISに向かって問いただした。だが、返ってきた返事は攻撃であった。
「鈴、散開‼」
「判ったわ‼」
一夏の指示で鈴はその場を離れた。
管制室では、千冬に次々と問題が報告されていた。
「お、織斑先生‼ アリーナの隔壁が下ろされています‼」
「織斑先生‼ 救援要請を出そうにも、どこにも繋がりません‼」
「織斑先生‼ 突入部隊の準備が整いましたが、隔壁が降りて出撃できません‼」
「チッ………学園内の通信手段は遮断されていないな?」
「え? あっ、はい‼」
千冬は睦月が来ていることを思い出し、救援要請を出そうとしたのである。
「急いで避難誘導をさせろ‼ 国際IS委員会日本支部市日局長である山本睦月氏がVIP席にいる。つないでくれ」
「判りました‼」
千冬は問題に対処しながら、睦月に通信を入れた。
「織斑先生、繋がりました‼」
「こちらは国際IS学園最高司令の織斑千冬です。山持睦月支部長、応答をお願いします」
『……山本です。現状は確認しました。これより龍聖君を含め天照隊を突入させます。その際に、一部を破壊することになりますが、修理費などに関してはこちらが負担をします』
睦月からの言葉は千冬にとって、願ったり叶ったりである。二つ返事で答えたのであった。
「では、よろしくお願いします‼」
千冬は一安心するが、まだまだ問題は山積みであることには変わりはなかった。
「ここからが本番だ‼ 各専用機持ちに通達しろ‼ 避難誘導を率先的に行え、また、有事の際の破壊に関しては一切、不問とするとな‼」
【ハッ‼】
千冬の指示を聞いた職員や生徒たちが動き出したのであった。
「……………」
だが、千冬はある人物の事を思い浮かべていた。
「(束……貴様が考えているほど世界は甘くないぞ)」
VIP席には未だ睦月と龍聖、天照隊、真姫の姿があった。
「黒崎隊長、聴きましたね?」
「はい。これより天照隊を率いて鎮圧へ向かいます」
睦月の言葉に龍聖はいつも以上に真剣な表情をしていた。
「真姫さんについては、私が避難させます」
「お願いします」
「龍聖‼」
睦月は真姫を連れてVIP席を離れようとした。だが、真姫は龍聖の名前を呼んだ。
「………必ず、私の元に帰ってきなさいよ」
「ああ。何が何でもお前の元へ帰るよ」
二人はそう言うと、お互いに顔を合わせキスをする。
「行って来る」
龍聖はそう言うと真姫から安全な距離まで離れると、斑鳩を展開させる。
「天照隊、出撃するぞ‼」
【ハッ‼】
龍聖の声に天照隊総勢六人が力強く返事をする。
「ヒナ‼」
〈うん‼〉
龍聖の言葉に斑鳩のコアの人格であるヒナは、ドラグーンを全機射出すると壁に砲口を向けた。
「行くぞ‼」
龍聖の言葉と共にドラグーンの銃口から火が吹き、壁を簡単に撃ち抜いた。撃ち抜かれた壁はISが出れる大きさの穴があり、そこから天照隊が出撃していったのであった。
「龍聖………」
龍聖たちが出て行った穴を見つめる真姫は、手を組み祈る様に龍聖たちの無事を願うのであった。
アリーナでは一夏と鈴が苦戦を強いられていた。
「クソッ、簡単に近づくことが出来ないぞ‼」
「バカスカバカスカ撃ち過ぎなのよ‼ これでも喰らいなさい‼」
鈴は回避運動を取りながら龍咆を放つ。だが、相手は当たっても怯む様子はなかった。
「なんで怯まないのよ‼」
鈴はそう言いながら続けざまに龍咆を放っていく。
「鈴‼」
「ッ⁉」
一夏の呼びかけに気付いた鈴は、すぐにその場を離れた。その瞬間、鈴がいたところに一筋のビームが走ったのである。
「一夏、エネルギーはどうなの?」
「零落白夜は後、一回が限界だな……そっちは?」
「私も撃ち過ぎてエネルギーが心許ないわ……万事休すね、これは………」
二人のエネルギーは既にレッドゾーンに突入しかけていたのである。
だが、その瞬間であった。VIP席から爆発が起きたのである。
「あそこは⁉」
「あれは……龍聖‼」
爆発が起きるのと同時に七機のISがアリーナへと突入し、先頭に立つのは龍聖であった。
「一夏、鈴。すぐにその場から離れろ‼ 天照隊、散開‼」
【ハッ‼】
龍聖は一夏と鈴に避難を呼びかけると同時に、天照隊に指示を出す。
「な、なんで国際IS委員会日本支部最強と言われた対IS部隊がいるのよ⁉」
鈴は現行のIS部隊の中で、最強と言われている日本支部の対IS部隊がいるのに驚きを隠せなかった。
「鈴、ここは逃げるぞ‼」
「え⁉ 大丈夫なの‼」
「ああ、アイツと天照隊がいると言う事は、もう安全と言う事だ」
一夏はそう言うと龍聖と擦れ違う様にその場を後にした。鈴も同じように一夏に付いていく。
「さぁ、狩りの時間だ………各自、
龍聖はそう言うと
「撃てぇぇぇぇぇ‼」
龍聖の声と共に砲撃が行われ、無残にも未確認ISは破壊されたのであった。
こうして、クラス代表対抗戦で乱入してきたISは龍聖たちにより、無事に解決したのであった。
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IS学園でユニットを組んでほしいか
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やってほしい‼
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やる必要なし