IS(インフィニット・ストラトス)~騎士の物語   作:武御雷参型

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お待たせしました。


第二十七話

クラス対抗試合は、未確認機による襲撃によって中断された。そして、月日は流れ六月の半ば、IS学園の校門の前に二人の生徒の姿があった。放課後と言う事もあり、生徒たちが自分たちの寮へと帰って行く姿が見受けられていた。

一人はフランス国家代表候補生であるシャルロット・デュノア。

もう一人は、ドイツ国家代表候補生兼ドイツ軍特殊部隊“シュヴァルツェア・ハーゼ隊”隊長のラウラ・ボーデヴィッヒである。

 

「まさか、委員会からラウラと一緒にIS学園に出向するなんてね」

 

「ああ、そうだな。だが、これもいい勉強だ。所で、聞いたか?」

 

「……この前のクラス対抗試合時に乱入してきた無人機について?」

 

シャルロットが言っているのは、クラス対抗試合の時、鈴と一夏の試合の途中で乱入してきた無人機の事である。なぜ、この二人が無人機の存在を知っているのかというと、この二人、実は各国家の国際IS委員会の支部に所属しているからである。その為、日本支部からの情報を共有していることもあり、詳細までも知っているのである。

 

「ああ、全世界最強と謳われている対IS用部隊“天照隊”が解決したらしいが………」

 

「誰が出撃したのかまでは知らされていなかったね………」

 

先日の無人機乱入事件の詳細までは知らされているが、天照隊の誰が出撃したかまでは知らされていないのである。そもそも、天照隊の構成員については、トップシークレットと言う事もあり、迂闊に情報を出すことが出来ないのである。

 

「………もしかしたら、僕たちと一緒に勉強していたりして………」

 

「そんなことは無いだろう……多分………」

 

シャルロットとラウラの考える天照隊の構成員の想像は、自分達よりも年上で尚且つIS学園の教員をしていると言うイメージを抱いていたが、実は違う事をまだこの時、二人は知る由も無かった。

 

「そろそろ、時間じゃないのか?」

 

「そう言えば、そうだね………」

 

「………お前たちが新たに転入してい来るのは……ん? ボーデヴィッヒじゃないか……久しぶりじゃないか」

 

「教官⁉」

 

二人を迎えに来たのは、千冬であった。千冬はラウラの姿を見て少しだけ微笑むと、ラウラは驚きの余り、ドイツ軍での千冬の呼び方をしてしまう。

 

「……ここでは一教師としているから、呼び方に気を付けろ」

 

「ハッ‼」

 

千冬の言葉にラウラは敬礼をして返事をすると、千冬は頭を抱えたまま溜息を一つ、零すのであった。

 

「ところで……シャルロット・デュノア……だな?」

 

「は、はい‼」

 

千冬は転入生の情報を前もって知っているのだが、目の前にいるのは中性顔の男性生徒にしか見えないシャルロットであった。

 

「男性操縦者として来たのか、普通の生徒として来たのか、どっちなのだ?」

 

「僕はこんな身なりですが、れっきとした女性です。紛らわしい格好をして申し訳ありません。ですが、どうしても僕自身、スカートが苦手でして………」

 

シャルロットは昔から女性らしい服装を好まなかったのである。それにより、IS学園に転入する際、男性と同じ服装にしてもらっているのである。

 

「そう言う事ならば、仕方がないが………一部の女子には間違われやすいからな、気を付ける事だ」

 

「ご忠告、感謝します。所で、織斑先生」

 

「なんだ?」

 

「その手に持っている者は………」

 

シャルロットは千冬の手に握られた者が気になり尋ねると、そこで気付いたのか千冬は手を離してしまう。

 

「グエッ‼ 千冬姉‼ ひどいじゃないか‼」

 

「貴様が悪い。もう少し考えて行動をしろ‼」

 

「そうも言ったって‼ あれは、俺の責任じゃねぇ‼」

 

「知らん‼」

 

千冬に握られていた者は、一夏であった。なぜ、一夏がこうなったのかというと、時は遡り、千冬が二人を迎えに行く前である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の授業が終わり、一夏たちは龍聖を交えて実力の向上をする為に特訓をしていた。

 

「そう言えば、龍聖の機体ってブルー・ティアーズと同じでBT兵器を積んでいるんだよな?」

 

一夏は借りているアリーナに向かう途中、龍聖に質問をする。

 

「ん? ああ、俺の専用機、斑鳩はBT兵器とは違う」

 

「どういうことですの?」

 

龍聖の言葉にセシリアが尋ねる。ある意味でBT兵器との違いを知りたいからである。

 

「俺の斑鳩はBT兵器ではなく、ドラグーンと呼ばれる兵器だ。違いについてなんだが………BT兵器って補助器が無い状態での運用がされているが、ドラグーンは補助器ありでの運用がされているんだ。だけど、補助器があるからと言って、簡単に操作できるものじゃない。空間認識能力が高くないと全く、効果を出せないんだ」

 

「なら、龍聖は空間認識が高いのか?」

 

「いや、俺はどちらかというと低いぞ。俺の場合、補助AIが斑鳩に積まれているから執月之手(ラーフフィスト)とドラグーンの運用はAIに任せているんだ」

 

「だから、あんなに動けると言う事か………待て、ならもし自分で操作しようものならどうなってしまうのだ?」

 

「それは………オルコットよりも酷いだろうな」

 

「どういうことですか?」

 

龍聖がもしヒナ無しでドラグーンや執月之手(ラーフフィスト)を使った場合、操作自体が出来ず、最悪の場合、脳が焼き切れてしまう危険性があるのである。

 

「脳が焼き切れて、最悪の場合、廃人になる危険性がある」

 

「「「「「うわぁ~」」」」」

 

龍聖の説明に、一夏たちはドン引きするのであった。

 

「そう言えば、一夏の訓練ってどういう事をしているんだ?」

 

「私とセシリアがタッグを組んで、一夏と箒の二人と戦う実戦形式ね」

 

クラス対抗試合後、鈴も訓練に交わることになり、一夏と箒の教官には鈴が加わることになったのである。

 

「なら、今日は俺が教官として全員を相手してやる」

 

「何? 喧嘩でも売ってるわけ?」

 

「いや、そうじゃない。俺だって伊達に対IS用部隊の隊長をしているわけじゃない……たまには俺も訓練をしないとな………有事の際に動けない可能性があるからな」

 

「そう言う事なら仕方がないわね。でも、私はそう簡単にやられないわよ」

 

「わたくしもですわ」

 

「…………」

 

「………一夏?」

 

鈴とセシリアは龍聖に対抗意識を燃やしているが、一夏はそうでもなかった。その事に箒は気付き、一夏の顔を見ると、そこには絶望の淵に立たされた顔をしている一夏があった。

 

「………二人とも、ご愁傷様」

 

「……そう言えば、一夏もそんな事があったな………そう言う私もだが………」

 

箒と一夏は日本支部での訓練を思い出したのか、遠い遥か彼方を見つめて目が死んでいた。

 

「ど、どういう事よ‼」

 

「そうですわ‼ 詳しく説明しなさい‼」

 

鈴とセシリアは不安になってきて一夏たちに迫ったが、二人は苦笑いをするだけで答えられる様子は無かった。

そして、借りているアリーナに到着し、訓練が開始されたのだが…………この状況を見た第三者からの意見は…………正しく地獄と言っても可笑しくなかった。である。

 

 

なぜならば、斑鳩に一つもダメージを与えられないまま、鈴とセシリアは沈黙したからである。

こうなったのには理由がある。まず、鈴が前衛に就き、セシリアが後衛に就くと言う教科書通りの布陣を敷いた。一方の龍聖は、斑鳩の武装全てを展開させていた。

 

「はぁぁぁぁぁぁ‼」

 

鈴が龍聖に突撃をかますが、龍聖は冷静に執月之手(ラーフフィスト)を使って対処していき、その隙にセシリアがブルー・ティアーズを使って龍聖に攻撃を仕掛けるが、ブルー・ティアーズから放たれたレーザーをドラグーンのビームに相対させるが、レーザーとビームの相対では、ビームが出力的にも勝ってる事もあり、そのままブルー・ティアーズを破壊していく。

そして、執月之手(ラーフフィスト)を使い、鈴を掴むとそのままセシリアに投げつけ、揉みくちゃになった所にドラグーンとビームライフルによる一斉掃射で試合終了。

これが事の顛末である。

 

「やっぱり、龍聖は強い………」

 

「あ、ああ。私達では勝てそうにないな………」

 

一夏と箒は二人の姿を見て、改めて龍聖の強さを認識するのであった。

 

「そうだ、一夏。一緒に特訓しないか?」

 

「そうだな」

 

一夏と箒は白式と紅姫を展開させて、二人で特訓する事になるのだが、一夏は前々から考えていた戦い方を特訓しようとしていた。

 

「行くぞ‼」

 

「ああ‼」

 

一夏は徐に雪片弐型を箒に投げつけたのである。

 

「何⁉」

 

行き成りの事で箒は対処できずに、先手を打たれて箒はダメージを受けてしまう。そして、一夏はそのままハンドガンを両手に持ち箒に突貫していく。だが、その頃には箒も体勢を立て直しており、紅姫に装備されているアサルトライフルを展開すると、一夏に向けて引き金を引く。これにより、一夏も若干だがスピードを抑えてしまった。そこを箒は見抜くと、アサルトライフルを保持したまま、近接武器である重斬刀を展開させると、一夏に向かっていくのである。この時、まだアサルトライフルの引き金を引いたままである。一夏に届く寸前でアサルトライフルの弾が切れてしまったので、アサルトライフルを捨て、重斬刀を両手で握り、切りかかったのである。

その瞬間である。本来、一夏が持っているはずもない物が握られていた。

 

「それは‼ 雪片弐型⁉ なぜ、持っている‼」

 

「箒、甘いぜ。雪片に自動的に戻って来るように設定をしていたのさ……だから、いつでも投げられると言う事だよ‼」

 

「クッ⁉」

 

一夏は箒との鍔迫り合いを強制的に終わらせると、再度、雪片を箒に投げつけた。

 

「まだまだぁぁ‼」

 

箒は投げつけられた雪片を重斬刀で弾くと、雪片が戻る前に一夏に突撃をする。

 

「そう来たか………だが‼」

 

一夏は何と、ハンドガンの中で威力の高い物を取り出すと、引き金を連続で引き、箒にダメージを蓄積させたのである。

 

「これしき、なんとも思わん‼ これで、最後だ‼ 一夏‼」

 

「箒が終了だぜ」

 

「なッ⁉」

 

一夏がそう言う、いつの間にか一夏の手には雪片が握られており、白式の単一能力(ワンオフアビリティー)である“零落白夜”を発動させ箒を切り伏せたのである。

 

「我が雪片に絶てぬモノ無し」

 

一夏は箒に背を向けてそう言うのであった。それと同時に訓練終了を知らせるアラームが鳴る。

 

「さて、箒。戻ろうぜ」

 

「ああ、そうだな……おっととと」

 

「箒‼」

 

箒は紅姫を解除して立ち上がろうとしたが、足に力が入らないのかそのまま転びそうになったところを一夏が助けるのだが、体勢が悪く、箒を押し倒すように倒れ込んでしまったのである。

 

「………貴様ら、何をしている」

 

「ち、ち、千冬姉⁉」

 

「お、織斑先生⁉」

 

それを丁度目撃したのが千冬であった。千冬は、一夏の頭を握るとそのまま持ち上げ、ドナドナしていったのである。

 

「貴様には公衆の面前で何をしていたのか、きっちりと聞かないといけないな」

 

「ち、千冬姉⁉ 痛い‼ 頭が痛い⁉ 鳴っちゃいけない音がしてるから、離して‼」

 

「聞かぬ。来い‼」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」

 

そして、今に至るのであった。




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そして、いつも誤字修正をして下さる方。本当に感謝します。この場をお借りして感謝の言葉を送らせて頂きます。
今後とも、よろしくお願いします‼

IS学園でユニットを組んでほしいか

  • やってほしい‼
  • やる必要なし

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