IS(インフィニット・ストラトス)~騎士の物語 作:武御雷参型
その日の夜。龍聖は真姫に電話を掛けていた。
数コールした後、真姫が電話の先に出る。
「あっもしもし。真姫? 今って時間大丈夫か?」
『ええ。問題ないわ。どうかしたの?』
「旅行に行かないか?」
『………は?』
突然、旅行に行かないかと誘われたら誰でもうそうなるであろう。
『いきなりどういう風の吹き回しなの?』
「いや、付き合いだしてからお互いに忙しかったから、やっと長期休暇を貰えたからさ、この機会に真姫たちと一緒に旅行に行きたいなと思って」
龍聖の言葉で真姫も納得をする。真姫自身も言われてみればと思い返すと、付き合いだしてからアイドル活動や勉学、受験とデートをする機会はあれど、旅行という旅行をしたことが無い事に真姫も気づいたのである。
『行くのは良いけど、行く先は決まっているの? それに加えて、宿泊先は? いつ行くの?』
真姫も行く気な様子であった。
「行く先については既に決まっている。静岡の沼津に行く。宿泊先についてもホテルの手配は済んでいる。行く日にちについては、真姫の空いている日を使うつもりなんだが?」
龍聖の言葉を聞き真姫は「少し待ってて」と言うと、なにやらごそごそという音が聞こえ始める。この時、真姫は鞄にしまっている手帳を取り出し、予定を確認していたのである。
『確認したけど、来週から空いているわ。単位は………問題ないわ。取り返せるレベルだから』
「いつまで空いているん?」
『良くて二週間ね』
「判った。なら、来週から二週間、静岡に行こう」
『楽しみにしているわ』
「なら、家まで迎えに行くわ」
『待っているわね』
真姫と龍聖はお互いに通話ボタンを押し、通話を終了する。
「さて、次は束さんだな………あの人の事だから「話は聞かせてもらったよ‼ りゅーくん‼」やっぱり………」
龍聖が携帯で束の連絡先に掛けようとしたが、どの道、話を聞いているであろうと考えていると、案の定、束は真姫との会話を聞いていたらしく、ダクトからするりと出て来る。そして、義娘であるクロエの姿もあった。
「束さんだけかと思いきや、クロエまで一緒なのか」
「あの……ダメでしたか?」
龍聖の言葉に不安そうに聞くクロエであったが、龍聖は頭を振って否定する。
「いや、問題はない。一人増えたところで、大丈夫だとは思うけど、確認はしておくよ」
龍聖はそう言うと、クロエの頭を撫でる。クロエも嬉しそうな表情で龍聖に撫でられていた。その横で不満そうな表情で龍聖を見ていた束はいきなり龍聖に抱き着いたのである。
「うわっ⁉ 急に抱き着いてきたら危ないじゃないですか………それに子供ですか?」
「ブーブー‼ クーちゃんだけにつきっきりなんて、母親である束さんが許さないんだぞ。さぁ、この天才篠ノ之束様の頭も撫でるのだ‼」
束はそう言うと、龍聖に頭を差し出した。龍聖も渋々とは言わないが、束の頭を撫で始める。
「リュー君に頭を撫でられると、安心するんだぁ~………じゃなかった‼ 旅行楽しみだね」
「ええ。それで、日程に関しては問題無いんですよね?」
「無問題‼ スケジュールも問題無いよ」
「なら、束さんとクロエと一緒に真姫を迎えに行ってから静岡に行きましょう」
「おー‼」
「お、おー」
龍聖の言葉に乗り気な束と少し恥ずかしそうであり、嬉しそうに乗るクロエであった。
龍聖は翌日、睦月の執務室へと向かった。
「失礼します」
「どうかしましたか? 黒崎隊長」
突然訪問してきた龍聖に少し驚く睦月であったが、何事も無いように振舞って龍聖を迎え入れる。
「昨日のホテルオハラについてなのですが」
「ああ、それがどうかしましたか?」
「一人追加しても構わないですか?」
「先方に確認してみますが、多分、大丈夫かと思いますよ」
睦月の言葉に一安心する龍聖であった。
「ですが、良いんですか?」
「何がです?」
睦月からの質問の意図が見えない龍聖は、顔を傾げる。
「小原財閥との婚約の件を忘れていませんよね?」
「…………あっ」
龍聖は睦月の言っている意味がようやく理解した。過去に龍聖は小原財閥の令嬢である小原鞠莉との婚約の話を蹴飛ばした過去があった。その際、龍聖は真姫だけを愛しているから、他の女性を迎え入れるつもりは無いと断言していたが、今や真姫と束と婚約している状況である。小原財閥からすれば、自分たちからの縁談を断っておいて、自分は他の女性と婚約しているではないかと言われてもおかしくはなかったのである。
「ど、ど、どうしましょう………」
「どうしましょうって………そこは腹を括って先方に婚約者が二人になりましたと正直に伝える他無いと思われますが?」
睦月の言っている事は正論であった。だが、仮に小原家にそのことを伝えたら、今度こそ鞠莉との婚約を迫られる可能性も視野に入れなくてはいけないのである。
「まぁ、多分ですけど大丈夫でしょう」
「それって、どういう意味ですか?」
睦月は龍聖に鞠莉との婚約する事にはならないであろうと伝えるが、龍聖は理解が追い付いていなかった。
「こちらが掴んでいる情報では、既に鞠莉さんは日本支部と協力関係にある企業の方と婚約する可能性があると言う情報を掴んでいます」
「政略結婚ですか?」
「………でしょう」
複数の企業を抱え込んでいる小原財閥は、既にいくつかのIS関連企業を抱え込んでいた。産業に強く根付く為とは言え、一人娘である鞠莉をも巻き込むのはどうかと考える龍聖であるが、既に婚約の話はこちらが蹴飛ばしている訳で、今更になって口出しするのはどうかとも考える龍聖であった。
「因みにですが、国外企業のご子息との婚約という情報です」
「はい?」
まさかの国内では無く、海外の企業との繋がりを得ようと画策しているようであった。
「まだ、どこの企業までは解っていませんが、多分、アメリカかフランス、ドイツ、イタリアの何処かの企業ではないかと睨んでいます」
「そうなれば、小原財閥が握っている情報が他国に流れる危険性はありませんか?」
「可能性はあります。しかし、私たちにはどうしようもできない事なのです」
「…………」
龍聖も他の家の事情にまで口を出すことは避けたかった。しかし、日本支部を巻き込むような話になれば別である。だが、そこまでの情報は握っていない為、如何しようもできないのが現実問題であった。
「仮に小原財閥経由で他国に情報が流れた場合はどう言う形で決着をつけるつもりですか?」
龍聖は可能性の一つとして、海外の企業に日本支部の情報が流れ、損害を被った際、どういった処分が下されるのか確認を睦月にする。
「正直な話、そうなってからでないと処分は下せません。特に情報と言っても様々な情報が存在しており、どの程度の損害を被ってしまったかによって、処分の重さが変わります。仮に、機体の情報が他国に流れたとしても特にこれと言って痛手にはなりません。これの意味は理解していますよね?」
睦月の言葉に龍聖は頷く。現段階では何も被害を被っていない日本支部としては、手が出せない状況であった。また、機体の情報は既に全世界に共有されており、龍聖のマガツ・イカルガについても委員会内で共有されている。しかし、世間一般には国際IS委員会各支部に所属している機体の名前と形、一部の武装のみが開示されているだけであり、全ての情報は開示されていないのである。
「ですが、武装の一部が流れてしまった場合は話は別です。各委員会支部は協賛する企業にしか武装の開発を依頼していません。しかし、委員会に協賛していない企業に武装の情報が流れた場合、最悪テロリストの手に渡り、戦争が始まってしまいます。また、戦争とはいかなくとも、女権などに情報が渡ってしまっては、女権は力を取り戻そうと、躍起になるでしょう。そうなってしまった場合は、政府を通して小原財閥の解体に手を入れなくてはなりません。そうなれば………」
「小原財閥の抱えている企業は軒並み総崩れとなる。そうなってしまっては、多くの雇用が失ってしまう」
「そう言う事です」
そうなってしまっては、日本そのものが大きな打撃となってしまう恐れがあった。
「ですが、一つだけ回避する方法があります」
「自分と婚約をする。と言う事ですか?」
龍聖の言葉に睦月は頷く。
「ですが、真姫と束さん以外の女性と付き合うつもりは」
「飽くまでも可能性の話をしています。そうなると言っていません。話が逸れてしまいましたね。先方には確認をしておきます」
「………判りました。よろしくお願いします」
龍聖は睦月に頭を下げ執務室を後にするのであった。
「動向を探る必要がありそうですね………」
睦月はデスクの電話から何処かへと電話をするのであった。
IS学園でユニットを組んでほしいか
-
やってほしい‼
-
やる必要なし