IS(インフィニット・ストラトス)~騎士の物語 作:武御雷参型
龍聖と女将が話をしていると、漸くIS学園の生徒を乗せたバスが到着し、バスの中からぞろぞろと生徒達が降りて来るのが目に見えた。
そして、生徒達が整列し始めたのを見計らい、龍聖も一組の並ぶ方へと向かった。だが、そこで待ったを掛けた者がいた。
「黒崎、織斑。こっちにこい」
「「はい‼」」
千冬である。一夏と龍聖は呼ばれたあとで千冬の指示に従うと、各クラスの並ぶ列の先頭に立たされたのである。
「では、今日から三日間。お世話になる花月荘だ。全員、従業員の方々の仕事を増やす様な事をしない様に。良いな‼」
『はい‼』
生徒たちの強い返事を聞き、千冬は一度頷くと、女将のいる方へと顔を向ける。
「この度は急な変更のお願いをしてしまい、誠に申し訳ありません」
「いえいえ、いつも御贔屓にして頂いている団体様ですので、そこは臨機応変に対応させて頂きますよ」
女将はそう言って微笑んだ。だが、その顔は龍聖に向かれていた事は、一人を除いて気付かれることは無かった。
「(女将さん、俺の顔を見ながら言わないで下さい………お願いします‼)」
龍聖は心の中で女将に対して頭を下げていたのである。
「それで、そちらの方々が?」
「ええ、今回の変更の原因になります……二人とも、挨拶をしろ」
「大丈夫ですよ。龍聖様の事は知っていますから」
『え?』
「………なんでそれを言うんですか………」
龍聖は女将の言葉にゲンナリする。
「えっと、それはどう言う事なんでしょうか?」
千冬はどういった経緯で女将と龍聖が出会ったのか聞こうとした。
「それについては、極秘事項と言う事で」
女将はそう言うとお茶目にウィンクする。
「では、織斑。挨拶しろ」
「はい、織斑一夏です。三日間だけですが、よろしくお願いします」
一夏はそう言って頭を下げた。
「あら、しっかりしているじゃないですか」
「………そう言う風に見えるだけです」
「弟さんに対して、辛辣ですね」
「いつも手を焼かされていますので………ん? いつ、私が姉だと言いましたか?」
「あら? 苗字が同じだったのでつい………違っていましたか?」
「い、いえ……違っていませんが………」
千冬はそう言うと龍聖の方を一睨みをすると、龍聖はすぐに顔を背けた。
「………黒崎、後で話がある」
「…………………はい………」
流石に誤魔化せないと感じたのか、龍聖は覚悟を決めたのであった。
それから少しして各担当の教師から説明事項が行われ、割り振られた部屋に行くように指示が出されたのだが、一夏と龍聖の二人だけは部屋の欄に名前が記入されていなかったのである。
「織斑先生、俺達の部屋って………」
「お前たちの部屋について協議した結果、お前たちに二人にはこの旅館が用意した部屋に泊まってもらう事になっている。これが、部屋の場所だ」
千冬はそう言うと二人に地図を手渡した。
「……………」
「へぇ、結構近いもんだな…ん? 龍聖、どうしたんだ?」
一夏は龍聖の表情に焦っている様子が伺えた為、声を掛けた。
「………一夏、この部屋を利用するにあたって、これだけは約束しろ。絶対に誰にも言い触らすな。良いな」
「あ、ああ」
いつもとは違う龍聖の表情に一夏は困惑した。こんな表情をする龍聖を見た事が無かったからである。それだけ、この部屋に重要な事があると一夏は考えた。だが、ここで一夏に疑問が生まれる。
手渡された地図を見る限り、教師たちが宿泊する部屋と遠すぎず近すぎずの距離にあり、また学生たちが宿泊する部屋も同じ距離にある。では、なぜこの部屋だけが
「なぁ、龍聖。なんでこの部屋は隔離されているんだ?」
「………良いか、一夏。よく聞け。この部屋はこの旅館のバックアップをしている企業の親族しか宿泊を許されていない部屋なんだ……それに加え、ここの部屋だけは厳重に警備されていて、親父から聞いた話だが、政府の要人たちもここを利用する事があるらしい。その際には、この部屋を使う事になっているんだ………と言う事は、俺達が使う理由が解るな?」
「…………なんとなくだが、解った気がする」
「にしても、この部屋を男二人で使う事になるなんてな………」
龍聖は遠い目をして呟いた。
「なぁ、龍聖は真姫さんとこの部屋に宿泊したことがあるのか?」
「…………あるぞ」
「マジで⁉」
黒崎家と西木野家の合同家族旅行の際には、この旅館を使っており、宿泊する時は今回、一夏と龍聖が宿泊する事になっている部屋に泊まる事になっているのだが、両家ともに、龍聖と真姫の二人きりにして親たちは別々の所に寝ているのである。最初の頃は戸惑いなどがあったが、いつしか慣れてしまったのである。
「まぁ、こんな所で油を売ってたら、折角の休息を無駄にするぞ……一夏、行くぞ」
「お、おう‼」
二人は部屋へと向かうのであった。
アメリカ軍極秘部隊ネームレス隊の本拠地では、銀の福音の最終調整が行われていた。
「……明日が試験日だ‼ 絶対にミスはあってはならん‼ 心して掛かれ‼」
『ハッ‼』
最終調整と言っても、そこまで複雑な事をする訳でも無いのである。展開された銀の福音に対してコードを繋ぎ、データーの最終確認をするだけであった。
「開発主任‼ イスラエルの整備士たちが来ました‼」
「そうか、ではいつもの所に」
「ハッ‼」
開発主任は銀の福音に目を向けながら指示を出していった。だが、その表情は嗤っていた。
「さて、女権と亡国機業から渡されたデータを入れれば、後は待つだけだな」
この開発主任は知らなかった。自分が亡国機業と女権の掌で踊らされている事に…………
「ん? データ量が多いな……終わるには試験開始直前か試験中だが………まぁ、良いだろう」
開発主任はデータを福音にインストールし始めた。その時、福音の機体が僅かに赤く光ったのだが、誰も気付くことは無かった。
「さて、最終調整は完了かな………明日が楽しみだ」
そう言って開発主任は銀の福音に背を向けその場を立ち去ったのであった。
後に、これが世界にとって……否、ある天災の命運を分ける事になってしまうのだが、この時、誰も知らなかった。
篠ノ之束の持つ移動式ラボ“吾輩に名前は無い”はIS学園の生徒達が宿泊する旅館に向かっていた。
「さぁて、成長した箒ちゃんといっ君を見に行かないと‼」
束は二人の成長と、箒に新たな機体のプレゼントを持って向かっていたのである。
「でも、気になるなぁ~」
束が気にしているのは、龍聖の専用機“斑鳩”のコアであるヒナの事である。幾度も束はコアネットワークを通して介入しようとしたが、入ることが出来なかったのである。束からすれば反抗期であると考えていたのだが、何かが引っかかっていたのである。
「コア自体が私を拒絶して独自で動こうとしているのは構わない………でもね、それが危険性を含まれたモノなら話は別。だって、私は全てコアの母だからね」
束は自分に言い聞かせる様に呟くのであった。
龍聖達はビーチを満喫していた。だが、龍聖自身は何か寂しい気持ちを抱いていた。それはなぜか。答えは簡単。真姫が傍にいないからである。
「去年はこの時期に家族旅行をしてたっけ………今年はどうなるのかな………」
龍聖は砂辺にブルーシートを敷き黄昏ていたのである。すると、そんな龍聖の傍に誰かが近づいてくる。
「黒崎」
「織斑………先生………ッ⁉」
龍聖に近づいて来たのは千冬であった。その千冬も海を満喫する為、黒のビキニを身に着けているのだが………大人のエロさを醸し出す千冬に黒のビキニをドッキングさせると言う事は………誰も勝つことが出来ない。
「黒崎君は、海を楽しんでいますか?」
「どう……ですかね………」
真耶も傍に寄り、海を楽しんでいるかと質問を投げられるが、龍聖自身、海を楽しみたいと言う気持ちになれなかったのである。
「まぁ、今はまだ子供のお前だ。今だからこそ楽しめる時に楽しんでおけ」
「そうですね。織斑先生の言う通りです。確かに黒崎君はIS委員会の所属と言う事で頑張って来たんですから、今日ぐらいは楽しんでください」
そう言うと千冬と真耶は龍聖から離れて、ビーチボールをしている一夏たちの方へと向かっていくのであった。
「今日ぐらい楽しめか………それもそうだな」
龍聖は立ち上がり海の中へと入って行くのであった。
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次回予告
龍聖達は海を楽しんでいた。だが、裏では色々と動いている。そして、龍聖達を襲う危機とは⁉
次回、IS(インフィニット・ストラトス)~騎士の物語~第四十七話
「銀の福音」
悲しみの鐘を止めろ‼ 天照‼
IS学園でユニットを組んでほしいか
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やってほしい‼
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やる必要なし