IS(インフィニット・ストラトス)~騎士の物語 作:武御雷参型
龍聖の後方に一人の女性が立っていた。
「……これで終いだ。天照隊の隊長さんよ‼」
「何⁉ がぁぁぁぁ‼」
龍聖が振り返ると同時に縦に切り裂かれたのである。そして、シールドエネルギーが少ない状態で切られてしまった為、絶対防御が作動した。だが、それは役に立たなかった。何故か? それは、斑鳩のコアごと切り裂き、コアは真っ二つになってしまった。
≪(マス………ター………)≫
ヒナの声はそこで途切れてしまい、龍聖自身も意識を失い重力に身を任せるまま、海の中へと落ちて行った。
〈たいちょぉぉぉぉ‼〉
他の隊員達も集まり始めた頃、既に福音と龍聖を切り裂いた女性の姿は無かった。
「………すぐに隊長の捜索を‼」
『ハッ‼』
天照隊の隊員たちは血眼で龍聖の姿を探し出した。そして、小さな無人島の砂浜に俯せになって倒れている龍聖を発見した。しかし、息は虫の息であった。
「すぐに隊長を作戦本部にお連れするぞ‼」
副隊長である黒柳節子は指示を出し、全方位を気にしつつ、作戦本部が設置されている旅館へと帰投するのであった。
龍聖の撃墜の報は一夏たち、専用機持ちにも知らされていた。
〈各機に通達する………黒崎が……堕とされた〉
『⁉』
千冬からの報告に全員が驚きを隠せずにいた。
「そ……そんな………龍聖が………」
「堕とされたって………本当なんですか、千冬さん‼」
〈………ああ、本当だ。これより、作戦を一時、中断する。各機、帰投せよ‼〉
千冬の指示に全員が従う素振りを見せなかった。
「……織斑先生………いや、千冬姉。俺は行くぜ」
〈待て‼ これは命令だ‼ 全員、帰投せよ‼〉
「龍聖が、堕とされたって言うのに、オメオメと戻れるか‼」
〈馬鹿者‼ 二次被害を出してどうする‼ 勝手な行動は許さん‼〉
「だけど‼」
〈………織斑、二度も言わせるな〉
「⁉」
殺気の込められた言葉に一夏たちは成す術無く、帰投する事となった。
他にも知らされた者たちがいた。睦月と真、真姫である。
「何⁉ 黒崎隊長が堕とされただと⁉ それで、容体は‼」
〈………芳しくありません………呼吸も虫の息で………〉
「そうか………判った。私もすぐにそちらに向かう」
睦月はそう言うと受話器を一度、置くとある所に連絡を入れる。
「………西木野真さんをお願いします。緊急事態です。黒崎君が堕とされました」
睦月が連絡を入れたのは真であった。
「……院長、山本睦月さんからお電話です。内容は、黒崎君が堕とされたと……」
「な⁉ すぐに代わってくれ‼ 西木野真です。睦月さん、それは本当なのですか⁉」
〈ええ、本当です。私も先ほど、聞かされたので驚きを隠せません。私はすぐにでも黒崎隊長の元へと向かいます〉
「……解りました。私も医療スタッフを伴って向かいます。申し訳ありませんが、この事は真姫にも知らせます」
〈………それは賢明な判断ではありませんよ………〉
「ええ、解っています………でも、真姫には知らせなくてはいけません。黒崎君を婚約者にしたからには、それだけの覚悟をしてもらわなくてはいけませんから…………」
〈……………〉
電話越しに睦月が渋る様子が真には手に取るように解っていた。真自身も真姫に知らせるべきでは無いと頭の中では解っているが、いつかこう言う日が来る覚悟を真姫にもさせなくてはいけないと言う親心から、気持ちを鬼にしていたのである。
〈………解りました。お任せします〉
睦月は真の気持ちを察したのか、承諾をしてしまったのである。
「ありがとうございます。では、後程………」
真は受話器を置くと、携帯を取り出し音ノ木坂学園に連絡を入れた。
「……あっ、すみません。西木野真姫の父親の西木野真です。すぐに真姫を呼び出してください」
電話に出た音ノ木坂学園の教師も真の切羽詰まった声に押され、真姫を校内放送で職員室へ呼び出したのである。
『西木野真姫さん。西木野真姫さん。至急、職員室へ来なさい。ご家族からお電話が来ています』
「え?」
授業と授業の間の短い休み時間に校内放送で真姫は呼び出されたのである。同じクラスである小泉花陽と星空凛は怪訝な顔をして真姫の顔を見た。
「真姫ちゃん、何かやったかにゃ?」
「り、凛ちゃん……」
「何もしてないわよ‼ ちょっと、行って来るわ」
真姫は二人に声を掛け教室を後にし、職員室へと向かっていた。その際中、呼び出された事について考えていた。
「(パパもママも病院にいる筈だから、呼び出す事なんて無いのに………でも何だろう、この嫌な感覚は………待って、まさか⁉)龍聖‼」
真姫は一つの事に考え付いた。龍聖の身に何かがあったのではないかと言う事である。
「失礼します‼ 西木野真姫、来ました‼」
「西木野さん、こっちよ」
職員室では理事長である南のり子が電話に出ていたのである。
「パパ、もしかして龍聖に何かあったの⁉」
〈………察しが良いな。ああ、龍聖君が堕とされた〉
「え…………」
真姫は父親である真の言葉にショックを受け、その場に座り込んでしまう。
「西木野さん⁉」
のり子は座り込んだ真姫を支えた。
〈理事長、申し訳ありませんが真姫を早退させて下さい〉
「…………解りました。事の詳細は後程」
〈………本来は口に出す事は出来ない事なので、一度、確認してからでも構いませんか?〉
「解りました」
のり子は真の言葉を信じ、詳細は後程聞けると信じた。
「西木野さん、すぐに荷物を纏めて家に帰りなさい」
「解り………ました…………」
真姫の目には火が灯っていなかった。
〈真姫、家じゃなく校門で待っていなさい。私が迎えに行く〉
「……………解ったわ………パパ…………」
真姫は張りの無い声で真に返事をする。その後、理事長であるのり子に連れられて教室に戻り、簡単に荷物を纏めたのである。
「………二人とも。今日は練習に出れないから………」
「真姫ちゃん?」
さっきとは打って違った真姫の姿に二人は困惑していた。
「さ、西木野さん」
「はい………」
のり子に連れられて真姫は校門へと行くのであった。
「なんだろう、さっきの真姫ちゃんと別人みたい………」
「う、うん………どうしたんだろう…………」
凛と花陽は真姫の姿に驚きを隠せないまま授業を受ける事になるのだが、ただならぬ様子の真姫を心配するあまり授業に身が入らず何度も教師に注意を受ける事となった。
夕刻、旅館の一室に龍聖が横たわっていた。体中に管が通され、機械によって生命維持が為されていた。
「…………」
そんな姿を見ているのは真姫である。真と共に旅館にきた真姫だが、当然ながら最初は通される事を許されなかった。だが、その時に先に来ていた睦月が許可を出した為、中に通され横たわっている龍聖を見て真姫は絶句する。
対IS部隊は、一歩間違えれば死に直面する。真姫もそれを知っていたが、直面する事が無く、また、龍聖が死ぬ筈が無いと信じていた真姫にとっては信じられない姿であった。真姫は今に至るまで龍聖の体を抱きしめながら涙を流し、大声で泣き叫んでいた。
そして、漸く気持ちが落ち着き、今は龍聖の手を握り、龍聖の意識が戻って来る時を待っていたのである。
「龍聖………貴方、言ったじゃない………絶対に生きて帰るって………なのに、なんで死にそうなのよ………お願いだから、目を覚まして…………龍聖………」
真姫の瞳から涙が零れ、龍聖の手の甲に落ちた。
「………それで、福音の位置と第三の介入者の位置は」
「………現在、捜索中ですが………」
作戦本部には千冬と天照隊、睦月、教師たちが勢揃いしていた。
「失礼します‼」
「何事だ‼」
作戦本部に一人の教師が入って来た。
「先ほど、二人組の女が来ました」
「何⁉ 名は‼」
「はい、二人ともモノクローム・アバターと言っていました」
「なッ⁉」
この言葉に驚きを現したのは睦月であった。
「………山本支部局長、その様子だと、知っている様ですね………何者なのか説明して頂きたい」
「………………」
千冬は睦月を問いただした。そして、睦月は観念したかのように口を開いた。
「彼女たちは亡国機業に属する実行部隊の者達です」
「なんだと⁉ では、今回の一連の事件も‼」
「………いえ、今回の事件……いや、これまで起きた事件に彼女たちは関与していません」
「なぜ、それを言えるのですか‼ まさか………亡国機業と通じていたのですね‼」
真耶は睦月の言葉を聞き、詰め寄り胸倉を掴んだ。
「…………確かに私が言うと、貴女が言う様に通じていると考えても仕方がない………彼女たちは亡国機業に対するスパイなのです」
「どう言う……ことですか………」
睦月は事の真相を話した。
「彼女たちは………国際IS委員会アメリカ支部に所属する特殊作戦実行部隊の隊員で……極秘裏に亡国機業に入り、情報を逐一アメリカ支部並びに各支部に流していたのですが………ある時を境にそれが無くなりました」
「まさか、裏切ったのでは‼」
「………」
睦月は首を横に振った。
「最初は私たちもそう考えました………ですが、一通のデータが流れて来たんです」
睦月はそう言うとタブレットを操作し、一枚の写真を映し出した。
「これって……………」
「私……だと……⁉」
タブレットに映し出されていたのは、千冬を幼くした一人の少女であった。
『マスター、マスター‼』
「…ここ……は………」
龍聖は一面真っ白な空間に横たわっていた。
『漸く起きたんですね、マスター‼』
「ヒナ………俺は確か………ッ‼」
龍聖はなぜ自分がここに居るのかを思い出した。
「……そうだ……俺は何者かに斬られて………ハッ‼ ヒナ‼ 斑鳩の状態は‼」
『…………』
ヒナは首を横に振り、口を開く。
『マスター、良く聞いてください………斑鳩はダメージレベルGで、完全修復不可能な状態にあります……また、コア自体も二つに分かれてしまいました』
「ヒナ⁉ お前、身体が…………」
龍聖は漸く気付いたのである。ヒナの左半分が無い事に。
『マスター、私はこれで良かったんです………物はいつか消滅する。私が今、その状態になっているのです………ですが、安心して下さい………私はこんな風になっていますが………絶対に―――』
ヒナはその言葉を最後に消滅してしまった。
「ヒ、ヒナァァァァァァァァァァァァァァ‼」
龍聖はヒナが消滅した事に深い悲しみを負ってしまう。
その時、一人の人物に龍聖が遭遇する。
「貴方は力をなぜ欲するのですか?」
「え………?」
龍聖は声がする方に顔を向けると、そこには銀髪の少女が立っていた。
「もう一度聞きます。貴方はなぜ力を欲するのですか?」
「俺は…………」
少女の声は年齢にそぐわない凛としたものがあった。まさに歴戦の戦闘を通じて得た者が至る声であった。
少女の問いに龍聖は答える事が出来なかった。なぜ自分は力を欲するのか、それが解らなくなっていたのである。
「………斑鳩は僕が考えて作った機体です」
「なに? それはどういう事だ‼」
少女の言葉に龍聖は驚いた。斑鳩は黒崎重工と国際IS委員会日本支部IS研究所が雛型を作り、そこにコアを入れた事によって完成された機体だった。だが、この少女は龍聖の前に現れなかった。
「………
「パラレル……まさか‼」
龍聖は気付いたのである。否、気付いてしまったのである。斑鳩がなぜ完成され、名前までもが最初からあったのかを。
「もしかして‼」
「はい、僕はコアの中から貴方の事をずっと見ていました。しかし、ヒナと言う人格が在る所為で、僕は表に出る事が出来ませんでした。ですが、コアが分裂した事によって、僕は貴方とあいまみえる事が出来ました。そして、僕は貴方に聞きたい。なぜ、力を欲するのかを………」
少女の目には確かな決意の様なものがあった。
「俺は………」
「貴方はなんで斑鳩を使っていたんですか?」
「……………」
龍聖は考えた。なぜ今まで斑鳩を使って来たのかを。その時、真姫の涙する姿を感じ取った。そして、龍聖は一つの答えに辿り着く事になる。
「俺は……護りたい‼ 真姫を含め、俺と出会った人を‼ 全員を護れる事は出来なくとも、自分の大切な人だけは護りたい‼」
「………やはり、斑鳩を使うとこうなってしまう
「何を…うおっ⁉」
龍聖は少女に問い質そうとした瞬間、光に包まれゆっくりと目を開けると、そこには龍聖達がいる世界とは異なった世界が広がっていた。
「これは………⁉」
龍聖が辺りを見回していると、全長10mを少し超えた斑鳩があった。
「い、斑鳩⁉ いや、鵲が……でも、何かが違う」
「気付きましたか? そうです。あの斑鳩は唯の斑鳩ではありません。斑鳩の最終進化系、その名も“マガツ・イカルガ”」
「マガツ………イカルガ………」
「そう、マガツ・イカルガ………一度、斑鳩はある戦いで大破させられてしまいました。しかし、心臓部であるコアユニットは破壊を免れた為、応急ではありますが鵲の機体を作り、予備パーツを使い組み上げた斑鳩と合体させたことで生まれた新たな斑鳩の形です」
少女は龍聖を見つめる。
「貴方は斑鳩…否、力をどう使うかと僕は聞きました。そして、貴方の答えは自分の大切な人だけは護りたい仰りました。その答えに偽りはありませんね?」
「ああ、俺は力を……大切な人だけに使いたい‼」
「………貴方は僕に似ている………良いでしょう。貴方の瞳を見た瞬間、僕と同じ心を持っていると感じました」
「何を言っているんだ?」
「今は解らなくても良いんです………いつかきっと、貴方も解る日が来ますから………そろそろ、時間の様ですね」
「ま、待ってくれ‼ 君の名を教えてくれ‼」
龍聖は消えかかっている少女に名前を尋ねた。
「そうでした。これはこれは、うっかりしていました。僕の名は――――――」
少女はそう言って消えて行ったのであった。
誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたら、どしどし送って下さい。
また、要望などがあれば、個人メッセージにてお願いします。
次回予告
漸く復活した龍聖だったが、コアが壊れてしまった斑鳩だったが、セカンドシフトしたことにより、新たな機体として生まれ変わった。
次回、インフィニット・ストラトス~騎士の物語~
第五十話
「覚醒」
覚醒せよ、龍聖‼
いつになったら、ラブライブ編に行けるのだろうか…………
IS学園でユニットを組んでほしいか
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やってほしい‼
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やる必要なし