「作者!」
錬と元康に樹、その他の仲間が集まっていた。
そして作者は俺が声を掛けると元康の後ろに隠れて、こちらを睨んでいた。
「な、なんだよ。その態度」
まるで俺が悪人みたいにみんなが俺を睨んでいる。
「本当に身に覚えが無いのか?」
元康が仁王立ちで俺に詰問してくる。
一体なんだってんだ。
「身に覚えってなんだよ……って、あー!」
元康の奴、龍刻の長針を装備していやがる。
「お前がスピンオフの主人公だったのか!」
「お義父さん……まさかこんな外道だったとは思いもしなかったのですぞ!」
「外道? 何のことだ?」
俺の返答に、謁見の間はまるで裁判所のような空気を醸し出した。
「して、盾の勇者の罪状は?」
「罪状? 何のことだ?」
「うぐ……ひぐ……盾の勇者様は突然、私の部屋に入ってきたかと思ったら無理やり押し倒してきて」
「は?」
「盾の勇者様は、「まだ俺の話は終わってないよな?な?」と言って私に迫り、無理やり続きを書かそうとして」
元康の後ろに居た作者が泣きながら俺を指差して弾劾する。
「私、怖くなって……叫び声を上げながら命からがら部屋を出て元康の作品を書いたんです」
「え?」
何のことだ?
昨日の晩、俺は作者に書かせた後はぐっすり眠らせて、そんなこと知らないぞ?
泣きじゃくる作者に困惑するしかない。
「何言ってんだ? 昨日、飯を食い終わった後は部屋で寝かせた筈だぞ」
「嘘を吐きやがって、じゃあなんで作者はこんなに泣いてるんだよ」
「何故お前が作者を庇ってるんだ? というかその龍刻の長針は何処で手に入れた」
「ああ、この前、一人で小説を書いてる作者とネカフェで出会ってな、しばらく話していると、作者が俺にプレゼントってこの龍刻の長針をくれたんだ」
「は?」
確かそれは作者がスピンオフの主人公に持たせると…
「作者! 俺、枕荒らし、寝込みにスピンオフの主人公の資格を全部盗まれた! 犯人を捕まえてくれ!!」
「黙れ!」
作者は俺の進言を無視して言い放った。
「嫌がる我に小説書きを強要するとは許されざる蛮行、主人公でなければ即刻処刑物だ!」
「……俺はやってない!」
しかし、この場にいる連中全てが俺を黒だと断定して話を進めている(真実だから仕方無い)。
ドッと自分の血が下がっていくのを感じる。
なんだコレ? 何だよコレ? 何なんだよコレ!?
何故俺はこんなにも罵倒されていなきゃいけないんだ?
パクパクと作者に目を向けると誰からも見られていないと踏んだのか、作者は俺に舌を出してあっかんベーっとする。
ここで俺は悟った。
そして元康を睨みつける。
腹の奥からどす黒い感情が噴出していくのを感じる。
「お前! まさか主人公の称号目当てで……!」
元康を指差し、俺はこんなに大きく声が出るのだと自分でもびっくりする音量で言葉を発した。
「はっ! 何を言ってるのですぞ!」
作者を俺から見せないように庇いながら元康は恭しく被害者を助けたヒーローをアピールする。
「ふざけんじゃねえ! どうせ最初から主人公の称号が目当てだったんだろ、スピンオフを作る為に打ち合わせしたんだ!」
……やってくれるじゃねえか。
そもそもだ。作者は俺の事をずっと盾としか呼ばないくせに、元康の事は名前で呼んでいる。
これが証拠でなくて何が証拠なんだ。
ラノベに主人公は一人だけで十分ってか?
「主人公になってまで仲間にそんな事をするなんてクズだな」
「そうですね。僕も同情の余地は無いと思います」
錬と樹が俺を断罪するのに躊躇いが無い。
そうか……コイツ等、最初からグルだったんだな。盾だから、弱いから、強くないから俺を足蹴にして、少しでも自分がスピンオフの主人公なれるように事を運びたい と、思ってたんだ。
――汚い。
何処までも卑怯で最低な連中なんだ。
考えれば最初からこの国の奴等も俺を信じようとすらしない。
知ったことか! なんでこんな連中を守ってやらなきゃいけない。
滅んじまえ! こんな世界。
「……いいぜ、もうどうでもいい。さっさと新しいスピンオフでも作れば良いだろ? で、新しい主人公でも作ってろ!」
主人公? ハ!
なんで主人公になってまでこんな気持ちにならなきゃいけないんだよ!
「都合が悪くなったら逃げるのか? 最低だな」
「そうですね。主人公の責務をちゃんと果たさず、本編ストーリーを無理やり進めようとは……」
「帰れ帰れ! こんなことする奴を主人公仲間にしてられないのですぞ!」
俺は錬、元康、樹を殺す意思をこめて睨みつけた。
本当は楽しい主人公ライフになるはずだったんだ。なのにコイツ等の所為で台無しだ。
「さあ! さっさとスピンオフを作れ!」
すると王様は腕を組んで唸った。
「こんな事をする主人公など即刻削除したい所だが、方法が無い。新しくスピンオフを作るには全てのストーリーが完結した時のみだと我が本能は語っておる」
「……な、んだって」
「そんな……」
「う、嘘だろ……」
今更になって三人の勇者様はうろたえてやがる。
元の世界に、帰る術が無い?
「このままじゃ帰れないだと!」
ふざけやがって!
「……で? 王様、俺に対する罰は何だよ?」
腕を振り回してから尋ねる。
「……今のところ、新参に対する希望の星として存在しておるから罪は無い。だが……既にお前の罪は読者に知れ渡っている。それが罰だ。」
「あーあー、ありがたいお言葉デスネー!」
「1ヵ月後の投稿には召集する。例え罪人でも貴様は本編の主人公なのだ。役目から逃れられん」
「分かってる! 俺は忙しいんでね。時間が惜しいんだよ!」
チャリ……。
あ、そうだった。念には念をと盾を持って置いたんだったな。
「ホラよ! これが欲しかったんだろ!」
最後に残った俺の全てである盾を取り出して元康の顔面に投げつけてやった。
「うわ! 何するのですぞ、お義父さん――!」
元康の罵倒が聞こえてくるが知ったことではない。
城を出ると道行く住民全てが俺の方を見てヒソヒソと内緒話をしている。
ホント、噂話の伝達が早いことで。
呆れて物も言えない。
もう、全てが醜く見えて仕方が無い。
こうして俺は主人公の座と盾……全てを失い、最悪の形で冒険の幕を閉じたのだった。