第五話
第五話
星那「お父様、ちなみにこの世界をどのぐらいご存知ですか?」
葵「どのぐらいとは?」
今は洛陽と荊州の中間地点ぐらいにいる。今は野営地を決めそこでたき火と途中の皮で釣ってきた魚、それに村でわずかに分けてもらったコメを炊飯で炊いている。ちなみに不可視結界、不認知結界を張り賊に襲われないように警戒は怠っていない。
葵「世界についてか?」
星那「そうです」
葵「そうだな」
単純に私が知っている三国志の世界とこちらの世界について他の違いといえば、
一つ有名武将、文官、王となる人物が全員女性ということ。
一つこの世界の距離感というものがおかしい。
一つこの時代紙というものは貴重でありほとんどが竹簡であったにもかかわらず紙が流通していること。
一つ人物関連だが生まれているはずの人物が生まれていない、もしくは実在せず、生まれていないはずの人物が生まれている。
葵「まぁこんなところか」
星那「さすがですね。私が知りうる情報も大体似てます。ただ一つだけ思うところがあります」
葵「なんだ?」
星那「時の進みが速いように感じます」
葵「・・・・やはり感じていたか」
私自身うすうすだが感じていた。若干ではあるがすでに頭に黄巾をまいた賊が出現したという情報が洛陽をめぐっていた。まだ肥大化していないがこのままいけば遅くて十年以内、早ければ五年以内に黄巾の乱が本格的になる。
ここでなぜ時の進みが速いかというとどんなに頑張っても華琳の年齢が三十代に届くことはない。正史での黄巾の乱は184年。ざっと計算して曹操が30の時である。だが、華琳はその半分ぐらいである。
星那「お父様、これは翼と話してみないとわからないのですがこの世界は正史ではないのではないのでしょうか?」
葵「並行世界だと?」
星那「それも考えました。ですがパラレルワールドという可能性もあります」
あってないような世界。
並行世界とパラレルワールドの差というのは並行世界というのはそれが一個体として確立されているというものだ。つまり形として完成しており、消滅という可能性は例外を除く(惑星の消滅などがないかぎり)がほぼ100%ない。
一方のパラレルワールドというのはいわば蜃気楼みたいなものだ。形があいまいで、それを一個体として呼ぶにはもろい。
葵「可能性としてはあるな」
否定できないな。この世界はあまりにも都合がよすぎる。何かのために用意されたかのように。何かを取り込むか、入れるためにあるといっても過言ではない。
葵「ともあれまずは荊州だ。その時になって集めるより前もって準備をしておく方がいい」
星那「はい。ではおやすみなさい」
葵「どうしてもそこなのか?」
星那「ええ。ここのほうが落ち着いて・・・・ねれ・・・・・・」
そういうと星那は目をつむり眠りについた。それにそっと頭をなでる。
葵「よき夢を」
そういい水を口に含みそっと夜を開けるのを待った。
あれから三日後無事荊州の水鏡塾にたどり着いた。
葵「あれか。すごい石階段だな」
一見すれば神社の石段だといわれてもおかしくない。そしてその執着に見える門もそれを彷彿させる造りであった。
星那「『水鏡塾』。ここに翼がいるのですか」
石段を登り続け数分。途中で星那がギブしてきたため、背負いたどり着いた。
星那(やはりお父様の背中は大きく安心します)
葵「さて、着いたぞ。すみません! 誰かいらっしゃいますか!」
門前で大声をあげ呼ぶ。ノックでもすればいいのかと思うがこの時代にそのような習慣はない。
星那「では作ってしまえばいいのでは?」
葵「さらっと心を読まないでくれ。あとどういう意味だ?」
星那「無ければ作ればいい。よくお父様が言っていたではないですか」
あぁ、なるほど。となると方法は・・・・・マナー本みたいなものを出すか。題名は『子供でもできる習慣』という題名で初心者編から上級者編ぐらいでいいか。
星那「あ、誰か来ましたよ」
天女のような髪型に衣を着た女性。
???「えっと、あなた方はどなた様でしょうか?」
葵「失礼いたしました。私はあるものの使いで文官を探しておりまして。我名は夏候覇と申します」
星那「同じく司馬懿と申します」
???「夏候覇さまに・・・・司馬懿殿!?」
その言葉に女性はかなり驚いていた。どちらかというと司馬懿である星那にだ。
水「失礼しました。私はここで塾をしております水鏡ともうします」
ほぉ彼女が。
水「立ち話もなんですからどうぞ中へ」
中へ入り渡り廊下を歩いていると見知った顔を見た。
水「あぁ彼女は徐庶。この塾で一番の才を持ったものです」
葵「彼女がですか? まだ幼く見えますが」
水「そういえば司馬懿殿だってそうではありませんか」
葵「確かに」
そして、
葵「〈久しぶりだな翼〉」
翼「〈はい。お久しぶりです父〉」
水「それではこちらへ」
軽く翼と言葉を交わしたのち部屋へ案内される。
そしてお茶が用意され、話が始まる。
水「さて、文官が欲しいとおっしゃられてましたが陳留はそれほどまでに不足しているのですか?」
葵「いえ、不足はしておりません。ただ」
SIDE水鏡
覇「いえ、不足はしておりません。ただ」
夏候覇殿が言うには陳留の文官の上層部はそろそろいい年齢を向かわれたものたちが多い。なら時代というか次を担うものを今のうちに捜し教育させるべきだと考えているらしい。
水「それで我塾を?」
覇「はい。それに文官兼軍師になりうるものを探しておりまして」
軍師? 賊討伐のためかしら。最近黄巾をかぶった賊が蔓延るという件が増えてきている。何やら統率者がいるみたいだがあまりにも大陸全土に蔓延しているため模倣犯ではないかという噂もある。
覇「想像されてるとおりです。陳留でも最近増え増加傾向にある。なら、一点で攻撃するより複数展開し守るのが上策だと思い軍師、将を探しておりまして」
水「それだけではありませんね。おそらくあちこちを見て回って情勢を探っているのでは?」
覇「然り。そのためこの子も連れてきております」
懿「私の主な役目は記録です。観察眼を採用されこれをまとめどのような傾向にあるかを探り、対策せよと」
なるほどね。つまり現在の陳留は司馬懿殿を含め片手で数えられるかどうかきわどい数の軍師しかいない。ならここで増強をし強化すべきと考えたのね。
水「分かりました。この世のためになるのであれば。なら生徒をお呼びいたしますので」
そういい部屋を経ちあの子たちがいる部屋に向かった。
水「朱里、雛里、翼。ちょっと来てくれるかしら」
朱「はい? わかりました」
朱里は読んでいた本をしまい椅子から立ち上がり、
雛「?」
翼「では行くか」
雛里と翼は将棋をやめ朱里同様に立ち上がる。
朱「先生、いったいその方々は何しに来られたのですか?」
水「登用みたいよ」
雛「あわわわ登用ですか!?」
翼「先を見据えた者か、はたまた今だけしか見ない愚者か」
て、手厳しいわねこの子。
その後夏候覇殿がおいでになられる場所につくと、翼が、
翼「久しいな星那」
星那「お久しぶりですね。翼」
朱「はわ! 翼ちゃんとそちらの方はお知り合いなのですか!?」
雛「あわわ」
翼「あぁ朱里と雛里は知らなかったか。こちらは司馬懿殿。以前水鏡先生と共に洛陽に赴いた時に市場でたまたま出会ってな。そこでいろいろと学について語り合った中で」
あの時ね。でもそれでたまたまにしてもかの有名な司馬懿と話せるとはね。
朱「あ、あの水鏡先生。こちらの方は?」
雛「女性は司馬懿殿とわかりましたけど」
覇「これは失礼しました。私の名は夏候覇。曹家に仕える夏候家の長男です」
その言葉を聞いて二人は驚いていた。まぁそうでしょうね。曹家の麒麟児と名高き曹孟徳と肩を並べ華北では有名な夏候の鬼才。
水「あちらも自己紹介をしたのだから、あなたたちも自己紹介をしなさい」
朱「ひゃひゃい! わ、わたしの名は性は諸葛、名は亮、あ、字は孔明でしゅ・・・ひ、ひたひゃ・・・・」
雛「わ、わわわたしの名は性は鳳、名は統、字は、士元、よよよよよよりょしゅくおねがいひまひゅ!」
葵「お、落ち着いて自己紹介した方が・・・・(かみかみだな)」
翼「性は徐、名は庶、字は元直と申します」
相変わらず冷静な子ね。
水「それで夏候覇殿。あなたのお眼鏡にかなうものはいましたか?」
覇「えぇ。ですが最終的には彼女たちの意向を聞いてから判断したいかと」
あら、結構いい加減というべきなのか個人を尊重するというか。どちらにしても珍しい方ね。
すると、私は予想外な者からの一言に驚いた。
翼「なら私は彼のものについていくとしましょう」
水・朱・雛「「「え!?」」」
翼「何を驚いているんですか?」
水「い、いえ、あなたならだれにも就かず、むしろ自ら天に自らのあり方を訴えるかと思ってたのだけれど」
翼「私は君主の器ではありませんよ。それにこの才を使いこなせるなら使いこなせてみろ! とでも言いたいですが(父なら可能というか、もうできることが目に見えてますけど)」
その言葉に私は唖然とした。まさかこの子自ら志願するなんて。
朱「あ、あの、夏候覇さんはこの先どうなると思いますか?」
恐る恐るという感じで朱里がそう告げる。これは私も聞きたい。まぁ大体の者、官職についてるものは漢王朝の存続を告げるだろうけど。でも私の目ではもはやといったところだ。
覇「それを聞いてどうする?」
朱「あなたという人物を判断したいと思います」
しっかりとした目で見つめる。その瞳の奥で何を考えているのかしら。
覇「ふむ。いま黄巾の賊があちこちで蔓延っているのは知っていますね」
雛「はい・・・・力のない村々を襲い略奪の限りを尽くしているとか」
葵「然り。それ丕ずれ大きく肥大し、いずれ大きな戦が起こるでしょう」
これはだれの目にも見える。何しろ黄巾はもともと農民、それが今の王朝に不満を抱き武器を取り賊と化したのだ。
葵「それはいわば民の王朝への不満の証。そして今の王朝はその乱を鎮める力はなく各諸侯に討伐の令を下す。それすなわち?」
そういって二人を見る。
朱「まさか・・・・」
雛「あなたは王朝にはもう・・・・」
夏候覇、侮れないわね。まさか私と同じところを見ているなんて。私の考えはいずれ漢王朝は倒れ、宦官に前漢の終焉みたいに新たな国がつくられる。と考えてる。何進、袁家などに抑えられるのが目に見えている。
覇「漢王朝は倒れおそらくだが群雄割拠の時代が来る。私はそう見ている」
水「群雄割拠!?」
彼の考えとは途中まで同じだけど彼の考えのその後は乱世に突入するというものだ。そんな馬鹿な・・・・。
覇「水鏡殿。何進や袁家ではいまの時代は抑えられまい。彼らもまた漢王朝の威光にすがる宦官だ。なら結末は見えている。なら己が野心を燃やすものたちが次の王朝を作る。それまでは戦が続くだろう」
朱「力のない民をどうするおつもりですか」
覇「知るか」
朱「なっ!?」
覇「知るかというのはあれだったな。私とて無限の体力と無限の体を持っているわけではない。それに私は曹家に仕える者。なら手の届く範囲ではあるがそれを守り通そうと思う。だが全部が全部守れるわけではない」
それはそうだ。人の体は一つにして体力は有限。なら限界がある。ましてや仕える家がある以上守り通すものにも限界はある。
雛「そ、それではあなたは民を見捨てると?」
覇「阿呆か。曹家が治める領地の民は守り通す。いかなるものからもな。そして私は私が思う大切なものに対してはたとえ己が身を犠牲にしてでも守り通す。それが名家であろうが、十常侍あろうが、王朝であろうがな」
なんと強い意志。そして眼。
雛「で、ではあなたは何を目標にして戦うのですか!?」
覇「ふむ。ある思想家がこういった皆が笑って暮らせる世を作りたいと。これをどう思う?」
素晴らしい。でも乱世で掲げるなら無謀ともとらえられる。でも、
朱「そんな夢があってもいいと思います」
雛「はい。乱世だからこそ掲げても」
覇「私はそんな幻想は掲げられたくもないし、掲げたくもない」
なぜ? どうして? 疑問が尽きない答えだった。皆が笑って暮らせる。
覇「平穏な世界にも犯罪は起こる。そんな犯罪者の笑顔がだれが見たいと思う。被害者の顔が遺族が笑っていたら戦慄する」
ま、まぁそうね。
雛「ならあなたは何を掲げるんですか?」
覇「皆が普通に暮らせる世界だ」
朱「ふつう?」
覇「人間には喜怒哀楽という感情がある。喜び、怒り、哀しみ、楽しむ。人が死ねば哀しみ涙を流し、いやなことがあれば怒れ、楽しいことがあれば喜べる。そんな普通があふれる世界があればいいと思う。目標としている壁もちょっと努力すれば越えられる程度の壁があってもいいな」
その顔はとても楽しそうだった。
朱「でもそんなの「変でしょうか?」司馬懿さん?」
その問いに答えたのは司馬懿殿だった。
懿「今人が死んでも悲しめる余裕がありますか? 楽しいことがあっても喜べる余裕がありますか? ましてや乱世ならなおのこと」
翼「なるほど。乱世になれば憎み、怒り、絶望しという負の連鎖が連なる。余裕という時間もない。常に死の恐怖が周りに付きまとう。そこに普通などはない」
覇「そういうことだ。私はただ民に普通に暮らしてほしい」
朱「それでもわたしは理解できません。なのでわたしはあなたにはついていけません」
そういうと朱里は部屋を後にした。でも雛里はまだ悩んでいるようで椅子に座り下向きにうつむき考えていた。
覇「さて、では徐庶殿よ「ま、まってくだしゃい」ん?」
声をあげたのは意外にも雛里だった。
覇「どうかしたか鳳統殿」
雛「え、えっと、その・・・・朱里ちゃんの言うようにわ、わたしも理解できません。で、でもどこかで納得できる部分があるんです」
覇「それで」
雛「あ、あなたの言うように笑ってばかりが人じゃないと思います。泣いたり、笑ったり、けんかしたりするのか人間だと思います。だ、だからあなたの作る世界をわ、私も見てみたいでしゅ! ・・・・あ、あわわ、かんじゃった・・・」
意外ね。いつも翼や朱里にべったりだったこの子がそんなことを言うなんて。
水「いいの? それだと朱里と離ればなれになるわよ?」
雛「わ、わたしはまだ未熟で弱いです。で、でも朱里ちゃんは私とは比べられないぐらい強いです。わ、わたしがいても足手まといになるだけで・・・・その・・・・」
彼女はどこか負のほうに志向が行く。それが彼女の悪い癖でもある。雛里自身よい才を持ち、よい思考能力を持っている。
覇「鳳統殿。あなたはあなたが思っている以上才があると私は思が」
雛「ふぇ?」
若干涙目だった雛里が顔を上げ彼を見る。
覇「あなたが思う才というのはどれほどのものなのか? 試したことはおありか?」
雛「え? い、いえまだ」
覇「なら試さないと際の有無はわからないと思うが」
雛「試しても失敗するし、評価もされたいと思いましゅ・・・」
覇「なら評価するにはまだ早いと思う。試し、失敗し、経験を積み、学習をし、それを踏まえ再度行い成功したらいい」
それを聞き雛里の目が一段と輝きを増したように感じた。
覇「確かに孔明殿を必要とする者がいる。でもあなたを必要とする者もいる。それは事実です」
雛里は顔をあげ、
雛「わ、私の真名は雛里といいます! あなたのためにこの才お使いくだしゃい!」
その後、彼らと雛里、翼は荷づくりを終わらせ、
雛「そ、それで行ってまいります」
翼「長い間世話になりました」
そういい雛里は笑顔で、翼は礼をした。
朱「いっちゃうんだね、雛里ちゃん」
雛「うん。朱里ちゃん。わたしもっと世界のこと知りたい。そしていつか朱里ちゃんに追いついて追い越すよ!」
朱「うん! わたしもわたしが仕えるべき人に仕えて頑張るよ!」
固い握手を交わし、二人は手を離した。
朱「またね雛里ちゃん!」
雛「うん。またね朱里ちゃん!」
笑顔で去ろうとしたところに、
翼「ふむ。朱里は私に対してまたねとは言ってくれないのか」
朱「はわわわっ! そ、そんなことないよ翼ちゃん!」
翼「そうかそうか。私は親友ではないのか。戦場でお前の姿を見たら真っ先にお仕置きしに行こう。翼式お仕置きで」
朱・雛「「はわわわわわ(あわわわわわ)あ、あれはなしだよ!!!!」」
うん。あれはなしだと思う。つまみ食いをしたお説教にお鍋(中華鍋)を使うのは。
覇「それでは突然失礼して申し訳ありませんでした」
水「いえ、それでは二人をよろしくお願いします」
覇「はい。お任せください」
そういい彼らは門を下り階段を下りて行った。
SIDEOut
星那「それにしても本当によかったのですか雛里?」
あの後私たちも真名を交換し合い、互いを真名で呼ぶことにした。
雛「大丈夫です。わたしも独り立ちしないといけなかったので」
翼「私についてきてるのに?」
雛「あ、あわわわわっ」
翼「冗談だ。お前はいつか私を超えられる。いや、超えないといけないだろう。そうだろ? 鳳統士元?」
雛「! は、はい!」
葵「いい姉妹だな」
翼「それでは父は父だな」
雛「そうですね。葵さんはお父さんですね」
はははっ。あとで殺されそうだな。・・・・まてよ? 翼と星那がいるということはあっちでは誰かが送られるのでは? ・・・・まさかな。
というわけで鳳統ゲットだぜ!
え? 朱里もかっさらえばよかった? いやいやそんなことすれば蜀陣営がまずいって。
え? 翼と星那と葵がいるだけでチート。ウンそうだね。それは拙者も思ったよ。でも・・・・これぐらいしないとね。
まだまだ増強するぞ!