本当は、もっとこの回はあっさり終わるはずだったんです。
「・・・・・話はまとまったようだが。これからどうするんだ?」
向かい合ったラディッツと悟空に苛立ったようにピッコロが言った。ラディッツはスカウターに手をやった。
「・・・・聞いてるかは、分かりませんが。ベジータ、ナッパ、すいません。」
短い謝罪を口にすると、スカウターを外して、電源を切った。
そうして、次に悟空の折れていない方の手を取り、彼に肩を貸して立ち上がらせる。
「・・・・そうですね、ともかくはお前を病院にですね。」
「え、へへへへ。すまねえ。」
「いえ、折った張本人は私ですから。悟空、病院がどこか分かりますか?」
「ああ、それなら。」
そこで、四人の頭上で何かのジェット音が響いた。上を見ると、小型の飛行機がこちらへと旋回しているのが見えた。
降りて来たジェット機からはブルマとクリリン、そうして亀仙人が乗っていた。
「悟空!」
「孫君!」
が、三人はぼろぼろの悟空を担いだラディッツに警戒の姿勢を取る。
「・・・みなさん、安心してください。もう、カカロットを連れて行こうとは思っていませんよ!」
「そうだぞお!姉ちゃんが味方だ。」
「ほ、ほんとか?」
「でも、ピッコロまでいるぞ?」
「あなた、怖がられてますけど、何したんですか?」
「・・・・さあな。」
ブルマたちは、警戒の姿勢を取っていたが、けろりとした様子の悟空たちに感化されたのかそろりそろりと近寄って来た。
そうして、悟空たちは今まで何があったのか、これからやってくるベジータとナッパのこと、そうしてラディッツが悟空たちと共に戦う決意を固めたことを話した。
「そ、そうか!それなら心強いな!」
「ベジータに比べれば、私が心強いなんて、口に出すのも烏滸がましいですよ。ですが、まあ、カカロットにも伸びしろはある。いえ、サイヤ人は戦闘において限界は恐らくないとは思いますが。死ぬ気で鍛えれば、何とかなるかもしれません。」
深くため息を吐いたラディッツに、クリリンと亀仙人が引きつった顔をする。ピッコロと悟空の二人を相手取ってけろりとしているラディッツの話は実感を持って伝わったのだ。
「ともかくは、カカロットを病院に連れて行かなければ。」
「その必要はない。」
唐突に聞こえて来たしわがれた声に、その場にいた全員が視線を向けた。
そこには、年老いたナメック星人の姿があった。
「・・・・ピッコロ、あなたの父親か何かですか?」
「その口、今すぐにもでも縫い付けてやろうか?」
「ちげえぞ、姉ちゃん。あの人は、神様だ。そんで、ピッコロは、神様と分離したピッコロ大魔王の子どもだ。」
「それほぼ、実子と言っていいのでは?」
「うーん、言われてみれば、そうなんか?」
「おとうさん?」
「おい!めんどくせえ誤解を生むな!!」
怒り狂うピッコロに、悟空とラディッツはどこ吹く風というように、ふーんと唸っている。その足元には、明らかに怯えている悟飯の姿があった。そんなやり取りを神は少しだけ冷や汗をかきながら眺めた。
少なくとも、この場の中で誰よりも強いのはその女なのだ。空の上から、今までのやり取りを眺めていたとはいえ、警戒心は確かにあった。
「あ、あの、神様がいったいどんな用で?」
クリリンが恐る恐るにそう問われ、神はこほんと咳払いをした。
「・・・・ラディッツとやら、お主の話は聞かせてもらった。」
「おや、盗み聞きとは趣味が悪い、なんて私の言えた義理ではないですね。元より、神というシステムはそんなものでしょうし。」
「他の星にも、神様っているのか?」
ラディッツの脳裏には、今まで滅ぼした星々を守護した神々のことを思い浮かべたが、すぐにそれを打ち消した。
「・・・・ある程度、神というものを概念として作りだされる文化水準は必要ですがね。信仰というものを糧として、星の守護をするものたちのことですよ。」
「がい、ねん?」
「・・・・まあ、人がいれば大抵は神様もいると思っておけばいいですよ。」
「ふーん、そんなもんか。」
「あー、話の続きをしてもかまわんか?」
「あ、すまねえ!していいぞ。」
悟空の言葉に、神は改めて咳払いをした。
「・・・・これから、おぬしの仲間がこの星にやってくるそうだな。そうして、それは、想像が出来ぬほどの強者であるという。」
その言葉に、現状を思い出した面々は押し黙る。ラディッツは顔をしかめて、神を見た。
神は、まっすぐと悟空を見た。
「だが、悟空、おぬしがより強くなる方法を知っている。」
「ほ、ほんとか、神様!?」
「・・・・ああ。ただし、悟空よ。そのためには、おぬしが一度死なねばならん。」
「・・・・いま、なんて言いましたか?」
ぶわりと、冷気のような何かが、その場に広がった。誰もが、それに怯える様に肩を竦めた。誰から、それが広がっているのかなんて見なくても分かる。
「・・・・誰が、カカロットを殺すと?」
神は、その純然たる殺意に、ひるみそうになる。けれど、彼が重ねた年月が崩れ落ちることだけは留めた。
真っ黒な、底の見えない瞳が神をじっと見ている。
皮肉なことに、そこには悪意などなかった。だからこそ、神は悟る。目の前の生物は、殺し殺されることを日常としてきたものであるのだと。
殺すということに、目立った戸惑いはなく、敵だと認識したものに容赦はない。
口を開こうに寒気を覚える、自分にとっての死を前に動きはぎこちない。
クリリン達はおろか、ピッコロもまた冷や汗を垂らしてそれを見守る。
がん。
そんな音と共に、その凍てついた空気は霧散した。
ラディッツは自分の頭を殴った悟空を驚いたような顔で見つめた。
「姉ちゃん、神様のこと脅しちゃだめじゃねえか。」
「ですが、カカロット・・・・」
「話しは最後まで聞かなくちゃダメだろ?」
「・・・・そうですね。」
納得しきれていない様子であったが、聞く体勢に入る。それに、ラディッツ以外の存在がほっと息を吐く。
神は重くなっていた口を慌てて開いた。
そうして、悟空をこれから界王と呼ばれる存在の元に連れて行こうとしていることを話した。
「・・・・界王?」
「全宇宙の神の上に立つお方だ。そこでならば、悟空も強くなる可能性がある。」
「待て。それで何故、孫が死ななくてはならない?」
「界王さまがいるのは、あの世の果てなのだ。死人でなければ、行くことはできんのだ。」
「どうにかできないのか!?」
ラディッツの激昂したような声で、神は頭を振る。
「でもよ、姉ちゃん。ドラゴンボールで生き返るんだぞ?」
「生き返ったとしても、死ぬのは変わらないでしょうが!!」
「で、でもよお。死んで、その界王って人に修行してもらえば、強くなれるかもしれねんだろ?オラ、強くなりてえし。」
「それならば、私が・・・・」
そこでラディッツは言葉を止める。
自分が、弟に修行を付けて、どこまで伸ばしてやれるのか。
己の考えに嘲笑さえ、浮かんできそうだった。
確かにここではラディッツは強者であろう。けれど、ベジータやナッパを前にすれば、自分は所詮弱者に過ぎない。
強くしてやろうなんて烏滸がましい考えだ。
(・・・・・私は、カカロットを殺したいわけじゃない。)
例え、共に死んでやるという覚悟が決まったとしても、この子が生き延びる手段があるのならどんな手でも取ってやる。
けれど、カカロットが死ぬという事実を認めることだけは出来なかった
自分が死ぬことは、どうだっていい。
ラディッツはサイヤ人としてはエリート側でも、特殊な個体の多いフリーザ軍では所詮は弱者側だ。
いつだって、彼女の生活には死が付きまとい、そうしてあまりにも身近であった。ラディッツが何をしても生き延びようとしたのはカカロットとの再会を望んだが故だ。
弟の幸福を見届けた今は、自分がどうなろうとどうだっていい。
「・・・・・なら、私が界王の所に行きます。」
「いや、それは無理だ。界王様の元に行けるのは、それ相応のことをしたものだ。おぬしは、完璧な悪人ではない。だが、善人とも呼べん。おそらく、行くことは認められんだろう。」
その言葉に、ラディッツはぐっと歯を食いしばった。
己のなしたことを、正しいという気はないがそれでも納得はしていた。
奪い続ける生き方とは、己が強者であるという宣言でもあったのだ。けれど、その時だけが、心の底から己の在り方を後悔した。
己は、弟の被るものでさえも肩代わりしてやれない。
「安心しろ、姉ちゃん!ドラゴンボールはちゃんと生き返らせてくれっからよ!そこにいるクリリンもドラゴンボールで生き返ったからな。」
「・・・・ドラゴンボール?そうだ、ドラゴンボールでベジータたちがこの星に立ち入らなくすることは出来ないか?」
「・・・・ドラゴンボールは、神の力を超える願いは無理なのだ。その侵略者たちを遠ざけるほどのことが可能かどうか。」
「・・・・そうですか。」
沈んだ顔の姉に、悟空は言った。
「姉ちゃん、やっぱしオラ、界王って人の所に行くぞ。」
「お前!」
「そうしたら、勝てるかもしれねえし。オラ、戦いてんだ。」
ラディッツは、その言葉に顔をしかめる。
まるで、熱湯を飲まされたかのようなしかめっ面だ。
(・・・・止められないって、分かってるんだ。)
先ほど、ベジータと戦うことを認めさせたのと同じように。きっと、この弟は自分を振り切っていってしまうと分かっている。状況は違うけれど、父や母、一族の皆のように自分のことなど置いて行く。
強くなるため、そんな枕詞がぶら下がっていればなおさらに。
ラディッツとてサイヤ人だ。強くなれるならば、なんだってしてやるという呪いにも似た願いは理解できた。それに向かって、振り返りもせずに走り出したくなる感覚も分かっていた。
けれど、止めずにはいられなかった。それが最善だとしても、あっさりと認めることは出来なかった。
「・・・・分かった。」
重い沈黙を破ったラディッツの返答に、誰かがほっと息を吐く。
「・・・・ただし、死ぬ前にチチさんに一言いってからだ。」
「え?」
「・・・・オラ、殺されるかもしれねえ。」
「よかったじゃないですか。死ぬのが目的なんですから。」
「姉ちゃん、なんか辛らつになってねえか?」
「腹が据わったんですよ。辛らつに関しては、今機嫌が最悪だからです。」
悟空は現在、骨折に関しての応急処置をされ、筋斗雲に乗っていた。その隣を、悟空の補助をするためにラディッツが飛んでいる。
神は、一旦はチチの説得のために待ってくれと、神殿に帰ってもらうことになった、
悟飯は安全のために、ブルマたちの乗っていたジェット機にいる。そうして、ラディッツの後ろを不満顔のピッコロが飛んでいた。
「・・・・何故、俺まで付き合わなければならない。」
「良いでしょうが。もう、ここまで来たらあなたも一蓮托生です!地獄の底までついて来てもらいますよ?」
据わった目でラディッツはそう宣言すると、空虚な笑い声を上げた。
ラディッツの宣言に、もちろん悟空は反対した。
事情を話して、自分が死んで修行しに行くなんてチチに言った日には、どれだけ怒られるか考えたくなかった。けれど、ラディッツはそれを一喝した。
「あほですか!何も言わずに死ぬ方が何倍も怒られますし、酷いに決まってるでしょう!」
「でもよお・・・・」
「悟空、お前の育ての親であった悟飯さんが死んだとき、どんな気分でしたか?」
悟空のしょぼけた顔に、ラディッツはひどく静かな顔でそう問うた。悟空は、それに目を見開いた。目に見えて動揺した彼に向けて、けれど、視線は空を見上げたまま囁いた。
「これから、チチさんが味わう感覚がそれです。例え、何時か己の元に戻って来ると分かっていても、欠けてしまった部分はそれまで空っぽのままです。」
どんな感情を浮かべていいかわからないという様な、そんな途方に暮れたような顔を悟空はしていた。その顔を見て、ラディッツはため息を吐いた。
「・・・・私が言えた義理ではないですが。お前はもう少し喪失というものを学んだ方がいいですね。生き返るとしても、生き返るまで断絶されていることを、喪われてしまっている意味を、お前はもう少し考えた方がいい。」
黙り込んだ悟空を見て、ラディッツはそう呟いた。
「・・・・あの、喧嘩してるんですか?」
足元から聞こえた悟飯の言葉に、ラディッツは薄く微笑んだ。
それに、悟飯はなんだか安心する。悟飯は、なぜか、目の前の伯母を恐れようとは思わなかった。
先ほども、なんだか寒いほど怒っていたというのに、悟飯は心のどこかで目の前の女性は安全であると心から思っていた。
「いいや。姉弟喧嘩はもう終わってますよ。安心してください。ただ、もう、おうちに帰ろうかと言ってるんです?」
「おうち?今日、おばさん、お泊りですか?」
「さあ、分かりませんが。そうなるかもしれません。お前は、ブルマさんたちの飛行機に乗せてもらいなさい。」
「え、ええ!俺たちも行くんですか?」
「悟飯を送ったらそれで結構ですからお願いします。あなたたちも、これからのことを色々と決めたいでしょうから。」
その言葉に、クリリン達は顔を見合わせる。それを確認した後、ラディッツは身支度を整えたピッコロに顔を向けた。
「君も一緒に来てください。」
「・・・何故、俺まで。」
「あなたも修行相手をご所望では?いちいちあなたを探すのも面倒ですし。まあ、嫌がっても力づくで引きずっていきますが。」
ピッコロはそれに大きく舌打ちをしたが、反論の声はなかったため、応じる気なのだろうとラディッツは納得した。
そうして、悟空をどうやって運ぼうなんて考えながら、それでも頭の中は全く違うことを考えていた。
(・・・・チチという人は、どんな人だろうか。)
カカロットの話を聞くうえでは、どうも中々に気の強そうな人であるようだった。
それに、サイヤ人らしい好みかもしれないとくすりと微笑んだ。
(きっと、嫌われてしまうだろうなあ。)
仕方がないことだ。しょうがないことだ。例え、望んでなんていなかったとしても、彼女にとって自分は疫病神だ。
それでも、やっぱり、少しだけ弟と共に生きるその人と仲良くしてみたかったなんて、そんなことを思わずにはいられなかった。
・
・
・
・
・
「・・・・ここが、お前の家か。」
山間の中に、ぽつんとある家を目視したラディッツは悟空に言った。
「にてる・・・・」
「え、何がだ?」
「あ、いや。惑星ベジータ、私たちの故郷の家も、あんなふうにドーム型だったんだ。まあ、ともかく、降りるか。」
「はあ、チチなんていうかなあ。」
「安心しなさい。御咎めは私が背負いますから。」
ラディッツと悟空、そしてそれに伴ってピッコロとブルマたちが降り立った。ピッコロは騒ぎになるのを嫌って物陰に隠れた。
家を前にして、ラディッツがふうと息を吐く。ジェット機が降り立つと同時に、その音で気づいたのか家の中からこちらにやってくる物音がした。
「・・・誰だべ?」
がちゃりと扉が開いた先には、悟空と同い年頃の少女が飛び出してきた。彼女は、悟空の様子を見て、血相を変えた。
それに、ラディッツは大きく、目を見開いた。
(・・・・神様。)
一言、心の中で呟いた。
「悟空さ!?どうしたんだ、その怪我!」
「あー、ちょっと色々あってよ。」
「色々って。それと、悟空さ、この人誰だべ?」
「ああ、これ、俺の姉ちゃんだ。ラディッツっていうんだけどよ。宇宙からオラのことを訪ねて来たんだってよ。」
「宇宙!?それって、いったい・・・・」
そこで、彼女は、チチはラディッツの異変に気づいた。
ラディッツは、目を大きく見開いて、チチを凝視し、その瞳からは膨多の涙が流れ落ちていた。
「え、ええと、悟空さの姉さまなら、オラの義姉様か?ラディッツ、さん?でも、どうしたんだ?どっか、痛いのか?」
「っ、違う、ちがうんだ・・・・」
ラディッツはそれだけを言い残すと、崩れ落ちる様に跪いて顔を手で覆った。悟空は家の壁に凭れ掛かって、姉を不思議そうに見た。
(・・・・・神様。)
ラディッツは、頭上から聞こえて来る懐かしい声に、幾度も胸の中でそう呟いた。彼女が呟いたそれは、先ほどあったナメック星人ではない。
ただ、よくわからない、絶対的な何かを呼ぶための名だった。
(・・・・神様、どうして。これは、何に対する、罰ですか?)
そう思った。だって、弟の特別だという女の声は、あまりにも、母に似ていた。
人の記憶は、声から劣化していくのだという。
ラディッツにとって、もう、ひどく遠くなってしまった記憶の中でぼやけていた光景は、目の前の存在によって急に色を取り戻した。
口調だって、色んなことが違うのに、その声を聴くだけでまざまざと脳裏に思い出された。
ああ、そうだった。こんな声だった。こんな声で、私の名前を呼んでいた。
カカロットと、話しているのを聞けば、もうだめだった。それは、ラディッツの無くした帰りたいと願った場所が、戻ってきたようで。
目を覆えば、父さんと母さんが、目の前の居る様にさえ思った。
「かあさん・・・・・!」
震えるような、囁くような小さな声でラディッツは蹲り、顔を覆って涙を流した。
目の前でチチが困っていると分かっている。泣き止もうと、嗚咽を噛み殺そうとしたが、喉の奥にある重い塊に、酸欠のように息苦しくなる。
「大丈夫か?」
己の背に乗せられた温度と、その声に、ラディッツは等々我慢が出来なくなり、彼女に縋りつくように抱き付いた。そうして、わんわんと大泣きをし始めた。
チチは、それに困惑していたものの、その泣き方がなんだか子どものように見えてしまったせいか、それとも夫の姉だと紹介されたせいか、その背を摩る手を止めることが出来なかった。
・
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・
・
「・・・・・すいません。」
散々泣き喚いた後に、チチや悟空に促されて自宅に招かれた。ブルマたちは話し合わなくてはいけないと早々に悟飯を下ろして飛び去った。
チチは、ラディッツの前にお茶を出した。ラディッツは目を乱雑に擦りながら、それを見つめた。
「いや、そりゃあいんだけどな。悟空さ、いったいどうしたんだ、その怪我は?」
「いやあ、その・・・・」
悟空はちらりとラディッツを見た。それに、彼女は頷いた。
このままでは、覚悟が揺らいでしまいそうになる。その声を、聴いていると、嫌われようとした覚悟が折れてしまいそうになる。
その声に、その懐かしい声に、罵倒されてしまうと考えただけで、何もかもを放棄したくなった。けれど、仕方がない。
それは、きっと、罰だ。
静かに暮らしていた弟を、その血の業に引っ張り込んだ、自分に対しての罰なのだ。そう思えば、それだけで、少しだけ楽になる気がした。
「・・・・すいません、チチさん。それに関しては、私がお話します。」
「あ、ああ。」
ラディッツは気を引き締めて、チチに向かい合った。そうして、ゆっくりと口を開いた。
悟空の出生について、そうしてドラゴンボールについてを聞かれたことについて、それを狙ってやって来る存在について。
ラディッツは、カメハウスで話したことなどを、簡潔にチチに話した。話をしていくにつれて、チチの顔は青ざめていく。
「そ、それでどうなっちまうんだ?」
「・・・・この星の神が、カカロット。いえ、あなたにとっては、悟空でしたか。この子がより強くなるための修行先を紹介しています。」
「そっだあぶねえこと!ドラゴンボール、わたしちまえばいいじゃねえか!」
「・・・・おそらく、ドラゴンボールを渡しても、ただでは帰ってくれないでしょう。そうして、修行する先は神の上にいるという界王という方なのですが。その人に会うために、一度、死ななくてはいけないそうです。」
「はあ!?」
チチはおののくように叫ぶと、ぶんぶんと頭を振った。
「赦さねえからな!ご、悟空さが死ぬなんて!」
「でもよ、チチ。その、ドラゴンボールで生き返るし、な?」
「だめだ!だめだ!駄目に決まってる!なら、そいつらが帰るまでかくれるかにかすればいいでねえか!」
「・・・でもよ、チチ。オラ、戦いてえし、戦わなくちゃ、いけないんだよ。」
「なしてだ!」
チチに怒鳴られて、悟空は視線をうろうろする。
悟空の意思は変わらなかった。己よりも数倍強かった姉よりも、なお強いというベジータやナッパという同族に、興味とも言えるワクワクした感覚は抑えきれなかった。
それでも、チチに対して強く言えないのは、もちろん普段の関係性もある。けれど、それ以上に、ラディッツに先ほど言われたことが頭の中にあったのだ。
お前は、育ての親が死んだとき、どんな気分だった?
それを、チチが味わうと思うと、言うのには少しだけ戸惑いがあった。
今でも、覚えている。じいちゃんのぺったんこになった、動かなくなった姿を思い出した時の気持ち。一人で穴を掘り、じいちゃんを埋めた時の気持ち。
胸の奥が、くうくうと唸るようなあの感覚はお世辞にも気分のいいものではなかった。
悟空は、未だに、恋とかそう言ったものは分からない。
ただ、分かるのは、自分にとってチチと悟飯は特別なのだという意識だけだ。
出来れば、チチには、泣いてほしくなかった。怒っていてもらった方が数倍は気楽だ。
自分の故郷であったという場所は、すでにない。忘れてしまった場所だけれど、少しだけ思い出した男女の姿を思うと、胸の奥がくうくうという様な気がした。
「・・・チチ、さっき言ったけどな。オラの生まれた星、なくなっちまったんだって。」
それに、チチもさすがに悲しそうな、気づかわし気な顔をした。
「オラ、殆ど覚えてなかったんだけどな。姉ちゃんと会って、少しだけ、ほんとに少しだけ、オラの父ちゃんと母ちゃんのこと、思い出したんだ。故郷が、なくなるって、つれえよ。」
珍しく、なんだか、静かで湿った声をした悟空の声に、チチは黙り込んでしまう。
「やってくる奴らは、たぶん容赦ねえだろうし。地球だって、乗っ取られちまう。オラ、ここがなくなるなんて、嫌だ。悟飯と、チチ、オラの家が、なくなるのは嫌なんだ。」
だから、行かせてほしい。より、強く、負けないために、強くなるために。
珍しく、悟空が静かにチチにそう言った。ラディッツはそれを眺めた後に、ゆっくりと立ち上がった。そうして、外を指さした。
「・・・・すいません、チチさん。少しだけ、外で二人で話しませんか?」
「え?」
「少しだけです。少しだけ、あなたと話したいんです。私は、先に行っています。」
ラディッツはチチの返事も聞かずに、外に出て行ってしまう。チチは、ちらりと悟空を見た後に、恐る恐る、その後を追った。
「・・・・ありがとうございます。」
ラディッツは家の前で、空を仰ぎ見ながら佇んでいた。チチは、恐る恐るその背後に立った。そうすると、ラディッツは少しだけ弾んだ声を出した。
「なにがだ?」
「いえ、話してくれない可能性も考えていたので。」
「・・・話ってなんだ?」
つっけんどんになるのも、赦してほしかった。チチからすれば、ラディッツは義姉とはいえ、厄介事を運んできた疫病神なのだ。
「・・・・チチさん。これを。」
ラディッツは振り返り、チチに何かの小さな端末を見せた。
「なんだ、これ?」
「私の宇宙船のコントローラーです。」
「なして、こんなもんオラに見せるだ?」
「いいですか、これの使い方を教えるので、もしも、私やカカロットが負けた場合、悟飯を連れて宇宙に逃げてください。」
「え?」
チチは、ラディッツの言いたいことが一瞬理解できなかった。それでも、ラディッツは構うことなく続けた。
「きっと、カカロットは止まらないでしょう。勝てるのか、本当に分からないのです。だから、もしもの時は、悟飯を連れて宇宙に逃げてください。宇宙船の行き先に、移民の多い大型の星を設定しておきます。そこで、市民権を買って、まぎれて生きることは可能だと思います。お金に関しては、私の口座から出る様にしておきますから。これでも、溜め込んでいるんですよ?」
「どーして、そんなこと二人で話すんだ?」
「いいですか、私の用意できる宇宙船はこれだけです。ここは、宇宙での端っこで、ある程度文明が整った星は遠すぎる。だから、誰にもばれない様にあなただけに話しておきたかった。悟空や悟飯は、うっかり話してしまう可能性があるから。だから、いいですね。これは、あなたたちを逃がすためのものだ。しっかり聞いておいてほしいんです。」
「な、なら、もう、悟空さもつれて逃げればいいでねえか!」
「・・・・・それは、無理です。」
「どうしてだ!?」
「私も、最初、カカロットに一緒に逃げようと言いました。けれど、あの子は戦うことを選びました。」
「な、なしてそれなら!」
「その選択が、私には、どうしても嬉しかった。あの言葉で、私は漸く、あの子が私の弟なのだと。誇り高い、サイヤ人の末なのだと、嬉しかった・・・・!」
その言葉に、チチの怒りが爆発した。
「そげなことで悟空さがしなねばならないっていうのか!?悟空さがサイヤ人だからなんてかんけえねえべ!悟空さは地球人だ!あんたなんか、地球にこなきゃよかったんだ!」
強い口調で吐き捨てた後に、チチは、さすがに言いすぎた後悔をした。けれど、それでも、それ以上に苛立ちが強かった。
チチにとっては、多くのことが突然過ぎた。
旧友に会いに行く夫と息子が帰ってくれば、悟空は重傷で、おまけに地球を侵略してくる存在を迎え撃つために死んで修行しに行くなんて、わけのわからないことばかりだ。
チチは、地球が滅ぶなんて実感が湧かない。それ以上に、いや、妻として当たり前のように恋い焦がれた夫が死んでしまうことなんて許したくない。
死んでほしくない。例え、生き返るとしても、死んでほしいなんて思うものはいないはずだ。それに加えて、自分や悟飯までも危険な目に遭うかもしれない。
だからこそ、悟空がそんな目に遭う原因を作った、義姉でもあってもラディッツにふつふつと怒りが湧いて来た。
「ええ、でしょうね!会いになんて、来なければよかった!」
ラディッツは、チチの予想に反してやけに清々しい笑みを持って、空を見上げた。
そう言って、微笑んだラディッツにチチは黙り込んでしまう。
その声が、あまりにも、壊れる前の軋む音に似ていた。
チチは、チチにとって、その女は、悟空の姉というよりも、厄介事を運んできた存在というよりも、脳裏にありありと浮かぶのは幼子のように泣き叫ぶ姿だった。
己へと跪き、声を殺しながら泣く女の姿を、その声を、触れてしまった涙の温かさを、チチは知ってしまっている。
その姿を見ていると、チチには女がひどく弱いように思えた。
女は、なんだか、チチのことを、そうして悟飯や悟空のことを愛しいものを見るかのような目で見つめて来る。
優しい目だ、柔らかな視線だ、甘い瞳だ。
悪意を、敵意を、持つよりも前に、チチはラディッツの幼子のような嘆きを、弱さを、そうして己たちへの好意を知ってしまった。
チチの中で膨らんだ、怒りや敵意が萎んでいく。
嫌いになろうと思った。嫌ってしまおうと思った。けれど、目の前の存在の無防備な穏やかさを見ていると、それもしぼんでしまう。嫌いに、なれなかった。
それを察しているのか、ラディッツはチチの方を見ることも無く、呟いた。
「あの子が、この星に送られて。父と母に、迎えに行ってやれと約束しました。けれど、私は弱かった。あまりにも、弱かった。」
女は、笑う。どうしようもないという、諦めに満ち足りた笑みで、チチを見る。その声は、まるで弾む様な、劇の台詞のように朗々としていた。
「ヤクザ稼業ですからねえ。弱いあの子を抱えていれば、共倒れが関の山で。だから、ずっと、何時かを夢見ていました。どこかの星を滅ぼすために、揺り籠のような宇宙船で、夜空のような宇宙を眺めて、遠く、遠く、どこまでも夢を、見ていました。カカロットに会う夢を。でも、大人になって、体もある程度成長して、でも、私は怖かった。」
「怖い?」
「・・・・赤子のままこの星に送られたカカロットは、生きているだろうかと。蓋を開けて、真実を知るよりも、私は在りもしない夢を見続けることを選び続けてしまった。だから、罰だったんでしょうねえ。あの子は、私はおろか、父さんのことも、母さんのことも、覚えていなかった。」
薄情な弟だ。
ラディッツの声は、どこまでも明るい。どこまでも明るいから、ひどく寒々しい気分になる。
ラディッツは首を傾げて、踊る様にチチの方に体の向きを変えた。そうして、後ろ手を組んだ。
「察せられないわけじゃなかった。十数年です、十数年ですよ!生きていれば、変わるには十分な年月だ。私という存在が、それを害することを想像しないわけじゃなかった。」
それに、チチは、どうしてと言いたくなった。そこまで考えて、どうして放っておいてくれなかったのだと、そう言いたくなった。けれどラディッツの表情を、その顔を見ていれば、言われずともその理由が分かる気がした。
「それでも、会いたかった。約束を果たしたかった。一人ぼっちは寂しくて、たった一人の家族の、あの子に会いたかった。あの子が、どんなふうに生きているかを、知りたかった。不幸からすくい上げたかった、幸福を見届けたかった。でも、酷い奴ですよ!姉ちゃんの名前まで忘れてて、自分の、名前さえも忘れてて。」
後ろになっていくにつれ、声は震えていた。それでも、ラディッツは言葉を続けた。
「・・・・あの子が、戦うと言ってくれた時、嬉しくてたまらなかった。そう言った、あの子は、あんまりにも、父さんに似ていて。だから、ひどく、ほっとした。それでも、この子は、サイヤ人だって。私の、弟なんだって。嬉しくてたまらなかった。だから、止められなかった。」
ラディッツはそこで言葉を切り、チチにまた、微笑んだ。泣きながら、微笑んだ。
「会いになんて、こなければよかった。それでも、私は、ここに来てよかった。宙の果てで、微睡みのそこで、カカロットはどうしていると考えていました。それを、知ることが出来た。友がいて、師がいて、育ての親がいて。そうして、あの子は、父にとっての母のような存在を得ていた。それを、知ることが出来た。あの子が優しい人に会えたのだと、知ることが出来た。」
寂しくて、たまらないけれど。あの子は、ここで幸せだったと知ることが出来た。それだけが、それだけで、私の生は報われた。
女の微笑みは美しかった。どこか、破綻に満ちて、けれどどこまでも幸福そうなその微笑みは、なんだかひどく綺麗だと、チチは思った。
「ねえ、チチさん。きっと、あなたは私になんて会わなければよかったと思うでしょう。でも、私は、あなたに会えてよかったと思います。あの子が、あなたに会えてよかったと思いました。悟飯のこと、抱っこしました。重たくて、温かくて、服だって質の良いものでした。それを見て、安心したんです。ああ、この子たちは、きっと大事にされているんだろうって。優しい人に、愛してくれる人に、会えたんだって。嬉しかった!」
笑う、笑う、女は笑う。寂しそうだというのに、これ以上に幸福なことはないというように、笑った。
「・・・・あんたは、悟空さのこと、大事なのに。どうして、死んじまうのを認められたんだ?」
ラディッツに、チチはするりとそんなことが滑り出た。それにラディッツは顔を下に向けた。長い、髪の毛はラディッツの顔を覆ってしまう。
「・・・・私の一族は、傭兵のようなことをしていました。一族の者は、幼くとも戦闘に長け、私も十にも満たないころから戦場で生きて来ました。己の星を、恋しいと思ったことはありませんでした。けれど、母星がなくなり、唐突に帰るべき場所を喪ったあの日、ひどく、心細くなりました。帰る場所がなくなるって、思った以上に辛くて。私は、何もできなかった。星の滅びに、一族の滅亡に、何もできなかった。だから、あの子は、せめて、守れるならば守らせてやりたい。私のように、何も無くしてほしくない。」
あなたたちから、何も奪いたくない。
ラディッツは宇宙を漂って、行く果ても無い流浪の身に成り果てて、初めて、帰るべき場所が用意された幸福を知った。宙を漂うとは、まさしく、暗闇の中をさまようのにも似ていて。時折、故郷のことを思い出した。馴染んだ店、光景、昔なじみの同族たち。そんなものを思い出して、懐かしんで。
そうして、全ては失われたのだと、もう会えないのだと、どうしようもない喪失を知った。どれだけ懐かしみ、焦がれても、全ては失われたものを思う虚しさを知ってほしくなかった。
ラディッツは改めて、チチに向かい合った。
「・・・・チチさん、私の話はもう一つあるんです。カカロットがいない間、私は悟飯を鍛えようと思っています。」
「!そ、そんなこと赦さねえからな!?悟空さはともかく、悟飯がそんなことする必要ねえ!あの子はまだ、子どもだ!」
「もしも、宇宙に逃げる場合、あなたでは悟飯のことを守ることが出来ないからです。」
「オラが守ってやれば!」
チチがそう言おうとしたとき、少し離れた場所にいたラディッツがいつの間にか己の目の前にいた。そうして、その手はチチの首に絡みついていた。
「この程度が、避けられないのに?」
それにチチは口を噤んだ。ラディッツは、それにたたみかけるように言葉を続けた。
「私たちの一族は、悪行をなしました。幾つもの星を滅ぼし、そうして奪いました。あの子は、サイヤ人の子どもであると知られれば、怨みを抱えた者に襲われる。私が、今、出来るのは己の身、そうしてあなたの身を守るための力を付けさせてやることだ。」
チチは、何かを言おうとした。反論なら、いくらでも出て来そうだった。けれど、ラディッツの厳しい表情と、声音にまざまざと思い知られた。
己では、逃げた先でも息子を守る力がないのだ。
始めから、わけのわからないことだらけだ。
宇宙なんて、己の夫が異星人だなんて、チチにはピンとこない。全部嘘だと思って、目の前の存在なんて無視して、夫と息子の夕飯に意識を向けてしまいたい。
けれど、それをするには、あまりにも目の前の女の言葉も、表情も張りつめていた。
無視が出来なかった。
チチには、全てが分からなくても、その女から漏れ出た、自分たちに向けられる無念さだとか、後悔だとか、喜びだとか、情だとかを無視することは出来なかったのだ。
悟空の一族だというサイヤ人の話を聞いても、非難を向けようとは思わなかった。彼女の父親もけして褒められたことをしていたわけではないのだ。
戸惑いの中、それでも、目の前の女を信じたいと思ってしまう部分があった。
女は、心の底から、チチと悟空のことを祝福していて、息子のことを愛してくれていると察せられたからだ。
ラディッツは、ただ、真摯にチチに感謝していた。弟を、弟の息子を、愛してくれて、大事にしてくれて、出会ってくれてありがとうと。
ただ、ひどく遠い場所から旅をしてきた義姉を、どうしてもチチは嫌えなかった。
「・・・・サイヤ人の血は、戦うことへと駆り立てるでしょう。力の使い方を覚えなければ、辛い思いをするのはあの子だ。せめて、戦い方だけでも、いえ、強者からの逃げ方だけでも教えなくては。いつか、悟飯はサイヤ人の血に飲まれるでしょう。」
「あの子は、優しい子だ!」
「優しかろうと、力を持てばいつか誰かを傷つけます。」
ラディッツは悲しそうに、チチを見た。目を逸らすことのない、弱り切ったその眼はどこまでも真摯だった。
「・・・・この鎧の傷は、あの子が付けたものです。カカロットでも傷をつけるのは難しい代物ですよ?」
「そ、だなこと。」
「別に、あの子に戦うことを生業としてほしいわけではありません。ただ、使い方だけでも知ってほしいんです。私もカカロットも、それを教えられるか分からないんです。ベジータたちは容赦がない。負ければ、殺されるでしょう。」
「悟空、さもか?」
「・・・その時は、命に代えても、カカロットを生かします。無理にでも、宇宙船にねじ込みますよ。」
あなたたちのことだけは、私が生かして見せます。
硬く、決意に満ちた声に、チチは何でもいいから罵倒したくなった。
だから、叫んだ。嫌になって、叫んだ。
「・・・・オラ、どうすりゃいいんだ。」
「すいません。それの答えを、私は持っていませんが。どうか、怨むならば、私を恨んでください。」
途方に暮れた迷子のような、ひどく幼い表情をするラディッツに、チチはどんどん怒りをぶつける気が失せていく。
「あんたがもっと、嫌な奴なら、嫌って。ここで、無視しちまえたのに。」
チチは、ラディッツを嫌えなかった。無視できなかった。信じてみようかと思ってしまった。
ラディッツは、少なくとも、悟空と悟飯が大事で、死なせたくなくて、故郷を無くしてほしくなくて。
そうして、悟空に死んでほしくないのだと、それだけは分かった。
だから、目の前の存在を信じてみようと思った。
ラディッツは、チチの言葉に、申し訳なさそうに顔を下に向けた。
「・・・・すいません、あなたには、嫌われたくなくて。あなたは、カカロットの大事な人で。仲良くしたいなんて、今でも思ってしまっている。」
「そーいうところだよ。」
「え?」
チチはそう言って、くるりとラディッツに背を向けて、家の中に戻っていく。
分からないことだらけだ。けれど、ラディッツという義姉は信用できないわけではないことだけは分かった。
納得できないことも多くて、困惑していることも多くて。それでも、目の前の存在は、少なくとも信頼に敵いそうなことだけはわかった。
不安そうな顔で、チチはふうと息を吐いた。
はやくべジータたちに来てほしいのに終わらない。こういう描写を重ねてしまう人間なので、お許しください。