番外編になります。
感想、誤字報告ありがとうございます。いつも、励みになっています。
その少年は、幼いころからずっと弱者であった。
下級戦士に割り振られた折に、ただ、そう決まってしまった。彼は、生き残ってしまった。
庇護される期間を過ぎ、戦場で生き残り、ただ、生き残ってしまった。
特段、彼は強かったわけではない。それは、運がよかったとも、ただの偶然であるとも言えた。
ただ、事実は、彼が生き残ってしまっただけだ。
それでも、彼は、永遠と弱者なまま。
変わることなどありはしない。下級戦士は、下級戦士のまま。
使い捨てて、いつか、死にゆくだけの命。それが、サイヤ人の宿命だった。
少年は、いつか、と思っていた。いつか、自分の番も来る。けれど、そのままでい続ける気はなかった。
いつか、もっと、強く。誰にも蔑まれないほどに、強く。そう願っていた。
そう、願いはしても、変わることが叶わないのは、彼が一番分かっていた。それさえも、心の奥に押し込めて、目を逸らし続けた事実であった。
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「てめえが、ターレスか?」
「は?」
その日、少年は丁度、任務を終わらせて家に帰るところだった。メディカルシステムに入るほどではない傷を抱えて足を進めていた。
その時の少年の脳裏には、彼のたった一人の仲間と言える存在があった。
少年は、短気と言おうか、戦闘以外では少々短慮すぎる気のあるサイヤ人の中では賢しい部類に入っていた。そのためか、あまり、親しいと言える存在もいなかった。
(・・・・ラディッツの奴は、王子につけられてフリーザのところだったか。上級も面倒が多いな。)
少年は、ラディッツという存在のことをよく考えた。それ以外に、考えるほど見知った存在がいないということがある。
けれど、それと同時に、ラディッツは少年にとってどうしても気になる存在であったからだ。
(バーダックの餓鬼、なんだよな。あいつ。)
それは、少年が幾度も考えたことだった。
バーダック、バーダック、バーダック。
その名前は、少年が己が弱者であると自覚したときから、ずっとどんな人物であるか気になる存在だった。
普通、下級戦士は下級戦士のままだ。
戦闘力は、生まれた時から資質は変わることがないのが当たり前だった。けれど、そのバーダックという存在は、下級戦士にして成長を見せたのだ。
少年にとって、バーダックとはまさしく憧れだった。
もしかすれば、なれるかもしれない理想だった。
あってみたい、言葉を交わしてみたい、強くなる方法を聞いてみたい。
そんなことを思いはすれど、仲間意識はあっても仲良こよしなど鼻で笑うサイヤ人だ。
話しかけることも、未だ大人になり切れない彼には無理な話だった。
そんな時に会ったのが、ラディッツだった。
ターレスは、ラディッツのことが最初は好きではなかった。いや、いっそのこと妬ましかった。
将来が約束されたエリート候補であり、資質があると認められ、そうして、彼の憧れたバーダックを父とするラディッツ。
下級戦士としていつかは使い捨てられ、誰にも認められることも無く、すでに死んだ弱い男を父とする己。
妬ましかった。それを、表に出すことはなくとも。
だから、勝負を仕掛けたのだ。
なにか、何でもいいからターレスは示したかった。目の前の存在よりも、己が、何かを持っているのだと、ただ、示したかった。
もちろん、少年は負けてしまった。
惨めだった。惨めで、苦しくて、何よりも弱い己が腹立たしかった。
けれど、ラディッツは言ったのだ。負けたターレスに、助言をしたのだ。
何がしたいのかと思った。
少年は、てっきり、ラディッツはそのままターレスのことを無視すると思ったのだ。
弱い奴だと、馬鹿な奴だと、愚かな奴だと、そう思って、視界に入れられることも無く捨て置かれるのだと。
けれどラディッツは、嬉しそうに言ったのだ。
「君は、きっともっと強くなる。」
それを、哀れみだと、怒りを感じなかったのはひとえに、その瞳にあったのが、素直な希望であったからだ。
(・・・・ああ、こいつは信じているんだ。いや、そうだと、当たり前のように思っているんだ。)
ターレスは理解した。目の前の存在に、呆れかえった。
ターレスが己が父が如く強くなるのだと。
それに、それで、少年はラディッツを嫌えなくなってしまった。だって、そうじゃないか。
初めてだったのだ、ターレスという弱者を認知したのも、そうして期待をしたのだって。
ラディッツが、初めてだった。
期待して、強くなれるようにと組み手をしてくれたのは、ラディッツが初めてだったから。
だから、嫌えなかった。
自分は下級戦士で、相手はエリート候補で。
互いの間にあるのは、あまりに大きく、任務を共にすることだってなかったけれど。それでも、確かに、ターレスにとってラディッツは仲間であり、同族であったのだ。
妬んで、卑屈になるのは簡単だった。嫌わないという選択肢よりは、ずっと安易で楽だった。それから逃げなかったのは、負けたくなかったからだ。
何かは、分からない。けれど、このまま妬みに身を委ねれば、何かに負けてしまう気がしたから。
最初は、気になる存在であるバーダックとの関わりを持てないかと期待していなかったと言えば嘘になるが。
今では、もちろん、ラディッツという存在の在り方を気に入ってのことだった。
(あいつ、ほんとにバーダックの餓鬼なんだか不思議だぜ。)
ターレスは、実際にバーダックと会ったことはない。もちろん、遠目に見かけたことはありはしたが。
ラディッツに頼めば、話すことは出来ただろうが。それをわざわざ頼むのもどこか気恥ずかしい。
けれど、その日、いったい何のようなのか、ターレスの会いたいと思っていた男は、何の気まぐれか話しかけてきたのだ。
家の立ち並ぶ往来で、男は、ターレスによく似たそれはねめつける様にターレスを見ていた。
「だ、だったら何だよ。」
動揺が表に出てしまったのも仕方がないだろう。なんといっても、目の前の存在はターレスの憧れなのだ。そんな存在に話しかけられて動揺しない方がおかしい。
「・・・・ふん。」
バーダックは、じろりとターレスを睨んだ後に、くいっと指で行き先を示した。
「少し、面貸せ。」
「は?」
バーダックはターレスを振り返りもせずに、さっさと足を進めた。ターレスはひたすら戸惑った。
けれど、彼はゆっくりとバーダックを追いかける。
もしかすれば、何か、酷い目に遭うかもしれない。もしかすれば、厄介ごとに遭うかもしれない。
けれど、それ以上に、ターレスは心が湧きたっていた。
(・・・・みて、くれた。)
憧れが、なりたいと思う人が、強者が、大人が、己を見てくれた。それは、誰にも顧みられることも無く、冷酷にも、薄情にもなり切れない少年には魅力的で仕方がなかった。
バーダックに連れてこられたのは、人のいない訓練場であった。
そうして、ターレスがどんな目に遭ったかというと。簡単に言ってしまえば、ぼこぼこに伸されてしまった。
ターレスはすぐに気絶してしまった。
次に目を覚ましたのは、全身に冷たい感覚を覚えた時だった。
仰向けに倒れたターレスを、バーダックを水が入っていたらしい容器を片手に見下ろしていた。
「・・・・何だよ、よええじゃねえか。」
「あたり、まえだろ。」
理不尽ではあった。けれど、ターレスにはバーダックに手合せをしてもらえて、喜んでいる部分があった。
「ラディッツの奴がやけに熱心にかまうから、どれほどのもんか期待してたんだがな。」
「・・・・ラディッツが、言ってたからか。」
それに、ターレスの気持ちが沈んでいく。
この男がターレスに構うのは、ラディッツに言われたがためなのだ。
自分に、男の気を引く部分など、何一つだってなかったのだ。
胸の奥が、くうくうといった。いや、痛かった。
「・・・そうか、ラディッツの奴か。期待に添えなくて、悪かったな。」
それは、なんだか、何でもいいから吐き出したくて、そう言った。
「・・・いや、餓鬼にしちゃあよくやったな。」
「え?」
ターレスは驚いてバーダックを見た。バーダックは、どこか探る様な目でターレスを見た。
「パワー不足を補うために、てめえの体の小ささの利用と急所狙いは悪くねえ。ただ、圧倒的に経験が足りてねえな。もう少し慣れりゃあ、見れたもんになんだろう。」
「ラ、ラディッツに、同じこと言われて。戦闘スタイル、変えたんだよ。」
ターレスは、胸の奥から湧き上がって来る、歓喜と呼べるそれを必死に押し殺す。
嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい!!!
認められた、褒められた、肯定してもらえた!!
その感情は、ターレスの中に麻薬のように広がった。頭の痺れる様な感動に、酔いしれそうになりながら、必死にそれを表に出さないように耐えた。
呆れられたくない、その一心でぐっと感情を噛み殺した。
頭の中にある処理しきれない感情に苛まれているターレスに、バーダックはしゃがみ込んだ。俗に言うヤンキー座りの男は、お世辞にも柄がいいとは言えない。
「・・・・てめえ、ラディッツとはどんな関係だ?」
「ラ、ラディッツ?強くなれるように、組手をしてくれてるんだ。あ、あんたバーダックだろ?」
「ああ、確かにそうだが。なんで、名前を知ってる?」
「あんた、有名、だからさ。」
ターレスは起き上がりながら、目をウロウロさせながら囁いた。
話したい。何か、何でもいいから、話したい。ここで、この繋がった何かを切りたくない。そう思って、話題を探す。
そこで、ふと、思いついた。
自分との間には、確かに、共通の話題があったじゃないか。
「ラ、ラディッツのやつ、俺の事なんて言ってるんだよ!さぞかし、ひでえことか!?」
「・・・・あいつ、家に帰っちゃあ、お前か王子のことばっかりだ。聞きなれねえ名前だったからな。少し、気になっただけだ。」
「俺なんかに構うなんて、変わってるよな。あいつなんて、俺の事、父親にそっくりだってうるさいぜ?だから、きっと、遠い親戚かもなとか言っててよ!お、俺みたいな、おれなんか、弱い奴が・・・・」
卑屈な事なんて言いたくないのに。呆れられて、見捨てられたくなんかないのに。それでも、そんな言葉が出てしまうのは、少年の中にある、根付いてしまった卑屈さが出て来た。黙り込んだターレスに、バーダックは一つだけ、問うた。
「・・・・お前、ラディッツのことを特別に思ってるのか?」
「はあ?」
「いいから、答えやがれ・・・・・!」
威圧感を含ませた脅しと呼べるそれに、ターレスは思わず答えた。
「と、特別、かもしれねえけど!でも、なんでそんなに苛々すんだよ!息子のこと、なんでそんなに気にかけてんだ!?」
ターレスの言葉に、バーダックは目を見開いた。そうして、げらげらと笑いだす。
ターレスは意味が分からずに、それを見つめた。笑い終えたバーダックは、にやりと口元をほころばせた。
「・・・・くだらねえ勘違いだったな。そこまでの間抜けなら、心配する必要もねえだろ。」
「何のことだよ?」
「さあな。こっちの話だ。だが、そうだな。詫びはしてやる。」
「詫び?」
「暇な時なら、遊んでやるぐらいはしてやるが。」
「え?」
驚いたような顔をしたターレスに、バーダックはにやりと笑った。
その日から、少年は来る日も来る日も、バーダックにじゃれ付いた。ターレスには、バーダックが何を考えているかは分からなかったが、どうでもよかった。
バーダックは、確かに、ターレスという存在を認識してくれた、肯定してくれた。
勝負を挑んでは、伸されて。また、勝負を挑んでは伸されて。
その繰り返しの中で、バーダックはけしてターレスを邪険にはしなかった。それは、その勝負にラディッツが交ざったとしてもだ。
彼は、けしてラディッツを特別に依怙贔屓しなかった。ラディッツも、父との間にターレスがいたとしても気にはしなかった。
ギネもまた、ターレスを街中で見つけると、食事をしているかなど何くれと気遣ってくれた。
三人は、ターレスに椅子を用意しくれた。
そこに、座ってもいい。いつか、立ち上がってどこかにいってもいい。
その椅子は、いつだって、ターレスが座るか立ち去るかを待っていてくれた。
いつぞやに、冗談交じりに血縁であると宣えば、バーダックはこんなにも可愛げのない餓鬼はいらないと笑い、ラディッツは父親はいるんじゃないのかと不思議そうな顔をする。
そんなふうにあしらわれても、ターレスはそこにいてもよかった。
拒絶しない場所、いつだって待っていてくれる場所、混じり込んでも赦される場所。
鍛え続けてくれる師匠、己に微笑みかけて来るその女、そうして、自分が強くなるのだと信じ続けてくれる、素直には言えなかったけれど兄弟分。
幸福だった。幸福な、日々だった。
それは、バーダックに息子が出来た時も変わらなかった。
ターレスは、少しだけ不安に思っていることがあった。
それは、自分は、彼らにとって息子や兄弟の代わりではないかということだった。いつか、バーダックやギネに息子が出来れば。いつか、ラディッツに弟が出来れば。
その席はなくなってしまうのではないかと。
そんなことを考えて。
ある日、キラキラとした目で、弟が出来ると言われたとき、ターレスの何かに芽生えたのは殺意だった。
奪われる。
自分がいた場所、自分の座ることが許された席。
サイヤ人とは、個人主義である。戦闘を最もとする生き方は、その在り方があっていたのだろう。
けれど、情がけしてないわけではない。
経験と生き方は、確かに彼らに情と関わりを植え付ける。
ターレスには、それがなかった。
物心がつく前に両親は戦死し、戦闘に出る様になってからはひたすらに一人で生きていた。
それは、誰もがそうだ。サイヤ人ならば、いつだって、誰もが最期は一人だと笑うだろう。けれど、サイヤ人でさえ、誰だって自分だけの席を持っていた。
ターレスは、サイヤ人という枠組みしか持っていなかった。下級戦士の、孤児の、弱者のターレスは、何も持っていなかった。
誰もが、どこかに席を持っていたのに。自分だけが、それを持っていなかった。
欲しいなあ。欲しい、それは、どうしても欲しい。
持っていなかったから、その渇望は一押しだった。
ようやくだ。ようやく、ずっと、ずっと、欲しかったものが手に入ったのに。
それを、自分は奪われる。ただ、生まれて来ただけで。生まれて来ただけ、それは自分の欲しかったものを奪っていく。
ターレスは、自分でも信じられないほどに、生まれて来る息子へのどろどろした何かが膨らんだ。
それに気づいていなかったのか、生まれて来る弟のことで頭が一杯だったのか。
ラディッツは心の底から嬉しそうに言った。
「ターレスも、カカロットのこと、一緒に鍛えてやろうな!父さんも、期待してるって!」
それに、あふれ出しそうだったどろどろした何かが霧散した。
思わず抜けた力に苦笑しながら、ラディッツの言葉にうなずいた。
大丈夫だ。大丈夫。
まだ、己には、席がある。奪われてなんていないから。
だから、そうだ、大丈夫。ターレスは、ここにいていいのだ。今度は、自分が、席を用意してやるのだ。弟分の席を、自分の中に用意してやるのだ。
「・・・・・三人で掛かれば、父さんに勝てるかなあ。」
「大人になって、三人がかりなら、何とかなんじゃないか?」
「戦闘力一万は、壁だもんなあ。カカロットも強くなるかなあ。」
そう言って、笑いあった。ターレスも、静かに微笑んだ。
自分たちの弟が強くなるかなんて言い合って。弟が、成長するまでバーダックが生きているのだと、二人は信じて疑わぬまま。
二人は、少なくともターレスは信じて疑わなかった。
バーダックは強いから。弱者のように死んでしまうことなんてないのだと。
自分たちが強くなる日まで、超えたいと願いながら、超えることなんてない、超えたくないと願う憧れの果て、手の届かない星。
もしも、もしも、バーダックが死んでしまったとするならば、それは誰かに負けた時だ。敗者になった時だ。
彼は、きっと華々しく死ぬだろう。戦って、戦って、戦い抜いて死ぬだろう。
その時は、バーダックに勝った相手を追い続けよう。その存在に勝てた時、自分はバーダックよりも強いのだという証明になるだろうから。
そんなことを考えながら、ターレスは無意識に思っていた。
自分よりも強いバーダックが、弱者である自分よりも先に死ぬことなんてありえないのだと。
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その日、ターレスは壊れてしまった。
自分の母星、べジータが滅んだ日のことだ。
星が滅んだことを、悲しいとは思わない。例え、滅んでも、またどこかの星を奪えばいいだけなのだ。
けれど、けれどだ。代わりになるものがないはずのものが、すべてがちゃんと壊れてしまった。
バーダックが、死んだ。隕石の衝突に巻き込まれて、ギネを含めて死んでしまった。
その時、ターレスの中で、タガと言える何か、ネジが少しだけ取れてしまった。
ターレスはその時、遠征先で大けがを負い、メディカルポッドに放り込まれ、帰還が遅れてしまったために巻き込まれることはなかった。
(・・・・・ありえない。)
ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない。
ありえてはいけない。
強者であるバーダックが、弱者である自分よりも先に死ぬなんてありえてはいけないのに。誰よりも、サイヤ人らしい、戦士である彼が誰とも戦うことも無く、ただの偶然で死ぬなんてありえていいはずなどないのに!!!
バーダックとは立場の違うラディッツや、彼の息子であるカカロットは生き残るべきなのだ。彼らは、バーダックよりも弱くとも、彼が残すべきものなのだから。
けれど、自分は?バーダックよりも弱い自分はどうして生き残ってしまったのか。
「・・・・・しょう、めいを。」
ターレスは、思い立つ。
証明をしなくてはいけない。
バーダックは死んで自分はどうして生き残ったのか。それは、ターレスの方がバーダックよりも強いからだ。
バーダックはどうして戦いもせずに死んだのか。自分は誰よりも強くなり、戦い続けて、その先で戦わずに死んでやる。
証明をしなくてはいけない。
己の憧れの果て、追い続けた輝かしい星の終わりを、サイヤ人らしいのだと、強者の在り方だったのだと、証明をしなくてはいけない。
そのためには、強くならねばならない。
どんな手を、使っても。どんなことをしても。
ターレスは、己の強さを証明せねばならない。
バーダックの生を、肯定し、誇り高きサイヤ人であったのだと証明せねばならない。
そうして、ターレスは己の宇宙船とスカウターを破壊した。
ただの下級戦士の終わりを、誰も気になどしない。彼のきょうだい以外が、それを取るに足らないことだと斬り捨てた。
そうして、ターレスは、彼に用意された席を立ちあがり、遠く、遠くに走り出した。
強くなってやる。
どんな手を使っても、どんなことを成し遂げても、どんなものを使っても。
己は強くなるのだ、強くならなければいけない。
少年の立ち上がった席は、彼が置いてけぼりにした残った者は、ぽつんと、彼が帰るのを待ち続ける。
ターレスは、一度も泣虫のことを女と言ったことはない、はず。