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どたどたと、何か、騒がしい足音が近づいてくることを感じて、ベジータは顔をしかめた。
ベジータとナッパは丁度、とある惑星への任務のために、惑星フリーザの一つの基地にいた。廊下を歩いていたベジータはその足音の主に当たりを付けた。そして、丁度隣りにいたナッパの方を見ると、口を開けて、あ、という顔をしている。それに、ベジータは足音の原因がナッパであることを察して、ため息を吐いた。
「ナッパ隊長!!!」
大音量と共に姿を現したのは、戦闘服に身を包んだ女だった。
腰まで、いやそれ以上にある長いくせっ毛を無理やりに一つでまとめている。胴体から腰までにかけて戦闘ジャケットを身につけている。足はぴったりとした黒いタイツで覆われており、唯一手だけが露出していたが、何故か赤いアームウォームを身につけていた。
ヒューマノイド型の人間としては、お世辞にも女らしいとは言えない体をしていた。細身であるとはいえ、その体にはしなやかといえる筋肉がついていた。筋肉量は少ないが、使っているうちについたという体つきだ。
「・・・・・あー、ラディッツ、お前。」
「その顔からして、私がなんでこんなに怒ってるのか分かってるんですよね?」
「煩いぞ、ラディッツ。」
ナッパがそっと視線を逸らした。ラディッツと呼ばれた女は、ぴりぴりとした空気を纏っていた。べジータは心の底からめんどくさそうな顔をした。
それに、ラディッツは思いっきり顔をしかめた。
「ベジータは、黙っててください。」
ラディッツはがるると、唸り声を立てそうな勢いでベジータに噛みつく。ベジータは、それにため息を吐いて、ナッパを見る。
「ナッパ、お前また報告書の提出を忘れたのか?」
「あー、いや、今回は提出したんだが。」
「そうです、聞いてくださいよ!ナッパ隊長、報告書を提出したのはいいけど、星の様子についての動画情報提出するの忘れてて、さっき上から私が怒られたんですからね?!」
「ああ、悪かったって。そんなに怒るなよ。」
「怒るなよ、じゃない!!ベジータはおいといても、ナッパ隊長はすーぐにそういうの忘れるんですから。おかげで、なんでかお叱りが私の所に来ますし!」
「怒鳴るな!まったく、少しは黙れ!」
ベジータの怒鳴り声に、ラディッツは体を震わせた。そうして、次には、その黒い瞳が、うるうると涙を含み始めた。
それに、二人は思わず体を逸らす。
ラディッツが泣くことには、二人ともあまり良い思い出はない。
ベジータは泣いたラディッツに馬乗りにされて殴られ、ナッパは幾度か髪の毛を抜かれた。
中途半端に抜かれ、禿げてしまったせいで頭を丸刈りにしたのは自分だけの秘密だ。
そのせいか、どうしてもラディッツが泣くのを見ると、反射的に身を固くしてしまう。
「何ですか、そんなに怒らなくてもいいじゃないですか!ベジータの、馬鹿、あほ、まぬけ、おたんこなす!!ナッパ隊長のはげ!」
「こんのくそあま!!」
「もう、ナッパはちゃんと動画提出しといてくださいよ!あと、次の任務は私も行きますから!」
ラディッツの間抜けな罵倒にベジータの眉間に皺が寄るが、彼女はすぐにナッパの方をみるとそう言い捨てて、たったっと小走りで駆けていく
ベジータは、あっさりと走って行ってしまったラディッツにぶつけられなかった怒りをぶら下げて、呆れた顔をする。
ナッパはそれを見つつ、ラディッツに感心する。
かれこれ、それこそ十数年といえる年月を共にしてきたせいか、彼女は良くも悪くもベジータの怒るぎりぎりを見抜くのが上手い。
「・・・・くそ。本当に殺すぞ、あのあま。」
「まあ、気にするなよベジータ。あいつの癇癪はいつものことだろ。」
「その癇癪の原因は、なんだ?」
「・・・・悪かったって。」
ナッパはぼやくように頭を掻いた。
その様子を見て来ると、なんだか怒るのもばからしくなる。
ベジータはラディッツの走っていた方向に視線を向ける。
かれこそ、長い付き合いになる女は、すっかり大人の様相になりはしたが中身はてんで餓鬼のままだ。
それでも、やはり、年月が経てばそれ相応に変わるものだ。
(・・・・雑用押し付けてたらいつの間にか敬語が癖になり、技術部に駆り出されて戦闘に出られないなど、サイヤ人の面汚しめ。)
けれど、憎々しい思いはすれど、ベジータはラディッツを遠ざけようとは思わなかった。
ラディッツは、事実、あの日、己たちの星が滅びた日に言った通り、ベジータの役に立っている。
少なくとも、ラディッツはそれ相応の忠誠心というものをベジータに示している。
まあ、雑用をこなすせいで戦闘力があまり上がっていないことには呆れてしまうが。
「・・・・ベジータよ、お前けっこうラディッツには甘いよな。もしかして。」
「・・・・その下らん話を出してくるなら、貴様とてただではすまんぞ。」
「お。おお。分かった。」
ベジータは、時折言われる、ベジータがラディッツを憎からず思っているという話であると察してナッパに釘を刺す。
そんなこと、絶対にありはしないのだ。
ベジータは、今も昔も、泣き虫が大嫌いなのだから。それ以上に、弱虫は大嫌いなのだ。
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「・・・・まったく、ナッパにも困ったものです。」
ラディッツは、弱いなりにフリーザ軍で癖になった敬語でそう呟く。
ナッパが隊長でなくなって結構な時間が経つが、時折隊長とつけて呼んでしまう癖は健在だが。
ラディッツは、すっかり癖になってしまった独り言を、スカウターを外して呟いた。
彼女は今、アタックボールの中で、ぼんやりと代わり映えのすることのない宇宙を眺めていた。
少しだけ体の向きを変えれば、ナッパやベジータの姿が見える。おそらく、二人はとっくに眠りについているだろう。
ラディッツは、大人になった。体は成熟し、ナッパには勝てずともべジータよりも背だって高くなった。
けれど、彼女は弱いままだ。
訓練を続けているとはいえ、べジータにもナッパにも勝てぬまま。宇宙の強者が集まったフリーザ軍の中でも、弱いまま。
「・・・・カカロット、お前は、今、どうしているのかな?」
弟を、迎えに行けぬまま、ここまで来てしまった。
宇宙の果て、その彼方にある地球という星に、彼女の弟はいる。父にも、母にも、迎えにいってやってくれと言われていた。
けれど、フリーザ軍の度重なる任務のために辺鄙な場所にある地球に行く機会を奪っていた。
何よりも、一年、一年と時間を重ねるごとに、ラディッツは恐ろしくなっていった。
本当に、本当に、カカロットは自分のことを、待っていてくれるのだろうか。
生きて、いるのだろうか。
「・・・・そんなことない、生きてる。あの子は、生きてる。」
自分で考えたそれを、振り払うようにラディッツは膝を抱えた。
信じていた。生きているのだと。きっと、自分を待っているのだと。
そう思うと同時に、ラディッツの中で、大きくなるにつれ、もう一つの考えが頭に擡げていた。
このまま、このまま、フリーザ軍のことなど知らぬまま、辺境の星で生きた方が幸せなんじゃないのか。
ラディッツは、フリーザ軍の中では弱い部類に入る。ならば、彼女よりも弱いカカロットはどうなる?
フリーザ軍は、一応は理性的な皮を被っているフリーザのおかげでそこまで内部が荒立っているというわけではない。それでも、宇宙の中で荒くれ者が集まった場所では、強さこそが正義だ。
そんなところに、あの子が来て、どうなるというのだ?
自分は、守ってやれない。盾になってやれても、その後はどうなる?
自分が死んでしまった後は?
それで、あの子まで死んでしまったのなら、ラディッツは耐えられない。
ラディッツは、怖かった。怖くて、怖くてたまらなかった。
喪うことが、恐ろしかった。
彼女は、昔、腕一杯に、たくさんの宝物を抱えていた。
けれど、それは、まず一つ彼女の目の前で無力を突き付けられて、奪われて。
二番目にふっと、まるで空をかくように、殆どが彼女の腕の中から転げ落ちてがちゃんと壊れてしまった。
亡くしたものを、忘れることは出来なくて。それでも、思い続けるには、あまりにも寂しくて。
どれもを、心の奥底に沈めて、目を逸らしていた。向かい合うには、あまりにも、それらは多すぎて。
ラディッツに残った、宝物は、本当にもう欠片のようなものばかりで。彼女は必死にそれを手で握り込んで、失くさぬようにと縋りついている。
カカロットは、彼女の、きっと心の一番の部分を担う宝物だった。
だから、このまま、たとえ一生会えることなんてなくても。
彼の知らぬところで、自分が死んでしまっても。
あの子が生き延びてくれさえすれば、それでいいと思っていた。
それが、どれだけ、サイヤ人として間違っていても。それでも、その願いだけが、祈りにも似て、真摯にラディッツの中で生まれていた。
「・・・・・カカロット。私は。」
どちらが正しいか、決められもせずに、ラディッツは今日も弟を想っていた。
「ああ、また、ベジータに叱られる・・・・」
戒める様な声は、まるで幼子の様に頼りない。
サイヤ人らしく、ベジータの様にありたいと、子どもの頃は思っていた。けれど、大人になっても、ラディッツはサイヤ人らしい存在になれていなかった。
それでも、ラディッツは、カカロットのことが好きな自分が嫌いではなかった。
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びーびー、と自分のスカウターに通信が来ていることに気づいたのは、繰り返される任務の間の事だった。彼女は、とあるフリーザ軍の基地の一つで次の任務に備えていた。
誰からの通信かと、ラディッツはスカウターのスイッチを押した。
「え?」
口からは驚愕の声が飛び出た。
スカウターに表示された送り主の欄にはあんなにも、焦がれた名前が示されていた。
「か、カカロット?」
ラディッツは、スカウターに映し出されたそれを、茫然と眺めていた。
ラディッツは、少しの間茫然としていたが、すぐに気を取り直して送られてきたメッセージに目を通す。
今まで音信不通だったカカロットの宇宙船から通信ではあったが、内容があるわけではなく、空っぽのメッセージを送り続けていた。
「これは、どういうこと?」
考えられるのは、何らかの理由で宇宙船に衝撃があり通信が送られたのか、それとも。
「・・・カカロットが、私を呼んでいるのか。」
音にした言葉に、ラディッツはみぞおちを殴られたような感覚がした。
何故?
どうして、今更?会いに行っても、本当に良いのか?
いや、それよりも、自分は本当にあの子に呼ばれているのか?
ぐるぐるとそんな疑問が浮かんでは消えていく。そうして、その後に、ただ、思った。
会いたい。
(・・・・カカロット、なあ、お前は、どんな大人になっているかな?)
ご飯は食べているかな?お腹いっぱい食べているかな?病気をしていないか?怪我をしていないか?温かい場所でゆっくり眠れているのかな?強くなれているのかな?それとも、強くなるよりも関心のあることがあるかな?
楽しいことがあるかな?悲しかったことはどんなことがある?苦しかったことはあるか?怒ったことはあるかな?
なあ、優しい誰かが側にいたかな?
なあ、お前は、サイヤ人の力を何に使っているだろうか?
なあ、誰かを守っているのかな?
なあ、人を殺したことはあるかな?
なあ、ねえ、あのさ。カカロット、お前は、今、幸せかな。
そうなら、いいな。そうなら、いいな。
そうであるなら、いいな。
それだけで、それだけで、私は幸せなのに。
全ては、遠いことばかりだ。
過ぎていく時間に、いつの間にか、あの子を迎えに行くことも出来ないまま、立ち止まった自分にはそんなことを考える権利があるかも分からない。
それでも、ラディッツは弟のことを考えない日はなかった。
想像の中で、ラディッツはカカロットがどんな大人になるかを考えた。成長の遅いタイプだった弟は、どんなふうになっているだろうか。
もう、背は伸びただろうか。きっと父さんに似た男前になっているだろうなあ。
そんなことを考えるだけで、ひどく心が慰められた。
(会いたいなあ・・・・!)
じわりとにじんだ涙をラディッツは拭った。そうして、立ち上がった。
(・・・・・父さん、母さん、ごめんなさい。)
私は、未だに弱くって。生き残るだけで精いっぱいで。あの子を、守れるかもわからなくて。ずっと、ずっと、あの子を宇宙の果てに置き去りにしたまま。
それが、正しかったのか、それとも、間違っていたのかも分からない。
それでも、会いに行こうと思います。
それでも、迎えに行こうと思います。
ひどく、遅くなってしまったけれど。迎えに行こうと思います。
弱いなりに、あの子を守っていこうと思います。
一人ぼっちは、本当に、寂しくて。寂しくて、たまらなくて。
自分勝手な寂しさには、耐えられなくて。
そんな、謝罪の言葉を幾度も思った。届かないと知っていても、両親に謝罪の言葉を思った。言いわけだと分かっていた。
それでも、ラディッツは、もう、寂しくてたまらなかったのだ。
ラディッツは、アタックボールの中で、これから行く地球というものについて考えていた。
カカロットを迎えに行くということについて、ベジータとナッパには話してはいなかった。ただ、野暮用があると言って二人から離れた。
任務を放棄したラディッツを二人は何も言わなかった。ラディッツがいない分、暴れられることを喜んでさえいた。
二人が自分に興味がないことが幸いだったろう。
(・・・これで、カカロットに何の憂いも無く会える。)
もうすぐ星に、地球に着くためにコールドスリープから覚めた思考の中で、ラディッツは弟の居る星を心待ちにした。
アタックボールの中から、じっと地球の存在を待ちわびる。そうして、ラディッツの視界の中に、青が、広がった。
(・・・・すごい。綺麗な。なんて、綺麗な、星。)
青に彩られた、宇宙という闇の中にぽっかりと浮かんだその星の、なんて美しいことだろうか。
(・・・・ここが、カカロットの育った、星。)
ラディッツが、ずっといきたいと願った星。行かなくてはいけなかった星。行けなかった星。
ラディッツはその星に、ゆっくりと目を細めた。
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大気圏に突入し、着陸の衝撃に備えた。
アタックボールに衝撃が広がった。ラディッツは、どきどきと、煩い胸を抱えて。アタックボールの扉を開けた。
「あーあ。すごいクレーター・・・・」
思わずぼやくようにそう言って、ラディッツはクレーターから飛び上った。
「・・・・・わあ。」
ラディッツの視界の中には、一面の緑の大地だった。
そよそよと、吹き抜ける風は植物と、土の匂いがした。
「わ、わわ!な、なにもんだ、おめえ!!」
声のした方を見ると、武器を持った男がいた。
それにラディッツは、星の様子と、そうして生きている人間の存在に、カカロットのことを察した。
(・・・あの子は、この星で、普通に、暮らしているのかもしれない。)
死んでいるという可能性は考えなかった。なんとなく、生きていると、確信した。
ラディッツは癖の様にスカウターで、その男の戦闘力を計る。
「・・・・戦闘力が、たったの5かあ。ベジータならゴミって言ってるなあ。」
「 な、何言ってるだ、お前。」
「いえ、すいません。何でもありませんよ。」
ラディッツはそう言い放つと、たん、と軽やかに飛びあがった。
「な、なななな!?」
下でそんな声が聞こえるが、ラディッツはそんなこと気にしていなかった。
「・・・・ここが、あの子の育った星。」
美しい、星だった。
宇宙から見た通り、真っ青な空。延々と続く、緑に覆われた大地。ラディッツの頬撫でる風は、切り裂くような冷気も、弄る様な熱風でもない。
心地の良さを感じる風は、まるでラディッツの髪を梳くように流れていく。
まるで、子どもをあやす、揺り籠みたいだと思った。
ただ、ただ、ひたすら優しくて、穏やかな、命を育む青い星。
「ここが、あの子の生きている場所。あの子の、育った星。」
ここで育ったカカロットは、いったいどんな子になっているのだろうか。人が滅びていないことを見ると、もしかすれば、自分に、というか母親に似てしまったのかもしれない。
けれど、そんなことはどうだってよかった。滅びていない地球の事なんて、どうだってよかった。
ただ、カカロットがどうしているかが気になった。
「・・・・・私は、会いに行っていいのかな。」
こんな穏やかな場所で育ったカカロットに、お世辞にも善人とは言えない所業をしてきた自分が会いに行ってもいいのだろうか。
きっと、ここで、平和に暮らしているだろうカカロットに会いに、いっても。
けれど、そこでラディッツは顔を振った。
「・・・・いや!そんなことを考えても仕方がない。ともかくだ、あの子を探さないと。」
それぐらいの覚悟はしたはずだ。
ラディッツはスカウターを使って、辺りを探る。下級戦士にランクされたとはいえ、カカロットもサイヤ人だ。
戦闘力三桁にはなっているだろう。
「・・・・ん。これ、かな。」
ラディッツは近くにいる大きな力の持ち主に向けて飛んだ。
ばくばくと、心臓の音が煩い。
(・・・・最初に会ったら、なんて言おう。なんて、どうやって、言えば。)
あの子は、自分を、赦してくれるだろうか。
ラディッツは短くなっていく距離と、ようやく肉眼で見えるレベルになった人影に息を荒くした。
そうして、見えて来たやけに顔色の悪い人間に、目を見開いた。
その男の前の前に降り立ったラディッツは、半分安心して、半分がっかりとした気分で息を吐いた。
「・・・・・カカロット、じゃない。」
「なにものだ、きさま。このオレに用でもあるのか!?」
どこか高圧的な印象を受ける言葉に、ラディッツは困ったように首を傾げた。
「・・・・いえ、すいません。その、弟を探していて。あの、私のような尻尾のものを見たことないですか?」
ラディッツは自分の腰に巻いていた尻尾を振った。それを見たとがった耳をしたそれは、目を見開いた。
「そ。それは!!」
「知ってるんですか!?」
「貴様、孫悟空の姉か!」
「そ?すいません。私の弟は、カカロットと、いうんですが・・・・・」
「ふん!誤魔化してもすまさんぞ。」
目の前のそれは、ぎろりとラディッツを睨んだ。ラディッツは、スカウターで戦闘力を計る。
(322、うーん。さっきのと比べたら格段に高いけど。でも、やっぱり弱いなあ。)
ラディッツがそんなことを考えていると、いきなり衝撃が走る。攻撃が加えられたのだと察したが、はっきり言って、ラディッツの頑丈さに関係がある者ではない。
「・・・・・けむい。」
立った砂埃にそうぼやいていると、目の前の存在の顔に驚愕が広がる。
(・・・・顔色が悪いと思ってたけど。この人、この色が素なのか。)
スカウターがまた反応を始める。目の前の存在よりも、ずっと大きな力にラディッツは顔を輝かせた。
「!これは。」
ラディッツは固まった存在を無視して、飛び上った。
「・・・・この星で、一番に大きな力。」
カカロット、会えるよ。
もしかしたら、怒っているかもしれない。嫌われて、いるかもしれない。
(・・・・私のこと、どう思っているかな。嫌われているかな。)
それでも、いいか。それでも、いいんだ。
嫌ってもいいから、一目でいいから、会いたい。
ラディッツはただ、一直線に飛んだ。
緑の大地を超えて、青い海を超えて、ひたすらスカウターの示す方向に急いだ。
そうして、等々、海の上にポツンと浮かぶ小さな小島を見つけた。
「あ・・・・・」
空の上からでも見えた。何よりも、まっさきに目に飛び込んできた。
着地した孤島で、ラディッツはじっとその青年を見た。
周りに誰かがいた。驚いた顔で、自分を見ていた。
けれど、そんなことは気にも止まらなかった。ただ、たった一人のことを見ていた。
「・・・・ああ、ようやく、会えた。」
思わず漏れ出たのは、そんな言葉だった。
掠れた声で、言った。震えていて、それこそ、今にも泣き出しそうな声だった。
記憶の中の、仏頂面の、ラディッツの憧れた父によく似た青年は、不可思議そうな顔で彼女を見返した。
ちょっと長くなりそうなので区切ります。
この時のピッコロさんって悟空に尻尾があったことしってましたよね?