晴空の下、国王であるシャルロット・A・ベヒモスは自ら立ち上がり青年の元へと近づいていた。それこそ華やかな気分をしているその表情で地面に寝転んだ青年の目の前に立っていた。
「君の実力は認めないといけないのじゃ。行って来るが良いのじゃ。」
国王としてはきっとまた違う思惑があったのだろうが精神も身体も擦り切らせた青年にはそこまでは読み取れなかった。
「そうですか。ありがたきお言葉です。」
青年は上を向いていた顔を左横に向けてから両腕を使ってその場から立ち上がっていた。言葉ではそのようにしていたがひしひしと口角が震えているのを青年は感じていた。その出所は全くと言って何もわからない。青年が分からなければ周りにいる人は余計にその気持ちを膨らませることだろう。
「貴殿の頑張りは期待しているのじゃ。これでさらばじゃ。」
国王はすぐに何処かへと消えてしまった。まるで死期を悟った猫のように雲隠れをした国王の存在を青年は最後まで気づけなかった。そうなる理由は説明するまでもない。暫く青空を見ていた青年は右手に持っていた剣を胴体部分に当てながら上半身を上げながら周りを見渡す。それから一旦どこから出るのかを迷ってすんなりと立ち上がるとなんとなく目星を付けた目の前の宿舎を目指していた。
思いをつぎはぎの状態で体も十分とは言えない状況だが動くしかなかった。やる事も不十分であり、目標も曖昧なもの。何もかもが中途半端で何処にもいかない方向で何も起こらなさそうにも思えなかった。
「そうか。俺にもまだやる事がある。」
青年はそう思えた。だからこそ、今が何を起こそうとも関係なかった。
その日の晩。その日の仕事は全て取りやめた。歪みは起こさないようにしているが裏切りと復讐の横行影の世界では異端とされるその行動は正しく相手の行動を起こすための思考をフリーズさせるには十分なわけで青年は手早く終わらせていた。
「紫、俺はまだ力不足だ。だからこそ、何か考えて欲しい事がある。」
「話の展開が読めないわよ。何が起こったのかは説明しなさい。」
「そうか。」
青年は話の経緯を話しておいた。
「そうね。そのままで焦らなくても良いんじゃない。」
「そうか。何をたどってそう考えるに至ったのは聞かないでおく。して、俺には何が足りないと思う。」
「人としての性格かしら。貴方に感情なんてあるのか不思議で仕方がないわよ。」
「そうか。考えてみた事もない。俺に足りないのはそんな心の部分なのか。」
「夢とか持っていないでしょう。今では彷徨う死霊と何も変わらないわよ。」
口元を隠してふふふ、と笑うだけの紫に青年は目を向けているだけだった。何も起こそうとしても何も出来ないでは青年自身は何か化ける事もない。
「そうか。」
落胆でしかない。もう何も理解できていない。青年には初めての領域であり今まで目を向けてこなかったところでもある。
「後は貴方に任せるわ。それで期日は何日にするつもり。」
「三日だ。それで俺は突破させる。」
「そんな簡単に終わればそれで良いけど。」
紫にとってそれは難しいだろうと思っていた。そんな簡単なものでもない。そんなことを知らない訳でもない。