視界の通らない森が続く。辺りは薄暗く灰色と言っても過言ではない色のない世界が続いていた。何処から何が来てもおかしくはないという状況の中で八人は道とも言いにくい草が踏み固められているだけの場所を歩いていた。
「道はあっているんでしょうね。」
黒い髪をしている袖の開いている赤い服装をしている少女は黒髪の青年に聞いていた。青年の服装はこれと言って特徴のない薄い茶色の布地だけだった。まるでさなぎのようで変身するのを待ちわびているかのような気もする。
「多分な。不安か。」
青年は後ろを振り向きながら答える。道を知っているわけでもないのが大体の方角は覚えているため青年が前を歩く事にした。その後ろに赤い服装の霊夢、そしてメイドであり、吸血鬼の姉妹を保護するメイドが歩いている。
「いいえ、そういう意味じゃなくて。飛んで向かった方が早いのにどうして歩いて行こうとしているのかよ。」
「そうか。だが、後ろにも居るのに誰がどこに行ったのか把握出来るか。俺は出来ん。それに吸血鬼も居ればできるだけ日光の当たらないようにするのが当然だ。」
「そうね。一理あるわ。けど、先に見ておくのは当たり前じゃない。」
「そういう言い方もある。だが、果たして戻ってくることは可能か。」
「何時間かあれば戻ってこれるわよ。」
霊夢は強気な姿勢を無くすことはなかった。そうでもなければ霊夢でもないが青年はそろそろ鬱陶しく感じ始めていた。気が立っているわけではない。
「そうか。その間俺たちは待機する事になるがその時間は返してもらえるのか。」
「それは無理でしょ。」
「そうか。なら、辞めてくれ。」
青年はそこで口を閉ざす事にした。あまり会話を長引かせるわけにもいかない。不安なのはわかるがそれを煽るようなことはしたくはない。それに情報伝達もやすやすと出来る距離ではない。
「全員で一切に飛べば問題ないじゃない。」
霊夢は妙案を閃いたらしい。だが、それは青年には都合の悪い事だった。それとも最後にこれを出すつもりだったのかそれは定かではない。しかし、どうしてもそうなのではないか、という疑念は頭の中に残る。
「そうか。あまり異世界に干渉する事を是とはしたくない。それで諦めてくれ。」
「そんなの勝手じゃない。幻想郷を守ることがかかっているのにそんな悠長では駄目でしょ。それはアンタが一番わかっているはずよ。」
確かに、青年はぐうの音を出せずにその場で黙ってしまった。何とか言って欲しい霊夢は焦らせるが自分の殻にこもろうとする青年を引き戻すことはできなかった。
「アンタは救いたいのか救いたくないのかはっきりしない。」
「怖い。俺が一度負けたことがある相手にもう一度など。」
青年は怯えた表情を包み隠そうとはしていなかった。否、隠すことが出来ないほどにそのようになっていたと思われる。もう精神的におかしくなっているのかもしれない。
「何言ってるのよ。」
霊夢の声には感情というものがなく何もない虚無のような声をしていた。まるで宣告された時に聞くお告げのようである。
「アンタには期待してるんだから。」
「そうか。勝手にしていれば良い。」
言いかけた口を止める。青年はまだ言いたそうだがここでは出さない事にした。まだ持っておく札か今は出してはいけない札なのか。
「やってられないわね。」
霊夢は呆れ返っていた。