永遠亭へと帰ってきた青年はそこで何かを話していた。女医との対話の結果少し作戦というものを変えてみる事にした青年は一路幻想郷の北西の方角へと向かっていた。
笠を被っていて永遠亭の薬売りに人里で買ってもらった黒色の衣服を身に纏っている。靴下の上に草履を履いていている。
その青年は人里の西側を歩いて北西へと向かっていた。誰も寄り付かないような場所で何があるのかさえ知っている人は少ないと思われる。それ程に危険な場所であるとされているが向日葵が好きな人が居たり居なかったりするだけで何か特別な問題があると言うことでもない。
あまり踏み入るのは嫌われると言う事だろうか。そんな感じで向日葵の咲いている丘に行くと怖い妖怪に会うと言う噂であるらしい。だが、青年はそれを信じて恐れることもない。そもそも一回だけ会っているのもあるがそれを聞いて興味しか湧かない。面倒な事にその程度にしか考えていないのだろう。
太陽に明るく咲いている花々が多く咲いていた。中に入れば他の種はなく向日葵だけが咲いているその丘にはきっと誰も居ないのだろう。居るとするなら皆が恐れている妖怪だけだろうか。
兎に角青年は近くの向日葵の茎の部分を小刀で切り取ってから左手に持ってふらふらとする事にした。
方向感覚も分からなくなるような感じはあるがもしかするとそれを狙っているのかもしれない。視界の開けない変に整備された道を歩いていくと不安に駆られることもある。途中で襲われたりすることもあるかもしれない。だから此処に人が寄り付かない忌避の地とされている。
理由は後でわかる。
丘の上から降りていくような坂道があったので青年は転ばないようにゆっくりと歩いていた。左手に茎から切り取っていた向日葵を持ちながらある小屋の近くまでやってくる。青年は空いている右手で扉を四回叩いていた。そこまで強いものではないがコンコンコンコン、とそのリズムはとても良かった。青年はしばらく待つ事にした。
扉が開く。そこまで待っていたわけでもないが青年は持っていた向日葵を片手に挨拶をする事にした。別に何か当てつけがあると言うわけでもない。
「その左手に持っているものは何かしら?」
その人は青年に聞いていた。
緑色の髪をしていてショートボブくらいだ。そして白いシャツに赤いベストを着ていて黄色のチェックの入ったスカートを履いている。麦わら帽子を被っているのでこれから作業をしようとしていたのかもしれない。青年はそのように感じた。
「綺麗なものだったのでお近づきの印に渡そうかと思った。」
青年は平然と答える。この向日葵はこの人が育てたものである。それを勝手に抜き取っていたのでそれは怒り心頭なのだろう。
「ありがたく受け取るわ。でもね、植物を無下にするのは許せないわ。」
その人は右手に持っていたピンク色の傘を使って青年を突いていた。青年は軽く避けているだけでそこからこちらへは来ないようにしていた。
「幽香、どうするつもりだ。」
「これはお仕置きが必要ね。」
青年に幽香と呼ばれた女性は普通に接している分には何も問題のない優しいだけなのだが一回怒らせるとどうしてもこうなる。それにしている事が青年のような事をしているとその怒りは爆発する。
青年はそのことを分かっていてやっていた。永琳との作戦はそう言うことだ。
「そうか。何をするのかは知らないがその傘は使わない方が良い。」
「前にも見た事があったかしら。」
幽香は不気味な笑みをこぼしながら渾身の力で青年を睨みつけていた。怒りの頂点の時はそのような行動に出るらしいが本当にそうなのかはまた別の問題となるのだろう。青年は素早く小屋から離れていた。
「覚えていないか。前に金色の髪をした魔法使いと来ている事。」
「あの人ね。それなら知っていても仕方がないわ。」
「早くやろう。お互い時間の無駄だ。」
「そう言う意味合いは分からないけどやるからには全力でいかせてもらうわよ。」