青年英雄記   作:mZu

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第110話

時間的には夜というのは不適切だが昼間かと聞かれるとそうではないと答える。じゃあ、夕方なのか、と聞かれるともう少し時間を待って欲しいような説明の難しい時間帯であった。

 

木造であり、心許ない建て付け方をしている見るからに貧しいこの村では点々と家が建っているだけで畑が少々、と言った具合ののどやかな雰囲気の漂う景色が辺りには広がっていた。

 

大きく開けているのでその点ではまだ人の住める土地として最適なのかもしれない。

 

青年が率いる八人はその村の人々から家を貸してもらえる事になった。寛容的であり誰も拒まないその人たちの性格のおかげでそのようになったと思われる。雨風をしのげるのかと聞かれると微妙なところだが無いよりかは良いのだろう。満点の星空の人で川の字を描いて寝るのは誰もが嫌がるだろう。青年自体は別に気にしないが男女の割合がおかしいので易々と通るわけがないと思っていそうだった。

 

「俺は外に居る。貴方達は充分に体を休めて明日に備えてほしい。」

黒髪の青年はそのように言っていた。別に他意などなく純粋にそのように言っていた。邪な考えを青年がするわけがない。

 

「あれなら他の場所に行けば良いじゃない。」

 

「それが嫌なら一緒に寝てください。」

青年はその様に言われたが心が揺れる事はなかった。まるで壊れたメトロノームかの様になっている様で正確なリズムを刻んでいなかった。

 

「そうか。だが辞めておく。」

 

「どうしてですか。」

ある一人は少し不貞腐れていた。まぁ、男一人引っ掛けられない様では自信を失うのは確かである。

 

「簡単な話、誰かと寝るのは好まない。それとあの場所が優遇されそうで気に触る。」

 

「意味が分からないわ。」

当然の反応とも言える。

 

「そうか。理由はあまり聞かないでくれ。そう言うものを持っているのは誰もがそう言うものだろう。」

青年は扉を開けながら人の声も聞かずに出て行ってしまった。誰しもが追いかけようとしたがお互いがお互いを止めていた。何となく察してきたのだろう。ああなった青年を止める手段はないと言う事に。怒っているのかどうかも定かではない。それでは何ともならないので手段を講じる必要があるのだろう。

 

「何か理由でもあるんですね。」

緑色の髪をしている少女は少し考え込みながらも話していた。

 

「知らないわよ。」

大分ご立腹な様子の霊夢はその場で座り込んで横になってしまった。自分の領地を占領したことを示すかの様に大きく陣取っていた。

 

「そう言えば紅魔館に居た時はどうしていたのかしら。」

レミリアは一番この中で付き合いが長いであろう咲夜に聞いていた。

 

「あの人は布団に入った形跡はありません。それに寝ているところもそうそう見る事はありません。」

淡々と答える咲夜にレミリアはふーん、と唸っただけでどうしようもない納得感で自分を覆う事にした。

 

「彼奴らしいか。好きにさせてやろうぜ。」

この中では一番男気のある勇儀はこの会話には入る事はなかった。

 

 

俺は俺の中の自分に聞いていた。

 

青年の中にいるその人物は何処か他人から見た視点を持ち合わせていて少し馬鹿にしたような変わっている人物像をしている。だからと言って青年の相談に乗らない事はなく真摯に答えてくれるが捻くれた回答の仕方をすることもあり、宿主有りきの性格だと思われる。

 

「俺はこれからどうしたら良い。」

青年は心の中で誰にも聞けない質問を投げつけていた。一輪の花を探す少女の様な眼差しを見せる青年に中に居る自分は低俗な物を見る様な蔑んだ目をしている。だからと言って自身の中にある隠れた闇に対して嘆きをぶつける事もしない。

 

「そんなに怖いか。逃げてしまえ。そうすれば気が楽になるだろう。」

夢を見ているかの様で周りは暗かった。ろうそく一本も立つ事はないがしっかりと相手の姿、形、動きまで見えている。常識には囚われないからこそ沢山の心の膿を出してしまっても問題はない。

 

「そんな訳にはいかない。俺はやる必要がある。帰る場所を守りたい。だが、その一歩が中々出ない。」

 

「なんだ背中を押してほしいのか。このままにしている方が面白いと言うのにそんな事をしてたまるか。」

滑稽だ、と笑われているかの様だったがそれと同時にそれも仕方がない事だと言わざるを得なかった。自分でも矛盾している発言である事には変わりない。そしてどれだけ醜い存在でありながら羞恥を晒している発言であるのかはもう自覚している。

 

「自分が止まっていることがそんなに面白いのか。」

少し声音を荒げている青年は自身の中に眠っているその様な感情に憤りを感じている雰囲気があった。そして腰に携えている剣を抜き取ろうとしていたが寸前で抑えた。これは今ではない、そう思えたのだろうか。

 

「面白い。それにお前が誰かの手で動く人間でもあるまい。どこまでも高く羽ばたき皆からは羨ましがられる存在だ。それがこの様では笑うほかあるまい。」

 

「そうか。やりたい様にやれ、とそう言うのか。」

 

「さて。」

自分の中にいるその存在は静かに答えた。その表情には一切蔑んだ様な表情はなく穏やかな顔をしているだけだった。青年はそこで自分の中に意識を向けている事をやめた。そして小さく目を開ける。

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