幽香は初手から全力で来ていた。傘の先を青年に向けていた。そして其処から白いレーザーを出したがその大きさと言うのは傘の大きさとは比にならなかった。青年をも飲み込むような大きさに青年は素早く回避しようと思った。だが、その速さと威力からは逃れられなかった。
転がり込むように焼き焦げた大地から離れるとやっとの事で剣を抜いていた。
「やっと抜いたのね。」
幽香は軽くそう言っていた。何の意味があるのかは分からないがどちらにしても楽しんでいるように思えた。
「来ない事には抜かない主義だ。」
青年も軽口程度にそう言うだけだった。
「その内痛い目見るわよ。」
「心配してくれるのか。」
「いえ、その逆よ。」
白い歯を見せながら傘を持って近づいて来る。その表情は狂気を満ちていて眼はかなりの圧を発していた。
それでもやはり何かあるように思えたのか青年はそれを受けて立つ事にした。
傘と剣がぶつかる。
金属音とも言えないが重たい音が辺りには響いていた。傘とは思えないほどの硬度を持つそれは青年の剣にも対抗していた。しかしその単純な力の差はあるようで仕方がないので青年は逃げておく事にした。青年は飛び退く。其処を狩ろうとしたのは向こうの方だった。
傘の先が青年の方へと向いて来る。相手の方が機動力があるらしく素早く嫌なところを突かれた青年は手のひらで何とか退ける事にした。反時計回りに体を回転させた青年はその場に立つ事にしていた。お互いの間合いの中にありどちらかが先に攻撃して防げなければそれで終わる。
青年は素早くそうする事にしたが全くと言って通用する気はしなかった。幽香の持っていた傘によってその軌道を邪魔された剣は押し返されていた。
その反動というのは凄まじく足裏は地面につけていなかった。
「そんな程度で私に挑もうなんてとんだ馬鹿なのね。」
「言っていれば良い。俺は勝つ必要がある。貴方よりも腕のある人はこれから多く現れるだろうからな。」
「そんなまやかし効くと思っているの?限度があるでしょう。」
「効かないだろう。実例がない。」
青年は幽香に近づく為に走り出していた。まさかの瞬間から放たれた一閃は素早く、そして正確だった。目にも止まらない早業。そんな気がする。
ピンク色の傘は軽々しく弾かれてしまっていた。その事に苦虫を噛んでしまった幽香。青年はそれでも攻撃の手は止めることはなかった。
素早い左側からの振り上げるような一撃。
幽香にとって計算外の事なのか辛そうな表情をしているのだけは見ていれば分かる。
それだけでは終わる事わけもなく更なる一撃を加えようとしていた。
それこそ無慈悲な悪魔のようなそんな気配さえ感じられた。
青年は飛び上がり素早く振り下ろした。幽香は傘で自分の身には当たらないようにしていた。だが、青年は其処で止まることもなく潜り込ませるように剣を動かして下から突き上げていた。あまりにも強い動きのようだったが別にそう言うこともない。
幽香も流石にそこまで弱々しいわけでもなかった。理由は簡単だ、刺さらなかった。致命傷どころか傷一つ負わせる事ができなかった。服に穴が空いている程度で済まされた青年の一撃はそれだけでもそれなりの衝撃を与えた事だろう。それ程に計算外の事が起こっていた。青年はすぐさま離れる事にした。
「そんな攻撃では私に何も与えることは出来ないわよ。」
「いやそうでもないかもしれない。なら、凌ぎ切ってから話をしようか。」
「ええ。そう言う事にしましょうか。」
「そうか。」
青年の剣は暴れ出していた。それに合わせて幽香の傘も同じように暴れていた。剣は下から潜り込ませるように走り、傘は上から押さえつけるように待ち構えていた。お互いの操作をしている人もその奥から睨み合っているようだった。拮抗した力関係であるのは言うまでもないが持久戦となればまた違うものになる。
今回は剣の方が押し通して傘を押し返す事になった。そして青年は更なる一撃を与えようと走り出していた。だが、傘も負けるような事はなかった。
小さな白い弾をばら撒き始めた。青年を足を止めてからその弾を対応する事にした。だが、それがまだ序章でしかなかった。
幽香の傘はその後ろで青年に当たるように構えられていた。傘を開くとピンク色の花びらは使用者の体を隠していた。傘の先からは大きな白い玉が出来上がっていた。それが膨れ上がると一つの破壊光線のように破裂して辺り一帯を焼き尽くそうとしていた。
それに気づいた青年は素早く飛び上がると小刀と針を用意していた。白い破壊光線の上を颯爽と飛んでいた青年は狙いをつけるように傘を持っている人の上へと向かっていた。そして針を手から離すと小刀の刀身で叩き下へと落としていた。
隕石のような衝撃を腕に覚えた幽香は右腕の力が著しく衰えしまっている事に気づいた。光線を撃っていた傘はその反動から大きく右に逸れてその辺り一帯を焼き切っていた。
青年はそれから右腕に剣を持って右手を鍔の近くで握るとその下を左手が握っていた。そのまま落ちていく青年に気づけなかった幽香はその一撃を止める手段もなく受けていた。
辺りには土煙が舞う。そして幽香は地面に伏せていて峰で立ち上がるのを抑え込んでいる青年の剣があった。
「強いじゃない。刃が向いていたら確実に死んでいたわよ。」
「そうか。して本当に申し訳ない事をした。」
「何に謝っているのよ。」
「向日葵を無残にも切ってしまったことだ。」
「それは許せれないけど良いわ。この状況なら私は何も言えないわよ。」
幽香はそんな風に優しい顔をして言ってくれた。青年は仕方がないので幽香の手を握ると立ち上がらせる事にした。幽香はその手を握り甘えるとその場に立ち上がって自分の服の汚れを軽く手で落としていた。
「そうか。して頼みたい事がある。」
青年は急に真面目な話をし始めようとしていた。
「ここで頼める状況なのか聞きたいけど良いわ。何かしら。」
「俺は幻想郷で大きな事を起こす。その時きっと多くの人が活気盛んになるだろう。その時に歯止めをしてくれないだろうか。」
「それをはいそうですか、と言える人は何人いるのかしらね。」
幽香はそう聞くだけだった。
「予定ではもう四人居るつもりだ。それだけ居ればもしかしたら止められる。」
「何を夢を見ているのかしら。それに私は他の人のことには興味がないのよ。それは知っているでしょう。」
「そうか。そううまくいくはずもないから別に気にしているわけではない。」
青年は意外とあっさりとしていた。その理由はさておき何かあるのかと思えたが別にそのようなことはないと思われる。
「まぁ、私は参加しないでしょうけど頑張りなさい。」
「そうか。それなら仕方がないだろう。」
青年は自分が渡した向日葵のことを聞いていた。このまま捨てられるらしいので青年はそれを貰っていく事にした。目的も用途もわからないが使ってくれるならと言うことで幽香は快く渡してあげる事にした。青年は左手に持って踵を返すと手を振るだけで向日葵の咲いている丘を後にする事にした。
「今日は早めに帰る事にした。」
「おかえり。その花は何かしら。」
「ちょっと相手を怒らせるために使用したものだ。」
これを永琳に渡したいと考えていた青年は何となく渡す事にした。別に其処に何があるわけでもない。急にふとそう思っただけである。
「貴方から何か貰えるなんてこんな話は聞いたことはないわね。」
「それは失礼ではないか。」
「そうね。」
少しだけ微笑ましくなっている永琳はそれからも左手にペンを持ちながら何かを書いていた。その部屋ではその音しか聞こえてこない。結界を張っていて別次元としているこの部屋では誰も入って来るようなことはない。青年は患者が横になる為のベットに座ると少しだけ休む事にしていた。
「これが上手くいくとは思えないがどう思う。」
「さぁ。わからないわ。貴方の頑張りと今までの行いでそれは変わるんじゃないかしら。色んなところに喧嘩を売るのは良いけど買ってくれた後はどうするか考えているのかしら。」
「何も。不確定な事だからな。永琳も感じているだろう。」
「そうだったわね。」
永琳はそれだけを言っていた。青年もそれからは何も言うようなことはなかった。