夕暮れ時、もうそろそろそのような時間という人が現れてもおかしくはなかった。日は段々と傾いてきている。紅く染まりつつある体を労わりながらもゆっくりと歩みを進めている。
名は今の所なく、誰かから又は自分で名乗った愛称でしか語ることのできない人物は魔王の居るとされる街の中で四人と戯れていた。
何か目的があるわけでも、これから城の中で侵入しようとも考えていない。計画のけの字もない頭で黒髪を後ろで結んでいる青年はその時間を思うがままに過ごしていた。
「これからはどうする。」
青年は短絡的に聞いていた。
「食事なのか、寝る場所なのかはっきりとして。」
「霊夢、俺は両方聞いている。今の所無くて困る事もない。それに明日には向かっている事だろう。」
青年はのらりくらりとした動きで霊夢の言葉をかわしている。
「何か名物を食しましょうよ。」
「そうか。悪くない選択だ。」
青年はまたも短い言葉で答える。
「ですよね。早速聞いてみましょう。」
緑色の髪をしていて、左肩に一房乗せている髪型をしている元気そうな見た目をしている早苗が見知らぬ人に名物について聞いていた。
別に怪しまれる事もなく、何も起こらなかったその会話に一人だけが殺気立った視線を青年に向けていた。青年はそれに答えることにしたのか、首だけを向ける。
「ここは思ったよりも治安が良いようだ。」
「そんなことを聞きたいんじゃないの。魔王が住んでいるのにどうしてこんなに平和な雰囲気があるのよ。」
霊夢は胸ぐらを掴みそうな勢いで顔を近づけた後で青年は罵声のように浴びせていた。それを聞いていた青年は霊夢の唇に指を押し付けて黙らせていた。
「ここでは禁句だ。」
それだけだった。
青年はそれ以上の情報を与えることはなく、霊夢は仕方がなく黙っておくことにした。決して満足しているわけではなく、いつになく反抗的な目を青年に向けていた。
「皆さん、この近くにどうやらあるようですよ。」
快活そうに近づいてきた早苗に道を案内される四人はその背中を追っていた。
「何が名物なのかは聞いてきたのか。」
「はい。どうやら山の幸をふんだんに使った炒め飯のようです。」
元気そうにそう答えた早苗の視線は霊夢の方に向いているのを青年は気づいていたがここでは何も言わないことにした。面倒なことにはしたくないのだろう。
「そうか。それは楽しみだ。」
青年は霊夢から離れるように早苗の近くまで歩いていた。その後ろに三人がついてくる。旅人として扱うのには幾分か不審な点がある。それを気にするほど青年は繊細な人でもないので何も言うことはなかった。
後の三人はといえば、少し嫌な役をしてもらっているので別行動となっている。しかし、良い感じに溶け込めているに違いないと青年は考えている。
時間としては3時間ほど遡る。昼は過ぎていないと言う頃合いで青年は街の中の風景に溶け込んでいた。辺りからはどうしてもひそひそ声がしているがそのようなことを気にしていても先には進めないので何か行動を起こすことはなかった。
まずは誰か見つけることが先決となるだろう。まるでゲームのように始まった突如として行われたもてなしによって散らばったのてまずは一度適度に集めておく必要があると思った。面倒なことになったと思いながら青年は街の中を歩いていく。
まず最初に見つけたのは一際目立つ格好と見た目をしている人だった。額から大きな赤い角が出ていて、ノースリーブの格好と腕には何かをはめていた。そして、その横で淡い水色の服装をしている鍛治職人として武器の修繕のために連れてきた河城 にとりが居る。鬼と河童は本来なら上下関係があり、厳しいらしいが今の二人の様子を見ている限りではあまりそのようには感じなかった。まるで友人のように話している二人に青年は空気を悪くしてしまうことを承知で割り込むことにした。
「迷惑をかけた。怪我はないか。」
青年は落ち着いた言い方で二人に言っていた。
「別に問題はない。しかし、あれは何だったんだ。」
四天王の一人であり、挫折を味わった星熊 勇儀は少しお気楽そうな表情で青年に言葉を返した。
「盟友、ちゃんと説明してよ。」
なんて事を言ってくる辺り、前よりかはしっかりとしているらしいにとり。青年は答えておくことにした。
「そうか。あれは多分宣戦布告と考えても良かった。が、あれは適当に放たれたものであり、俺の勘違いだったようだ。」
少し悩みながらも言葉を選んだ青年はそのように二人に説明していた。それを聞いて不審そうにするも、すぐに表情を変えて青年の肩を組み始める。
「細かいことは気にしない。まずは霊夢か早苗でも見つけないとな。」
青年はそれに賛同する。元々そうするつもりであったので何か反論を起こす必要もないのだろう。
「のんびりと探す事にしよう。」
青年は少し疲れた後の声を出して未知なる道へと進む事にした。