黒い空間と大きな目のある初めて見るのにはかなり気分を害する光景が広がっていた。しかし、全ての視線を目の前にしても堂々としていたのが一人だけいる。
「戦況はどんな感じだ。」
黒髪で後ろで一つに結んでいて前髪を手でかきあげただけの青年は疲弊している皆の前で話した。
「取り敢えず、こっちは片付いたとしか言えないね。」
額に赤い角を一本だけ生やしている星熊 勇儀が少し気怠げに答えた。それなりに傷は負っているのだろうが鬼という種族がここで負けるとも思わないので青年は何もその辺りの言葉はかけなかった。
「此方は少し痛手を受けましたが無事です。」
銀色の髪をしている紅魔館の主人に仕えるメイドである十六夜 咲夜が主人とその妹の代わりに答えた。見る限りではそう見えるがまた青年はその点の言葉は言わなかった。
「そうか。して、霊夢はどうしている。」
「其処で気絶しています。現在は永琳という医者が治療を行っているそうです。」
「そうか。大体は無事か。」
「ところで後ろにいる人は誰ですか?」
先程霊夢の安否を教えてくれた守矢神社の巫女であり、現人神の東風谷 早苗が聞いた。青年は後で説明するつもりだったが今しておくことにした。
「この人は魔王だが、本物ではない。」
青年はそう説明した。
「待て。ここは私から説明する。」
会っていない七人にとっては謎である人物が青年の横へと移動してきた。一種の緊張感に苛まれるがそれは意外と早く解けた。
「私はラーというシソー国の王をしているものだ。ブリタニア王国の国王であるベヒモスとは兄弟関係にある。昔、内乱が起こった際に私が逃げた事がある。それからは魔王と呼ばれて今に至る。これまで三回襲撃を受けたがまさかこうなるとは思わなかった。」
「ここからは俺が説明する。今からブリタニア王国に行き、ラーに太陽となってもらう。」
「話についていけない。」
「そうか。その辺りの意見もあるだろう。素早く説明すれば同盟を結んだ。俺のやる事に反対するなら幻想郷に帰って欲しい。其処まで命を賭す必要はない。」
青年はそのように説明した。
「帰る?目的も終えていないのにどこに帰ればいいんだ?」
鼻で笑った後に少しずつ言葉を出していった勇儀は青年を舐め回すように、挑発するように聞いた。あまりにも露骨に行うが青年は全てを受け止めた。
「別にここで戦力を無駄に削り合うのも良い。だが、それなら俺を憎んだままこの場から消えて欲しい。」
「まさか。その命を捨ててくるなんて言わないでしょうね。」
「そのつもりだ。」
青年は思い切り力を込めて叫ぶように答えた。それだけで並大抵の意思ではないことは伝わる。
「私からもそれは反対する。せめて生きて皆の元に顔を出してはくれないか?」
「それは無理だ。」
ラーはここで引き下がった。
「そう言う命の散らしかたは汚くはない。しかしな、それで満足する奴がここに居ると思うか?」
「人の事に関心はない。」
「イーラはどういう気持ちなんだろうな。」
「何故、知っている。」
「一部始終は見ていた。とても大切に思っている人なんだろう。なら、そいつを幸せにしてやるのが一番正しいんじゃないのか?」
「そうか。ならば、善処する。ラー、本気で俺を殺せ。それでも生き延びてやる。」
「それでもう行ってしまうのか。」
「そうするつもりだ。」
「戻ってこいよ。」
青年はその言葉を聞いてスキマから飛び出した。残された七人はその場で待機して見守ることしかしなかった。