青年英雄記   作:mZu

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第14話

夏は過ぎていて少しだけ肌寒くなってきた幻想郷の北側。その場所は妖怪以外の立ち入りを禁止していて昔から続いている序列のある縦社会を形成していた。

 

だがその頂上に守矢神社という土着神が祀られている社が建造された事によりそのようなことは言えなくなったので仕方がなく参拝へと向かう道を整備される事になった。お陰で以前のような妖怪の山の厳しい雰囲気は変わり誰も訪れやすいところへとなっていた。

 

嫌な輩が入る可能性もあるがそれは哨戒天狗が目を光らせる事によって全くその心配日なくなっているという事である。その目を潜れる者はおらず、確実に捕まる。妖怪の山の道を完全に熟知していなければ見ていれば分かるような者も居る。それかスタスタと歩いて道に迷ったところを助けられる場合もある。一概に不審者という扱いはできるわけではないが居ないこともない。

 

そんな中である男は川を流れる水のようにサラサラと山道を慣れた足取りで歩いていた。まるで住人のようだがそのような事は万に一つもない。

 

その人は黒髪でかき上げただけの髪型で後ろで一つに結んでいるだけだった。服装は頭に笠を被っていて顔の上半分は全く見えない。そして下に白色の着物と黒色の着物を着た服装をしていて山道を全く意識していない草履を履いていた。ただの旅人のようなそうでもないような。そして慣れた足取りから住人のようにも見えたが分かる人には分かるらしい。

 

「やぁ、盟友。久しぶりだね。」

青色の外ハネしている髪をしていてポケットの沢山についた服装をしている。肩や腹の周り、そして足元にも付いている。リュックを背負っているがいつも満タンで何をいれているのかは全く知らない。それに青年が聞くようなことはないので余計に謎のままである。近くの工房で何かを作っている鍛治職人で名前は河城 にとりという河童の妖怪だ。序列的には一番下になるのかもしれない。

 

「最近の調子はどうだ。」

青年は平然として答えていた。別に隠すような気もないのだろう。

 

「とても好調だよ。でも、まだ解決していない事もあって今はとても大変なんだ。」

手で汗を拭ったのかその場所に黒い汚れを付けたにとりはそれだけの就労を行なったのだと思われる。青年はそこだけを見つめていて恥ずかしいのかにとりは顔を赤らめていた。

 

「そうか。嫌なことを任せてしまって悪かった。それでもやりたいと思うことは辞めるのは良くないと思ったが人に迷惑かけるのも悪い。どうしたものか。」

 

「良いよ。気にしないで。私も楽しくやり始めたところだから。」

にとりは楽しそうな事を前面に押し出したような表情をしていた。青年も仕方がないので笑ってその場は過ごす事にした。

 

「それでね。盟友。今困っている事があってね。ポンプを作り上げたいんだけど何か案はあるかい。」

 

「急に言われても困ったものだ。今の状況も何も分からない。」

どうやらにとりが悩んでいたのは地底での温泉作りのことについてだった。青年は知らないことでもないので考えてはみるがどのような状況になっているのかはさっぱり分かっていない。そもそも行くような事がなかったのと行けるような地上の状況ではなかったとも言える。

 

「間欠泉みたいものを汲み上げる方式に変えることにしたんだ。そっちの方が安定するし安全だよ。それで探してみた結果見つかったには見つかったんだけど汲み上げる方法がなくてね。どうしたものか考えているんだよ。」

 

「それなら吸引みたいな方法か温度を上げて上げてせるのも悪くない。」

 

「そういうものかな。まぁ、盟友の言う事を信じてみる事にするよ。」

 

「そうか。くれぐれも怪我はするな。俺はしばらく関わることは出来ない。」

 

「そうだよね。何かあったら私にも聞かせてね。一人で抱え込まなくても良いからさ。体に毒だよ。」

 

「優しいな。だが、その甘えは断ち切る必要がある。今は鬼になって皆を退け続けなければならない。その気持ちだけ受け取ることにしよう。」

青年の返答は人の優しさを卑下にするようなものだった。それでもにとりは落ち込んだりするような事はない。そもそもそのように言うのならそうしてあげる方がいいと言う事を知っているから。もし曲がり切った道に進むなら止めるだけ、それだけだった。

 

「多くの厄が集まっていますので私にも話を聞かせてくださいね。」

後ろから声がしたが青年は一切の驚きを見せなかった。まるで見えていたかのような感じで何も反応というものは見せなかった。

 

その人は緑色の髪をしているゴスロリ長の赤と黒のまだらなドレスを着ていて頭や腕、髪留めには白いフリルのついた赤いリボンをつけている。スカートの部分には緑色でぐるぐるとした模様が入っている。落ち着きのある雰囲気があるが厄神様と言う神であるのには変わりなかった。名前は鍵山 雛だ。

 

「その必要はない。」

青年はきっぱりと断るとその場から立ち去ろうとしている。それを止めたのは雛の右手だった。黒色の上着の袖を掴んで離そうとしない雛に青年は足を止めてその人の欲求に答える事にした。別に座っていれば良い。無駄な時間は使うがその程度で済むのなら払ってやるつもりだ。

 

「座るか。」

青年は気が動転したかのように踵を返すと今流れている清流がある川の近くの河原に座る事にした。至って普通の石の中に黒い石が混じっている。黒い石は今青年が身につけている剣や小刀の原料となっている。

 

「ええ。」

雛も短く答えていた。落ち着きのある激しい愛の表現に仕方がなく付き合う事にした青年は川原へと足を踏み出して座る事にした。そして左腕に絡まるように雛は青年との距離をを縮めていた。青年は気にする事なく座っていた。

 

「盟友、雛のことを意識してあげたらどうなの。」

にとりはそんなことを言っている。見ていれば露骨にもほどがあるが青年は全く問題視していなかった。逆に言えばそのような場面でも仕方がない程度にしか思っていない。

 

「男も女も区別したことのない俺にそれを言うのか。」

 

「そうだったね。ならもう仕方がないかな。」

 

「また来てくださいね。こうしているととても気分が良いんですよ。」

雛はべったりと青年にくっつきながらとろけたチーズのような柔らかい表情をしていた。青年はその顔を見て子供のわがままに付き合う親の顔をしながら前を流れている雄大な自然を眺めている事にした。

 

「そうか。それならそうしていろ。」

青年は冷たく吐き捨てるように言った。だが、その言葉には優しさがあるらしく誰も文句は言わなかった。

 

ここに来るような事はもう二度と訪れてほしくはないと思う。ここにいる人は出来るだけ巻き込みたくはない。それにどのような事になるのかも青年には分かっていない。抽象的な表現を曖昧に説明するような苦行は続ける為にここで立ち止まっているわけにはいかなかった。青年は二人に止められても前へと進む。

 

確かな意志と信念を持って。

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