妖怪の山の頂上。その場所には外の世界から移り住んできた守矢神社というものが置かれている。最初は人里の主に男性が毎日のように会っていたのだが今ではまばらになっていた。神社なんて毎日来るような場所でもないし一日を費やしてここに来るとなると足が遠のく。それに博麗神社があり、命蓮寺も出来ているのでそちらの方に少しだけ取られているようにも感じる。
「此処が俺が用事がある場所だ。」
黒い上着を着ている青年は大きな赤い鳥居を見上げながら隣に居る青色の少女、天子を見ていた。身長的に青年の方が小さいのでほんの少しだけだが上を向いて話す事になる。歩いている途中でも目を離さないようにしているのでどうしてもそのようになってしまう。
「此処が守矢神社なの。」
「そうだ。」
青年は面倒臭いのか適当な返事をしているだけだけだった。これから話す内容によってはどうしてもそうなる可能性もあるので仕方がないのかもしれない。
「人間は此処で願い事をするのね。」
「天子はしないのか。」
「天界は歌って踊って食べて飲んで寝て起きて。それ以外は何もないから。」
天子は何処か楽しくなさそうな旬とした表情をしていた。珍しく縮こまっているので何処か悪いところでもあるのかもしれない。
「そうか。それは相当つまらない場所だったのだろう。」
青年は特に何か考えているということでもなかった。何もしていなくても楽しい環境に居られるのならばそれはそれで良いだろうが身を置いてみないと見えないこともあると思う。天子のような不良を生み出すこともあるだろう。
「分かる?だからここに来て水遊びしてたのよ。」
「子供か。」
「何よ、悪いの。良いじゃない何をしてても自由でしょう。」
「節度を守っていれば問題はない。」
青年は兎に角前に進むことにした。此処で議論をしていても一歩進むような事はない。
中と言っても何もないような神社らしい境内となっている。手前の右側には手水場があり左奥にはお守りなりを売っていると思われる小屋がある。参道は綺麗な状態に整備されていて人はかなり少なかった。そもそも滞在する時間も少ないのでどうしてもこうなるのだろう。二人は鳥居の縁から参道を歩いていく事にした。だが、幻想郷では神は目に見えるようになっているのでそうする理由というのは何もない。強いて言うなら何となくの気分であろうか。それもそもそもどうかと思う。
「こんにちは。ようこそお越しくださいました。」
此処にいる巫女はそう言ってから深々と挨拶する。形式上必要な事なので仕方がない。
「じゃあ、何かちょうだいよ。それくらいはあるでしょう。」
青年は隣の人がそのように言った瞬間に頭にチョップを一発かました。
「痛いじゃない。何するのよ。」
「神への冒涜だ。此処では発言には気をつけてくれ。」
今二人に頭を下げているのは風祝で現人神の東風谷 早苗である。緑色の髪をしていて青年から見て右側に一房の髪を結っている。白い蛇が髪を巻いているような感じになっていて上の方では蛙の髪留めをしている。白色の巫女の服で清潔感のあるものだった。何処かの神社とは違う。
「早苗、少しの時間だけこの人を預けてさせてほしい。神奈子と諏訪子に話したいことがある。」
青年は一気に話を進める事にした。挨拶も何もないがそれでこそ青年であり普通にしていたらそれは偽物だろう。偶にするので一概そうとは言えない。
「分かりました。案内いたします。」
早苗はいまだに堅苦しい感じをしている。巫女としての務めは素晴らしいがもう少し気を抜いてほしいと青年は思っていると思われる。そんな表情をしていて顔を出ていた。
「頼む。一人で行ってもいいがそれは色々と不味いだろう。」
「そうですね。でも通すのは貴方だけなんですからね。」
ニコッリ笑う早苗はいつも通りの感じがある。これが女の武器というものなのだろうが青年にはあまり通用しているようには思えなかった。元々そのような観点は青年はかなり狂っている。参道を歩いて行く間その静粛な雰囲気に天子でさえ何も話そうとはしなかった。それとも天界にはないので見て回っているらしい。青年は早苗に連れられるままにされていた。
「天子を頼む。あれだったら参拝の仕方でも教えてやってほしい。」
「貴方も大概ですけどね。」
早苗は珍しく毒を吐いたところで青年は本殿の奥にある居間のようなところへ行くために襖に手をかけていた。そして開ける。
中は何もない。基本的に机なり座布団が置かれていたが掃除でもしているかのように綺麗な状態だった。そして畳の上で寝そべっているので何かあったとかと思っていた。
「何の用だ。」
紫色の髪をしていて背中には注連縄を掲げている八坂 神奈子という人物がいる。赤色の服装をしていて男勝りのような豪快な性格をしていると思われる。
そしてもう一人。金色の髪をしていて茶色のシルクハットのような帽子に蛙のような目をしているものをつけている。そして白い服装の上に青色の服装をしていて蛙の絵が書かれている。何のためなのかはよくわからない。ニーハイソックスを履いている。
「今日は戦いに来たわけではない。話にしに来た。」
青年は腰から鞘を握って抜くとその辺りに投げ捨てていた。そうする理由はわからないが本気であることを示しているつもりなのだろうがその効果は何処まであるのかはまだ分かっていない。
「何の話だ。」
「気楽に行こう。」
青年はまず加奈子を落ち着かせる事にした。早苗はこの辺りのことを言っているのだが本人が気づくはずもない。
「それで何の話するの。」
諏訪子は変に子供っぽく聞いている。身なり的にはそんな気もするが背は青年よりも大きい。複雑な気分で青年は諏訪子とは相手している。
「神として感じていることもあるのだろうが何か嫌な気がある。其処で協力を仰ぎたいとい話だ。先程ある白鵬天狗の話では天狗が惨殺されているらしい。それは無差別ということではなく天狗だけだ。そのことは知っているな。」
「ああ、話だけは聞いている。天狗は元々この山の頂点に居たからまだいざこざがあるからどのようになっているのかはまだわかっていないがな。」
「妖怪の山で行動を起こすのに邪魔なものとは何か分かるか。」
青年は一言聞いている事にした。
「天狗か。それも哨戒天狗。確かに何か起こそうとしているのは言うまでもない。」
神奈子は少し考えるような事をしていた。諏訪子も静かだが確かに青年の言い分も間違っていないのか何か反論を言うようなことはなかった。
「それで何か掴めているのか。」
「俺は掴んでいない。今日初めてその話は聞いた。だが、一番隠れる場所が多く人里に近くて安全な場所といえば此処になるはずだ。天狗を惨殺できるほどの人か集団がその山の中にもう潜んでいるかもしれない。守矢神社、いや妖怪の山を守るためにも此処は協定を組まないか。と言う話だ。」
「それは賛成しない理由はないね。私の存在意義がなくなるのは良くない。」
諏訪子がそう言ったので神奈子も何か言うようなこともないのだろう。
「神奈子はどう思う。」
「私は少し今後の返事は遠慮させてもらう。どうなるかまだ見定める必要がある。それによっては妖怪の山の種族達に伝える内容が変わってくる。」
「そうか。相手が何してくるのか分からない以上はまだ焦る時ではない。ゆっくりと確実に相手の首を締める事にしよう。」
青年はその場から立ち去ろうと剣を握っていた。そこで何か思い出したのか青年は首だけで二人の方を向いていた。
「これから大きな賭けに出る。その時は上手く動かしてほしい。」
襖を開けて外へと出て行く青年はまるで結果が見えているようだった。
神奈子も諏訪子も置いてけぼりにする最後の一言はどのように作用するのか。