人里の南西側に位置するこの場所にはある古道具屋がある。店の外装はとてもではないが良いものではなくて人を寄せ付けないように置かれているとしか言えないようなものも置かれていることもある。
その場所へと一人の青年が現れた。草履を履いた一身を黒に染めるかのようなマントを羽織っていて黒色の上着と白色の着物を着ている。そして笠を被っていてお尋ね者と人相は変わらないが自身が気にしていないので何を言っても変わることはないだろう。
「邪魔する。」
青年は身軽な感じでさらっとその店内へと入っていく。此処は古道具屋であるがその感じは残されているものの一見すれば整理のされていない雑貨屋に見える。服や食器、金品に武器。鍛治と萬集癖いう趣味が高じた雑破な店内だがこれだからこそ、この店に来る意味があると思われる。
「よく来たね。最近顔を見せないけどどうしたのかな。」
銀髪の短めな髪をしているその店主は着物と洋服を合わせたような和洋折衷の服装をしていて黒と青が非対称的な服装をしていた。右腕の袖が黒色、そして左腕の袖が青色をしていて足元は青色その裏を黒という感じだ。腰には朱色の小さなカバンを巻きつけている。
「張り紙は見ていないのか。此処に篭っていれば情報は難しいか。」
「そうだね。最近は寒くなってきたからね。それで張り紙というのは何かな。」
「口が固いと思って話すがその張本人が此処にいる。外には出づらいがもうそろそろいいかと思い始めたから挨拶程度に寄ってきた。」
「突拍子も無い話の展開にはついていけないけどつまりはそういうことになるんだね。それで何か欲しいものはあるかな。」
「あるにはあるが。今はそうだな。金で買えるようなものではない。」
「そうなると何かな。」
「香霖の腕を借りたい。もし武器を作りたいと誰かに言われたのならちゃんと作ってやって欲しい。誰であろうともしてほしい。材料費程度は最低限取ってほしい。俺がほしいものはそれだけだ。」
「よく分からないけど君の武器は作れないという事でいいかな。」
「そうだ。これから大きな事を起こす。その為の布石でしかない。」
「ふーん。難しい話だけどどうも有難う。快く売ってあげるよ。」
「そうか。これから命蓮寺の方へと向かっていく。」
青年は踵を返して店内から足早に出ていくと旋風のような感覚を覚えた店主はどうしようもない大きな荷物を置いていかれたような感じがしていた。
灯籠が立ち並んでいるこの場所では参道として成り立っていると思う。草は抜かれていて歩きやすいように整備されていることには間違いないが特に飾りのようなものはなく明かりを灯すだけの灯籠しか置かれていなかった。そのような場所の奥ではどのような場所となっているのか。青年は何となく楽しみにしていた。
大きな門のあるその寺では尼僧が日々修行に明け暮れている。青年も一度は身を置いたことはあるがその音に仇で返すような普通は許されない行為をしてこようとしていた。それでも青年は引くようなことは出来ないので前へと突き進むしかなかった。
「久しぶりだ。」
青年は挨拶程度に会釈をしてから中へと入っていく。此処には門番らしき人がいるがさほど会ったことはない。どうしても生活のリズムというものが違うらしく食事の時にしか会うようなことはない。
その人は犬のように耳をしている暗めの緑色をしている髪をしていて小豆色のようなワンピースの服装をしている門番で雑用係をしている。そんな訳で青年はすぐに通り過ぎていた。その耳に後ろから聞こえる大きな声も聞こえていなかった。適当に手だけは振っておく。
「何の用ですか。」
青い髪をしている白い服装をしていてあまり顔の様子を伺うことはしにくい服装をしている人が立っていた。そもそも此処には来客というものは少ないので門番の大きな声に驚いてる急いだきたという感じなのだろう。入道使いの雲居 一輪という人だ。
「聖に会いに来ただけだが。」
青年は至って普通に答えているだけで何か悪気があるようではなかった。そのような事を感じることは少ない青年なのでそうなるのも仕方がないものだと思われる。
「貴方はお尋ね者です。此処で捕らえても何も文句は言えませんよね。」
その人はそのように言っていた。この命蓮寺という建物は仏教の教えを説いている場所であるのでこのような正義感の強い人は多くなると思われる。他の宗教はそうでもないということではない。
「そうか。そうなるのかもしれない。して、どうする。聖と相討ちの俺に勝てると思っているのか。」
青年は今だに平然とした表情をしていた。それこそ何かあるようにも見えないわけでもないがもう既にあるのかもしれない。何か隠しているようなことがあるのかもしれないがそれを露見させないので一層怪しくなっている。
「勝てないでしょう。ですが聖様には会わせたくありません。その事だけは承知してください。」
「丁寧に言おうとも変わらない。邪魔するなら斬る。俺はいつもそうしていた。」
青年は腰に携えていた剣の柄を撫でるように触りながら握っていた。何かやれるようなことはないと思われるがそれこそ挑戦状を叩きつけられるようなそんな気分にならないこともない。青年はそれを楽しんでいるのかどうかは知らないが青年の表情はなぜか柔らかいものだった。
「それなら私は戦います。己が信念のために。」
右腕に持っていた金色の輪はこの人が持っている使いの者を使用するために使われている。
ピンク色の雲のような得体の知れない入道であるが顔と拳だけが具現化していてその他の部分は何処にあるのかは不明である。もしかすると金色の輪の中に入っているのかと思うがそのようなことはあり得ないだろう。どちらにせよ興味のない青年は聞くようなこともなかった。
「俺は目標のためにする事にしよう。行くぞ。」
青年は一気に剣を抜いてその勢いに任せて前へと突き進む事にした。その瞬間には青年は一輪の近くまで来ていた。元々の距離も近かったがその速さには何とも追いつけないところもあった。
そこは入道である雲山が自主的に一輪を守る形で振るっていた。一方で一輪本人は何もすることは出来なかった。きっと雲山には青年が何かしようとしているのはわかっていると思われる。だが一輪が傷つくのは許せないという事だろうか。
青年は雲山の拳に押しつぶされるような形で弾かれると見事な宙返りを披露しながら完璧に地面に着地していた。その美麗な体捌きには見惚れるところがある。
それで負けているのかと言われるとそれはまた違う話になるので今のところは何か言えたようなものはない。それとも何かあるような気もしなくもない。
「貴方の正義は何処にある。」
「私の中にある。今度は必ず仕留める。」
「いい心意気だ。」
青年はその場所から剣を振るおうと地面を蹴りだしていた。その速さは今までの比でなかったがそれでもやれねばやられるので兎に角動かす事にした。
雲山の右側の拳を青年に対して真っ正面から当てる。
青年はその上を飛び越えていた。軽やかな身のこなしで完璧に地面にまで着地した青年は方向を一気に変えてその向きにひた走る事にした。
その辺りは盲点だった。雲山の拳だけというものは飛び越えるのには最適であると考えられたらしい。
一輪は素早く左側の拳も繰り出そうとしているがそれはもう遅かった。
青年は飛び上がらせた自身の体に回転を加えて上から襲いかかっていた。
その身のこなしと突発性には一輪も雲山もついてこれなかった。
嫌な音を立てて倒れていたそれでこれはもう助からないと思われる。
「雲山だったか。安静にさせてやってほしい。絶対に動かすな。」
青年はその言葉を残してこの場を後にする事にした。