青年をお尋ね者とした記事が出回ってから幻想郷の何処もが騒然としていた。その法外の報酬に誰もが熱狂していた。そして誰もがそれを求めてひた走る。
だが、現実を知る者はその事を花で笑うだけで世間の流れには乗らないと考えている人も居た。動き出す者、静観する者人それぞれだが大きな影響を与えたのは言うまでもない。
赤いカーペットを敷かれた一室では一杯の赤い色が濃い紅茶とシャキシャキのレタスとジューシーなハムが挟まれたサンドを食す紅魔館の主人である青髪の少女は優雅な朝食を過ごしていた。いつも通りの光景だがそれを蹴破ったのはメイドだった。
「お嬢様、見てほしい記事がありました。」
銀色の髪をしている耳元に三つ編みのある髪型をしていてバッサリと切っている。少しだけ尖っているように見えなくもない。そして青色の服装に身を包んだその少女は一枚の紙を見せていた。
「見知った人間が写っているわね。遂にやっちゃったのかしら。」
冗談めいた口調で少しだけ笑っているような主人はその記事を一目見たぶんには楽しそうにしていた。それとも何をしたのか興味が湧いてしまったらしい。
「前にもお尋ね者の話は聞いてましたか。どうやら私たちの見知った人間を探していたようです。どうなされますか?」
メイドとしては主人に選択を迫っていた。どうやらそこまでするほど必要な事であるらしく鬼気迫った表情をしている。よく記事の内容を知らない主人は仕方がなく読み始める事にした。
「どうすると言われても。なかなか面白そうな事をするようになったとしか答えることは出来ないわ。元々白紙の運命だから何をしても問題はないわ。」
「でしたら釣れ出すために何かされると言う事ですか。」
「そうね。報酬も凄いものよ。これで私も幻想郷に名を売ることが出来るわよ。」
「そんな簡単に行けるようなものではありませんでしたよね。」
メイドは主人の興奮した表情に対してあまりにも落差のある引き下がった表情をしていた。どうやらメイドにはまた違うものを感じたのだと思われる。
「何をしたいのかを知るまでは何も動けないと思われます。少し時間を待つのが良いと思われます。」
「ふーん。そうね。それでも楽しそうな事には変わりないわ。やるわよ。」
メイドの意見も聞きつつも自分の意見を曲げるようなことは出来ないらしい主人は平行線を描き続けるので交わるような事はなかった。
「分かりました。お嬢様がそう仰るのなら私も尽力致します。ですが、一度パチュリー様に意見を聞きに行くのはどうでしょうか。」
メイドは一度頭を下げてからそのように答えた。無礼であるのを承知した上でそのように話すので主人も怒るに怒れない。それにメイドのその発言は間違ってもいない。
「そうかしこまらなくても良いのよ、咲夜。早く行きましょう。」
紅茶の入ったカップを右手で持って一口だけ名残惜しそうに啜っていた。それから立ち上がると時間や空間を超越してもらって日の入らない場所魔へとたどり着いていた。随分と静かになっているその図書館では二人の少女がその場にいた。赤色の髪をしている黒色のスーツのようなものを着ている司書である小悪魔と紫色の服装に身を包んでいるパチュリー・ノーレッジ。
「パチェ、聞きたいことがあるんだけど時間いいかしら。」
白い服装をしている紅魔館の主人であるレミリア・スカーレットはもう少し聞き方があるのではないかと言いたくなるようなほどの言い方をしていた。右後ろで背筋を伸ばして立っていたメイドも知らないわけではないが目に余るものがあった。
「良いわよ。最近暇にはなってきたところよ。」
パチェ、改めてパチュリーは目の前で読んでいた魔道書にしおりを挟み込んで閉じると本を読む際に使用する小さな眼鏡を外していた。そして机のパチュリーから見て利き手である右側に置く。それからその場から動く事はなくその場所に座っていた。その前には机とフカフカのソファが置かれているのでレミリアはその場所に座っていた。
「意味の深そうな発言ね。」
レミリアは座っていたソファからはキョトンとした表情をしていた。その顔はあどけないと言うのか少し馬鹿っぽく見えた。口をポカリと開けて話す言葉を頭の中から見つけ出そうてしているだけだった。ただそれだけだ。
「それは気にしない事ね。それで、何か聞きたい事でもあるのかしら。」
「この記事を見てほしいのよ。」
レミリアがそう言っていた。そして特に命令もなくある記事をパチュリーの目に入る場所に置いていた。大きな一枚の写真と少々の文の記載されているもので一見で何が起こっているのかは容易に想像できた。それだけ一枚の写真の衝撃が強いと言うべきなのかもしれない。それだけなのだがまた違う物があるような気がしてならない。青年の思惑というのか。
「これは私達が悪いのかしら。それとも頭でも可笑しくなったのか。」
パチュリーは微笑していた。どう反応を見せて良いのかわからず仕方がないのでそうしているだけと言う感じには自分も同じだったので何か言うようなことはなかった。レミリアも半分ぐらいはそうだったけど何かあるように思えたから楽しくて仕方がない。
「それは分からないわ。もしかしたら両方かもしれないわね。」
レミリアは呆れたように笑っていた。どう話したくはないらしい。レミリアの能力を持ってしても何も書かれていないはずの白紙である青年の運命に誰もが翻弄されている。レミリアがこの様子では他の人は余計に振り回されている事になる結果となっていた。
「それはないでしょう。幻想郷は変わった人しか居ないんだからこうでもして貰わないとね。」
「パチェ、何を期待してるの?」
レミリアは意味のありそうなその発言に見た目通りの反応を見せていた。純粋に不思議と思ったから何か言うようなこともないとそう言う意味合いなのだろうか。それともまた違う所があるのか。
「でもこれで元気そうにしているが分かるわね。」
「それでパチェ。この件、私たちも探してみないかしら?きっと見つけれるはずよ。」
「お断りよ。まず何かあるようにしか思えないわ。それとレミィが求める理由は分かるけど私達より強い人がいる事には間違いないわよ。力をつけるところから始めましょう。」
パチュリーのその言葉にはここにいた二人が胸をキュッと締め付けられるような気持ちとなっていた。確かに敗北を喫しているので今の力では何も対応できないのだろう。それに多人数で捕まえてるのだろうか。隙があるのか無いのか分からないのでどのようにすれば誰かの事を考えていると難しい所がある。
「そう言う言い方もあるわね。仕方がないわ。」
「咲夜、貴方が最初にこの記事を見たのかしら。」
「いえ、美鈴さんが門番をしているところで無償で届けられたようです。」
「そうなのね。美鈴は何か言っていたのかしら。」
「それは気になるわね。」
二人は咲夜がこれから何を話そうとするのか興味を持ち始めていた。そして二人の視線はそちらへと向いているので咲夜は身を一歩だけ引いていた。だが、話すには話すらしい。
「安心した、と言われました。何か意味はあるのでしょうか。」
「きっとあるわよ。」
パチュリーは強く主張していた。そしてそう言うならとレミリアもその意見には賛成していた。
「呼んできましょうか。」
「お願い。」
レミリアがそう言い終える頃には素早く移動されていた門番は急に二人からの尋問を受ける事になり戸惑いを隠せていなかった。