青年英雄記   作:mZu

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第25話

灰色に包まれたような色もないこのような場所では一切の交流も許されるはずはなかった。

 

だが、人里のある幻想郷とは曖昧な結界のおかげでそのような事はあり得る話となっていた。あり得ると言う話なだけで本当のところは一切分かっていないがもしかするとそのようなことがあるのかもしれない。

 

「はい、創造主様が出来るだけ早く皆に伝わるようにしたいとそう言うことですね。分かりました。それでは一部だけ受け取らせていただきます。」

白い髪をしていて少しだけ頰の痩せこけている色白の頭に黒いリボンをしたショートの髪型の少女はある天狗からある髪を一枚だけ受け取っていた。

 

どうやらその人は幻想郷のあらゆる場所に新聞を届けているらしく他にも来るだろう、一言忠告してから羽を使って何処かへと向かってしまった。

 

結界の境界がある異変から曖昧なって以降偶に生きている者が来たり来なかったりするがここ一年近くは来ていない。何処かに隠れているのかもしかすると死んでしまったのか。幽霊やこれからの転生を待ち遠しくしている者が待機している冥界にいる管理者とその従者は心配していた。

 

もう、そのような心配は不要であるらしい。一枚の紙に乗せられていたのは後ろ姿のもので一番大きな異変とも言える時のお尋ね者の後ろ姿だった。後ろからは一本だけ髪が垂れていて青色の服装をしている男の人であるらしいが腰には二本の剣を携えていているらしく鞘が二本見えていて左手には針が三本、そして右手には小刀を持っている。その小刀の刀身は黒色をしている。その姿を忘れられるわけがなかった。

 

従者と思われるその少女は主人のいる館へと戻っていくこととした。

 

 

「幽々子様、何か気になるものがありました。」

先ほどの少女は肩と腰に一本ずつ携えている剣を振りながら主人の元へと向かっていた。

 

だが、その主人はそんな従者の姿を優しい目でなんとも思っていないように見ているだけだった。それだけ肝が据わっていると言うのか従者の事に興味がないのか。又は違う理由なのか。それは本人に聞いてみない限りは分かってもらえないのだろう。

 

「妖夢、そんなに慌てないの。」

状況を全く分かっているようには見えないその人はおっとりとした自分だけのペースを保っていた。ピンク色の髪をしている短めの髪をしていて青い帽子には白色三角状のものとそれに繋がっている紐があった。亡者のつけるそれをしている。つまりは幽霊の類となるのだが一切そのようには見えない。それから水色の服装をしている和服を着ていて白い靴下を履いている。下駄は何故か何処かに履き捨てている。

 

「幽々子様、それが、えっと。これを見てください。」

無駄に慌てているよすのある妖夢と呼ばれた従者は主人である幽々子に先ほどの黒い羽を生やした天狗に渡された紙を見せていた。天狗が渡しているので新聞なのだがそれに記載されている内容に妖夢は腰を抜かして幽々子に知らせに来たらしい。だが、特に動じるそぶりは見せない幽々子には振り回され続けるのだろう。

 

「山本さんがね。何をしたのかしら。」

クスクスといつも通り笑っている幽々子のその姿は妖夢には悪魔に見えているらしくハハハ、と同じく笑っている声は出していたが口が引きつっていて明らかに演技をしている。それを見てまた幽々子は笑い出す。一段と大きくなった声に妖夢は合わせるように声を出すが別にしなくても良い。

 

「それでこれを発表した博麗の巫女及びその管理者は何を考えているのかだけど何か分からないわね。」

一面に写真の載せられている紙に書かれている薄い文章にはそれだけ急いで作り上げたものであると言うことを言わなくても示していたのだが幽々子はその事には気にしていなかった。其処には簡単にまとめると山本さんと幽々子が呼んでいた人を差し出すとどうなるのかを示していた。その頭でもおかしくなってしまったのと思われる報酬に幽々子は深く考え込んでいた。

 

「これは何かしらね。一切何をしているのかも載っていないのね。何か裏がありそうね。それとも私怨が混じっているのか。考えれば考えるほど色々と出るわね。」

 

「妖夢、これを見てどう思ったのかしら。」

幽々子は聞いていた。何か深みのあるコーヒーのような声に慣れなかった妖夢は思わずひっ、と声を出していた。実際其処まで身を構えるような必要はないのだがそうさせるのは幽々子の腕なのだろうか。

 

「どう、と仰られましても。返答には困ります。」

妖夢は一旦自分の中で心を落ち着けさせてから話していた。一部始終を見ていた幽々子は状況にも似合わずに笑われ続けているのだがそのような事はもう関係ないのだろう。

 

「何か復讐をしたいなんて考えているのではないの?」

 

「何を言っているんですか。幽々子様。確かに負けてばかりですけどそんなことはありえません。」

 

「私はとても恥ずかしいのよ。妖夢はいつも負けるから最近では何も期待していないのよ。どうしてくれるのかしら。」

 

「分かりました。やらせていただきます。見ていてくださいよ。」

 

「頑張ってねー。」

棒読みにも等しいようなその声を出した幽々子は一切そのようなことは気にしていなかったようだ。妖夢の言ったことは何も期待していないのではなくてその逆である。今日はどれほど歯向かうことが出来るのだろう。それと同時にどれほどの腕を持ち合わせているのだろうか。それだけに限る。その時間が永久に続けばそれはさぞ楽しいのだろうが終わりがあるから美しい物もある。それを知っている幽々子は永遠という言葉は好きではない。

 

「幽々子様、しばらくの間応援をお願いします。」

妖夢は腰と肩から抜いた剣を振りながら模擬的に相手を切り倒していた。乱舞をしている妖夢のその健気な姿もそれを大きく貶していつも帰っていく青年のその剣もどちらも好きだった。人それぞれ違う味というものがありそれを噛み締めるのは幽々子の楽しみだった。

 

「もし良かったら私が相手しましょうか。きっとやれるわよ。」

幽々子にとっては自分が出るというのはあまりにもしたくはなかった。冥界の管理者として最後の砦として成り立つはずの自分がまた違う武器を持って従者の剣に付き合うということも好きではなかった。

 

それでも自分の剣筋は青年には届かないのだろう。幽々子は肩を並べることは愚か触れる事さえも許されないように思えるその姿を間近で見ていたかっただけなのに今ではもう遠くへと行ってしまった。

 

「妖夢、私に勝てても慢心することは良くないわよ。それだけ山本さんは届かない存在なのだから。」

桜散るその花びらのように儚く、そして寂しげに言った幽々子の言葉は妖夢の頭の上に舞い降りてそれを不思議に感じていた。妖夢はどのように答えるのが正解なのか分かっていなかった。

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