幻想郷を引っ掻き回しているお尋ね者の記事は勿論神の間でも話題となっていた。
妖怪の山の山頂には大きな社を持つ守矢神社がある。そこで祀られている神である二人は何か企んでいるかのような表情をしていた。
二人には少し大きめな気もする卓袱台の上に湯呑みを置いて何かを話している二人は誰にも見られないようにそして聞かれないようにある一室に集まっていた。神として祀られている二人は社にある結界によって守られていた。普段なら開けるようなことも許されないが住人とその人が認めた人だけは入る事はできる。
「今後は何をしたのかね。」
背面に注連縄をつけている青紫色をした髪をしている赤色の服装をしている女性は疑問に思っていた。
「本当に飽きないね。」
真面目に考えているように見えるその人とは違い、楽しそうにその事について見ている。
その人は子供のような顔つきをしていて黄色の髪をしている少女である。妖怪の山の土着神として崇められているのでこの地域では最強とも言える。
「だが、気になる事はどうして此処まで発展したのかだ。その点はどのように考えている。」
青紫色の髪をしている女性は子供のように楽しそうに笑っているその少女に聞いていた。周りに影響を与えるのは聞いている方だが実際に力を持っているのは聞かれている方だった。自分の命に関わる可能性があるので此処では慎重に考える必要がある。
「そう言う神奈子はどのように考えているの?」
相変わらず楽しそうに聞いているがどれだけ重要な事であるのか理解していないようにも見える。それに神奈子と呼ばれたこの女性は大きく一つだけ息を吐いた。
「彼を潰そうとしているようにしか見えない。それに此処までやろうとする管理者もどうかしている。」
「言うねー。一応その下にいるからどこで聞かれている分からないよ。」
「その事は今は関係ない。」
「まぁ、良いかな。私はねとても楽しくなりそうだよ。この人が前に来た時に何を話していたのか覚えるかな。自分を出汁にしてくれみたいな事を言っていなかった。つまりはそう言う事なんだろうね。」
「これを起点として妖怪の山の皆を強くさせようとしているのか。これは考えつかないような事をしてくれる。」
神奈子は写真として載っている男性の顔を見ながら深く唸っていた。考えても何も進まないだろうがそうさせるだけのインパクトというのはあるのだと思われる。
「これからがとても怖い人物だよ。何をしてくれるのかな。」
言葉とは裏腹に楽しそうに答えているその人は神奈子の瞳には全く異なる事を考えているように見えた。
「この山は諏訪子がしたいように使うと良い。土着神として妖怪の山を失うのは自分の命の灯を吹き消す事になる。私は知らせに行くようにする。」
「そうだね。最近は被害は少なくなっているそうだから其処まで警戒する意味もないと思うけど精進するように頼んできてよ。」
諏訪子はそのように述べた。意味などない。ただ青年が用意してくれたものだから存分に無駄なく使おうとそう考えただけだった。それだけなので使わざるをえなかっというのか。使うように促されてしまったのかそのどちらかだろうがやるしかなかった。
「分かったよ。そう言うなら天狗と河童を中心にして妖怪の山全体に伝えていく事にしようかな。」
重い腰を上げた神奈子は社に取り付けられている襖から外に出ると襖を閉じてからどこかへと向かったのだと思われる。襖の先に居る神奈子の姿はとうに見えないので諏訪子は卓袱台の上に置いてある湯呑みを持って一口だけ啜る事にした。音は特にないがある音だけが近づいてくる。
「神奈子様、諏訪子様。あの記事は何でしょうか。」
緑色の髪をしている神子のような服装をしている少女は興奮した様子で襖を開けていた。あの記事というのは何か分からないが先ほど話していたものと同じであると思われる。
「早苗、これから忙しくなるから体を十分に休めておくと良い。」
諏訪子はゆっくりと湯呑みを置くとその場所からは動く事なく何かを含んだような不敵な笑みをこぼしていた。それを不審に感じた早苗だが聞くまでもなかった。
「わかりました。それでもあの記事について諏訪子様は何か知っているのですか。」
早苗と呼ばれた水玉模様の青色をしているスカートをはいている少女はその布を折り曲げて襖を閉じてからその場所に座っていた。動く気もなければ出す気もないのだろうが別にどこからでも出るような事はできる。
「知っている事は何もないよ。それでも強いて言うならこれから幻想郷は大きく動くだろう。此処まで何をしているのかは分からないけど揺り動かされているのは紛れも無い事実だろうね。現に管理者がお尋ね者として巫女の名を借りて各地に呼びかけている。こんな事をされているんだから同様になるのかは誰も予想がつかないだろうね。」
諏訪子は敢えて早苗の方には目線を合わせる事はなかった。早苗はもう聞く事もないのでその場から立ち去ろうとする。だが、それを止めたのは諏訪子だった。
「早苗は、どうしたいの。」
「諏訪子様。私はまだ心の整理がついていないので何も言う事はできません。それでも一つだけ。とても悲しいです。どうしてこんな事になってしまったのか。知ってますか?」
早苗はやはりそうであったらしい。してやった感じのある表情を浮かべている諏訪子はそれからは何も話すような事はなかった。少しだけ早苗を惑わせるようなつもりなのだろうか。
「早苗には何か違うものが見えているんじゃないかな。これは青年は選んだ道なんだよ。私は全力でこの機会を使わせてもらうつもりだよ。」
「でも、あの人は何をしたと言うのですか。何もしてないないじゃないですか。」
「それはどうだろうか。もしかしたら見つからないから探しているだけかもしれないし何か重要な秘密を握っているだけなのかもしれない。これは本人と管理者にしか分からない問題だよ。」
諏訪子はそれだけを早苗に伝えていた。そして早苗は仕方がなくこの場からは去る事にした。その目には涙が浮かんでいたのだが諏訪子は何もしようとは思わなかった。