青年英雄記   作:mZu

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第28話

安寧を司る神が祀られていそうなほど静かな空間では珍しい客が現れていた。その人は空から門の前に向かってきていて黒い羽を持っている人物で幻想郷からする位置的には反対側から来ていそうだ。

 

「おはよーございます。」

元気に挨拶する門番にはその人は驚かされているようだった。聞いたこともあるような声の質と声量なので既視感があるように感じなくもない。

 

「命蓮寺の門番か?」

空を飛行しているその人はそのように述べていた。少し怖がっているように見えるが単に疲れているだけなのかもしれないので門番は気にするような事はなかった。それとも気づいていないのか。

 

「はい。」

元気良く挨拶したその門番は小豆色の長袖のワンピースを着ていて前面の一部と襟は薄いピンクとなっている。鈍い緑色をしているが黒いと言うわけではない色をしていて小さなたれ耳を持っている頭をしていて少しだけ幼くも見えなくもないが門番している場所のおかげなのかキリッとした引き締まっているようにも見えなくもない。名前は幽谷 響子。

 

「聖 白蓮とその関係者にその記事を見せて欲しい。これは管理者である八雲 紫が博麗の巫女である博麗 霊夢によって多くの人に知らせるために配布している。代金は要らない。それでは失礼する。」

門番の手に一枚の紙を乗せるとその場で少し離れるように飛んでから体を返して他の場所へと向かっていた。門番である響子はその天狗がしている意味合いはよく理解していなかったが重要なものであると言う事は分かったので渡しに行く事にした。門にな立てかけているその箒は響子の代わりに門を守っていた。

 

 

ドタドタと大きな音が響いている白い壁に囲まれた場所に立っている寺では誰もが冷たい目をしていた。だが、修行の身であるためにそれでも動かずに忍耐強く励んでいた。命蓮寺で修行している尼僧には伝わらないのだろう。少しだけ襖を開けてまた閉めていた人がどうしてそのような行為を行うのか。

 

「聖様、やっと見つけました。」

先ほど門番をしていた幽谷 響子は襖を少しだけ開けて中の様子を見てから急に大きく開けるとそのように述べた。キョトンとしている聖と呼ばれた住職でありながら修行僧に負けじと修行に励んでいる途中だったのだが状況が怒る気にはなれなかった。

 

「どうされましたか。そんなに慌てて。」

その人下に敷いていた座布団から立ち上がるとシワついた服のシワを伸ばしてから響子の元へと近寄っていた。金色の髪に紫色のグラデーションを施した髪の色をしていて白衣に黒色の羽織ものをしている女性で前の方が大きく開いているがそれ以上にはならないように黒い紐で止めていた。

 

「何か重要な紙をもらいました。見てください。」

相変わらず大きな声で元気に言っているので聖は少しだけ目を閉じて我慢しながら聞いていた。だが、聖は手に持っていた少し折れてしまった一枚の紙を見てから全員を集めるように響子に伝えた。

 

響子は元気に二つ返事で答えるとドタドタと廊下を走りながらそれぞれ見つけていた人を集めていた。

 

その間に聖は少し考え事をしていた。どうしてこのような事をしようと思ったのか。何もかも吹き飛ばされた焼け野原のようになってしまったようで何の言葉も出さなかった。いや、出せなかった。聖は全員が集まるまでは何も話すような事はしなかった。

 

「皆さん少しだけお時間をいただけませんか。」

聖は自信がなさそうにしていた。それを見ていた修行僧も反応に困っているのか苦笑していた。

 

「見てほしい記事があるのです。」

聖は霧を抜けて視界が開けた時の気持ちのままに一枚の記事を見せる事にした。其処にはこれまでお尋ね者として貼られていた人相がくっきりと映し出された写真が掲載されている記事で遂に管理者まで動き出したと言う話だ。そして捕まえた報酬というのは法外なものだった。

 

「管理者としての新たな地位とその際に必要な道具を用意する。これはどういう意味でしょうか。」

黒色の髪と金色の髪が混じっている髪型をしている人はそのように言っていた。毘沙門天の弟子である。

 

「これは凄い人間になったね。流石だよ。」

白い帽子を被っていて海軍のような服装をしている人は先ほどの発言に答えるような事なく話していた。

 

「私は少し発言は控えます。」

一歩引いたような位置から静観をするつもりらしいその人は青色の髪をしていて紺色の頭巾を被っている人だった。

 

青年とは以前に会っていて交戦した経緯から私情が混ざるのを恐れているようでその場では何もいうようなつもりはないらしい。

 

「この件については私は妖怪と人間の両方が幻想郷を刺激するようにしたいと思います。その事に異論はありますか。」

聖はここに居る人達に聞いていた。その答えは基本的に賛成であるが何故そのようにするのかは誰も知らなかった。何か恨みでもあるのなら別だがあまりそのような事に無縁そうな聖はどうしてこのようにするのかは理解出来なかった。

 

「聖様、どうしてそのような考えを持ちましたか?」

毘沙門天の弟子である寅丸 星は聞いていた。

 

「それは頼まれた事です。先日ここへと来た時に話していた事でした。私は自分の願いを成就したいのでその話にのる事にしました。」

 

「あの人は今は幻想郷を引っ掻き回した悪人だ。どうして肩を組もうとする。」

紺色の頭巾を被った人は何かを知っているように鋭い声で返答した。それには誰もが驚くが尊敬していたからこそ出てくる声のように思えた。

 

「あの人には善や悪といった概念はないと思うのです。だから私は協力してあげたかったのです。」

 

「何も知らない。聖様は何も理解していない。」

 

「そうでしょう。そうでもなければ封印されるような事はなかったと思います。」

聖はそのように言っていた。その声には何の力もなく弱々しいものだがそこまで自信を無くしていることがどうにも引っかかる。

 

これからも長く悩む事になるのだろう。それでも前には進んでいく。置き去りにされることも抜かされることもない。

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