幻想郷を揺り動かしたある男の行動とその結果は人里にまで届いていた。夢見る人里の人々は皆が叫び回っていた。それとは引き換えに悲観的になり人里での出来事には何も干渉しようともしない現実を知る者もいた。前回の異変での人里での戦闘時に記事に掲載されている写真の男の人相がよく似ているからだ。
天狗も稼ぎ時とばかりに多くの新聞を置いていったがそれでも基本的には見たことのあるような顔をしている男だった。いや、何枚もあるから疑念が確証へと変貌を遂げたらしい。それだけではないかもしれないがそうなるということなのだろう。
「お前たち、これ以上の暴動は許さない。大人しくしていろ。」
勿論この騒ぎを悲観することもなく騒ぎに参加することもなく調和を図りたいと考えている人もいる。
その人は青色の服装をしていて奇想天外な服装をしていた。銀色の髪で青色のメッシュを入れた長い髪の上には六面体と三角錐を合わせたような帽子をかぶっていて赤いリボンのその上に乗せていた。そして白いレースがスカートの下から出ている。見るからに何かあるような感じはあるが別にそういうようなことはないと思う。頭がかたいみたいなことは言っていけない。
「慧音さん、それはないですよ。これにはちゃんとした動機があります。見ましたでしょう、今朝の記事。祭りでしかありませんよ。」
「これは何か裏がある。貴様のような馬鹿の亡骸を見たくない。」
慧音と呼ばれたその人は集団で騒いでいる人に注意していた。そして浮かれ足立っているのでそれを止めようとしていた。危険だからという話ではなくて何が起こるのわからないからというだけであり現状では判断が付かないからだった。既視感のある騒ぎに慧音が自分の能力を使用としたがそれはまだ控えておくことにした。
「そんな弱く見えますか。アンタのことは信用しているから色々とこちらで準備させてもらうだけですよ。」
「お前たち、今はそんな話をしているのではない。」
慧音はこれ以上話すようなことはなかった。ここで止めておくのが一番良いだろうが現状解決するような手段も見つからないので時間が解決させてくれるのを待つしかない。慧音は誰も被害を被らないのを願うが届かぬ祈りだと気付くだろう。
人里のある場所では人里の人々がその場に座り込んでいた。その人たちは周りにいる騒がしくしている人たちとは違い人生を悲観して自分から命を絶とうとしているようにしか見えなかった。それほどに現実に打ちひしがれているのかもしれないが実際にはどこまで気持ちが強いのかは人それぞれである。
そんな人たちの前に一人の小人が立っていた。
「今こそ立ち上がるのです。これは弱き者が立ち上がるために用意してくれたステップなんですよ。少しだけ頑張りましょう。」
薄紫色のショートヘアーをしているお椀のようなものをかぶって力の枯れきった金色の小槌を左手に持ちながら人里で現場に悲観して立ち上がろうにない人のうちの一人に話しかけていた。
「そんな事言ってもあんな怪物を倒した奴にどうやって勝てばいいんだよ。」
「それは一人の力で考えているからでしょう。まだ希望というものはありますよ。諦めなければ誰かに拾われて助けられる事もあります。こんな私ですが一緒に戦いましょう。」
「そんな出鱈目なんて聞いていられるか。俺はもう人里に居るのも嫌なんだ。周りはとても騒がしい。」
「それは皆がやる気がある証拠です。小人の一人に負けるほどの力しか持っていないのですか。私は決して諦めません。」
お椀のようなものをかぶっているその小人は元気にそう言った。何の根拠もない。そして勝てるような見込みもないこの現状で負けてなどいられるのだろうか。ふとその人に響いてきた言葉はそれだった。
「分かった。少しだけ俺も頑張るよ。小人風情に人間が負けない。協力出来ることがあったら言ってくれ。」
「その言葉が私に元気を与えてくれるよ。これからは一緒に頑張ろう。」
赤い和装をした小人は頭に乗せているお椀を左右に揺らしながらまた何処かへと進んでいく。そんな凛々しい後ろ姿を見てその人は動き出した。衣服を地面に擦りながらも立ち上がるとその小人をつまみあげていた。そして自分の手の上に乗せる。
「小人の足じゃ回るのに時間がかかる。どれ、俺が運んでやる。」
「有難う。助かるよ。」
人の手の上で尻餅をついていた小人は満面の笑みでその人の行為にの応えることにした。
そしてその小人の同じく人里の人々を焚きつけていた人がいた。
その人は頭に大きな白色のフリルをつけた赤いリボンをしていて黒髪であった。巫女らしくそれらしい服装をしていて赤色で包まれていた。言わなくても分かるだろうが新聞記者の前で今騒ぎとなっている件を話した張本人でもある博麗 霊夢だった。
霊夢は記事が人里全体に行き渡る頃を見計らってその場に現れていた。何の目的なのかはわからないがそれでも何かあるのだろうと周りには人が集まっていた。その人たちの心の中は完全にはわからないが文句を言いたい人や感謝を伝えたい人、それとはまた違う感情を抱いている者も居ると思う。その中で博麗の巫女として人里の人々を牽引していくと思われる霊夢は少しの間だけ何も話すようなことはなかった。最初に霊夢に気づいた人が前に立ってから何分かした頃だろうか。霊夢はゆっくりと口を開いて言葉を紡ぐように話し始めた。
「人里の皆さんは今朝の新聞の話題はどのように感じましたでしょうか。沢山言いたいこともあると思いますが一つだけ絶対に伝えたいことがあります。一人一人ではとても弱い力ですが全体で結託して立ち上がり続けるのであれば私は降伏するでしょう。」
ゆっくりと伝えられたその巫女の言葉には誰もが興味を示していた。その理由は簡単なもので話している人が巫女だからというだけだった。しかもそれが結界の管理をしている神社の巫女ともあれば話は大きく変わる。
「ですがこれは幻想郷全体に行き渡っています。でも悲観しないで。人里として団結して一心に目的に向かうのなら負けることはない。協力するというなら管理者から何かしら報酬が得られるでしょう。ですが無償では渡せない。どれだけ底力を見せてくれるのか。それにかかっています。」
霊夢はそれだけ言って空中に浮き上がるとまた何処かへと向かっていった。
「そこの兄さん。俺は永遠亭の者だが一つ試して欲しいものがある。悪い話ではないはずだ。」
「ウサギさんがやっているところか。最近は人手不足になったかい。人気だね。ところでここに居る理由は何かあるのかい。」
「単に休憩中だよ。そこでアンタが通りかかった。話しかけない道理はない。そうだろう。」
「一つ貰おう。どのような効果があるんだ。」
「何、増力剤だよ。そこまで効力はないかもしれないが感想が欲しい。夜に飲んでみてもいいかもな。」
「分かった。師匠にはいつもお世話になっていると伝えて欲しい。」
「毎度。」
その男は笑っていた。不気味にそして狂気的に。