季節は移り変わって段々と凍えてくるような季節へと変わっていた。湿気が無いためかスッキリとした雲のない晴れを見せた幻想郷。その下では似つかないほどの惨状へと変わっていた。
人々は目には曇った物がかかっていて誰もが目の下にクマを作っていた。だからと言って誰も寝ようとはしない。何か話そうとする事もなく力を失ったように生物として生きているようには見えない。自警隊もあまり機能しておらず歯止めの効かないパラダイスへと変貌した人里の人々はイかれた目をして南西側にあるとされている命蓮寺へと歩いていた。
と言っても命蓮寺でも対処出来る人と全くもって出来ない人もいる。それの境目というのは話を聞けるかどうかである。口も動かせないのでは命蓮寺の住職は何も出来ないのでお手上げという状態である。そこで聖はある場所へと向かう船を定期的に送り出す事にした。
その場所とは魔界の一角にあるとされている仙界と呼ばれる場所で豊聡耳 神子が作り上げた世界である。彼女は人の十欲を聞き取る事で根底から何か暗いものを取り除く事ができる。それを行う際に口を使う必要はないので神子に任せる事で解決はできる。
少し前の話だ。神子が命蓮寺を訪れていた頃の話だ。
その頃は夏真っ盛りで燦々に輝く太陽が空の上には浮かんでいた。そんな季節の話である。
「いきなり来て失礼な話だが手短に終わらせたい。と言うよりかは返事次第では簡単に終わる。」
金色を少し光沢感を落とした髪の色をしている豊聡耳 神子は命蓮寺の一角にある一室でその建物の住職である聖 白蓮と話していた。
「何かだけ聞かせてもらいます。」
聖は食いつく魚のようになっていた。神子は特に能力は使わずに話を進める事にした。
「人里を訪れた時の話だがな何となく憶測ではあるがこれから嫌な事が起きようとしている。それを止める手段はあまり無いように思える。そこで君には処理出来ない人をこちらに送ってはもらえないだろうか。と言う提案をしに来た。」
神子はいきなり話を進めていた。特に挨拶などは無い。そして用件だけを伝えていた。
「神子さんには何か未来の事が見えているのでしょうか。私が答えを出す前に少しだけ聞きたいです。」
「分かった。実はここから人里の住人は自分のその命を閉ざす事になる。最初からそれに気付ければ良かったがもうそれは遅かった。此処からはその人数は増えていくだろう。その種は人間だけではなく力の弱い妖怪までもがその道をたどる事になる。それを止めるように言われたのは私と君だ。」
「そう言う事ですか。分かりました。私に出来る限りはやらせて貰います。」
とこれがある日、神子が命蓮寺に訪れた一幕である。その後はふた。で談笑した後に神子は元の世界へと帰っていった。
仙界と言う場所は行くのには特定の航路を必要とするが変える分にはどこかには繋がっているので楽なものである。
その世界には建物が一つあるだけで他のものはない。仙人が暮らす建物には修業をするための場所があればそれで別に良かった。ただ広い石畳の場所と奥には上に上がるための螺旋階段がありそれを登った先には金色のお堂があるだけだった。
命蓮寺で送り出された迷い人はここにいる仙人によって先導されて神子の元へと辿り着く。本人は大変なものであるがそれでもやらされていると言うわけではなさそうなので楽しくやっている。
「今日は人数が多いようですね。ですが青年に言われた通りにやります。」
神子が気合を入れたところで十人のそれぞれの十欲を耳につけていた大きなヘッドフォンを外しながら聞いていた。神子の能力は特殊なもので人の欲を聞く事でその人の過去を見る事ができる、そして応用すると未来まで見る事もできる。青年の場合は不十分の為に所々滑落した記憶しか見れない。
しかし、大抵の人は十欲は揃っているので気にするような必要は全くない。
神子はその住人を自分の周りに集めると自由に座らせる事にした。口は必要としないので神子は目を閉じて自分の耳を信じて人の欲を見ている事にした。
一斉に入ってくるその声を聞き分けてからそれぞれの人に言葉として説明できるように集約していた。
神子の目が開く。太陽として上に君臨する者としての風格は十分に持っている。それだけの威力とそう思わせるだけの力は持っているようだった。
「皆さんにはそれぞれの暗い過去があります。私と一緒にそれぞれ解決する事にしましょう。」
静かな声で地面から迫り上げてくるような圧をかけていた。人を奮い立たせる為の声をしていて少しだけ元気を貰えたのか幾分か来た時よりも良くなっていると思う。神子はそんな表情を見ながらそれぞれの事について話していた。
少し前の出来事からこれから起こることまで話していた。そうする事によって自分を見つめ直してもらいこれからどうするべきか考えさせる事ができる。神子は人を照らし出す太陽のような存在へと変わっていた。
「太子様、次の人達が訪れました。」
「分かりました。此方は終わりました。これから自身の力で頑張ってください。私は一切の協力は行うことはできません。それでは。」
神子は疲れた目をしていた。それでもやるからにはやるのが神子のスタンスというものだ。
神子の能力というのは本来は制限しておくもので今は常にフルパワーを発揮しているようなものである。火事場の馬鹿力を常時発動している状態で神子自身に溜まっている疲労というのは人の目には決して見ることはできなかった。それだけ完璧な人物なのである。
神子が力に慣れて使いこなす事ができるのか、それともこのまま潰れてしまうのかは本人とその周りにいる人の影響によって変わっていくのだろう。
「早速始めましょう。」
一切の疲れを感じさせない声で続ける神子は再び十人のそれぞれが持っている十欲を読み解いてそれぞれに的確な助言を与えていた。
それを聞いた人々は崇めるように帰っていたとされているがその真相は行ってみた者にしか分からないものである。