幻想郷も未知の病に侵されている状態となった。人里では死人が増えていき、止める事など許されなかった。這いつくばる人々は何も考える事ができなくなる麻痺してしまった人里にもう住んでいるものは少なかった。
豊聡耳 神子を崇めて、聖 白蓮に救いを求めて、機能しなくなった自警隊の長を務める上白沢 慧音に意味のない言葉をかけ続ける。もう自立する手段など無いに等しかった。人々は話すことを止めて、食べる事も眠る事をやめた。そして何かするという気力も失ったようで地面に座って自分が死んでいくのを待つしかなかった。
止める手段は見つからず特効薬でさえ見つからない。気絶させても目を閉ざせば急に起き上がる。眠る事は許されなかった。食い止めようとした八意 永琳でさえ止めることは出来ない。聖や神子でさえお手上げという状態で治すということはできなかった。静めるだけで時間稼ぎにもならなさそうな感じが続いた幻想郷で生き延びている人間もいない事はない。
紅魔館のメイド長である十六夜 咲夜。魔法の森で研究に明け暮れていて情報を聞いているがそれほど真に受けていない霧雨 魔理沙。そして博麗の巫女であり博麗大結界というものを管理している博麗 霊夢。純粋な人間として生き残っているのはこの三人である。しかし、咲夜は体調を崩し始めて仕事を終えてからはベットに横になってばかりいる。
妖力の強い妖怪は生き残っているが段々と幻想郷を蝕んでいるのは言うまでもなかった。管理者も動いていないわけではなかったが何をすれば良いのかは全くと言って見つからず何もかもが無駄に終わっていた。
最終的には隔離を提案したがそれは巫女によって却下されている。提案した頃合いというのは秋も終わりそうな頃合いであり不特定多数の人間や妖怪を隔離する必要はあるがどこで行うのかは決まっていなかった。それに隔離したとしてその後はどうするのかそれもまた決められていなかった。
万策尽きたそんな頃にある人が博麗神社へと訪れた。
寂れていて一切の参拝客も見込めないので今日もいつもと同じように過ごしていた。幻想郷の惨状は知らないというわけではないが何ともならないので放置するのが結果として一番良かった。
もちろんそれを好んでやっているわけではない。そこだけは変わることはない事実である。
「霊夢、今日はいい情報を持ってきたぜ。」
金色のウェーブをかけた髪型をしていて黒いとんがり帽をかぶっている。霧雨 魔理沙は箒に跨って博麗神社へと訪れていた。
「何を持ってきたのよ。」
霊夢は怠そうに聞いていた。何をすれば良いのかは一切分からないので如何してもこうなってしまう。
「実は不審な人物を見つけたんだぜ。」
魔理沙は少しだけ声を高くして答えていた。別に意味はないと思うがこれで一歩解決に向かうのだとしたら仕方がないのだと思われる。どれだけ頑張っても見つからなかった手がかりを見つける為にはそうする他ない。
「どんな奴よ。」
霊夢は聞いていた。真実か虚偽なのかは別として聞いておく方が良いからだ。何か切り札の一つとして持っておく分には問題ないと感じたのだろう。
「紫色の髪の奴だ。すぐ近くの森の中に居たぜ。」
「様子くらいは見に行こうかしら。少しだけ出かけてくるわ。」
霊夢は起き上がるとその場から飛び去っていた。意味合いは大体分かる。魔理沙は暫く此処で待つ事にした。下見程度に倒してくるのだろうが一人で十分だと思った。