自分の力を自分で決めるものではない。自分で出来たその分だけ褒めれば良いし喜べば良い。其処に人の尺などなく誰にも縛らない自分の尺を使えば良い。
白いリボンを付けた黒いとんがり帽子を被っている金色の髪をしている魔法使いらしい格好をしている霧雨 魔理沙は久し振りに博麗神社に向かう事にした。最近会いにいっていないので何となく顔でも見に行こうかという意外と簡単な理由だ。別に他の理由は何もない。
全くもって綺麗とは言えない境内に降りた魔理沙は地面に足をつけて箒から降りると右手に持っている事にした。そして博麗神社にいる巫女を探して小屋の中を覗いたが誰かいたと言うわけでもなかった。魔理沙は仕方ないので小屋の中で休憩がてら座る事にしたがあまりその必要はなかった。
「何してるのよ。魔理沙。」
「霊夢か。来る時間が悪かったかな。」
魔理沙は冗談半分にそのように答えていた。霊夢と呼ばれた方も優しく微笑んでいる程度で特に気にしているようなそぶりはなかった。だがどうして其処から出て来たのかはまた不思議なものである。
「紫の能力を利用しているだけよ。気にする事はないわ。」
「なら、良かったぜ。体調の方はどうだ。」
「どうって、前に来ていなかったかしら。」
「そうだっけ?まぁ、霊夢が元気そうならそれで良いぜ。」
いつも通り元気よく答えている魔理沙に何も変わっていなさそうで安心した霊夢は魔理沙と同じ場所へと全身を出していた。紫のスキマの能力によって幻想郷とはまた違う世界にいるので一旦出る必要がある。スキマの中は薄気味悪いものであるが慣れてしまえば居心地はそこそこ良いと思われる。
「そうね。今度は勝ちに行くわよ。魔理沙付いて来なさい。」
「いつになくやる気だな。どうしたぜ。」
「何よ、悪い?」
「いや、別に。」
浮き沈みの激しい霊夢は魔理沙を怒っているような声を出していた。魔理沙は別に喧嘩をしたいというわけではないのでそれに乗る気はない。単純に感情の起伏が激しいので仕方がないところがある。それを知らない仲でもないのでそこは別に気にするような必要はないと思われる。
「この近くの森にいるらしいわ。一緒に探しましょう。」
霊夢は袖の中に大量の札を仕込んで準備万端だった。そして右手にはお祓い棒を持っていてほんの少し発光しているようにも見えなくもなかった。魔理沙は少し変わったようなそんな気もしなかったが何かは分からないので聞かないことにした。珍しくやる気があるのでそれを削ぐ可能性もあるからだ。多分友人としてそのように考えたのだと思われる。
「おうよ。行こうぜ。」
「じゃあ、付いて来て。」
霊夢は先に小屋を飛び出していた。それに続くように魔理沙が箒に跨りながらその後に続く。霊夢は前にも訪れたことのあるくらい袋が吊り下げられていた場所を目指していた。魔理沙は何処に行くのかは全く知らないので霊夢について行く事にした。
風によって待っていた衣服がバタバタと音を立てる中で魔理沙はひとつ聞いていた。
「一体何を探しているんだぜ?」
魔理沙はとぼけた様子で聞いていた。霊夢からするなら情報をくれたのは魔理沙である。そうなるとどうして魔理沙が知らないのかふとそれが気になっていた。
「紫髪の奴よ。」
「そんなに怒らないでもな。」
霊夢の声は鋭く魔理沙の心臓を貫いていた。そして何が起こったのか分からないままに魔理沙は霊夢の後ろをついて行く事にした。
「つべこべ言わないで付いてくる。余分な事言ったら承知しないわよ。」
何か別人でも見ているのかような孤独感を感じた魔理沙はそれを口には出さずに目を落として箒にまたがったままで霊夢の後ろをついていっていた。魔理沙は今どこで飛んでいてどのくらいの距離があるのか目で測るような事はしなかったし、知ろうともしなかった。
「此処よ。この近くに確か居るはずよ。」
霊夢は地面に降り立っていた。木々の木の葉を切り分けながら入り込んだので急いで方向転換した魔理沙はその下に入り込む。その場所は薄暗いものの強引に入って来ていたのですっぽりと穴が空いているためにその場所だけはいつもと変わらないように感じた。だが、魔理沙は目の前にいる人の変わり方には何か疑問を持っているようにも見えなくもなかった。
「霊夢、何をそんなに急いでいるだぜ。」
魔理沙は素っ気ない感じで聞いていた。特に差し障りのない感じでゆったりと聞いているだけだった。だが、霊夢には何か違う風に聞こえてしまったらしい。
「魔理沙は何も知らないからそう言えるのよ。とても強かったんだから。」
霊夢がそう言うのは相当は腕の持ち主であるのには間違いないと思われる。ただ突き放すようなその言葉のひと押しには何か違う人格があるようにも思えていた。中々しないようなことをしているために苛立っているかと魔理沙は考えておく事にした。八つ当たりも程々にして欲しいものだがそれでも支えようとするのはお互い信頼している証だからだろうか。
「なら、気をつけよう。私はいつでも準備出来ているぜ。」
「任せたわよ。」
霊夢はそれだけ吐き捨てると特に魔理沙の方は見ずに森の中を歩いていた。
霊夢と魔理沙以外の生物は眠りについたように静まり返っていた。今日は風もないようで木の葉の声を聞く事はできなかった。それだけではなかったがどうしてもそれが気になってしまうようだ。
ザッザッ、と地面の土に擦れる足裏の音がしているが途中からそれが三つになっていた。
「やっと現れたわね。」
霊夢は先制攻撃とばかりに魔理沙の横を通してその人に当てることにしていた。魔理沙はその場から動く事はなく持ち前の小さい八卦炉を取り出していた。そして構えていた。
「此奴は誰だぜ。」
魔理沙は急な展開に驚いたのかそれだけ言葉として出して後は自分の心の中に納める事にした。別に話す事がないわけでもない。喉に詰まったと言うのかそれとも出そうとした言葉が何か理解できなくなってしまったのか。魔理沙は自分がわからなくなってしまった。