青年英雄記   作:mZu

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第43話

もう目に見えるほどの速さとなっていた。

 

霊夢にとってはもうその程度になっていた。魔理沙の時も見えていた分にはそうだったが間に合いそうにも無かった。距離という問題もあったが魔理沙の放った煙のおかげで正確に何か起こったのかを知るような事は出来なかった。

 

「遊ばれるのはどちらかしら。」

霊夢が札を放つが悉く男性に斬り刻まれていた。これでもかと斬りつけるのが切れ味を試しているのかそれとも次はお前だと言う暗示なのか。それくらいに無駄なほどに斬りつけていた。

 

男性が近づいて来るのに対して霊夢は距離を詰められないように移動しながら戦っていた。段々と用意されていくかのようで変に気に入らなかった男性は素早く走り出していた。

 

霊夢はそれを感じて素早く後ろ向きで走り出していた。だが、もうこれでは逃げ切れないのでしっかりと走る事にした。空を飛ぶなんて言うのはまた二の次となっていた。飛ぼうとすれば魔理沙のようにナイフを投げられる。霊夢は何となくそう思えた。それともう一つ。任せてみたかった。

 

「待て!」

男性は怒気を通り越した狂気でその言葉を言っていた。舌を巻いているような多重に聞こえて来るその声で霊夢を威嚇していたが全くと言って無意味であったのは言うまでもない。気にするのは前ではなくて下だった。

 

男性は地面を踏み込もうとする脚を誰かに蹴られてしまっていた。再び折り曲げられた脚と前へと進もうとする体を止める事はできずその場に転がり込んでいた。膝を擦りむいたとしてもそれで済むのなら良いだろう。そんな感じはしていた。

 

だが、男性の身のこなしがそうはさせなかった。体を捻って力を分散させるとその場で転がり込んで後ろを向いていた。つまりは何かされた方向を向いていた。気づかなかったと言うのが男性のプライドをへし折ったのだろうか。

 

その場には男が立っていた。

 

身長は高いと言うわけでもない。長らく洗っていないようでボサボサの髪を後ろで頑張って一つにまとめたような髪型をしていた。そして腰には四本の剣を携えていて薄紫色の服と紫色のダボダボのズボンを履いていた。脇は見せているが袖はない。そして紫色の裏地が赤色のマントを羽織っている。

 

「誰だ、テメェ!邪魔すんじゃねぇぞ。」

 

「そうか。して、これはどう言う状況だ。」

青年は目の前の人は気にしているそぶりはなかった。それよりも幻想郷で何が起きているのかを知りたいらしい。それだけだったので何処か危ない感じに見えてしまう。

 

「無視するとはトンダ馬鹿だな。」

男性は青年に向けてナイフを突き刺そうとしていた。

 

青年は特に身を動かす事はなくさらりとナイフを右手二本の指で止めていた。さらっ、としたその雰囲気には何か違うものを感じなくもない。

 

そして左側へと体を捻っていた青年はその勢いで蹴りを一撃だけ男性に与えていた。

 

その一撃には簡単に言って骨を砕く様なほどの威力があったのだと思われる。

 

男性は軽々しく吹き飛ぶと地面に転がっていた。青年は左足を動かしながらどこか不満そうな表情をしている。

 

「アンタ、こんな時に何しているのよ。」

霊夢はそんな青年の行動が気になっていた。目の前で急に足を触り始めたら変に思うだろう。今の状況なら殊更だ。

 

「まだ使い慣れていない。気にしないでくれ。」

 

「もう良いわ。言うだけ疲れるもの。」

霊夢も青年は謎の結託感を作り出していた。別にそう多くを語らないが何か繋がっているように見える。

 

「そうか。それは嬉しい。」

青年は何処か達観しているような眼差しをしていた。

 

「そこの二人!ベラベラ喋りやがって!テメェらは喋らねぇと生きていけないのか!」

 

「そうだ。」

青年は急に話し始めていた。

 

「口答えすんじゃねぇ!」

男性は更に怒っていた。逆に喉は痛くないのか、聞きたいのだろうがそれは喉元で止めておいた。また別の機会にそれを言うつもりなのだろう。

 

「そうか。そう怒ると体に悪い。少し抑えてみてはどうだ。」

 

「ウルセェ!」

男性は青年目掛けて走り出していた。だが届くのかと言われると別にそう言うわけでもなかった。

 

青年は踵を返して右足を浮き上がらせる。鳩尾を狙ったその一撃にその場で足を止めていた男性は更なる一撃を与えられる。

 

青年は振り子のように右脚を使って左脚で男性の後頭部を蹴り落とした。その身のこなしは男性にも負けていない。いや、それ以上だった。

 

「やってらんねぇな!」

男性が地面に着く前に両手で体を起き上がらせる。そしてナイフを投げていた。魔理沙の時とは比にならない程の早さ。青年はそれを弾いておく為にマントに付けていた針を取り出して弾いていた。

 

男性はそれだけでは無かった。捨て身の一撃かのように自分の身ごと霊夢に走り寄っていた。その後のことを一切考えていない一層の事清々しい一撃はどうしても防げなかった。それよりかは相撃ちをすることを選んだ。

 

男性の両手に持っていたナイフは青年の腹部を刺していて青年の抜いた剣はバッサリとその身を斬り裂いていた。

 

男性の身はその場で落ちていた。腹の部分からは血が垂れ流しになっていて赤い池を作り上げていた。

 

「一旦これで終わりなのだろう。」

 

青年は腹部に刺さっていたナイフのことは気にしているような事はなかった。それよりも今は別のことを考えているようで霊夢とはまた違う次元での思考に耽っているのかもしれない。青年はその背中がそう言う風に語っていた。

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