青年英雄記   作:mZu

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第46話

幻想郷の西側にある霧の湖と呼ばれる場所の辺りに紅い壁をしている紅魔館と呼ばれている館がある。湖の上に浮かんでいて地上からでは行く手段とすれば舟か飛行のどちらかしか無い。どうしてこう不便な位置に建てたのかと言われるとハンターから身を守る為だと思われる。

 

吸血鬼である主人の命を狙おうとする人は少ないわけでは無い。度々来るが基本的には門番の前で倒されている。又は偶々いた人間によって被害の小さな形でそれが終わるのか。相手からすれば門番の対処に加えてそれと同等かそれ以上の力を持っている人も合わせて行わないと通る事は出来ない。

 

だが別に通って来ないと言うわけでも無い。侵入する方法は少ないが完璧にないということではない。その為にメイドでさえもそれなりの戦闘力がある。いつも館内はピリピリとした雰囲気を醸し出しているが客だと分かれば一切の失礼はなくなる。そこの主人の器量が伺えるわけだがそれでもまだ子供である事には間違いない。

 

 

日は少し傾いてきた頃だろうか。昼というには少しだけ遅い時間になっていた。黒髪を後ろで一つにまとめている額を丸出しにしている青年は酸化して黒ずんで着ている薄紫色の服と紫色のズボンを着用していてその上から裏地が赤色の紫色のマントを纏っている。一応お尋ね者でもある青年だがそうは感じさせないので一層のこと清々しい。

 

「調子はどうだ。」

紅魔館と呼ばれる館に入るための門の前に降り立っていた青年はその門番に話しかけていた。その人は赤くて長い髪をしている人で中華風の緑色のチャイナドレスを着ている。寒い季節なので白いズボンを履いている。

 

「元気ですよ。今回はどちらの用件ですか。前回のように刃を向けてきたら怖いですので一応お聞きします。」

紅魔館の門番をしている紅 美鈴は柔らかい笑顔で青年に対応していた。元々咲夜のメイドとしての仕事を教えていた人であるのでその点は熟知しているのか元々そのような性格なので素なのかそれは本人でもわからないことだと思う。いつも通りですよなんて答えられたらそれで話は終わる。

 

「今日は近況報告を聞きにきただけだ。久しぶりに幻想郷に来たので色々と変わっていた。」

青年は何処か面倒臭そうに答えていた。

 

「咲夜さんがだいぶ前から調子を崩しているのですが誰にも話そうとはしないんですよ。なので何も出来ないものでどうしたものかと思ってます。」

 

「そうか。俺にはまだやれない事だ。その話は詳しく主人に聞いてからまた話すとしよう。」

青年はそれだけ言うと自分の手で門を開けて紅魔館の庭へと足を踏み入れていた。其処には色とりどりの花が咲いている。その花の手入れは門番がしていて青年もしていないと言うわけでは無かった。こういつかは枯れると分かっていても何か手を尽くそうしてあげたくなるのは花の持つ魅力なのだと思われる。そしてまた綺麗な花を咲かせようと努力する。それもまた同じものなのだろう。

 

青年はそれを別の何かに置き換えて考えているようでまじまじと花を見ていた後で館の中へと入っていく事にした。

 

木製の大きな扉を開けると紅いカーペットに敷かれているエントランスと呼ばれている部屋がある。左右には通じる廊下とその先にある上へと登るための螺旋階段が設置されているが何か違う雰囲気があるので青年は気になるながらもいつも居るメイドが現れないので誰にも聞く事はなかった。妖精メイドはいつも通り青年を迎えてくれる。どうやら顔は覚えているらしい。

 

「邪魔する。」

青年は扉のドアノックに触れると何の前触れもなしに開けて中にいる人に平然と挨拶していた。そして平然とした態度でその人と同じ机とセットで置かれているのであろう椅子に座る。特に客人を迎えるわけでもないがいつも置かれるようになっている。青年のように何の前触れもなく現れる輩がいるので置いている。

 

「ノックくらいはしなさい。驚くわよ。」

 

「そうか。して、昨夜は何処にいる。」

青年は半分以上はその人の話を無視していた。これはいつも通りで変わることのない光景である。

 

「人の話は聞きなさい。」

そう言う紅魔館の主人であるレミリア・スカーレットはそう怒っているようにも見えなかった。もう怒り疲れたのかそれともまた違うものがあるので怒ろうとする気力も失ったのか。青色の髪を揺らしながら右手に紅茶の入っているティーカップに入っている赤色の紅茶を飲んでいた。白色に身を包んだ背中には黒い翼の生えている吸血鬼は今日も誰から取ったのかわからない血を混ぜた紅茶を飲んでいた。

 

「敢えて無視している。何か文句はあるか。」

 

「いつも通りで安心したわ。」

レミリアは少し笑っていた。幻想郷がどうなっていようともブレないこの精神は気に入っている。一応紅魔館の執事としての役目がある青年を本来は怒るべき事なのだろうがそれはしようとはしなかった。毒されていると答えると一番話が早くて済む。

 

「そうか。ここは随分と変わってしまったようだ。」

 

「咲夜が体調を崩したのよ。誰にも話そうとしないから困ったものだけどどうにか出来ないかしら。」

 

「そうか。門番にも同じような話を聞いた。」

青年は椅子にある背もたれを使いながら自分の体を机の中へと沈み込ませていた。そして腰が痛くなりそうな格好をしながらレミリアと話をしていた。

 

「どうにか出来るのかしら。」

レミリアは少し心配そうに聞いていた。

 

「どうにかするのは簡単だ。だが、これは紅魔館の結束力を試されている事には間違いない。」

青年は何の気なしに答えていた。他人行儀とも取れそうなその言い方には何か簡単に手を出せないような裏があるのだと思われる。そのように感じたのかレミリアは深く聞くような事はなかった。

 

「幻想郷全体でもこのような事はあるのかしら。」

 

「それは今の所調査中だ。期間を開けていたので何が起こったのか分からない。」

 

「それで自分の足で情報を集めようと言うことね。」

レミリアは楽しそうに聞いていた。だから子供っぽいと思われて遊ばれるのだが本人が気づいていないのであれば誰も何も口には出さない。青年ぐらいしかこんな軽口では話せない。

 

「そうだ。面倒な事にはなっている。早急に頼みたいが焦らずに時間をかけてやってほしい。」

 

「何か理由はあるのかしら。」

 

「理由か。心の病はそう簡単に治るものではないと答える事にしよう。」

青年は机の上に手を置いて自分の身を引っ張り出すと椅子から立ち上がった。

 

「また来る。」

青年はそれだけ言ってレミリアに背を向けていた。青年にも何か考えはある、だが他の人から見ればその断面しか読み取る事はできない。それが何処かですれ違うを起こすこともある。

 

「また来なさい。客としてはもてなそうとは考えないけど。」

 

「そうか。言い忘れていた事があるが紅魔館の主人には向かないので妹に変われ。」

青年はそれだけ言ってから主人のいる部屋を出て行った。孤独となったレミリアは一言だけ言おうと口を開ける。もちろん聞いている人などいない。一人だけである。

 

「照れ隠しかしら。」

誰も聞いているのいない一人の部屋の中で小さな声で言っていた。

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