何もないような道を通っていく。妖怪の山までの道筋に特に障害というものはなく黒髪の青年はすんなりと着いていた。
妖怪の山自体はどこにいようとも見失うような事はないのでその点では有り難いものである。それと青年は全く訪れていないと言うことでもないので何となく道筋は分かっている。
岩肌があるだけの場所から妖怪の山へと入った青年はその先を目指していた。山を登っていく青年は途中にあった家を通り過ぎて川の近くまで来ていた。その場所には思い出は多くあるが今はそのような事をしに来たわけではないので一切何もしない事にした。
「久しぶりだ。」
青年はそう話しかけた。河原の近くで休憩していたように座っているその人は青色の髪をしていて外ハネをしている髪型をしている。青色の服装をしていてポケットが多く付いているもので何でも入りそうなものである。元々作業が得意な種族であるようでその為の道具がその中にはあると思われる。
「やぁ、盟友。久しぶりだね。何してたんだい。」
河童である河城 にとりはこの近くにある白い石で積まれたドーム状を工房として毎日何かを作っている。それを売り出しているのかどうかは青年は興味がないので聞いた事もない。前に作ってもらった剣は未だに扱えるのでそれだけ腕があると言う事なのだろう。
「魔界で暮らしていた。」
青年は簡素にそのように答えていた。さも当たり前のように言っているがサバイバル生活をしていたのには変わりない。
「そうかい。盟友はどこで根を張ろうとは考えたりしないのかい。」
にとりもその辺りは興味があるのだろうかと青年は考えていた。
「それは家を持つと言うことか。それとも誰かと縁を持つか。」
青年はまず大前提の方から聞いていた。自分の意見を答える前に誤解がないようにしたいのだと思われる。にとりはすんなりとどれでもいいと答えた。要するに何処かに留まることはしないのかと聞いているのだろうか。
「興味はない。」
青年はあっさりと答えていた。味も素っ気もない野菜でも食べているような感覚になる。
「そうかい。その話は置いておくとして何が幻想郷では起こっているんだい。」
「妖怪の山には関係のなさそうな話だ。興味はあるかもしれないが聞かないほうがいい。」
青年は少し小さな声で話していたがしっかりと耳の中に収めていたにとりはしめた顔をして笑っていた。
「何がどう関係ないのか詳しく聞かせてよ。」
「そんな楽しそうに聞く話でもない。」
「それは良いじゃないか。」
にとりはどうしても聞いたそうにしているので青年は何となく話してみる事にした。本当は話したくはないものである。
「実は感染症というのが流行っている。病名はないが狂気の中で自分の命を落としている。」
青年はそのように抽象的に話していた。にとりとしてはそれでは不満だが青年がそう言うならもう何も聞こうとはしなかった。
「それでこれから何が起きようとしているんだい。」
「さて。どうなるか。だが、その前にこの騒ぎには収集をつけておきたい。その為に俺は各所を訪れている。」
「ここに来るのは間違いだったのかな。そんな話は聞かないよ。」
「そうか。だが、何処まであるのかは目で見ないと分からない。」
「雛も同じような事を言っていたんだけど何が関係があるのかな。」
「恐らく。本人に聞いてみないとそれは分からない。」
青年はそのように答えていた。
「今はどうしてにも出来なさそうだね。雛は今体調を崩しているんだ。厄が多くて取り込み切れないらしいよ。」
「そうか。感染症の症状の中に寝込んでいるのがあるのだが何か心当たりはあるか。」
「そうなっていると思うよ。厄が溜まり続けるとそのようになるときもあるから一概にそうとは言い切れないけど。」
にとりは少し笑いながら答えていた。青年は仕方がなさそうに表情を変えていた。何か進展もありそうでもないのでここで話は終わらせようと思っていた。
「雛も気になるが今は進むしかない。話しかけてすまなかった。」
手を挙げて適当な挨拶をするとその場から離れようとしていた。だが、聞き忘れた事があるようで青年は少しだけ体を捻りながら後ろを向いていた。
「妖怪の山の天狗はどのようくらい殺気立っている。」
「椛はそこまでない。けど、他の天狗はどうだか分からないかな。」
「そうか。ありがとう。」
青年は感謝を述べて山道を歩いて登っていく。参拝者とは違う道を行く青年の足取りは慣れたものでサラサラと進んでいく。その道には確かに邪魔はあるがそれでも青年にはそこまで問題ともならない。
「朴念仁。だけど仕方がないかな。」
青年は過ぎた後で誰かに伝えるように一言ボヤいてみたが届きそうもない言葉だった。本人に言えれば一番簡単なのだがそれが出来ない理由はある。耳に入るのかどうかという事だ。