青年が三途の川から帰っている頃、幻想郷の東側にある廃墟のような社のある博麗神社の巫女である博麗 霊夢はある異変を感じていた。その異変というにはいささかおかしいものであるがそれを公言するほどではない為に誰にも言おうとはしなかった。それとも誰にも言うような事はできなかったと言うのか。
「帰ってくるまでは暇なのよね。」
黒髪をしていて後ろで短い髪をまとめていた。そして赤いリボンを付けていて赤い巫女の服に身を包んだ霊夢はちゃぶ台に置いている湯呑みを持ちながらそう嘆き、また元の位置へと戻す。別に飲みたいから持っているわけでもない。手が冷えるのを嫌う霊夢はたまに湯呑みを持って指先を温めている。それだけだった。
「ここが幻想郷で合っていますか。」
金色の髪をしている橙色の鎧を身に付けている青年にも似た年月の男は博麗 霊夢のいる小屋の中にひょっこりと現れた。そして辺りを見回して霊夢を見つける。そして霊夢に話しかけた。別に悪気があったわけでもない。そのはずなのだがもうどうしても違うとしか言いようのないものでもあるので霊夢はその場に立ち上がった。何かあったと言うことでもないのだが確かに何かあったのだろう。
「そうよ。何か問題でもあるのかしら。」
青年にも似た年月の男を睨みつける霊夢の手には何もなかったが何かあるようにも見えなくもなかった。
「あります。実は急激に結界の力が弱まっているんですよ。なので様子がおかしいと思ったので見に来た次第です。」
「で、名前は?」
霊夢は信用すると言うことではない。ただ、疑念があるのでその立証にはなるのではないかと言う淡い期待からなのかもしれない。金髪の男性は素直に実直に答えた。
「アーサーと申します。宜しくお願いします。」
アーサーはそう言ってから一礼して霊夢に対して敬意を示した。その時間は十秒かそれ以上頭を下げていた。霊夢も受け取らないわけにもいかないので何も言えないまま時間は過ぎていく。
「アーサー、ね。聞いた事のない名前だけどどこから来たのよ。」
すると、アーサーは照れ臭そうに話してくれた。
「旅の者なのでその点は何も分からないんですよ。異世界である事には間違いないです。」
「何が目的なのよ。」
霊夢は幻想郷を守る博麗の巫女として聞いていた。それこそ守護者としてアーサーが入れても良い人物であるのかそれともいけない人物なのかを判断する必要がある。判断するだけであるが何か違うものがある。個人的な感情まで混ざっているようでなかなか払拭は出来ないようだ。
「魔王から世界を守るためにここへとやって来ました。ここで魔王の侵攻を食い止めましょう。」
強い口調で話しているアーサーだが霊夢には一切伝わる事はなかった。そもそも異世界の話を平然とされたところで誰がついて来れようか。
「そうね。そう言える根拠はあるのかしら。」
「ありません。ただアレスを探しているんです。その人はきっとここへと来ているはずです。」
アーサーは戯言のように色んな情報を霊夢に話していた。きっと見透かされているのだろう、重要な人物であると言うことを。
「アレスと言うのが誰なのかは知らないけど何かあるようね。分かったわ。取り敢えず座りなさい。茶を出すから。」
霊夢は兎に角もう少し話を聞きたかったのかアーサーを座らせて自分は他のところへときていた。
アーサーは慣れない環境ということで色んなものを吸収しようとしていた。座ってはいられずに立ち歩いてその床に敷かれている草の感触や木の柱で建てられているのを見ていた。そして何も置かれていないがその中で生活をするという事を想像していた。
「座ってなさいって言ったでしょう。」
霊夢の口調はどうしても冷たかった。実際にはそう見えるだけなので何とも言えないがアーサーは確実にビクついているのだろう。どうしたら良いのかさえ分かっていない。
「済まなかった。どうしても興味があると見てしまうのだ。兄譲りなんだ。」
「そう。気になる人はいるけどその事は今はどうでも良いのよ。」
「そうですか。では、何処から話しましょうか。」
「好きにしてなさい。私は止めないから。」
「分かりました。ではもう起きているであろう事と起きようとしていることから話します。」
一息だけ吸ったアーサーはゆっくりと息を吐いて心を落ち着かせていた。そしてアーサーが霊夢が茶を持ってくるまでに感じていることを話してみる事にした。
「幻想郷ではもしかすると感染病があったと思います。」
「確かに今でも治ってはいないわ。それがどうしたのよ。」
霊夢はまだ話が掴めていない。
「魔王はまず侵略する場所にそのように毒を振り撒いておくんです。その毒は薬を飲んで治そうとすると逆に悪化するものやそもそも薬が効かないもあります。」
霊夢はこの時に何が起こっていたのかは言うまでもなく分かっていた。そうなるともう末期という状態なのではないか、と。もう来ていてもおかしくはなかった。と言う事は前に戦った事のある男がもしかするとその一人なのかもしれない。霊夢はそう考えていた。
「その後に刺客が来ると言うことね。」
霊夢はアーサーの話を聞いてそのように質問を投げかけてみることにした。
「いえ、軽く蹂躙を仕掛けます。もしかするともう来ていてもおかしくはありません。私がこのように居られるのが気がかりです。」
「その事は問題はないわ。来る人はあまり拒まないのよ。出る人は早急に出て貰うけど。」
「それは大問題です。素早く対応しなければいけません。出掛けてきます。」
アーサーは出て行こうと襖の方へと近づいていた。それを止めたのは霊夢だった。
「待ちなさい。そんな簡単に行かせないわよ。妖怪に襲われたらどうするのよ。」
霊夢はアーサーの事を心配していた。だが、アーサー犯人は一切その事には感謝しなかった。いや、これはある意味侮辱を受けたと勘違いしているようだった。
「貴女に負けれるほど弱くはありません。」
「それはどう言う意味よ。」
「見ていれば分かります。」
アーサーは左腰に携えている剣を抜こうてしていた。黄金の色で装飾されているその剣は正しく伝説に載るようなものであった。霊夢は何か違う雰囲気を感じて一歩引いてしまった。
「その反応も分からなくもないです。皆は大抵そのような行動を取ります。」
アーサーは別に何かしているわけでもない。そして何かを始めようともしていない。ただ剣を見せているだけだった。霊夢にはその剣の真価が分かるのだろうか。そんな感じの表情をしていた。
「行きなさい。アンタの勝手にすればいいじゃない。」
霊夢はかなりふて腐れていた。言うことなど全くないのだろう。