風が靡かれている二人は瞬時に判断してお互いが同じタイミングで剣を抜いていた。金色の髪を風に遊ばせていたアーサーは黄金色に輝く鞘から白銀の刀身を見せた。綺麗に磨かれているその剣は王に相応しく誰もが平伏すような風格を持っていた。まるで剣が人間そのものの威厳を示しているようだった。
対して青年は何の変哲も無い鞘から黒い刀身を出していた。間合いの広さも劣るがその力も劣っているようで完全に不利だと思われる。それでも切っ先はしっかりとアーサーの方を向いているのでやる気だけは十分だと思われる。
「先に忠告する。建物には危害を加える事は許さない。」
青年は両手に持っている剣をアーサーに向けながら右脚を後ろにして構えながらそのように言った。本来ならそのように言う必要もないのだがどれ程の力を持っているのかは未知数であるので何とも言えなかった。
「分かりました。」
アーサーは青年の言葉に答えると左脚を踏み出して青年に刃を向けていた。特に変哲も無いと思わせるほどの刃で全てを裂くように尖らせていた。両方から研ぎすまされているのできっと並大抵の剣ではないと言える。
青年はアーサーの右側からの攻撃を受け止めていた。両足にかかる圧力を感じながら全てを受け止めた青年は地面を滑っていた。ザザー、といつのまにか敷かれている石の上を転げている音が聞こえてくる。何が起こったのは全く見当もつかないのだがそれがどの様なものであるのかは言うまでもなく危なかっしい物であった。
「相当な力があるようだ。見くびっていた。」
青年は滑っていた石を軽く蹴散らしながらそのように呟いていた。石と石がぶつかるようなそんな小さな音をしている中で青年は平然とした態度でその場に居た。
「私の剣はそこら辺にあるようなものではありません。お忘れですか。」
「記憶はないと言っただろう。」
青年の声はアーサーに届くようなことはなかった。更なる一撃を兄に会った感動をそのままにして突き進むアーサー。その剣を受け止めようとしている青年は両手に持っている剣を交差させて何処からでも対応出来るようにしていた。何もかも置いてけぼりを食らっている霊夢は小屋の縁側から二人の喧嘩のようなものを見ていた。これから何が始まるのかを楽しみにしているようなそうでもないような感じはする。
アーサーの剣が青年の持っている剣に当たる。上から押しつぶすかと思われた一撃は青年の左側から顔を出すことによってその幻想は打ち壊されていた。
青年は左腕を使ってアーサーの剣を上へと持っていく。刀身の上を滑る時に鳴る耳が痛くなりそうな高い音がしている。そして右腕の剣へと移し替えると振り被ったその全てを別の場所へと向かわせていた。青年は自分の右側を見ていた。そこにはアーサーの使っている白銀の刀身をした剣がある。青年はその場から一歩逃げるようにしていた。
「逃げるなんてどういう風の吹き回しなのでしょうか。」
「さて。」
青年はアーサーの嘆きを特に関係ないようにしていた。特に興味もないらしく何か声を掛けたわけでもなかった。
「貴方の剣は変わってしまったようですね。」
「そうか。環境が変わればそうなるのも仕方がない。」
「そんな物ではありません。兄者の面影はなくなってしまった。あの豪快でねじ伏せるような剣は捨て去ったのですか。」
「何処かに置いてきてしまったようだ。」
青年は軽く答えていた。そう重くは考えていないその反応が気に入らないらしいがアーサーはそれを剣で晴らそうとはしなかった。そこはわきまえているらしいが本当のところは全くわかっていない。もしかすると呆れてそれでは出来ないのか。
「あの強かった剣は何処に行ってしまったのですか。」
「あの完膚なきまで打ちのめされた私はただの弱者だったのですか。」
「分からない。」
青年はアーサーの叫びを卑下にしたいと言うわけではない。だが自分が何の話をしているのか理解できないなら何を話そうとも止められるわけがない。そうなればもう言うまでもなく何をしても無駄だ。という結論に至る。
「目覚めてください。兄者!」
アーサーの剣が光りだす。そして青年に向けて空から振りかぶる。
青年は受け止めもしなかった。真っ向から勝負はしないつもりなのだろう。一歩だけ後ろに下がっていた。
地面には亀裂が入る。そして青年の股の下には入っていた。振り上げられたらどうしようもなかった。だがそれだけの接近を許していれば青年も何もしないわけがなかった、普通なら。
だが、青年は何もする事なくその場から退いてアーサーに剣を地面から抜くように言葉は無くとも行動で示していた。それがどれだけのものであるのかは言うまでもないがアーサーにとっては不満でしかなかった。それこそ不平な扱いを受けた人のように。
「兄者はこんな奴ではなかった。兄者は勇ましく戦い続ける男だった。私はお前を斬る。」
アーサーは高らかに宣言したので青年は受けて立つ事にした。