青年英雄記   作:mZu

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第6話

紅い壁と床に覆われたただ広い一室では小さく揺れている蝋燭の火が照らす光と外からの月の光が見えていた。その光に照らされた場所にいる青年はその中で自分の右手を見ていた。この手には剣に施されている魔法陣が映されている。そしてその結果自分の体が触れていれば何か魔法が扱える状態となっていた。今更何か道具は持たなくても何とかなっているのは事実なのである。

 

「何をしているのかしら。」

青年が一息ついてから探しに行こうとしていたその本人は螺旋階段のある廊下の手すりから顔を出していた。その人は薄い青色の髪をしていてナイトキャップ帽を被っていてドレスを着込んでいる人だった。どちらの色も淡いピンク色で赤い靴を履いていた。その人はこの紅魔館の主人であるがそのカリスマ性というのは実際のところ何もない。

 

「話すような事はしていない。」

青年は簡素に答えていた。あまり話したくないのかそれとも面倒なのかは分からないがおそらくその両方なのだろう。そんな表情をしていた。

 

「そんな冗談は通じないわよ。先から音が聞こえているんだから。ねぇ、何か隠している事はないかしら。」

主人は青年に対して上からの立場でその言い方をしていた。威圧感のないので青年は特に何か言うこともなく花を鳴らす程度でさらっ、と受け流す。

 

「貴方は自室でも紅茶でもすすっていたらどうだ。出る幕ではない。」

青年は冗談交じりに暴言を吐いているが主人には通用しない。そのような事はいつものことである。今更注意することもないので主人は何も言わないが今日は毒が少なかった。それはちょっと隠し味のようなもので料理を美味しくさせる裏技のようなものぐらいでしかなかった。

 

「そんな事ないでしょ。私にだって何か言うくらいの資格はあると思うわよ。」

主人はそのように述べている。もう少し聞きたかったのか手すりから身を乗り出してその場から降りてくる主人は紅いカーペットの上に着地すると何もなかったかのように青年の方へと寄ってくる。

 

「階段を使えば良いだろう。」

青年はそのように言っていた。

 

「貴方からは匂うのよ、血の匂いが。だから何かあったんでしょうね。」

 

「聞くも何もそこを見れば分かるだろう。」

青年は左手を使って親指で壁の方を指していた。主人はその手に導かれてその方を見ていたがその場にはこの館の半分以上を握っている裏の実力者がいた。その人はぐったりとしていて本当に何があったのかそれで察したのだと思う。主人はすぐに一歩引いていた。

 

「貴方は何をしたのよ。ここにいた恩も忘れたの。」

主人は急に怒ったような表情をしていた。逆に恩を仇で返されてニコニコしていてもそれはそれで嫌なものである。青年はそんな事など構うような事なくまた別の場所を見ていた。

 

「レミリア、貴方には何もされた覚えはない。食事中もわがままを述べては咲夜を困らせていた。妹の方が優れている。貴方には何が残っている。」

青年は急に蔑んだ目をしていた。その理由は簡単に言ってよく分かる。

 

「私にはそれでも紅魔館を守る使命があるのよ、主人としてね。」

レミリアはそのように強く宣言していた。青年はそのような答えは求めていなかったらしく息を小さく吐いてそっぽを向いていた。だが、別にそれでもよかったらしく青年はそのまま続けていた。

 

「それならやるべき事は一つだろう。」

 

「そうね。」

レミリアの得手であるグングニルを取り出す。紅い槍で魔力によって形取られたものであるが金属同様の硬さを持っている。何処にしまい込んでいるようになっているが何処から出てくるのかはまだ分かっていない。その先は青年の方を向いていた。

 

「ようやく理解したか。俺が此処を乗っ取ろうとしていると言うことを。」

青年は嘘をついている。だが、そうでも言わないと向かってくることのしない優しい姉はようやくエンジンをかけたらしい。

 

「そんな事は私が許さないわよ。」

レミリアの持っているグングニルは届く限り間合いまで近づくようにして精一杯に手を伸ばしていた。その延長線上に伸びた先には青年が居たがそうやすやすと当たる訳でもなかった。

 

吸い込まれるように抜かれた剣によって弾かれたグングニルは役目を失ったように床につきそうになっていた。それを防いだが青年の攻撃の手は止まらなかった。

 

暴れている右腕がレミリアの方に一撃だけ与えようとしていた。そこで蝙蝠へと姿を変えてその場から離れていたレミリアは九死に一生を得た。彼処からあれを食らっていれば吸血鬼であってもそこそこの傷は負うことになる。それだけは何としても防ぎたかった。

 

「流石は吸血鬼だな。」

青年は褒めていたがそれはまた別の意味合いがあるように感じたレミリアはその返答として舌打ちを選んだ。別に間違ってもいないのだろう。青年がレミリアを褒めた事は此処一度もなかった。それでも歯向かう事はなかったので問題外としていたがどうやらそうでもないらしい。

 

「口が動くなら少しでも当ててみなさいよ。」

少々憤りを感じているレミリアは鋭い口調でそのように言っていた。だが、それも青年の手の中であるように感じてレミリアは変な嫌悪感を感じた。

 

「そうか。助言をありがとう。」

青年はそこから動き出すと一気に間合いを詰めていた。自分に操作魔法をする飛行を応用したその技術は青年は独自に編み出した。偶にこうしないと追いつけないこともある。

 

青年の両腕から放たれる剣はレミリアの持っているグングニルに阻まれる。それも計算のうちであるように押し始める青年とそれに対抗するレミリアは拮抗した状況からお互いに同じタイミングで後ろへと下がっていた。それからレミリアは蝙蝠の状態となりその部屋の中を飛び回っていた。

 

青年は全てを追うような事はしなかった。来たものだけを的確に狙えばいい。精神を研ぎ澄ませていた青年に物理的な隙はなかった。そしてそこから放たれる此処まで培ってきた魔法も威力を増す。

 

「来い。全て受け止める。」

青年はそう言って剣に伝わるように念じていた。その念は天にも届きそうなもので物理的には存在していなかった。一番操るのが難しい二極の色のうちの片方だけを利用したものは青年が操るにふさわしいと言うものではなかった。

 

大量の蝙蝠とかしたレミリアは四方から青年の方を狙っていた。その先は血を吸われきった今にも干からびそうな青年になると思われた。

 

だが、それを防いだのは先程まで念じていた光の元素を集めたものであった。神々しいまでの光を集めていた青年はその光を蝙蝠へと向けていた。太陽を嫌う吸血鬼はそれだけで身を焼き切られるような感覚を覚える。レミリアは青年は離れていくと一つに戻り見やすい姿になっていた。

 

「成る程。こうするだけの実力はあるようね。でも遠距離は苦手でしょう。」

レミリアは素早く離れると赤色のネイルの様なものを水平に放つ。放物線を描いていたそれは青年には簡単に避けられていた。だが、それで終われるほど容易いものではなかった。後ろで爆発するように着弾点から赤色の丸い弾が何処と明確な狙いは付けていなかったが放たれる。爆発をイメージしたと思われる弾幕は青年を苦しめたと言う訳でもなかった。

 

青年は前へと一気に飛び出してレミリアの方を狙っていた。後ろは何も見ていなかった。それでも向かってくる青年はある意味では勇者とも言える。レミリアはその行動の切り替えの早さには度肝を抜かれていた。

 

「確かに苦手だ。剣を持っている以上は遠距離は苦手だろう。」

青年も負けているといううことではなかった。剣を振るって風を起こすと緑色の弾幕として横並びになっていたものが次々に無差別に飛ばされていた。別に出来ないということではないが苦手であるのには間違いないらしい。レミリアは軽々しく避けているだけで当たるようなタイミングはなかった。蝙蝠となって避けてくれるのならまだ良かったが全くその様なそぶりは見せてくれなかった。

 

それでも辞めようとしない青年にレミリアは半ば諦めたようにグングニルを投げつけていた。だが青年が見えていないと言う訳でもない。レミリアの赤色の弾幕と自分の緑色の弾幕が織り交ざっていて混沌とした一室の中で青年は冷静にグングニルを避けていた。そして斬波を撃ち続けていた。一線だけを作って緩やかに飛ばされていくその弾幕に当たる方が難しい。レミリアも流石に飽きてきたのだろう。

 

「もう終わりよ。やっていても時間の無駄にするわ。」

レミリアは弾幕を放つを辞めたので青年も同じく辞めた。そして両腕で持っていた剣の切っ先をカーペットのある床に向ける。それが構えているらしい青年はレミリアの方を向いていた。青年の弾幕は壁に刺さったままで消える事はなかった。

 

「そうか。」

青年はレミリアの挑発のようなものにも乗るようなことはなかった。それとも気付いていないだけなのか。レミリアは自身の魔力でもう一本のグングニルを持って青年に向かっていく。靴から鳴るその音は柔らかくどれだけカーペットがしっかりとしているものであるのかを物語っていた。丁寧な掃除をしているおかげなのだろう。青年は右腕を振ってレミリアのグングニルを止める。弾かれたように回転を始めたレミリアはその力を利用して間合いを広げながら攻撃を与えようとしていた。

 

青年は何の気なしに左腕で軽く止めるだけで他に何かするような事はなかった。だが、それで確実に止められたのは言うまでもない。嫌な音が聞こえてレミリアはグングニルが欠けていることに気づいた。

 

「何したのよ。」

 

「魔法道具を破壊する。貴方は俺の剣に何回触った。」

青年はゆっくりとカーペットを踏みしめながらレミリアの方へと向かっていた。まだお互いの間合いではないがもうすぐそばまで来ているかのような威圧というものはある。レミリアは素早く蝙蝠へと変身したがそれを待っていた青年は軽く剣を振るだけで終わらせていた。一本だけレーザーのような物を放つ。

 

そこから壁に刺さっていた青年の放っていた弾幕に引きつけられると急に弾かれていた。そしてその場所からも同じくレーザーが現れる。それが段々と増えていく。青年は最後の一撃のための準備をしていた。

 

丸い球体のような場所で一匹ずつ倒されていく蝙蝠のその断末魔を聴きながら青年は心を落ち着かせていた。もちろん元の姿に戻れば全部当たる事になるのだろう。青年はそこまで計算して剣を振っていた。

 

不可能弾幕。規則を破っている弾幕だがそうでもしないと手慣れには勝てなかった。青年は苦肉の策としてこれを前に編み出していた。

 

「やるじゃない。」

レミリアは青年の前へと現れていた。何とか破ってきていたのだろう。見事に回避された青年の弾幕を見ていてしてやったような表情をするレミリア。

 

青年はそのような事は気にすることなく平然とした感じでその場所に立っていた。

 

「本当は規則を破っている。初心者の失敗と思っていてくれ。」

青年は申し訳なさそうにしていた。

 

「そうね。でも避けれたのなら何も問題はないわよ。」

レミリアはもう勝った気でいるのだろう。そんな感じの表情を浮かべているレミリアはグングニルを消していた。もう拳で勝てると確信したのだろうか。そもそも倒す気は無いのだろうか。

 

「そうか。それは良かった。して、そこまで近づいていいのか。」

青年は聞いていた。青年の見ている先には誰も居ないはずの所で動き回る緑色のレーザーの弾幕達だった。出る事も消えることも許されないのでその場を回ることしか出来なかった。

 

「良いじゃない。吸血鬼は本当の意味で人間に負けたりはしないのよ。」

レミリアはそのように言っている。確かにその再生能力というのは言うまでもなく強い。多分半分体を消しても数分もすれば再生するのだろう。それ程だった。だが、青年に策はないとは言っていない。

 

「そうか。」

青年の方へと向かってきていた無数の針はレミリアを後ろから貫いていた。稲妻に打たれたような衝撃を感じていたがそれを声に出せるほど余裕はなかった。蝙蝠一匹も逃がすつもりはない青年は逃げようとするその蝙蝠を全て斬り伏せていた。そして青年の放っていた弾もなくなり目の前の蝙蝠も一匹になっていた。その蝙蝠は羽を落としておくことにした。飛ばれるのも困るがそれ以上に面倒な事になっているのは言うまでもない。

 

青年は次は何処に行こうかと考えていた。三人を倒した青年は更なる獲物を求めていた。

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