青年英雄記   作:mZu

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第60話

蜘蛛は縦の糸と横の糸で使い方を変えている。粘着性のある糸と別にそうでもない糸があり円形をしている。そして中心に集まる糸は一つの点となっている。スコープのように施されたその目を頼りに獲物を狙う。その先に映るものをめがけてその弓を引く。一直線を目指してその矢を持てばそれを射る。

 

 

何処か落ち着きのない黒髪の青年は薄暗い視界の通らない狩人にはうってつけの場所を歩いていた。こ木の葉の間から漏れ出ているその光を頼りに歩いていく。

 

博麗の巫女に後ろは任せているので今は一人である。寂しさは特に感じていないが何かいるような気がしているのを感じていた青年は警戒は怠らなかった。

 

別に何も知らないこともない。だが、話すことが出来ないと言うのもある。青年は少しだけ話すべきか話さないべきか迷っていた。しかしもうそろそろ話さないといけないとも思っている。

 

右腰に携えている剣の柄に触れながらこの自然の中の風に身を任せている事にした。どこから現れるのかもわからないのであれば何もする事もない。しようともしない。

 

青年は適当にそんなことを考えながらその世に生きているのかそれとも生きていないのかそれさえも分からないような雰囲気があった。まるで何処も見ていないようである。

 

常に柄には触れているがそれが使われる時はあるのかはどうかは青年ですら分からない。何が起こるのかもわかっていないからだ。

 

青年の上から覆い被さるように木は生えていてその周りの視界を覆っていた。一枚板のようなそんな気もしなくはないが青年に気にすることなく進んでいく。

 

何かがくる風切り音。

 

剣を抜いた青年はそれに合わせるように受け止めていた。その正確さには恐れ入る。

 

刀身の上に乗るようになっている矢は青年に向かって突き進んでいた。意思があるようにそして力強く向かってきていた。

 

「剣を貫かんとするか。」

青年は少し余裕があるのか小さな声で独り言をしていた。弾こうとしても居残り続けるその矢に少々苦戦しているような気がする青年。

 

左下へと剣を運んだ青年は矢が飛んできた方向をじっと見ていた。その先に居るのを確認出来なかったので青年はとりあえず進んでみることにした。ここで立ち止まっていても進まない。それにここで急いで向かおうとしてもそれは向こうの思う壺。青年は冷静に行動を続けていた。

 

「これは霊夢に任せなくて良かった。」

何処か満足そうにしている青年。右手に持っていたその剣を肩に担ぎながら適当に妖怪の森の中を歩くつもりらしい。

 

間髪を入れずに何処からか矢を放たれていた。正確に心臓を貫こうとするその一撃に青年は剣でその軌道を防ぐだけで何もしなかった。

 

それ故に何も起こりそうになかった。ぶつかる事もなければ一方的な干渉しかなかった。それでも青年は動じないようで何も気にするような事もないようである。

 

 

この先もこのような事はあったが青年は何もするような事はなく真っ正面からその人は現れた。

 

「何者だ。」

 

「貴方が先程から面倒な攻撃をしていた人か。」

青年は何となく疲れたのかそのように聞いていた。未だに肩の上に剣が担がれている。

 

「そうだ。」

その人は茶色の帽子を被っていてそこから黒髪が垣間見れた。左目には黒色の眼帯をはめていて茶色の目立たない服装をしていた。その森の中に息を潜ませるならちょうど良い服装とも言える。

 

「ところで何をしにここまで来た。」

青年は軽口のつもりで聞いていた。

 

「俺は復讐を果たしに来た。アレスというやつに負けたせいで俺はルシファーに落とされたんだ。お前には何の恨みはないがここで死んでもらおう。」

 

「そうか。何処で何をしようと俺は知らないがここに来るのはもうやめろ。」

青年は肩に担いでいたその剣を下ろして切っ先を地面に落としていた特に構えているようにも見えない。

 

「そんな事で俺は止まれないんだ。ここでしっかりと手柄を立てないといけない。」

その人は弓を構えてこの距離から放とうとしていた。

 

「そうか。それは頑張ってくれ。」

青年はその弓で射る先が自分であることに気づいていないような感じがする。おそらく自分の道しか進む気は無いのだろう。

 

「死ね。」

弓を使って最大限の威力で矢を射る。青年は切っ先を使って一直線にその矢を弾く。下へと軌道を変えられたので矢は地面に深く突き刺さる。

 

「何故その事を知っている。」

 

「何回も撃てばそのうち覚えるものだ。」

青年は懐から出した箱の中から白い紙で包まれたものを取り出すと火をつけるような事はなく唇の上に乗せているだけで何かしようとはしていなかった。

 

「何なんだ、お前は。こんな奴がいる事は知らなかった。」

 

「そうか。それは済まなかった。」

青年は人の話を珍しく聞いていた。だが逆鱗を触れていることには変わりはない。

 

「俺を見くびっているのか。」

 

「いや。」

 

「そんな事はないだろう。」

 

「そう怒るな。判断が鈍る。」

 

「誰に向かってその口を叩いている。」

 

「さて。」

青年は相手がどうしていようと関係がなかった。

 

「俺は元幹部だ。口には気をつけてもらおう。」

茶色の服装をしているその人は青年の適当な扱い方に激昂と思われる。手元は震えていてすぐに射った矢も青年の横を通り過ぎるだけで誰にも当たらなかった。ただし威力は高まっているようで木に突き刺さるだけでは止まらなかった。何か施されているようで貫いていた。

 

「そんな適当な事をしているから落とされたのだろう。そのルシファーという人は頭が冴えているようだ。」

 

「そんな訳ないだろう。俺は何故模造の兵器に負けないといけないんだ。」

 

「そちらの事情は何も知らないが見知らぬ人にそう話しても良いのか。」

青年は率直な感想として聞いていた。敵意というのはなく何となく聞いていた。

 

「ここで死ぬ事は決定している。逃げても無駄だ。」

 

「そうか。なら正面から戦わせてもらおう。」

青年はそこから特に動くような事はしなかった。だが何か秘めているものがあるようでそれを感じさせないようにしているようだ。

 

黒い眼帯をした人は再度弓を引く。その先に見据えた的を貫き通すため。己が正義を貫き通すため。

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