青年英雄記   作:mZu

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第62話

闇と光が共演している妖怪の森。紫煙を吐き出す口からつい言葉が漏れた。

 

「遅かったな。」

 

「うるさいわね。」

短めの黒髪で赤いリボンを付けているその少女は幻想郷を守る役目を持っている博麗 霊夢という人である。表裏は特になく感情の起伏が激しい。

 

「少し休憩は必要か。」

黒髪で長い前髪も纏めて後ろで一つにまとめている髪型をしている紫色のマントに身を包んだ青年はその口に咥えていた物を火を消してから吐き捨てていた。処理に困っているのは確かだが色々と物は無くしている。ある物とないものはどうしてもあったりする。

 

「いえ。行きましょう。」

不貞腐れているような表情を浮かべる霊夢に青年は額を人差し指で軽く押していた。特に何も言わないので何をしたかったのかは一切分からない。

 

「して、あの女性は誰だった。」

 

「イレインと言っていたわ。ねぇ、良い加減話してくれない。」

 

「何の話だ。」

青年はまるで話を理解していないようにとぼけていた。

 

「幻想郷では何が起ころうとしているのよ。」

霊夢は青年の近くでそのように言っていた。進路を妨害するようなくらいにで近づいていたが青年の方は迷惑そうにしているだけで何か言ったりするようなことはない。

 

「アーサーはアンタの事を兄と呼んでいた。それとアレスというのが誰なのか気になるわ。何か知っていることを話してくれるかしら。」

 

「基本的な記憶は消えている。だがこれから国取り合戦が始まるのは確かだ。今のところ三人は倒しているのだろう。やがてこちらへと来るのは明白。」

 

「何をすれば良いのよ。」

 

「もう目は付けられている。手遅れだ。」

青年は特に抑揚のない声で話していた。それこそ、これから來る現実を目の当たりにしているかのようで悲観的に物事を捉えているように見られてもおかしくはなかった。青年は踵を返して霊夢には無言で歩き始めた。それに霊夢は合わせるように青年の左横に付いて回る。まるでコバンザメのようである。

 

確かに霊夢がそこまで情報を聞き出したい理由はわかる。それを青年が知らないわけではないのだが迷いのある青年にはどうしても話しにくかった。

 

「そんな事を言ってももう無駄よ。話すまでは付いて回るわよ。」

 

「時間の無駄だ。」

 

「そんな話はしてないわ。時間稼ぎをしたいならもっと有効な方法があるんじゃない。」

 

「そうか。敵に悪知恵を教えるのは宜しくない。」

 

「そんなことを今は話しているわけじゃないのよ。」

霊夢からすれば知恵を与えるなどという事はどうでもよかった。段々と青年が話そうともしないことに苛立ちを覚え始めた霊夢だがその先にある何かを見つけるとその気は失せてしまった。

 

白い布で囲まれた明らかに不自然な拠点のようなものがあった。ここが何処から来たのか分からないような人達が居るのだと思われる。青年はそのことに気付いて中に入ろうと足を進めていた。

 

何となくだが何か仕組もうとしていると考えていそうな青年の後ろに霊夢が付いていく。何をしようとしているのかは分からないが何かあれば知らせてくれたらいいという程度で済ませることにした。

 

「霊夢、上から偵察を頼む。」

青年は特に向いてもいなかったが霊夢がいることには感づいていたようでそれ以上は何も言わなかった。霊夢は仕方がないので気に当たらないように優しく地面から離れるふわりと浮き上がっていた。

 

青年も四方と真ん中に取り付けられている棒とそれらにくくりつけられている布の隙間から誰がいるのかを確認していた。どうやら中は待機している人がいるらしい。だが人は一人だけ台の前にいて他は適当に散らばっている。まるで警護していないように見えるがあまり情報が入ってきていないのか警戒は怠っている。

 

「人は二十を越さないくらい。それと真ん中の台に簡易的な地図が置かれていたわ。矢印と地図から推測するに袋叩きにするつもりのようね。」

 

「そうか。では、俺が台の近くにいる人に攻撃を仕掛ける。少し混乱させた後に霊夢が札で突っついて欲しい。」

青年は精神を統一させているか目を閉じていた。そして何かを念じているようでブツブツと霊夢には聞こえない声の大きさで何かをしていた。

 

「何をしているのよ。」

霊夢は青年に聞いてみたが答えるはずもなかった。青年は自分の世界に入り込んでいた。そしてある事を念じるとその中へと入ろうと準備を始めていた。

 

青年が立ち上がる。そして弓に見立てた左腕の剣と右腕で持っている矢のようなものを用意していた。右腕を引いていく。

 

そして狙いを定めて右腕を押し出した。その威力はさながら吸い込むようになっているので白い布が簡単に破れてしまった。その中は一回の悲鳴とそれを聞いて動揺している声が響いていた。相手もまさか急に現れるとは思っていなかったのだろう。

 

「邪魔する。」

青年は盛大に破れた布の中へと入り込む。中の様子は作戦を立てていたのであろう台は粉々になっていてその近くに人が倒れていた。黒色で青年とは似ている髪型をしている紫色のシャツと小さな白縁の眼鏡をかけている。今回の作戦を発案したのはその人であるらしい。

 

青年がさらに奥へと入ろうと歩みだしたところの前で周りを囲むようにその中にいたと思われる人たちが取り囲む。

 

特に鎧を着ているような様子はなく少数精鋭を連れてきているようでそれなりの実力はあると思われる。

 

「何者だ。」

その人の中でリーダーだと思われる人が口を開く。

 

「俺が聞きたい。」

堂々と大きな声でそう話している青年はある意味ではブレない人だった。このような状況でも一切動じる様子はない。そして更に話を続ける。

 

「して、貴方たちは何をしようとしている。」

 

「話す義理もない。」

 

「そうか。」

リーダー格のその人はいきなり斬りかかっていた。居合斬りにも等しいその速さで青年を襲うが見えているようで軽々しく受け止められたかと思うと簡単に弾かれてしまう。

 

「貴方達を斬る気はない。逃げてほしい。」

 

「何だよ、その言い草。」

 

「やるなら全員と相手する。その代わり一気にかかってこい。時間がかかる。」

青年はそのように声で威圧するように低い声で言っていた。そうする理由は全く分からない。

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