青年英雄記   作:mZu

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第65話

幻想郷へと侵略したその件から一日が経っていた。人も少なくなっていたこともありそこまで大きくならなかったが新聞記者はそのネタ欲しさにあらゆるところを探していた。

 

しかしそれ管理者とそれに属する巫女により止められていた。それは青年の意見に賛同したアーサーの熱意に負けたからである。要はこれ以上は広げて欲しくないということらしい。

 

そんな訳で青年は幻想郷に西側へと来ていた。その理由は簡単なもので自分の口で話す必要があるからだ。新聞で全体に知らせることも可能だが誤解を招く事態になるとあとあと面倒くさい状態になる。そんな訳で青年は自分の足を使って情報を知らせることにした。

 

此処は霧に覆われた霧の湖。そしてその中の孤島に浮かぶ赤い壁に覆われた窓のない館が紅魔館と呼ばれている吸血鬼の住む建物となっている。普通ならこの時点で驚くところだろうが随分と幻想郷に毒されているか青年は特に驚いたりするようなことはない。それこそ当たり前のような事であるので驚く気も失せるというべきだろうか。

 

その館の門番とはもう既に顔見知りなので後でお嬢様とメイド長を連れてくるように伝えてから紅魔館の敷地内には入り込む。中には四季に合わせた花々が咲き誇っていてそれぞれが自慢をしようとしない謙虚な気持ちであるのには間違いないようだ。しかし満開に笑っているそれを見て青年の心は特に動かなかった。それを受容できる程心に余裕がないといえばそれで終わる。しかし元々花々には興味のない青年がそこまで沸き立つものがあるわけでもないと思われる。花の世話はしないのかと言われるとそのようなことはない。

 

中庭を素通りする形で中へと入ってきた青年は大きなエントランスを誰とも話さずに右側へと突き進んだ。一面にチリ一つ落ちていない完璧な清掃をしているメイド長には感謝を心の中で述べつつ螺旋階段を飛び降りていた青年は受け身を取るように床を転がるとそのままの勢いで走り出していた。そして二階と一階を隔てている手すりの上に飛び乗るとそのまま飛び降りた。

 

足を大きく伸ばしてその勢いを簡単に打ち消してからスゥ、と立ち上がる。それは揺らめく陽炎。

 

黒髪を揺らしながらこの部屋の主人である人の前に来ていた。その騒ぎにも何も動じることのないどん、と座り込んでいる紫色の髪をしているその人は縁のない眼鏡をしていて魔道書をいつものように読み漁っていた。何が起こるのかと言われるとそれは何も起こらないのだろう。見知った仲である二人が今更何かしようとも思わない。

 

「パチュリー、少し話したい事がある。」

青年はその人がいる大きな机の前にあるふかふかのソファーの後ろに立っていた。座ろうともしないのが不審に思ったのかパチュリーは珍しく人の話を聞く事にした。眼鏡を外して机の上に乗せると魔道書をしおりを入れてから閉じて横に移動させていた。どうやら古い書物であるらしく上からそっと乗せるようにしていた。

 

「何かしら。」

机の上に膝を乗せて気持ち前へと出しているようにも見えなくもない。元々人の話になど興味を示さなかったパチュリーがこのようにしている理由はさておき何が起こったのかは全くと言って分からなかった。何が起こっているのかさえもよくわかっていない。

 

「話したい事がある。だが、人が集まるまでは少し待ってほしい。」

 

「ふーん。全員に話したい事なのね。」

 

「そうだ。それにパチュリーが一番理解してくれる。」

 

「それは貴方の事、それともこれから話す話のこと?」

 

「何方でもない。して、最近は体調はどうだろうか。」

青年は来るまでの暇つぶし程度に話を切り替えておいた。

 

「貴方が居ないおかげで元気よ。」

パチュリー派冷やかし程度に軽いジャブを見舞う。だが病弱な一撃なんて青年には痛くもかゆくもないようだ。

 

「そうか。それは良かった。して、小悪魔やフランは要るか。」

 

「居るわよ。レミィと咲夜が来てから呼ぶ事にするわ。」

パチュリーは一旦話を切り上げ迷うとしていた。二人の話は魔法関連以外の時はそう長くは続くことはない。その理由は簡単な話、興味のない話はお互いが聞かないからだ。

 

「そうか。少し待つ事にしよう。」

青年はそう言いながら腰に携えているうちの二本の黒い刀身をしているものを取り出していた。此処で素振りを行うつもりらしい。青年が剣を振るそのお届けが静かな図書室の中に響いていた。パチュリーはその姿を横目に時間を無為に過ごす事にした。それよりかは忘れていたというべきだろうか。

 

「待たせたわね。」

 

「おお、元主人。」

 

「待ちなさい。今、なんて言ったのよ?」

青色の髪をしている短めの髪型でナイトキャップのような白い帽子をかぶっている。吸血鬼らしくその鋭い目と唇から出ているその尖った歯が気になるが青年にとって気にするにたらない事である。

 

「主人だった人か。何か問題でもあるか。」

 

「あるわよ。此処で住まわせてあげているのは誰のお陰かしら。」

 

「美鈴にはお世話になっていた。礼の一つも言っていなかったか。」

青年は珍しく深く考えていた。それとも思い出しているようで頭を回転させている。

 

「私よ。紅魔館の主人はこの私なのよ。少しは敬いなさい。」

 

「して、話したい内容なのだが簡潔に説明する。先日の人里の騒ぎは耳にしているか。」

青年レミィとパチュリーに呼ばれていたその人との会話をやめて自分の話を切り出していた。紅魔館の主人であり吸血鬼であるが青年には弱いところを良く見られているためにこのような会話となっている。この時ばかりは青年が何を考えているのかは誰もわからない。飽きたら捨てるそんな物なのだろうか。

 

「で、何の話をしに来たのよ。此処で人を集めたからには何か理由があるのでしょう。」

 

「フランと小悪魔を呼んでくれないか。元主人の妹だ。」

 

「いい加減殴るわよ。」

 

「そうか。俺が失望するから辞めろ。」

 

「理由になってないわよ。」

 

「心優しい少女がそんな汚い言葉を吐いてはいけない。」

優しい声で話している青年に変に意識してしまった主人は仕方がなく許す事にした。ニヤリと笑っている青年を尻目にパチュリーは二人を呼んでいた。

 

「パチェ、何があるのよ。」

小悪魔が何処からか連れてきた主人の妹であるフランドールは状況が全くと言って理解できておらずどうしたらいいのかな分かっていなかった。目を擦って様子からまだ起きたばかりなのだと思われる。正確には起こされたというのか。

 

「これから、話があるそうよ。聞いてあげて。」

パチュリーがフランの耳元で小さな声で囁いていた。それを耳を傾けたフランはふんふん、と首を振る。眠たいのとパチュリーへの相槌が重なり合い不規則なものだったがそれでもいい。

 

「昨日の件だがあれは俺が引き起こしたものだ。」

青年のその発言には全員がそれぞれの反応を見せていた。そういう事もあるのでしょうとレミリア、何を言っているのかは分かっていない従者二人。興味深そうに目を覚ましたフラン。そして興味なさそうにしているパチュリー。

 

「正確には俺を起因として行われたらしい。記憶が曖昧なもので断片的にしか理解出来ていない。」

 

「そう言える根拠は何処にあるのかしら。」

 

「俺が此処に存在しているから。相手は次元を越えて残党狩りが行なっているらしい。」

 

「つまり、貴方を此処で倒せば終わるという話をしに来たの。」

 

「いや。本気を出す前にこちらから出向いて本拠地を叩く。そこで仲間を募っているというのが俺からの話だ。」

青年が皆にそう言った。その反応は多様しているがそれも仕方がないのだろう。

 

「そうね、私は何方でもいいわ。」

 

「お嬢様が行きなさいと言うなら仕方がないです。」

 

「同じくですね。」

 

「私は遠慮しておくわ。出たくないのよ。」

 

「パチュリー様と同じくですね。」

 

「面白そうだわ。暴れてもいいのよね。」

 

「と言うわけで俺は次のところへ行く。その他気になる事は後で知らせると思う。」

青年がそう言うと剣を抜きながら走り出して素早く何処かへと消えてしまった。

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