その後面倒な事が起こったわけでもないが青年は必死にクエストを受けて集めたのでとある酒場へと向かう事にした。その酒場は七人が兵士と任命された場所であるギルド養成所と呼ばれる周りと比べると大きめな施設の近くにある。一軒か二軒かそのぐらいの距離に位置する酒場である。
これから客足が伸び始めるのかその中には店主と思わしき気前のいい人がいるだけで他に人などいなかった。テーブルを並べて座った八人は顔を見合わせていた。
「今日は急な話であるが集まってくれた事に感謝する。して、一つ伝え忘れていたことがある。金の単位についてはルビが扱われている。大きさで価値が変わるのでよく見て支払って欲しい。」
一番中心人物らしき黒髪の青年がその場で話していた。周りが静かなので店主にも聞こえていると思われるが別にその事は気にしていないのだろう。青年は適当に薄いピンク色の入った石をテーブルの上に散りばめた。大きさはそれぞれだが意外にも不揃いであるのには変わりない。大体でしか合っているものはない。
「それでギルド養成所にあるクエスト募集から好きなものを取って向かってくれ。しっかりとこなしていれば別に問題はない。対価としてルピが支払われる。国家のものを受けると良いが難易度が高いか募集していない事が多いので民間からのクエストを受ける事になるが不服があればすぐに言え。後から気付いても遅い。」
青年は更に言葉を連ねていた。皆はその言葉を聞いているだけで特に反論はしなかった。そして此処から軽く別れると皆はそれぞれの兵士として分け与えられた部屋へと向かっていく。クエストで得られた報酬金を皆に平等に分けて青年はその場に残り店主と話していた。
あれは俺が此処に来たばかりのことだ。あの頃は右も左も分からない状態で知らない人しか居なかった。まともにクエストを受けてさせてもらえなかった小さな少年はいつしか闇の中へと手を染めるようになっていた。持ち前の腕と子供の頃から磨かれた感情の殺し方によって大人たちの裏側で一人生きていた。
「これは今日の報酬だ。」
黒服のシャツを着ている大人三人と少年が一人対面していた。相手は取引のために持ち寄った報酬金なるものを地面に落としていた。小さなものが二個か三個か。あまりにも不釣り合いな報酬に少年は手を出した。裏取引ではこのような不当な時はよくある。逆を言えばまともに払ってもらえる事は少ない。いや、ない。なので少年は素早く逃げられる前に持っている古くなったナイフで仕留めようとしていた。
持ち前の腕で素早く声を出さずに息の根を止めた少年は呼吸をしたくなった三人からルピを盗んでその場は逃亡していた。あの頃はとても良い思い出である。青年はそんなことを思っていた。あの頃は血で血を洗う場所だった。余ったお金で武器を買い揃えてはまた裏側のクエストを受けていた。そんなどす黒い日々を過ごすのも別に少年は構わないと思っていた。別に何も変わらない。場所と環境が変わっただけで何もやっている事は変わらない。それに報酬も貰えるのならその方が良かった。
「ところで、アンタ。何処のものだ。」
酒屋の店主は青年に聞いていた。目を閉じていて誰からの話を拒んでいそうなその目つきはやってしまったと後悔させる分には十分なものだった。それこそ何が起こったのか店主には分かっていない。何か変なことを聞いてしまったのか、そんな事を頭の片隅で考えてしまう。
「浮浪者だ。自由に住まいを変える必要があるからその方が動きやすい。」
青年は適当に答えていた。
「そうかい。あの人達とは何か関係があるのかい。」
店主は少し緊張した様子で青年に聞いていた。青年はゆっくりと首を曲げて店主の目を覗く。怖いと言う感情を通り越した何かがあるのが並大抵な場面をくぐり抜けた証拠でもあった。
「全くない。今日の朝、俺が連れてきた兵士になったばかりの新人だ。偶々道端で再開したのでもう少しだけ話を聞かせていた。」
青年はあまり怖い印象はない優しい声で話していた。もう品定めは終えたのだと思われる。基本的には良い人なのだろうと青年の目には映った。
「お金の話だな。確かに必要な事だ。偶にくすねたり法外にふっかける輩もいない訳でもない。」
「そうか。俺は有用に使ってくれたらそれでも構わない。後は活躍してくれる事を願っているばかりだ。」
「兵士は沢山いる。出てくるのは大変だがそうなればやはり鼻は高いな。頑張るように応援するしかないな。」
酒場の店主は大きな笑顔で青年と話をしていた。元々希望のある初心者がよく集まるだろうこの酒場ではあまり悲観的になる事は話さないと思われる。青年は少し身を引いて腕を伸ばすとカウンターの近くにある背の高い椅子から降りる。
「そうか。俺は此処で帰らせてもらう。お金がないもので何も頼めなくて済まなかった。」
青年は帰り際に申し訳なさそうに言っていた。そのような事は気にしないのか店主は手を振って寛容的であった。実際のところはまだあるがそれを使うにはまだ早い。それにそれなら食材を買った方が安くつく。青年はその事は知っているので此処では何も頼もうとはしなかった。これからまた使う機会もあるだろう。
とにかく青年は今日の寝床を探すためにバルタニア王国内を歩いて探しておくことにした。浮浪者はバルタニア王国に存在して良い訳ではない。基本的には罪人や破綻した者、何かに失敗した者のなりの果てである。逆をつけば何をしようとも関係ないのでよく言えば王国を一番下から支えているが悪く言えば病原体の扱いと等しくなる。それこそ浮浪者だから問答無用で命を落とす羽目になる事もある。
兵士や職人となった七人は特に今日生きれるのか考える事もあるが寝床と朝食と夕食は保証されるのでその点ではとても過ごしやすいが必然的に窮屈な生活であることには変わりない。