今日はとても晴れやかな日だった。その日はなんとも言えないほどに疲れた感覚を覚えた黒髪の少女は幻想郷から持ってきていた幣を右手に持って外にある演習場へと向かっていた。その場所はただ広いだけの場所で様々な道具を使って練習を行うことができるがそれを必要としない天才も中にはいる。ただし、その人が練習が必要だ、と考えさせられるほどの現実が現れたのならどうするのだろうか。
「うるさいわね。」
外からは大きな爆発音が聞こえていた。どこかの馬鹿が頭の狂ったような大きな音を鳴らしているのだろうと昨日から住み始めた一室で目を覚ました博麗 霊夢は髪を撫でてその場から雪崩を起こしたようにベットから落ちる。元々布団で眠っていた霊夢にとっては不安でしかなくその中で初めての初日からこれである。堪忍袋の尾が切れても仕方がないことだった。
「此処から兵士として勤めることになるのね。面倒な事になったわね。」
此処から一週間はどうしてもこのような生活になるのだと此処に入る前に説明は受けていた。潜入のつもりで引き受けたのだが初日からこれではこの先が思いやられると思われる。そうでもないと外が見える雑な作りをしている窓からこんな睨んだ表情をするような事はない。そうでもなければそうなってしまうのだろう。
「まぁ、良いわ。行きましょう。きっと早苗は居るでしょう。」
霊媒師として役職を申請した霊夢には一つの懸念がある。それはもしかすると被る役職なのではないかということだ。幻想郷にいた頃でも被っていたのだ。まさか他の場所へと行くなんて事はない。それを行く前から予想していた霊夢にとってこれから起こる事は何も楽しい事ではないのだ。
窓の外にあった演習場に霊夢は訪れていた。此処では皆が各々の技を練習しているようだ。ある者は何かを使役してみたり霊を自分の身に宿してみたり霊夢とは違う幣を振り回している人もいる。
周りからはとても浮いた存在となっているその人はどうしても見覚えのある存在だった。緑色の髪をしている少女でいつものように元気良くしていた。霊夢とは違い真面目で人の話を聞ける人柄で何事にも真っ直ぐ取り組んでいる。おまけに人の話は素直に聞いている。
「ご指導ありがとうございます。」
東風谷 早苗。それがその少女の名前だった。その人は深く頭を下げると教官と思わしきその人にお礼を述べていた。霊夢なら絶対にしたいとは思わないので全くもって正反対な者である。
「早苗、これからどうするつもりよ。」
右手に腰に当てている霊夢は不機嫌そうに早苗に声をかけていた。周りはそれなりの人がいて爆発音が聞こえてくる。まだまだ操りきれていないので爆発するらしい。それをうまくコントロール出来るのかと言われると別にそういうわけでもない。早苗はともかく霊夢にはあまりにも滑稽な姿にしか見えていないのだろう。そんな目をしていた。
「霊夢さん、昨日ぶりですね。よく眠れましたか。」
霊夢には睨まれている早苗だが何も気にしていないようでいつも通り快活そうに答えているので更に目を鋭くさせていた。遂には舌打ちをして態度と空気を悪くさせても仕方がないと思われる。
「眠れる訳ないじゃない。」
「ですよねー。ハハハ。」
早苗はあまりにもきっぱりと答えた霊夢にどのように言葉を返せば良いのかとても迷っていた。何が起こったのかは全く分からないが何が起こるのかは言うまでもなかった。
「そういうアンタは如何なのよ。」
「私は前はベットで寝ていたので慣れています。どちらでもいけますよ。」
「そ、そう。まぁ、良いわ。」
霊夢にはそこまで興味が起こらないのだろう。早苗はそんな事を考えながらライバルとして見られているのか謎の距離感のある話し方をしている霊夢を気にしていた。何を話したいのか、何を考えているのか、純真な早苗には何も分からなかった。逆に霊夢はどうして早苗なんかの名前が青年の口から出たのか全く分からなかった。早苗に劣ると言うわけでもない。そして元々持っている力の質が大きく違う。人間として生まれた博麗の力を持つ霊夢と現人神として神から力を授かった早苗とでは力の差は歴然だと思われる。
「あ、そういえば青年が話していた事なんですけど霊夢さんには化けるから気をつけてくれと伝言を受けていました。如何言う意味なのでしょう。」
早苗は特に考えていないのだろうか、霊夢は瞬時にそのように感じた。何を言いたいのかも全く分かっていない。馬鹿の発言を理解しようともしない霊夢は踵を返してその場から立ち去った。その目は何処か寂しげで意味を知っているようだった。
「待ってください。教えてください。何に化けるんですか。狸とかですかね。」
早苗は奇天烈な事を言い始めた。霊夢でさえ全く文脈がわからないらしい。理解しようともしていないのです無駄な事であると思っているのだろう。
「はぁ。これだから最初に名が出ないのよ。そんなのに化ける能力があったとして何に使えるのよ。」
明らかに呆れている霊夢はその冷たい目を早苗に向けながら何となく幣を振り上げた。早苗は一瞬で状況を理解したのか目を閉じて変に力を全身にこめて耐えようとしていた。だが、振り下ろす事はなくその場から立ち去った。此処の場で何をしようとも関係ないのだろうか。早苗は人の多くいる演習場の煙の中に消える霊夢の姿を見ながらそんなことを考えていた。如何したら仲良く出来るのだろう。何を学ぶことが出来るのだろうか。霊夢さんから奪えるものは全て奪っていこうと考えていた。
「よし、一人で練習しないといけませんね。」
もう一度教えを請うらしい早苗は近くにいる教官を捕まえて様々な事を聞いていた。これが何もしようとしない生まれた時から持っている力に甘えた霊夢と悲惨な現実から立ち上がってひたむきに努力を続ける早苗の差なのである。
「成る程。心をパーン、とすれば良いですね。そうするとズドーンと撃てるわけですね。」
少し頭が弱く感じるのは気のせいなのだろう。