下弦の月が空には浮かんでいる。幻想郷からこちらへと来て一週間が過ぎていた。一週間の研修期間のようなものを過ぎた兵士として王国には登録されている七人はこれから自由に過ごすのだろう。それでもまだ心配な事はないということではない。此処で如何してあと三週間の猶予を与えたのかはまだ分からないところだろう。それを話すためにある空間へと来た。
「という訳で、青年が如何してこのような期間を設けているのかを説明する必要があるわ。」
金色のウェーブをかけた綺麗な髪をしている八雲 紫は扇子で口元を隠しながらそこにいる七人に話を伝えていた。
「実際、此処で出ていっても良いものね。」
黒髪で後ろで結んだ短めの髪を揺らす博麗 霊夢は本当の意味で文句を言いたそうにしていた。その理由も分からなくもないがそれも読まれていた事なのだろうと思われる。それとも周りを煽るように霊夢が仕向けたのか。
「まず、一つ。資金の調達。これは確か最初のうちに話していたと思うわ。」
紫は一番最初に言ったことである。青年もそれに近い事は言っているのではないか、という紫の勝手な予想である。探してはいるが基本的には紫や藍でも見つけるのは困難だ。
「そう言うということはもう一つ何かあるのでしょう。」
水色の髪をしている吸血鬼であるレミリア スカーレットはその先を予想したのかそのように聞いていた。別に間違ってはいないだろうと周りは言葉に出さないまでもにも言おうとはしなかった。
「それは装備の調達。クエストで稼いだ報酬で良いものを買い揃えて欲しいそうよ。」
「という事はたくさんクエストを受けたら良いのですね。」
元気そうに答えた緑色の髪をしている東風谷 早苗は少し話の内容を理解していないようだった。
「その通りだけど一つ問題があるわ。先客があるのよ。」
「それは誰?」
誰かと被るように話されたので正確には分からないがお金に困っていた巫女か興味のある誰かなのだろうと思えた。それ以外は大体分かっていたので詮索はしないつもりなのだろう。
「簡単な話、青年よ。此処一週間で根こそぎクエストをこなしていたわ。」
少しだけの畏怖の表情をしていた紫の表情からそれがどれだけ凄い事であるのかは言うまでもなかった。きっと誰にも取られたくない何かがあるのかそれとももっと他の事情があるのか。それは本人に聞いても話す事はないのだろう。
「でも、最後まで話は聞いて欲しいの。クエストを受ける前にミェンの知り合いである事を伝えてほしいと伝言を受けているわ。」
「つまりその何かの為に青年は此処まで頑張っていたのね。」
霊夢は少し感心したように話していた。その理由はまた後でもわかることなのだろう。
「それともう一つ。挫折を味わった人が復帰するまでの期間だそうよ。それと代打に変わっても馴染ませる為にね。」
その言葉が心に刺さって抜けそうにない人もいないことでもなかった。しかし、周りはそんな事は関係ないようでそれなりに頑張ってみることにしたらしいが真相はどうかは分かったものではない。
「これで解散よ。時間を取らせて悪かったわね。」
紫はそう言うとすっとそれぞれの部屋の中へと送ってあげることにした。役職が変わるのでそれぞれ住んでいる箇所が変わってくる。それを正確に送ったとなればそれは相当な実力なのだろう。
「それはそうと貴方はいくら稼いだのよ。」
後ろで横になっていたその人は誰にも気付かれないように襖の裏に居た。黒い髪を後ろで一つに結んだ女性のような髪型をしている青年は青い服装に身を包んでいた。きっちりとした綺麗な服装で何かを隠すように羽織っているようだった。そして白いズボンを履いている。単純に正装しているだけなのでどこに出かけてもそこそこの人間にはなれるようにしている。
「数にして一万。その大半はギルド養成所の先程話していたことに使ったり、この服に使って空になった。」
「貴方は少し加減というのを知りなさい。如何してそこまで急いだのよ。」
「素早く終わらせるためだ。俺は何だってしてやるつもりだ。」
青年は素直にそして迅速に答えた。まさに突風のような。
「実際は一万で済むのかしら。」
素朴な疑問なのだろう。紫は何となく聞いていた。
「単純な話、民間からのクエストはとんでもなく安い。一日十五個、この数をこなしてやっと稼げたのがその額になる。そんな時間がかかることをやらせる訳にはいかない。」
「そういう事ね。それは伝えておけば良いかしら。」
「辞めてくれ。自ずと気づくだろうがしばらくはこのままで良い。」
青年がそう言ったので何も言い返せなくなった紫は仕方がなく黙っている事にした。