霊夢と早苗が弾幕勝負をしていた頃、こちらの方でも戦闘が始まろうとしていた。青い短い髪をしている吸血鬼はグングニルで攻撃を仕掛けようとしている。対する金色の髪をしている吸血鬼もレーヴァテインを持って対峙していた。その横で冷静に観察をしているメイドは凛々しくも表情一つ変えることなく冷淡とも言えそうな目をしながら二人の様子を眺めていた。
「向こうの方ではかなり大きな音がしていますがどうなされますか。」
完全で瀟洒なメイドは主人であるこの姉妹に聞いていた。これから始めるに当たってその前に何とかするのかを聞いているのだろう。
「別に。気にしない事にするわ。こちらまでは来ないでしょう。」
青い短い髪をしているレミリアはグングニルを悠然と構えながら妹であるフランの方を見ていた。あまり他で行われている戦闘には興味がないらしくどうでも良さそうにしているのは確かだ。
「分かりました。私は此処で一旦引かせていただきます。」
二人に仕えるメイドはさっさとこの場から離れていた。しかも時間を止めていたかのように一瞬で移動しているが二人には見慣れた光景なので別に気にすることはない。そこで何が起ころうとも関係がないようだ。演習場では別に特別なことは起こっていない。いつも通りの決闘というのが起こっているだけだった。向こうでは同種の言わば、同士討ちが起こっている。こちらでは剣士と槍使いの決闘が起こっているだけなのである。しかし、周りの人からすれば此処でもあれと同じような状況は起こしてほしくないわけなので抗議しようとする人もいる。
吸血鬼のメイドをしている十六夜 咲夜にとってはもう分かりきっていたこと。近付けさせなかった。いくら歩いても、走っても一向に距離が縮まりそうに思えない事実だけが段々と重圧としてのしかかってきて足が止まっていた。
赤い発光しているように見えるグングニルを持っている吸血鬼と赤い色をした刀身をしている燃えるような剣を持つその妹にはそのような事は知らない。しれっ、とその場に立っているメイドが全ての準備を済ませていた。
「こうやって戦うのはいつぶりかしら。」
姉であるレミリアは槍の先を地面に向けながら目は妹の方を向いていた。まるで挑発しているようにも見えないこともない。
「一度もないわよ。でも負ける気は起こらないの。分かるでしょう。」
妹であるフランドールはレーヴァテインをしっかりと持っていなかった。それこそ戦う意思があるのか分からないような雰囲気を醸し出してその場に突っ立っていた。誰かの真似事なのだろうがフランドールよりも経験の少ないレミリアにはぼんやりとしか思い出せなかった。
「何のつもりかは知らないけど手加減はしないからね。」
グングニルを持ち上げて喉笛を突こうとしているレミリアだがその目の前の状況の変わりようには驚く事しかなかった。半身になりつつレミリアの攻撃を避けていたフランドールがじっ、とレミリアの表情とその手先、足先を見ていた。そして油断のない視線で一切のブレもない動きからレーヴァテインを振り上げて左足と共に地面に叩きつける。
一瞬で勝負がついてしまったかのようにも思えるほどの威力を持っていたがお互い吸血鬼なのでそのような事はない。一撃で終わるほど簡単な種族としてこの世に生まれてきたわけではない。
「やるじゃない。もしかして青年の動きを真似しているのね。」
レミリアはきっと左肩から対角線を描くように切られていたと思われるがまるで何もなかったかのようになっていた。きっと逃げたのだと思われる、コウモリとなって。フランドールもさも当たり前かのような表情で特に反応は見せなかった。まるで分かっていたかのようで笑いすら起こり始めている。側から見れば気の触れている決闘だと思われている。
「ふふっ、そうだよ。よく遊んでくれたから覚えているんだ。」
また落ち着いたように話しているフランドールだがそうとは見えなかった。理由は言うまでもない、笑っているからだ。」
「そうね。あの人、実力は持っているものね。」
レミリアは少し姑息な手段を取るようになっていた。相手が答えようと口を動かしている時にグングニルを振り払ったレミリア。フランドールは特に防御も出来ずにそれを体に受けてしまった。だが、幸いな事に体が切られるような外傷はなかった。もしかすると打ち身をしている可能性は捨てきれないが。
右足に力を入れて低く体勢を構えたフランドールは視線をレミリアの方へと向けていた。その目はそれだけで人を殺しそうな殺人鬼の目であり元々の性格が内側から出てきているようにも思える。ありのままの姿だと言うのか、本来思ってもいない深層心理からでできた悪魔なのかは判断はつかない。レーヴァテインを後ろで構えているのできっとまだまだやれるのだろう。
自分の体と垂直になるように構えたグングニルをフランドールに突きつける。当たらないように避けるフランドール。反撃はせずに後ろで身を引くことを選んだ。間合いの違いと冷静な判断からそのようにしたのだと思われる。賢明な判断だと思える。
「フラン、もう少し力を出しても良いのよ。」
「分かったわ。お姉さま。」
手を前に出して何かを引き寄せていたところをメイドが間に入って止めていた。フランドールは不満そうな表情をしていた。だが、その能力は計り知れないものがあるので使用は控えさせるべきだった。
「どうして止めるの。」
フランドールは納得出来ないのか、メイドの方を見ていた。少し胸を撫で下ろしたレミリアは自身の魔力で作られたグングニルから手を離した。正確に言えば使う必要がなくなったので魔力の供給を辞めたといえる。
「それはね、フラン。貴方のその能力がとても危険な物だからよ。」
何か諭すように話しているレミリアを不思議そうな目で見つめていた。フランにはどうしても理解できない箇所があるのかもしれない。
「だって、青年には効かなかったからお姉さまで試したかったのよ。」
青年とは何者なのか、とふと考えてしまう二人がフランを見ていた。