青年英雄記   作:mZu

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第95話

深い森の奥。

 

その奥にはどうやら魔物が住んでいると言うことでクエストを依頼を受けた三人がいた。その人達はまだまだ名の知られていない人達であり、ある人によって簡単なクエストがなくなった為にこのような危険なものしか無くなっていた。ギルド養成所の職員としては大変申し訳ないと思っているのだろうが青年によって導かれている事に気づくのはまた後の話である。

 

「一旦休憩しましょう。」

銀色の短めな髪をしているメイドが前を歩いているある姉妹に話しかけていた。ここまで随分と脚を使って歩いていたのとどのような魔物と出くわすかは全くの未知数なので此処で休んでおくつもりなのだろう。

 

「分かったわ。」

優しそうな瞳と幼い顔立ちをしている青い髪をした少女はゆっくりと立ち振る舞いでメイドの言う事に耳を傾けていた。幻想郷から連れ出された紅魔館の主人であるレミリア スカーレットは近くに休む事の出来そうな場所を探していた。しかし周りは木ばかりなのでもたれかかる事しか出来ないと思われる。

 

「まだいけるよ。」

金色の髪で左側にサイドテールをしているレミリア スカーレットの妹であるフランドールは少しだけ状況を理解出来ていないのかそんな事を言っていた。実際のところ、そこまで疲れているような様子はなく実力も姉よりも高いことからの発言だと思われる。子供らしいところから始めてのところで気分が上がっているだけと思われる。

 

「此処に居る以上は生き残る必要があります。例え今日は勝てても次の日に負けてはいけません。なのでゆっくりと歩んでいきましょう。」

 

「今は咲夜の言うことを守っていれば良いわ。それとね、フラン。貴女に足りないのはそういう目の前のことしか見ていないことよ。」

 

「分かったわ。」

二人には対抗できないフランドールはその場は渋々ではあるが言葉に甘える事にした。別に本意ではないので不満そうな表情はしているが言い分も理解していない訳ではないようで反論する気は無いのだろう。

 

「さて、お嬢様。周りに休憩できそうな場所はありませんがどうなされますか。」

 

「マットがあれば敷いて欲しいけれど持っていないわよね。」

レミリアは咲夜に申し訳なさそうに聞いていた。確実に上ではないと知っているので何とも言えない態度をしている。

 

「はい。そのような物は持ち合わせておりません。」

同じく申し訳なさそうにしている咲夜。そこまで気を落とす必要はないのだろうがお嬢様に答えられない今の自分が恥ずかしくて仕方がないと言ったところだと思われる。本当はそこまで気にする事でもない。

 

「仕方ないわよ。木でも使いましょう。」

フランドールの提案に二人は賛成する事にした。と言うよりかはそれしか方法がないと思っただけである。

 

「それにしてもどうしてこんなに報酬が高いのかしら。」

 

「どうやら簡単なクエストがなくなったので少しでも高くしないとやってくれる人がいないのだそうです。それと緊急性のあるものらしいです。」

レミリアの質問に簡単に答えた咲夜。確かに魔物とは言うが一匹に対して5000ルピの報酬というのはどのような計算をしたのか全く分からない。

 

「どうしてこうなったのかしら。」

レミリアが地面に座り込んで周りを警戒している咲夜に聞いていた。

 

「それはですね、」

話は少し前に戻る。

 

日の登りそうなそんな時間、正に朝飯前の時間帯にギルド養成所を訪れた咲夜は小遣い稼ぎ程度に出来るクエストを探していた。別に困窮していると言う訳ではないがこれから三人分の装備等を買い揃えようと思うとそれなりの金額は必要だと咲夜が考えているだけである。

 

しかし、掲示板にはクエスト内容を示す紙が十枚以下しかなかった。何があったのかと内容をよく見ると高額な報酬のクエストしかなかった。どうやら王国の方から出されているクエストしかないようでその期間も多岐に渡る。咲夜はじっくりと内容と報酬を見比べていたところで職員と思わしき人が近くに寄ってきた。

 

「本当に申し訳ありません。民間から出されているクエストは全部なくなってしまいました。ご迷惑をかけています。」

平謝りしている女性の職人に一瞬困惑した咲夜は頭を上げるように言った。

 

「それで今は高額で難しいクエストしかないと言うことね。」

 

「そうです。申し訳ありませんがまた別の機会にお越しください。」

職員は再度頭を下げる。それだけその気持ちが出しているのだがその理由や根拠となるものは何も分からなかった。

 

「少し聞きたいのですが、誰がこのような状況を作ったのですか。」

 

「黒髪の青年です。一日に十五から二十個はクエストを受領していました。その結果がこのような状況になってしまいました。」

 

「そう言うことね。少し考えさせて。」

一旦をここから離れた咲夜は何か聞いた事のある特徴であり何処かで聞いた事のあると思っていた。

 

面倒な事であるのは間違いないがだからと言ってやらないわけにもいかない。こちらには後二週間程度で出る必要がある。それまでにはしっかりとやっておく必要がある。

 

「好都合ね。」

キリッ、とした目つきで自信有り気に言った咲夜は有無を言わせぬ勢いで一枚のクエストの内容が書かれている紙を掲示板から取る。

 

「今から行ってくるわ。」

 

「お気をつけて。」

職員の方も気が動転しているのか止めるような事はしなかった。本来なら名の知らない人にあのようなクエストは受けさせないが今回ばかりはどうしてもそのようにはうまくいかなかった。

 

「と言ったところです。」

 

「貴女も随分と青年みたいな事をするようになったのね。感心しないわよ。」

咲夜の話を聞いていたレミリアはそのように答えた。決して仲のいいとは言えない仲なのでどちらかと言えばにて欲しくないと言うのがレミリアの本心なのだろう。

 

「多少強引なのですがその点に関しては目を瞑ってください。早くやっておく必要があります。」

 

「そうね。早めに行きましょう。時は有限よ。」

レミリアはそう言うと立ち上がっていた。そして隣で軽く目を閉じて休憩をしていたフランドールを起こして此処からの道を歩いて行く事にした。


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