青年英雄記   作:mZu

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第97話

躊躇いの中の譲歩というのはあまり良くない。それが正しいか間違いであるかを感知する理性が揺らいでいる。その状態では何をしようとも何も上手くはいかないが時間だけが過ぎていく。しかし、経験と情報から一歩下がって見てみた同じ状況は何もかもが大きく変わっている事だろう。

 

黒髪の後ろに結んだ髪のある青年は青い礼服のような見た目の服に着替えて拳には赤色の装備をつけてある場所へと来ていた。ブリタニア王国の中心に位置する宮殿に住んでいる国王が直々に呼び出したので行かない訳にはいかないと言ったところだろう。しかし、そうなるまでの努力という名の遠回りな人助けは誰も知らないはずだ。

 

全ては王国内の動き方から予想した国王が相当な手練れだと感じたのか直々に呼び出されたという経緯だろうか。青年は宮殿へと歩いて進んでいる間に恐らくこうだろうと簡単な予想を立ててみた。恐らくでしかないためにどのようにすればいいのかは全く分からないので青年は深くは考えておかない事にした。どうしても気になることと言えば何処からそのような噂が漏れていたのかということである。

 

「お勤めご苦労。して、国王より呼び出された者だが入ってもいいか。」

宮殿の門の前、護衛と思われる男性が二人立っていた。槍を持ち厳つい顔つきをしているが青年は特に気にする事はなく中へと入っていこうとしていた。何が起こったのかは全くと言って分かっていないがすんなりと通してくれた。

 

流石は基本的にはどのような理由でも通さないところであるが国王の命令には敵わないと言ったところだろうか。宮殿での身分の差を目の当たりにした青年はその中へと入っていった。

 

その中は庭というものはないが建物の大きさは悠然としている。高さを比べるなら紅魔館よりかは遥かに高い。五階建てぐらいだろうと低めに予想した青年は真っ直ぐに敷かれた細かい石で作られた道を歩いていく。その間は特に音もなく誰かの気配もない為に不審に思えた。何が起ころうとしているのかは見なくても分かる。もう既に息を潜めるように王宮内にいると思われる。

 

青年は扉の取っ手を掴んで少しタイミングを遅らせてから自分側に開けて中へと入り込んだ。

 

刹那、横槍を入れられた青年は開けた扉を蹴り飛ばして槍を折る。しかしそれだけは終わらなかった。

 

再度反対方向から飛んできた槍に素早く反応して蹴り上げた脚を下げた。その上を槍は通り抜けていく。その空振りを起こさせたという反応をしている間に中に入り込むと剣は抜かずに構えていた。

 

「俺は反逆を起こしにきたのではない。」

青年は軽くそのように答えていた。

 

「どうぞお通りください。」

国王の命令でしていたと思われる二人はその場で一歩退いて元の役職である門番の役目に戻ったと思われる。

 

宮殿の大広間であり謁見の間であると思われるこの場所は上から小さな赤い旗が幾つも飾れている。紋章はライオンが右手に剣を垂直に持っているそんなマークが施されている。黄色を基調とした明るい見た目と潔白を意味する白色のカーペットが敷かれている。その先で待ち構えるのは赤色の背もたれの無駄に高い椅子に腰掛けている男性だ。その人こそが国王である。

 

青年は一度立ち止まって周りを見渡すとゆっくりと白色のカーペットを歩いていく。ある程度行けば止めてくれるので反抗をしなければ何も問題はない。それどころか円滑に物事は進んでいくと思われる。

 

「おはようございます。この度はこんな私をお招きいただき有難うございます。」

 

「堅苦しい挨拶は抜きじゃ。貴殿の最近の活躍はよく知っている。そこで任せてみたい仕事がある。」

国王はそのように話した。歳としてはそこまでいっていないと思うが長年の余裕というのか風格のようなものがある。

 

「それは魔王の討伐でしょうか。」

青年はそのように話を始めた。

 

「そうじゃ。貴殿には特に説明はいらんようじゃ。ならば、一人で行ってくるといい。」

 

「私には仲間が居ます。せめてその人達といかせてはくれませんか。」

 

「そうか。それならある試験を受けてもらおう。貴殿が仲間だと認めるならそれなりの腕は持っていると予想する。みすみすここで失う訳にいかんのじゃ。」

そこで言葉を途切れさせて国王は考えていた。青年はその間は何も話さずに相手の出方を冷静に見定めていた。面倒な事になろうがそれは仕方がないので何も言わない事にした。

 

「演習場で決闘をしてもらうのじゃ。実力を見定める為にも少し不利な対面なるが何とかやってくれるじゃろ。」

手配しろ、と大きな声で部下達に命令した国王は少しだけ笑っていた。何を持ってそのような笑みを出したのかは分かっていないが何か企んでいる事は青年は知っていた。そんな表情をしている。

 

「分かりました。国王の期待に応えられるように善処します。」

 

「その調子じゃ。では今から演習場へと向かうのじゃ。ついて参れ。」

国王がそう言うので青年は素早く立ち上がり国王の近くへと寄っていく。基本的には守るべき立場にある兵士だが今回ばかりは動く事はなかった。出ようと思ったところで青年が立ち止まるからである。演習場というのは宮殿の西側に位置する場所では此処からは一直線に通じているところだろう。青年はそう思って国王の後ろを歩いていた。背中を見せるとはどれだけの信頼を持っているのかと思うが実力はないとは言えないので宮殿で支えている兵士も下手に邪魔はできないのである。

 

「わしはシャルロット・A・ベヒモスじゃ。気軽にベヒモスと呼んでくれて構わない。」

 

「私にはまだそのように親しく呼ぶ権利はありません。せめて国王に認められてからにしたいです。」

 

「そうかそうか。そう言うのなら仕方ないのじゃ。こちらの準備が済み次第順次始めていく。しばし待つのじゃ。」

ベヒモス国王はそう述べるとスタスタと自分専用の椅子を腰掛けると日差しを避けるための傘のような大きな葉を持つ女性が近くに寄ってきていた。王なのでそのくらいの待遇の差があっても仕方ないと青年は思った。

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