青年英雄記   作:mZu

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第99話

こんな事がいつまで続くのだろうか。幻想郷からこちらへと来てからもうそろそろ一ヶ月が過ぎる。それまで何をしようとも関係ないと言えるがそれぞれがどのように過ごしているのかは気になる。何処まで干渉するのかは人の自由ではあるがそれでも何ともならないところもある。考えていたところでそれが伝わることもなければ伝える気もないのなら何も始まらない。

 

「貴様が王国内で活躍したと言われている実力者か。それにしても王も酷い事をしてくれる。」

青年は後ろから聞こえたその声に首だけで振り向いていた。別に来ていたことに気づいていないと言う事ではなかったがどうやらまた違う物があると思われる。

 

「そうか。」

何処か他人事のように答える青年に槍を持っているその人は少しだけ戸惑ったと思われる。青年が完全に振り向くまで何も話す事はなかった。

 

青色の鎧で竜を象った槍を持っているその人は槍の蕪巻のところを持って地面に穂先を向けていた。いや、刺しこんでいたようにも見える。素槍でシンプルな形をしている。顔の部分は覆い隠されているが目は見えていた。

 

「俺の一槍を受けてみよ!」

相当な自信があると思われる。青年に向けていきなり向けた穂先を垂直に投げつけるかのように振る。間合いなども読み取れていないが何処までやれるのかは知る必要もないのだろう。相当見くびっていた。それだけは言える。

 

青年は左脇腹を通り抜けて何処かへと行く。槍は簡単に避けられたが湾曲した矢の軌道は読み取れなかった。かなりの距離から的確に射られた矢は当たる事はなかったが近くを通っていた。やはり今回も二人であることには間違いないと思えた。

 

油断していた、それが青年の率直な感想だった。言葉として口から出るような気がしないのは確かだが何もかもが侮辱されたのような気分になる。青年は左手に持っていた剣を鞘の中に納めていた。そして両手で持っていた。

 

「さて、いつまで避けられるかな。」

少しだけ余裕そうに話している。青年はそれでも自分の流れは忘れないようにしていた。

 

「短時間で済ませる。まだ先はあるのだろう。」

青年は答えていた。まるで聞いていないかのように身勝手なその立ち振る舞いには敬意さえ感じる。

 

「ああ。ここで終わろうともどうなろうとも関係ない。国王には認められる事はないだろう。」

 

「そうか。」

抑揚のない単純な声が辺りには響いていた。と言っても演習場の広さでは誰にも聞こえる事はなく二人の間での会話でしかない。

 

「いつまでその余裕があるのかな。」

槍使いは挑発に言っているが何をしたいのかは全くと言って分かっていない。

 

青年は目を見開いた。突如として舞い出した槍使いはクルクルと槍を回していた。どうやらその感じの戦法であるらしい。相手に攻撃させるタイミングを分からせない。そしてその間に矢が飛んでくる。目の前と周りを同時に警戒していないといけなかった。それを瞬時に理解した青年はその場からゆっくりと離れていた。まるで囲まれた気分になっている青年は何処から飛んでくるのかは分からない矢を警戒していた。

 

槍使いからすればそのような好都合な事は無いわけで幾らでも待ち続けるつもりなのだろう。それがどれだけの時間を有しようとも勝てると思っているなら続ける。もう其処は決闘と言う名の付いているだけの処刑であり、同時に見せしめでもあった。どうにかしないとどうしようもない。

 

「さぁ、早めに降伏でもしたらどうだ。」

 

「そうか。ならば、俺はこうさせてもらう。」

青年は走り出していた。降伏するなんて言う選択肢は元からなく青年は頭の中で何かを考えていたと思われる。何があるのかと思われるがもう既に何が起こっているのかは言うまでもなく槍使いにも理解出来ていた。まさかの突撃である。愚鈍な判断にどうしようもなくなった槍使いは少しだけ槍の回転の速度を弱めた。

 

青年は鞘から引き抜いた剣で槍の動きを完全に止めると上から逆手持ちにしていた剣を鎧の頭部と胴体部の隙間を狙っていた。突き刺されば致命傷なんていう話ではないほどだった。

 

それでも防ごうとする人はいない訳でもない。後ろでずっと潜伏していた弓兵が威嚇とばかりに素早く射っていた。多分だが青年が動き出していた頃にはもう弓を引いていたと思われる。青年も別に見えていなかった訳でもなかったので額にかするその感覚も全て楽しむことにした。そうでもしていないとこの先ではやっていけないと思われる。

 

青年は取り敢えず槍使いを蹴り飛ばしておいた。嫌な隙を突かれるのも癪だが警戒する人を減らすのには丁度いい。ついでに倒れてしまったその人に追撃とばかりに頭部の兜の隙間から剣を通しておく。そして寸前で止めておいたのでもう何もする気も起きないだろう。勝手な想像だが青年は切っ先を目の近くで止めておいた。

 

「逃げるなら今のうちだ。」

青年は下に寝転んでいる槍使いに聞こえるように囁いた。目の前に剣がありもう少し動いていれば顔面に傷を負わされるどころでは済まなかったのでその場から逃げようとしていた。兜を脱ぐように足と手を使って地面を這う。その後ろ姿を見ながら青年は目の前にいる弓兵の方を見ていた。

 

青年はどこから来ても良いようにしていたが実際のところどちらに分があるのかと言われると向こうにある。ここからどうにか出来ると思えなかった。相手ももしかするとそのように考えていたのだろう。真っ直ぐな軌道で青年を狙っていた。宮殿から出てきた通路から放たれた矢は青年の前まで一直線に飛んできた。

 

右腕で剣を動かして矢を軽々しく弾いた青年は目の前にいるはずの弓兵に向かって走り出していた。距離にして演習場の縦の三分の一程度はあるが其処まで時間がかかることもなかった。

 

潜伏している弓兵は今度は軌道を変えていた。何があるのかと言われると何もないのだろうが先ほどよりかは読み取りにくいと考えていた。

 

しかし、逆手持ちにしていた青年の持っている剣の刀身に弾かれた矢は全く違う方向へと飛んでいた。もう既に何が起こったのか全く理解出来なかった。そもそも矢を弾くという発想はなかなかない。避けるのが精一杯なところである。

 

「辞めじゃ。見ていてつまらん。次じゃ次。」

国王は本当に飽きている様子でその場に居た。特に面白くない展開をしているからだろう。青年は自分勝手なその王に敬意を払ったふりをするために一礼だけはしておいた。不満そうにしているここまで戦っていた四人の気持ちなど全く知らないのだろう。

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