物語が本格的に進むのは次のChapter13から、ということで、いつもよりも短めです。
その代わり、次回の投稿をちょっと早めにやれればな、と思います。
棚卸しも終わりましたんでね。
あと、今回は基本オリキャラしか登場しません。
原作キャラとの絡みを期待されていた方々、申し訳ない……。
セシリアがハミルトン大佐と連絡を取っていた、ちょうどその頃。
IS学園学生寮の1122号室では、鬼頭もまた、自身の直接の上司と、パソコンを介してのテレビ通信による連絡をとっていた。通信の相手は勿論、パワードスーツ開発室の桜坂室長だ。
パソコンのテレビ通信機能を起ち上げ、相手を呼び出すこと十数秒……、ディスプレイに映じた親友の顔は、一週間前に同様の手段で連絡をとったときとはまた違った意味で、疲労の色が濃かった。
はて、どうしたのかと訝かしむ鬼頭は、仕事を終えていまは自宅にいるんだ、という桜坂の背後に、洗濯物を畳む桐野美久の姿を早くも認めてしまい、なんとも形容のしがたい面差しを彼に向けた。
「桜坂……その、背後に桐野さんの姿が見えるんだが?」
『……見んでくだせえ』
仁王の顔の桜坂は悄然と呟いた。曰く、鬼頭が名古屋を離れてからというもの、彼女からのアプローチは、日を追うごとに、情熱的かつ過激になっているそうな。以前は、桜坂の就寝中に部屋に忍び込み、洗濯籠の中から汚れ物を拝借し、その代わりに洗濯済みの衣服をクローゼットにしまった後、朝食を作って彼の目覚めを待っている、という程度だったが、最近は日中普通に活動している時間帯にも、ひそかにこしらえた合鍵をもって、堂々と侵入してくるのだという。
『なんかもう、普通に部屋にいるぐらいじゃ、感情が動かなくなっている自分がいるのよね、うん。平然と部屋に侵入してくる桐野さん以上に、彼女に対する自分の認識が変化しつつある事実の方が、すんごく恐いわ。うん』
「気をしっかり持て、桜坂! お前、それは洗脳されているぞ!」
日常的にパーソナルスペースを侵犯され続けたことで精神が摩耗し、狂気を孕んだ現状に対し抗う気力を失ったか、桜坂の黒炭色の双眸からは諦観の念がうかがえた。
『……まあ、俺のことはさておきだ。それで、今日はどうしたんだ、鬼頭?』
暗くなりつつあった雰囲気を払拭するように、桜坂は努めて明るい声音で訊ねた。空元気なのは明白だが、場の空気を気遣う親友の配慮を尊重し、鬼頭は言及しなかった。
「ミス・オルコットとの件についてだよ。陽子との試合の結果がどうなったか、とか。試合の後、彼女との関係がどうなったか、などをな。お前には話しておこうと思って」
『試合の結果は、もう、陽子ちゃんから、メールで第一報をもらったよ』
鬼頭は水音がかすかに聞こえてくるシャワールームの方を一瞥した。「今日はお風呂じゃなくてシャワーで軽くすませたい気分」と、陽子がシャワー室の戸を閉めたのは、五分ほど前のことだ。
『現役女子高生らしい、絵文字満載のメールだった。勝つには勝ったが、不満の残る内容だった、と複雑な心境がよく表われていたよ』
だろうな、と鬼頭は口の中で呟いた。
昨日の試合について、終了直前の様子を思い返す。あのとき、セシリアは二挺目の《トール》の存在をまったく想定していなかった。陽子の打鉄が、よりにもよってあのタイミングで故障さえしなければ、《トール》の銃口から放たれたレーザーは狙いたがわずブルー・ティアーズの胸部を貫き、シールドエネルギーの残量を空にしていただろう。陽子も今頃、堂々と胸を張って、自身の勝利を喜べたに違いない。
しかし、実際に起こった出来事は、右腕部のパワーアシスト機能が、突然、停止するというアクシデント。これにより、陽子はレーザー・ピストルのグリップを保持出来なくなり、レーザーが発射されたままの状態で、銃を取り落としてしまった。その際にレーザー光線を自身が喰らってしまい、打鉄のシールドエネルギーはエンプティの状態になってしまった。その瞬間、試合終了のブザーが鳴り響き、陽子の敗北を告げた。
ところがその最中に、試合終了のブザーが鳴る直前にセシリアが発射していた《ブルー・ティアーズ》のレーザーが、陽子に炸裂してしまった。これを試合終了後の攻撃という反則行為ととられたセシリアは、なんと失格の扱いとなり、試合は陽子の勝ちという、当人らはもとより、観客たちにとっても、なんともすっきりしない結末となった。
陽子から試合の詳しい経過を聞かされていなかった桜坂は、鬼頭から説明を受けて得心した様子で頷いた。
『ああ、その内容じゃあなぁ……。陽子ちゃんが気持ち悪く思うのも分かるよ』
「不慮の事故が原因で敗北した、というだけでも、受け入れがたい事実だろうに」
『しかもその裁定が、相手の反則のせいで、すぐひっくり返るとか! 急なことすぎて、気持ちの整理が追いつかないだろう、それ』
「実際、感情を持て余しているように見えるよ」
眉間に深い縦皺を作る鬼頭は、深々と溜め息をついた。
「勝ったことはたしかに嬉しい。しかし、その理由に納得がいかないから、素直に喜べない。事故については誰を恨むべきなのか。技量未熟な自分か、それとも打鉄を整備した名も知れぬ誰かなのか。試合終了後の攻撃については、セシリアを恨んでいいものなのか。考えれば考えるほどに、答えが見出せず、苦労している様子だ」
『真面目な娘だからなあ』
桜坂は優しい表情で苦笑した。
『心のもやもやを消化するには、時間がかかりそうだ。……ところで、』
「うん?」
『さっき、セシリア、ってミス・オルコットのことを呼び捨てにしていたが?』
「ああ。クラス代表決定戦の後にな、彼女とは和解することが出来たんだよ」
『そいつはよかった』
「それで、その際に、呼び捨てで呼んでほしい、とお願いされたんだ」
『なるほど』
「あと、お父様、と呼ばせてくれ、と」
『なるほど。……え?』
厳めしい仁王の形相に、険が宿った。
『え? そういうプレイ? 女子高生相手に。ドン引きなんだけど』
「違うわ! ええいっ、そんな目で見るのをやめろ、やめろ! 画面の奥のほうでちらちら映る桐野さんも、やめてくれ!」
二人からの蔑みの眼差しを受け止めながら、鬼頭は彼らに、試合後に設けられた、セシリアとの和解の場で行われたやりとりについて詳しく説明した。桜坂は勿論だが、美久も陽子が義理の父親から襲われた事実については知っている。誤魔化しの必要がないから、三人の間であった会話の内容を包み隠さず話すことが出来た。
「――というわけだ」
『それは……辛かっただろうな』
「ああ」
沈痛な面持ちの桜坂に、鬼頭は悄然と頷いた。あのときの陽子の胸中を思うと、目頭を熱くせずにはいられない。
性犯罪は別名を魂の殺人ともいう。被害に遭ったときのことを思い起こす度に、往時の恐怖や痛みの感覚が蘇り、被害者の心は殺されることになるからだ。
陽子の場合も例外ではなかった。義理の父親にレイプされたときの記憶は、彼女にとって最悪のトラウマだ。被害に遭ってから三年以上が経過しているが、心の傷はいまだに癒えていない。いまでも、何かのきっかけで思い出してしまう度に、体の震えは止まらず、張られた頬の痛みが蘇り、下腹部にも鈍痛を覚え、その夜は悪夢にうなされる、といった症状が生じてしまう。
そんな最悪の記憶を、自らの意思、自らの口をもって、他人に語って聞かせる。自殺も同然の行為だ。心と体をバラバラに引き裂かれるような痛みが、彼女の胸中で暴れていたに違いない。
「どんなに辛かったことか……! あいつは、俺の心を救うために、自分自身の心を殺したんだ。どれほどの、痛みを……」
『陽子ちゃんだけじゃないだろう』
桜坂は、鬼頭の言葉を途中で遮った。
『お前だって、辛かったはずだ』
父に対する誤解を解くために、陽子は自身の辛い過去をセシリアに明かした。彼女のこの献身を、モニターの向こう側にいる親友は嬉しく思うと同時に、心苦しいとも感じているはずだ、と桜坂は確信していた。
智也亡きいま、鬼頭にとって陽子の存在は人生のすべてだ。そんな大切に想う彼女が、自分のために傷つき、苦しい思いを強いられている。その事実は、この男の心をさぞや痛めつけたことだろう。
『俺の目には、お前が泣いているようにさえ見えるぜ? 俺の耳には、お前の声なき悲鳴が聞こえる。痛え、痛え、って、苦悶の声がよ』
陽子に気取られてはならない、と表に出さぬよう努めていた胸中をあっさりと看破され、鬼頭は束の間、返すべき言葉を見失ってしまう。
しばしの沈黙を挟んだ後、降参、とばかりに両手を上げるジェスチャーを取った。
「流石は、親友だな」
鬼頭は照れくさそうに苦笑した。
「俺という人間を、よく理解してくれている」
『前にも言っただろうが』
他方、桜坂は、ニヤリ、と不敵な冷笑を唇にたたえた。
『俺とお前の仲だぜ? 長い付き合いだし、お前の考えていることくらい分かるさ』
そのとき、ディスプレイの向こう側から、ぴゅううう、と蒸気の噴出する音が聞こえてきた。どうやら、火にかけていた薬缶の中の水が沸騰したらしい。洗濯物を畳んでいた美久が立ち上がって、キッチンの方へとスリッパの踵を鳴らしながら歩いていく。桜坂のために、コーヒーでも淹れてくるつもりか。
『……俺の余計な一言のせいで、話が脱線しちまったな』
キッチンの方へと目線をやりながら、桜坂は呟いた。
『それで、その後はどうしたんだ? ミス・オルコットの父親役を務めることになった、なんてことを報告するためだけに、わざわざテレビ通信を開いたわけじゃないだろう?』
クラス代表決定戦の結果や、セシリアとの和解が成立したことなどは、電子メールにでも書いて一通送ってくれればよい内容だ。しかし鬼頭は、相手の顔が見え、リアルタイムでの会話も行えるテレビ通信という連絡手段にこだわった。いったい、その理由は何なのか。上述の二項の他にも、伝えたいことがあるのか。それはテレビ通信でなければ伝わらない、あるいは、伝えにくい内容なのか。桜坂の問いかけに、鬼頭は首肯した。
「勿論だ。むしろ本題は、セシリアと和解した後の話にあるんだ」
鬼頭親子との和解後、セシリアは彼らに、一連の騒動における自身の無礼な態度や発言をすべて、英国政府に包み隠さず報告する腹積もりである、と自らの胸の内を明かした。
少女の決意の言葉を聞かされた鬼頭は驚いた。今回の一件において、セシリアが口にした言葉といえば、他国の文化批判をはじめとして、人種差別ととられかねない失言や、自分に対する人格否定の暴言と、聞き苦しいものばかりだった。少なくとも、一国のシンボルとしての役割が求められる代表候補生が口にしていい台詞ではなかった。それらを報告するとなれば、よくて専用機の没収、酷くて代表候補生の地位の剥奪、最悪の場合にはこれらに加えて、英国への強制送還など処分が考えられた。
――代表候補生の立場や専用機は、欲しいと思って手に入るものではない。才能に恵まれた人間が、血を吐くような努力を長年積み重ねて、ようやく手に入るものだ。絶対に専用機持ちになってやる! 絶対に代表候補生になるんだ! ……そんな強い想いなしには、得られないもののはずだ! そうやって手にした栄誉を、この娘は自らの意思で手放そうというのか!?
鬼頭からの又聞きでセシリアの考えを聞かされた桜坂も、遠くは名古屋の地で息を呑んだ。
過日、陽子に拳銃射撃の手ほどきをしてやった際に、思いがけず言葉を交わした彼女の、可憐な美貌と優美な所作を思い出す。プライドの高そうな人物だな、とは思ったが、まさかここまでとは……!
『……おそらくだが、ミス・オルコットは、自分の行いを誰かに裁いてほしかったんだろう』
鬼頭親子の真実を知ったセシリアは、自身のこれまでの行いや態度を大いに恥じたに違いない。鬼頭や陽子に対して、なんて酷い言葉を叩きつけてしまったのか。こんなにも互いのことを想い合っている親子に対し、なんて愚かなことを……。セシリアはすぐにその場で腰を折ったというが、涙ながらの謝罪を、しかし二人は受け入れなかった。いや、受け入れられなかったという。
鬼頭たちの気持ちはよく分かる。
暴言の数々を浴びせられたにも拘らず、鬼頭も、陽子も、セシリアのことを嫌ってはいないはずだ。彼らの性格を鑑みるに、このプライド高き代表候補生の少女に対し、むしろ好感さえ抱いているのではないか、と桜坂は推測していた。
思い違いをしていたとはいえ、彼女が陽子のために怒ってくれたのは、揺るがぬ事実だ。セシリア・オルコットには、他人の痛みをわがことのように想像出来る共感力が備わっている。自分以外の誰かのために、怒りの炎を燃やすことの出来る優しさもある。そんな人物を、この二人が嫌いになれるはずがない。
しかし、行いについては別だろう。
目の前で頭を垂れる女は、二人がそれぞれ最も大切に想う人を傷つけた。自分たちのことをよく知りもしないのに、親子の関係を勝手に、こう、と決めつけ、言葉のナイフで滅多刺しにしてきた。堪忍袋の緒は、とうに切れていたはずだ。そう易々と、許してはやれない。
かといって、何かしらの罰を与えてそれで手打ちにする、というのもやりづらい。繰り返しになるが、セシリア自身のことは好きなのだ。ただでさえ自身の行いに対する後悔で胸を痛めている彼女に、これ以上の仕打ちは無用だろうし、自分たちも辛い、と彼は考えた。
セシリアに対する好意と、彼女の行いに対する嫌悪感。矛盾する二つの感情が、鬼頭の次なるアクションに影響を及ぼしたであろうことは、想像にかたくない。彼は、代替案として、新しく関係を築いていこう、と彼女に握手を求めたという。
いまの自分たちではまだ、セシリアからの謝罪を受け入れることは出来ないし、罰を課すのも心苦しい。だから、この問題については一旦、脇に置いておく。コレまでの経緯にはひとまず目をつむり、この三人で改めて友好的な関係を築いていこう。鬼頭のこの提案に、セシリアは差し伸べられた手を握り返したというが、これは彼女の心の救済とはならなかったのではないか、と桜坂はにらんでいた。
自分の見たところ、セシリア・オルコットという女性からはプライドの高さの他に、潔癖症のきらいが見受けられる。いまや鬼頭親子の真実を知ってしまった彼女にとって、自身のこれまでの行いは、とても汚いものと映じているのではあるまいか。この心の汚濁を洗いそそがぬうちは、自分は今後、このIS学園で笑っては暮らせない、とそう考えたのではないか。
『たぶんだが、ミス・オルコットさんはお前たち親子に、自分の過去の行いを裁いてもらいたかったんだと思う。最終的にどんな結論が下されるにせよ、裁きを受けることで、少なくとも過去の清算だけは出来ると、そう考えたんだろうな。勿論、謝罪を受け入れてもらえれば、それがいちばん嬉しいだろうが、いいや許せない。お前には罰を受けてもらう、って、冷たく言われたとしても、それはそれで満足だったんだと思う』
「しかし、そんな彼女に対して俺たちは……」
『ああ。許しを与えず、罰も課さず、ミス・オルコットの心は汚濁にまみれたまま。これじゃあ、フラストレーションが溜まる一方だ。彼女はそういう、宙ぶらりんの状況が、我慢ならなかったんだろう』
鬼頭親子からは裁いてもらえぬ、と悟ったセシリアは、次いで、英国政府にすがった。いまの彼女には、とにかく、誰からかの裁定が必要だった。
「……その点に関しては、彼女には悪いことをしてしまったな、と思っているよ。セシリアが本当に求めているものに、俺たちは気づくことが出来なかった」
鬼頭が重苦しい溜め息をついたとき、ディスプレイに映じる桜坂の手元に、コーヒーカップがそっと置かれた。カメラの範囲外にいるらしい美久に礼を述べる姿を見届けた後、鬼頭は苦い表情のまま続けた。
「……今度は、俺のせいで話が脱線しかけてしまったな。話を戻すぞ」
『ああ』
「セシリアが何を考えて、俺のことを父と呼びたい、なんて言ったのかは分からない。しかし、彼女の求めを受け入れた以上は、俺はあの娘の父親役に徹するべきだと思うんだ」
『つまり?』
「親として、娘が自分のことを傷つけようとしているのを、黙って見てはいられない」
『なるほど。ミス・オルコットに対する英国政府からの処分が、なるべく軽くなってほしい、と』
「そういうことだ」
『お前のことだ』
桜坂は呆れた表情で呟いた。
『どうせ、もう、動いているんだろう? 英国政府に対して、オルコットさんの処分を軽くしてくれ、って、はたらきかけをさ』
「セシリアに、直属の上司に対して手紙を渡してくれ、と頼んだ」
『手紙の内容は?』
「嘆願書さ。セシリアへの処分は、どうか寛大な心をもって行ってほしい。彼女から専用機や代表候補生の地位を、奪わないであげてほしい。もし、その約束をしていただけるのであれば、私は見返りとして、貴国が現在開発中のBT兵器について、完成のためのお手伝いをいたします。……そんなことを書いてやったよ」
『なるほど』
桜坂は、不敵な冷笑を浮かべた。
『つまり、それが今日の本題か』
アローズ製作所に所属する身でありながら、他国のプロジェクトへ協力したい。
聞いた限りでは、そんな大切なことを、パワードスーツ開発室のみなへの相談なしに勝手に決めてしまったことに対する報告と謝罪が、今宵、彼がいちばん伝えたかったことのように思える。しかし、彼との付き合いが長い桜坂は、いいやそうではあるまい、と確信していた。セシリアのことを助けたい、という気持ちは勿論あるだろうが、それとは別に、BT兵器の開発を手伝いたいと思う理由があるはずだ、と勘づいていた。
「勘違いしている人も多いが……」
案の定、続く鬼頭の言葉は、謝罪ではなかった。
「BT兵器の強さは、無線誘導式攻撃端末によるあらゆる方向からの攻撃を可能としたことにあるのではない。このシステムのいちばんの強みは、攻撃端末にあれほどの繊細な動きを可能たらしめている、その仕組みにある」
鬼頭は昨日の試合の録画映像を、桜坂が操作するパソコンに送った。四方八方より襲いくる《ブルー・ティアーズ》の動きを見て、仁王の口から感心した声が漏れる。
『たしか、イメージ・インターフェースによって、動くんだったか?』
「そうだ。こう動け、ああ動け、といったイメージ……つまりは思考波だな。この脳波によって、誘導コントロールされている」
本来、人間の脳波に、物を動かすなどの物理的な“力”はない。ISに搭載されているイメージ・インターフェースは、この脳波を強化・増幅することで、機体を動かす、武器を展開する、といった動作を可能としている。
そうした中でも、イギリスが開発したティアーズ型に搭載されている技術は、群を抜いて素晴らしい。なにしろ、あの大きさの攻撃端末を自由自在に、しかも六機同時に、無線をもって動かすことが出来る。脳波の増幅は勿論、思考ノイズの除去といった補助機能にも優れている、と考えられた。
「《ブルー・ティアーズ》にはレーザーや誘導弾といった攻撃のための装置の他に、各種のセンサーや、機体の運動を制御するためのPIC、エネルギー貯蓄用のタンクなども搭載されているはずだ。あの小さな筐体に、これらの装置を組み込むとなれば、イメージ・インターフェースの脳波受信装置は当然、超小型かつ、余計な機能を一切排した、シンプルな物とせざるをえない。それでいて、あれほどの動きを可能としているんだ。俺は陽子との試合を観戦して、感動したよ。いま、欧州では第三次イグニッション・プランの主力機選定が白熱しているというが、ことイメージ・インターフェースの完成度において、イギリスは他国に対し、大きなアドバンテージを得ていると思う」
『……逆に言えば、だ』
鬼頭の言わんとすることを察した桜坂は、浮ついた口調で言った。
『ティアーズ型に搭載されているイメージ・インターフェースのリソースを、攻撃端末といった余分な物には割かず、純粋に機体の運動制御のみに費やしたならば!』
「ああ、そうだ。そのISの運動性は、飛躍的に向上する!」
『そしてその技術を、俺たちの災害用パワードスーツに導入することが出来れば……!』
「ああ、そうだ!」
鬼頭は犬歯を剥き出しにする、好戦的な笑みを浮かべた。
「ISを除けば、世界で最も機敏に、しかも、あらゆる悪環境の中でも動くことの出来るパワードスーツが誕生する!」
『それだけじゃないな、鬼頭! 自分の脳波を強化・増幅出来るということは……』
「ああ! 応用すれば、他者の脳波を強化・増幅することも出来るはずだ!」
ブルー・ティアーズに搭載されているイメージ・インターフェースは、未完成の状態のいまでさえ、驚異的な性能を誇る。それを完成させ、その技術を自分たちのパワードスーツにフィードバックすることが出来たなら、
『倒壊した家屋の瓦礫の下で!』
「大波によって転覆した船底で!」
『助けを求める人たちの!』
「声なき声だって、聞き取れる!」
他者の脳波を増幅し、受信することが可能となれば、救助を求める人々の位置を、いち早く特定することが出来るようになる。生還率を、ぐっと上げられるはずだ。
「そのためにも、俺はイギリスのBT兵器の開発を手伝いたい。手伝いを通して、かの国が開発した、世界最高峰のイメージ・インターフェースの技術を学びたいんだ!」
これこそが、今宵、鬼頭が桜坂に伝えたかった本題だ。
セシリアのことを助けたいという気持ちと同じぐらい、彼は英国が開発したBT兵器に使われている技術を、学びたいと思っている。
事後報告という形になってしまったが、自分のこの考えを認めてほしい。目線でそう訴えかける鬼頭に、桜坂室長は完爾と微笑んだ。
『分かったよ、鬼頭。満足のいくまで、勉強させてもらってこい』
この男に限って、遼子化技術などの会社の特許を渡してしまうような下手は打つまい。会社に生じる損は少なく、得るものの方が大きいとなれば、背中を押してやらない理由はなかった。
直接の上司より自身の独断専行を認めてもらえたことで、鬼頭は安堵の表情を浮かべた。
残る懸念事項は、英国政府が自分の申し出に対しどんな返答を寄越してくるかだが、まあ、無碍にはされないだろう、と確信していた。
インフィニット・ストラトス二次創作
「この小さな世界で愛を語ろう」
Chapter12「新たに始める」
『……ところで、俺の方からも二つ、報告したいことがあるんだが』
英国政府との今後の付き合い方について意見交換を終えた後、頃合いよし、とばかりに桜坂が話題を変えた。
自分が彼に対してそうだったように、親友もまた、自分に何か伝えたいことがあるらしい。いつ切り出そうか、とタイミングを見計らっていた様子だ。
「何だ?」
『まず一つ目』
桜坂はカメラの前で右手の人差し指を立ててみせた。
『ほら、お前が陽子ちゃんのために作った、レーザー・ピストルだよ。あの、《トール》のことをな、パワードスーツ開発室のみんなに話したら、彼らから素晴らしいアイディアが上がってきたんだ』
「へえ……」
屈託のない笑顔で語る桜坂に、鬼頭は身を乗り出して訊ねる。
「いったい、どんなアイディアなんだ?」
『遼子化技術を開発した俺たちは、まず、XI-02に搭載するバッテリーの小型化に挑んだよな? これは無事成功し、XI-02の稼働時間を、大幅に伸ばすことが出来た。これはこれで素晴らしい成果だと思うが、先日、滑川さんからな、こんな意見が上がっていたんだよ』
鬼頭主任はレーザー・ピストルを作ったことで、遼子化技術を上手く駆使すれば、バッテリー以外の装置も、性能を落とさず小型化出来ると証明してみせた。ならば、そもそもバッテリー駆動方式にこだわる必要はないのではないか。
桜坂が口にした言の葉に、鬼頭は思わず息を呑んだ。
『目から鱗の気分だったよ。どうやら自分でも知らぬうちに、視野狭窄に陥っていたらしいな。滑川くんから言われるまで、まったく思いつかなかったよ』
鬼頭たちがXIシリーズの動力源にバッテリーを選んだ理由は、パワードスーツの大きさでは、エンジンを中核とするパワーユニットを積むのは難しいと判断したためだ。エンジンそのものは勿論、燃料をプールするためのタンクや、エンジンが生み出す“力”を電気エネルギーに変換するためのジェネレータ、エンジンの過熱を防ぐための冷却装置などを、限られたスペース内に納めるのは至難の業。無理に納めようとすれば構造上の余裕がなくなってしまい、結果、別の問題を生じさせてしまうだろう、と、遼子化技術を開発する以前の鬼頭らは考えた。
『しかし、遼子化技術を上手く使えば、その前提を崩すことが出来る。パワードスーツのサイズでは収納出来ない? だったら、収納可能なサイズの、小型のエンジンを作ってしまえばいい。滑川くんはそう考えたんだ』
早速、桜坂はコンピュータ・シミュレーションのプログラムを走らせた。滑川技師の意見をベースに、とりあえず、火災に強いディーゼル・エンジンを中核としたパワーユニットの3Dモデルを製図する。縦三四センチメートル、横二十センチメートル、奥行きにいたっては僅か十三センチメートル。シミュレーション・プログラムによれば、遼子化技術を駆使することで、たったそれだけのサイズに、パワーユニットに必要な最小限のコンポーネントを凝縮出来る、という試算がなされた。この条件でシミュレーターを動かしてみて、滑川技師ともども驚いた。
『あくまで、コンピュータ・シミュレーション上の数値にすぎないんだが、とんでもないスペックをたたき出しやがった』
最高出力六〇〇馬力。
その数字を聞かされて、鬼頭は思わず絶句した。たっぷり二秒をかけて数字の持つ意味を咀嚼すると、唸り声に喉を鳴らした。
「メルセデス・ベンツのCクラスのディーゼル搭載モデルの最高出力が、たしか一九四馬力だったはずだ。つまりこのエンジンは、メルセデス三台分のパワーを持っているということか!」
Cクラスの車重はセダン・タイプでおよそ一・六四トン。実用セダンとしては、比較的高めのパワーウェイトレシオも魅力の一つという車種だ。これに対し、XI-02の場合は、潤滑油などの消耗品も含めたシステム重量で一〇〇キログラム未満しかない。桜坂の弁によれば、バッテリーをすべて取り外し、このエンジンに換装した場合でも、一一〇キロを大幅には超えないだろう、とのことだ。それなのに、馬力では三倍以上もの開きがある。パワーウェイトレシオは、Cクラスの約四八倍だ。勿論、自動車とパワードスーツとでは構造がまったく違うから、パワーウェイトレシオによる単純な比較はあまり意味を持たないが。
『これだけパワーに余裕があると、その有り余るエネルギーを使って何か出来ないか? って、考えてしまうのが、人情ってモンよ』
次いで提案を口にしたのはトムだったという。彼は、遼子化エンジンの搭載が前提になりますが、と前置きした上で、XI-01建造時に一度諦めた、ロボットアームの採用を再考してはどうか、と口にした。XIシリーズは01型も、02型も、パワーアシスト機能には人工筋肉を採用している。これはロボットアームに比べて、装置全体をコンパクトにデザインでき、電力の消費量も抑えられるからだ。しかし、これに関しても、遼子化技術を駆使すれば、その前提を覆すことが可能だ。
遼子化技術を使えば、ロボットアームの採用を見送った理由の一つである、装置全体の大型化という問題を克服出来る。また、六〇〇馬力もの出力があれば、ロボットアームの可動に必要な電力を、十分確保出来る。ロボットアームは人工筋肉と比べ、ハイ・パワーかつ高トルクだが、その分、電力の消耗も激しい。バッテリー駆動方式では採用を見送らざるをえなかった理由が、ここにあった。
滑川技師とトムの提案は、開発室の他のメンバーを大いに刺激したという。彼らはその後も、遼子化技術を使えばXI-02の性能を格段に高めることが出来るのではないか、と議論を活発化させた。その都度、生み出されるアイディアは、実現性に乏しいもの、いますぐにでも実行可能そうなもの、実現は難しいだろうが、成功すればノーベル賞すら狙えそうなものなど、膨大な数に昇った。桜坂はそうしたアイディアの数々をすべて聞き取り、魅力的なものとそうでないものとに整理した。彼はさらに、魅力的と判じた案の中から一五〇ほどを選択し、XI-02に導入するための予算組みを開始した。
『というわけで、一つ目の報告だ。設計主任不在の時期にどうかとも思ったが、勝手ながら、XI-02二号機の製作を開始することにした』
無論、二号機製作の目的は遼子化技術をふんだんに採り入れた、XI-02の性能を検証するためだ。もともとXI-02は、XI-01の運用データを基に算出された、理想の災害用パワードスーツの性能に、現在の技術でどこまで近づけるか、その限界を測るために作られた。遼子化技術の導入により、その技術水準が上がったとなれば、それに応じて新たな実証機を作る必要がある。
『悪いな。お前がいない時期にこんな重要なことを、勝手に決めてしまって』
「それは構わないが……」
鬼頭は訝しげな表情を浮かべた。設計主任不在のいま、いったい誰が、件の二号機のデザインを考えるのか。
『設計図面は、俺が引くことになったよ』
表情から親友の考えていることを先読みした桜坂が、溜め息混じりに呟いた。
それを聞いて、鬼頭は得心と同時に安堵する。この男が図面を引くのなら安心だ。滑川技師らが口にしたアイディアは、いずれもいまは未完成のものばかり。実際に作ってみてはじめて、想定よりもダウンサイジングが上手くいかないなど、思わぬ問題が噴出しよう。しかし、桜坂ならば、そうした問題も含めて、万事上手くまとめ上げてくれるはずだ。なんといってもこの男は、かつて自分と、MIT首席の座を争ったほどの男なのだから。
『んで、二つ目に伝えておきたいことだが……』
桜坂は人差し指と中指を立てたVサインをカメラに突きつけた。
『これまた《トール》に関することだ。こいつを作るために、お前に貸した金について、言っておきたいことがある』
レーザー・ピストル《トール》の製作にあたっては、最終的に、鬼頭自身の個人的な資産のうちから費用を捻出することになった。しかし、IS学園にいながらでは、たとえば愛車を売って現金化する、といったお金の調達が難しい。そこで彼は、桜坂からの借金により資金を調達、これを制作費にあてていた。
「申し訳ないが、返済は来月まで待ってくれ」
おそらくは返済スケジュールについての話だろう、と当たりをつけた鬼頭は、カメラの前で両手を合わせた。
「色々と試してみたが、やはりIS学園にいる間は、資金の調達が難しい。来月中には一度、名古屋に戻って、なんとか用意するから」
資金の調達計画の中には、愛車の処分や、お気に入りの時計コレクションを売り払う、といった内容も含まれている。近い将来を憂いてか、溜め息をつく鬼頭の表情は険しかった。
しかし、予想に反して、桜坂が口にしたのは、返済の催促に関する言葉ではなかった。
『そのことだが、別に、無理しなくてもいいからな? ゆっくりで、全然構わないぞ』
「ありがたい申し出だが、それは……」
『友人同士であればこそ、こういうお金の貸し借りについては、きっちりやっておきたい、って気持ちはよく分かるよ』
桜坂は苦笑した。
『けどな、そのために自分に無理を強いる友人の姿を見せられるこちらの気持ちも、よく考えてほしい。以前、そろそろ買い換え時かな、って言っていたプリウスはともかく、時計コレクションは、お前が俺と出会う以前……高校時代から、コツコツ集めた、思い出深い品ばかりだろう?』
たとえばタグ・ホイヤーのアクアレーサーは、鬼頭がはじめて自分のお金で買った時計だ。中学三年生の春、父の経営する時計店で一目惚れした。時計とは我のことである! と、言わんばかりの、シンプルさが美しいフォルムに、心臓を撃ち抜かれた。以来、アルバイトに明け暮れて、高校一年の冬に、ようやく手にすることが出来た、と聞いている。鬼頭の所有するコレクションにはすべて、そういった思い出が詰まっている。
『手放してほしくはないよ』
「桜坂……その、ありがとう」
完爾と微笑む桜坂に、鬼頭は感謝の言葉しかない。
と同時に、時計コレクションの処分以外の手段で、なるべく早く金を工面にしなければな、との決意を新たにした。
◇
成田国際空港は、千葉県成田市の南東部に位置する、日本最大の国際拠点空港だ。
一九七八年の開港以来、国際線の利用客は日本第一位を誇り、航空貨物の取扱量もまた日本第一位。日本の貿易総額の、およそ一四パーセントをこの空港が支えている。
そんな成田空港が整備する滑走路は、全長が四〇〇〇メートルにもなるA滑走路と、二五〇〇メートル級のB滑走路、三三六〇メートルのC滑走路、二五〇〇メートルのD滑走路の計四本。このうちB滑走路については、二〇一六年に計画された三五〇〇メートル級への延伸工事の開始が諸々の事情によって遅れ、昨年よりようやく着工。現在は二五〇〇メートルあるうちの、二〇〇〇メートルしか使えないという状況だった。
午後八時一二分。
そのB滑走路に、大連周水子国際空港発、中国国際航空のエアバスA320がランディング・アプローチを仕掛けた。欧州五カ国が一九七〇年に設立したエアバスインダストリー社の、近・中距離向け旅客機の大ベストセラーだ。中国国際空港では通常、ビジネスクラス八席、エコノミークラス一五〇席の計一五八席で運用されている。
しかし、今回やって来たA320の座席構成は、通常仕様とは異なっていた。
なんとビジネスクラス八席をすべて取り除いて、ファーストクラス相当の部屋を一つ追加している。通常、移動速度の速い飛行機では、長距離向けの大型機でもない限り、ファーストクラスは作らないものだ。ましてや、この機体は大連から飛び立っている。A320はマッハ〇・八二で巡航可能な快足機だ。大連から成田までは、二時間少々でしかない。斯様に短い時間の快適さのために、わざわざファーストクラスを設けるのは、ナンセンスというほかない。ビジネスクラス八席の費用対効果には、及ばないだろう。
しかし、今回、中国国際航空には、そうしなければならない事情があった。
「きみたちにはある人物を日本まで無事に、かつその間の道中が快適に過ごせるよう、送り届けてほしい。党の人間ではないため、党専用機は使えない。また軍人でもないため、軍用機を使うわけにもいかないのだ」
前日の夜遅く、大連周水子国際空港の所長のもとを訪ねたのは、中国共産党の重役だった。
かの国はいまだ共産党が支配する国だ。党からの指示命令は、絶対なのである。
かくして、A320の大改造が行われた。作業は夜を徹して行われ、完了したのは翌朝の午前十時のことだ。その後はファーストクラス相応のサービスが提供出来るよう、態勢を整えることに尽力した。そして午後五時三十分、空港の駐車場に、黒塗りのBMWがやって来た。後部座席から降り立ったのは、小柄な少女だった。彼女は、空港職員らの最敬礼による出迎えには一瞥さえくれず、真っ直ぐ搭乗ゲートへ向かっていった。
それからおよそ二時間後、A320は日本の羽田空港に到着した。十分な距離の滑走を経て減速すると、マーシャラーの誘導に従って、ゆるゆるとスポットへ向かっていく。適性位置で停止すると、早速、作業員たちがランディング・ギアに輪留めを取り付けた。飛行機自体もエンジンをカット。余韻の残響が、夜の空気を攪拌する。タラップ車やベルトローダーといった作業用車輌が、ゆっくりと近づいていった。
最初に、エコノミークラスの乗客たちがタラップ車を使って地上に降り立った。着陸位置がターミナルから離れているため、降りた後は少しの間、バスで移動しなければならない。やがてエコノミークラスの乗客全員をバスが運び終えた後、ファーストクラスの少女はようやく腰を上げた。タラップ車の階段を、一段々々、踏みしめ、降りていく。
地上へと降り立った。
場所が空港だけに、四月の夜風が四方八方より吹きすさぶ。風になびく黒髪は、左右それぞれを高いところで結んでいた。
深呼吸を一つ。
日本の空気を肺の中へと落とし込み、少女は感慨深そうに呟いた。
「……懐かしい味」
日本の、空気の味だ。
懐かしさに、目頭が熱くなった。
ようやく帰ってこられたのだな、と実感が湧いてくる。
少女のもとに、白いクラウンがやって来た。彼女のためだけにしつらえられた、ターミナルへの移動手段だ。運転席側のドアが開き、スーツ姿の長身の女性が顔を見せた。こちらに向かって、一礼してくる。
「凰鈴音(ファン・リンイン)さん、ですね」
中国語で問われた。頷くと、女性は微笑した。
「日本へようこそ。こちらの車に乗ってください。ターミナルまで、お連れいたします」
女性は助手席側のドアを開いた。ファン、と呼ばれた少女はクラウンに乗り込むと、ドアを閉め、運転席へ腰を下ろした女性へと声をかけた。
「ねえ、窓を開けていい?」
「構いませんが……ここは空港ですよ? 騒音や、風が、わずらわしくはありませんか?」
「いいの。久しぶりの日本だもの。もっと、この空気を感じていたいの」
窓の外へと視線をやる少女の横顔を怪訝な表情で眺めながら、女性はパワー・ウィンドーの操作パネルへと手をやった。
Chapter12「新たに始める」了
成田空港に関して描写少ないのは、意図的にやっています。
自分、ここ、利用したことないもんで。
ネットから知り得た以上のことが書けない上、専門的な施設すぎて想像で補うのも難しい……。
他の作家さんたちは、どうやって書いているでしょうねえ?