おふざけ回、第二回。
頭空っぽにして書いてみたゾ。
そうしたら、過去最長の文字数(約3万字)になってしまった……。
クラス代表対抗戦翌日の午後六時半。
黒塗りの舗装を街灯の輝きが照らしている学生寮への帰り道を、鬼頭陽子はセシリア・オルコットと二人、肩を並べて歩いていた。今日は訓練機の貸出申請が運良く通ったため、アリーナの閉館時間いっぱいまで、二人でISの操縦訓練に励んでいたのだ。時間の経過を忘れてしまうほどに集中していた彼女たちは、やがて完全退館を促す館内放送に追い立てられる形で自主練習を終えると、どうせ帰る場所は同じだとして、ともに帰路についたのだった。
学生寮へと向かう二人の足取りは、疲れから重たげではあるものの、うきうきと弾んでいた。今日の訓練に、たしかな成果を見出した証左だ。
はじめのうち、陽子は第三アリーナで一人、飛行にまつわる基本動作の反復練習に努めていた。しかしそこに、ブルー・ティアーズを身に纏ったセシリアがやって来て、せっかく貴重な訓練機を借りられたのだから、それだけで終わらせるのは勿体ない、と、待ったをかけた。彼女は陽子のコーチ役を自ら買って出ると、武装の展開と格納についての練習や、高速で移動する目標への射撃練習など、数々の指導を施した。
セシリアの教え方は、情報量がとにかく多く、ポイントの絞られていない、お世辞にも上手いとは言い難いものだった。そのため、最初のうちは陽子もちんぷんかんぷんだったが、やはりそこは代表候補生に選ばれるほどの才媛。指導の癖にさえ慣れてしまえば、得られるものは多く、濃密な三時間を経たいま、陽子は、今日一日でずいぶん上達出来たな、という、たしかな手応えを得ていた。
そしてそれは、教える側の目にも同じように映じているらしい。「最後のあれは惜しかったなぁ」と、訓練の締めにと行った、模擬戦の結果を残念がる少女の横顔に向けるセシリアの眼差しは、ほくほく、と微笑ましげだった。
「まさかあのタイミングで弾切れするなんて」
「あら、実弾を用いる武器の場合、残弾の把握は基本中の基本でしてよ?」
イギリスからやって来た貴族の令嬢は、楚々と笑いながら反省点を指摘した。
今日一日の成果を見せてくださいまし、と、BT兵器《ブルー・ティアーズ》の同時展開数を二基に絞ったハンディ・キャップ戦は、二十分以上に及ぶ熱戦の末、セシリアの勝利で幕を閉じた。対決が終了した時点で、ブルー・ティアーズのシールド・エネルギーの残量は残り六割を切っていたが、たしかに、最後のすれ違いさまの射撃戦で、陽子の手にしたライフル銃が弾切れを起こしていなかったら、半分は切っていたかもしれない。
「最後のほう、《ブルー・ティアーズ》に追い立てられっぱなしで、逃げるの必死で、そんなこと考える余裕なんてなかったんだよぉ」
「そういうふうに心身ともに追いつめてから、ライフル射撃でトドメを刺す。それが、今回のわたくしの作戦でしたもの」
「くそぅ。この性悪女め」
「ISバトルにおいて、性悪は褒め言葉ですわ」
東の方角より吹く生温かい風が、潮の香りを運んできた。日本よりも寒冷なイギリス育ちのセシリアは、まだ四月なのに半袖を着たい衝動にかられて、少しびっくりする。潮風で乱れそうになる前髪を押さえながら、英国からやって来た代表候補生の少女は完爾と微笑んだ。
「とはいえ、本来の訓練目標である武器の扱いについては、だいぶ上達したと思います」
過日のクラス代表決定戦では、レーザー・ピストル《トール》以外の武装を展開するのにいちいち選択画面を呼び出していた陽子だったが、セシリアの熱心な指導のおかげで、イメージによる量子格納領域からの召喚をたった一日で可能としていた。どうやら彼女は、近接武器よりも射撃武器の方がディテールを想像しやすいらしい。訓練機のラファール・リヴァイヴに標準装備として積まれていた、対装甲コンバットナイフの展開には最短でも一秒を要したのに対し、《ヴェント》アサルト・ライフルでは、自己ベスト〇・五七秒という好タイムを叩き出していた。この調子であれば、あと数日もせぬうちに、以前、IS実習の授業で千冬が一つの基準として口にした〇・五秒の壁を突破出来るだろう。
上達著しいのは、武装展開の速さだけではない。武器の運用法――とりわけ、射撃の技術についても、素晴らしい向上が見られた。
はじめのうち、セシリアは陽子に、IS本体と武器とのセンサー・リンクを絶った状態で射撃の練習をするようアドバイスした。ISのハイパーセンサーには、武器との情報共有機能があり、たとえば照準器とつなげることでより効果的と思われる射撃オプションを操縦者に提案したり、武器の異常を検知したり、といったことが出来る。空中を超音速の速さで自在に動き回るISに攻撃を当てるための機能だけあって、その性能はかなり優秀だが、だからこそ、最初からそれに頼るのはよくない、とセシリアは断言した。
「射撃の難しさを嫌というほど体に染みこませてからでなければ、センサー・リンク機能の本当の使い方も分かりませんから」
その言葉に従って、陽子はライフル銃を中心に射撃練習を開始した。空間上に投影したいくつもの仮想標的めがけて、懸命に、《ヴェント》アサルト・ライフルの引き金を引き絞った。
仮想標的の種類は様々だった。止まっている物、動いている物。動いている物でも、動きの素早いやつ、遅いやつ。ワンパターンで機動するやつ、ランダムな回避運動をとるやつ。特に厄介だったのが、実戦を想定したドローンタイプの標的で、こいつは高速で動き回る上に、実弾銃や小型ミサイルによる反撃までしてくる。こうした標的の数々に、陽子はハイパーセンサーなしで挑んでいった。
練習を始めて最初の一時間は、さんざんな結果ばかりが続いた。静止している標的はともかく、動いている標的、こいつに当たらない。いまだ! と思ってトリガーを引き絞ったときにはもう、標的は狙った位置とはまったく別な場所に移動しているし、未来位置を予測しながらの射撃では、逆に早く発射しすぎて当たらない、ということが多かった。なまじ自機のスピードが速いだけに、標的の動きとタイミングを合わせるのが難しい。
使っているライフルの問題もあった。アサルト・ライフルとはいうものの、《ヴェント》は五五口径という重機関銃用の銃弾を連続発射するための機械だ。当然、キック・バックのエネルギーは莫大であり、ロボットアームの五指の中で、銃は滅茶苦茶に暴れ、銃口は乱れに乱れた。それならば、とパワーアシスト機能がもたらす膂力でもって、反動を無理矢理押さえ込もうとしたところ、銃は機嫌を損ねたかのように言うことを聞いてくれなくなってしまった。
「たとえISを纏っていようと、射撃の基本は、生身のときと変わりません。射撃場での練習を思い出してください」
練習を始めて二時間が経とうかという頃、コツがつかめてきた。反動を無理に押さえ込もうとせず、《ヴェント》の好きなように暴れさせてやる。そんなふうに意識しながら撃っていると、だんだん、このライフル銃の癖のようなものが分かってきた。《ヴェント》は機関部や箱型弾倉をトリガーやグリップよりも後方に配している、ブル・パップ型のライフル銃だ。前後の重量配分が、一般的なアサルト・ライフルの形とは違う。一発発射するごとに、後ろ側の重量が軽くなるから、知らず、銃口が下へ下へと向きがちになってしまう。以降、陽子は射線が心持ち上向きになるよう銃を構えながら撃った。ほんの少しではあるが、命中弾が増えた。
ライフル銃の扱いに慣れてくると、今度は、自身の立ち回り方に注意を払うようになっていった。動く標的に対して照準が定まらないのなら、狙いやすい位置に、自分の体を移動させる必要がある。問題は、その速度だが。
――単に速いだけじゃ駄目だ。標的のスピードよりも、ほんの少しだけ速い。そういう動きを、意識しないと!
ドローン型標的からの攻撃への警戒心から、知らず、自機の飛行速度が過剰に加速していたことに気がついた。相手のスピードレンジが時速百キロとか、二百キロメートルのときに、こちらのスピードが一〇〇〇キロメートルもあっては、かえって照準を定めにくい。こちらは追いかけやすく、敵からは逃げやすい。そんな速度域を見つけねばなるまい。
あるいは、最高速状態から一瞬で急減速し、低速域に達したらすかさず射撃。終わった、らすぐにまたトップ・スピードまで急加速する、という戦法も有効だろう。いずれにしても、PICの繊細なコントロールが不可欠だ。
PIC運動制御システは、ISを最強の飛行パワードスーツたらしめる最重要素の一つだ。その性能は、既存のどんな推進・運動システムよりも優れている。操縦者のIS適性や技量次第では、十Gとか、二十Gといった加減速さえ可能だが、それだけに、扱いは難しい。
――ペダルだ。父さんがいつも踏んでいる、アクセル・ペダルを思い出すんだ。
ISの操縦はすべて、イメージ・インターフェースによって行われる。
手指を小指から順番に握っていくとか、スラスターを五十パーセントの出力で噴かす、といった単純な行動ならばともかく、PICの制御のような複雑な動作では、直接的な表現よりも、比喩を用いた命令コマンドの方が、かえって入力しやすい場合がある。思い浮かべるイメージが強固で、かつ子細であるほど、ISの応答速度・追従の精度は増す。
陽子は移動標的を追いかける際、頭の中に、父の愛車のプリウスに備わっているアクセル・ペダルの姿を思い浮かべた。父の趣味で、スポーティなデザインのアルミ製ペダルに取り替えられたそれに、右足を乗せる。ゆっくりと、踏み込んだ。猛加速。速すぎる。いかんいかん、と体重を抜いてスピードを調整。まずは攻撃が目障りなドローン型を撃ち落としてやる、と速度を合せていく。
一機のドローンに、目をつけた。他のドローン型の動きにも注意を置きながら、後ろを取る。ロック・オン・ビームは発射せず、フル・オート射撃で、《ヴェント》を撃った。五五口径弾が炸裂し、ドローンの像はたちまち霧消した。一機撃墜したことで自信を得たか。それまでの苦戦ぶりが嘘のように、二機目、三機目を矢継ぎ早に撃ち落としていく。
指導役のセシリアの唇からは歓声が迸った。射撃練習を始めた当初からは想像もつかない身のこなし、射撃の精度。たった三時間の練習なのに、驚異的な成長速度だ。
――リンゴは、リンゴの木から離れた場所には落ちない。
日本のことわざでいう、蛙の子は蛙、に相当する慣用表現だ。ベクトルこそ違えど、彼女もまた父親と同じで、才能ある人物なのだな、と思い知らされた。学習のスピードが凄まじい。短時間のうちに、射撃の腕をめきめきと上達させていく。
そのときの様子を思い浮かべ、セシリアは隣を歩く陽子に言った。
「わたくしたちのような専用機持ちや、代表候補生などを除けば、一年生の中でもかなり上の方にいるのではないでしょうか」
少なくとも、武装展開の速さと、射撃の技術については素直にそう思う。練習機会の少ない一般生徒としては、頭一つ抜けた存在だろう、と。
「……よせやい」
陽子は面はゆそうに苦笑した。自らをエリートと公言してはばからぬほど、自身の腕っぷしに自信を持っているセシリアだけに、賞賛の言葉がくすぐったい。
「照れるぜ」
諧謔を孕んだ口調で呟く。冷たい潮風が頬をなぶり、温度差から、顔の火照りを嫌が応にも自覚させた。
夕闇の中、学生寮の灯りが見えてきた。
この数週間ですっかり見慣れた建物の姿を視界にとらえた陽子は、どこかはずんだ口調でセシリアに言う。
「この後どうする?」
寮に帰った後も、行動をともにする前提の問いかけ。セシリアもその点については特に疑問を口にせず、「とりあえず、汗を流してさっぱりしたいところですわ」と、応じた。アリーナの閉館時間ぎりぎりまで練習をしていた二人だ。訓練機の返還手続きを終えた時点で、更衣室に併設されたシャワールームを利用する時間はなくなっていた。
「夕食は、それからにしましょう」
「だね」
白亜のジャケットの内側で、べたべたと素肌に張りつくシャツの感触に顔をしかめながら、陽子は頷いた。
「わたしは部屋のシャワーで軽くすませるつもりだけど、セシリアは?」
「わたくしも、今日はそうするつもりでした」
「じゃあ……」
陽子は左手首に巻いたアニエスベーに目線を落とした。時計好きの父の影響で、彼女も計時の際には、携帯電話の時計機能よりも、それ専用の機器の利用を好む。
「いまが七時ちょい前だから、八時くらいに合流する感じでいこっか?」
「そうですわね」
「じゃあ、それで決まり」
「お父様はどうしましょう?」
セシリアは今日も解析室で頑張っているであろう鬼頭の顔を思い出した。使用後の後片付けが大変なアリーナと違い、解析室の閉鎖時間はかなり遅い時間に設定されている。叶うなら、一緒に食卓を囲みたいが、まだそちらにいるとしたら、作業の邪魔をしたくはない。
「……そういえば、さっきスマホを見たら、メールと着信が入っていたっけ」
アリーナからの退館を促す放送が流れる中、急いでISスーツを脱いでいたときに、ちら、と覗いたスマートフォンの表示を思い出して、陽子は訝しげな表情を浮かべた。先ほどは着替えを優先するあまり、それ以上の操作を控え、そのうち忘れてしまったが。
陽子は鞄からスマートフォンを取り出すと、指紋認証センサーに親指をかざして画面のロックを解除した。はじめに表示された通知の欄を見て、ぎょっとする。父親からの着信履歴が三二件、メールも二十件以上溜まっていた。
「うっわ、なにこれ……」
「どうしました?」
「父さんから、着信とメールが鬼のように入っている」
「オニ?」
「そういう慣用表現があるの。ええと、とりあえずいちばん直近のメールを……」
メールアプリを起ち上げ、受信ボックスの中から、最新のメッセージを選択する。件名、無題。本文は、『タスケテ。スグニカエッテキテ』の二行のみ。画面をのぞき込む陽子の表情は、みるみる硬化していった。
「あ……」
「あ?」
「アッカーン!」
突然、大声をあげた陽子に、セシリアは驚き肩を震わせた。おそるおそる問いかける。
「よ、陽子さん? お父様からは、いったい何と……」
「タスケテ、って! スグニカエッテキテ、って!」
「は、はあ? ええと、それはどういう……」
「わかんない! 書いていない! それがいちばんの問題!」
あの頭脳明晰な父が、まともに文章を組み立てられないほど動揺している。あるいは、切羽詰まっている。
僅か二行の短文は、自分たちの部屋でなにやら大変な事態が生じていることを想像させた。
「待っとってオトン! いま行くきゃーね!」
「ちょっ、陽子さん!?」
陽子は勢いよく地面を蹴ると、学生寮へ向かって駆けだした。
応じて、セシリアもその背中を追いかけ――追いかけて……、追いこしてしまう。
「ちょっ、待っ……セシリア、待って! 速いって」
基礎体力の差と、身長差に由来する歩幅の違いが、速度差を生み出していた。たった数十メートルを走っただけで息切れ著しい陽子を、セシリアはあっという間に追い抜いてしまう。
英国からやってきた貴族の少女は、十メートルばかり先行したところで後ろを振り返ると、「陽子さん……」と、残念そうに失意の眼差しを向けた。英国少女の呼吸はまったく乱れていない。
立ち止まって待つことたっぷり二秒、陽子はようやく追いついた。セシリアのすぐかたわらで足を止めると、腰をくの字に曲げ、がくがく、と震える両の膝に掌を置く。こひゅう、こひゅう、と荒々しく息継ぎする度に、小さな背中が激しく上下していた。なんという体力なしか、とセシリアは呆れた溜め息をついた。
「……陽子さん、失礼しますわ」
セシリアはおもむろに陽子の左脇へと回り込んだ。膝を曲げ、腰を落とし、右腕を、自分と同じ歳の娘のものとは思えぬほど細い腰に回した。臍下丹田に気合いを篭め、戸惑う陽子を、えいや、と持ち上げる。少女の唇から、慌てた声が迸った。
「えっ? ちょ、ちょっと! セシリア!?」
「すみません陽子さん。少しの間、口を閉じていてください。舌を噛んでしまいますわ」
必要以上に頭が動かないよう、左手で、そっと支え持つ。
クラスメイトの小さな体を小脇に抱えながら、セシリアは、えっさほいさ、と駆け出した。足裏で地面を蹴り飛ばす度、腕の中の陽子の両腕、両足が、ぶらんぶらん、と揺れ動く。
人一人を抱えているにも拘らず、なかなかの速度だった。学生寮の建物が、みるみる大きくなっていく。
「……やだ。セシリアってば、意外と逞しい」
「これでも代表候補生。毎日の筋力トレーニングは欠かしておりません」
セシリアは誇らしげに呟いた。
ほどなくして、学生寮に到着する。エントランスを抜け、階段を上り、鬼頭親子の部屋がある階層へと急いだ。その途上、すれ違った生徒の何人かが、きゃいきゃい、と黄色い声を上げる。
「ああっ! セシリアが陽子のことをお持ち帰りしようとしている!」
「ええっ!? セシリアが陽子をかどわかしていやらしいことをしようとしているって!?(難聴)」
「あれ? でも陽子って、わりと幼児体型だよね?」
「百合でロリコンとは……英国貴族は業が深い(風評被害)」
「たまげたなあ」
「レズはホモ。はっきりわかんだね」
「違います! わたくしにそんな趣味はありません!」
「あっ、おい待ちゃあ(名古屋人)。誰がロリだ? 誰が!」
「陽子さん、つっこむべきはそこではありませんわ!」
「やだ、つっこむだなんて……」
「ナニを、ドコにつっこむつもりなのかしら……?」
「英国貴族は淫乱(風評被害)。はっきりわかんだね」
「ああん、もう!」
走りながら応じているうちに、目的の部屋の前へと辿り着いた。
セシリアの腕の中で、陽子は顔を傾け、友人の顔を仰ぎ見た。いかに体力自慢の代表候補生といえど、さすがに疲れたか。ついに息を切らし始めた彼女の腕を軽く叩き、陽子は、「ありがと。もういいから」と、腕の中から、するり、と抜け出した。一一二二号室のドアの前に立つ。
回転式の取っ手を掴み、軽くひねった。鍵はかけられていない。やはり、父はすでに帰宅ずみか。
手首はひねった姿勢のまま、しかし押し込むことはせず、深呼吸をひとつ、ゆっくりとついた。
はたして、この先に何が待っているのか。あの父が助けを求めてくるほどの事態とは?
こく、と喉を鳴らした陽子は、決然と頷くや、力いっぱいドアを押し開き、室内の様子を一瞥して、すぐにまた閉じた。背後に立つセシリアが目を丸くする。
「……陽子さん?」
「……ごめん、セシリア。ちょっとだけ静かにしていてくれる」
陽子はドアノブを握りしめたまま、板戸に額を押し当てた。ひんやりとしていて心地よい。この冷たさが、自分をきっと、落ち着かせてくれるはず。そうだ。落ち着け。落ち着くのだ、鬼頭陽子。先ほど、この目に映じたのは、きっと間違いだ。幻覚や、白昼夢の類いに違いない。
自分はいま、訓練を終えたばかりで、心身ともに疲弊している。体力なしのこの身にとって、代表候補生直々の指導は、自覚以上の負担を強いるものだったのだろう。疲れが、知らず脳の処理能力をおかしくさせた。網膜に映じた像の認知処理をする過程で、実際には存在しない光景を作り出してしまったのだ。そうだ。きっとそうに違いない。あんな光景が、現実にあるはずがない。あんな――、
「……うん。大丈夫。さっき見たのは、私の目の錯覚、蜃気楼、幻覚、まぼろし……その幻想をぶち殺す。そげぶ、そげぶ……」
「ええと、陽子さん? 現実逃避をしたくなるお気持ちは分かりますが、わたくしの目にもはっきりと……」
「いいや、あれはわたしにしか見えなかった! わたしの疲れた脳が引き起こしたバグ! 幻覚! だから、セシリアには見えない! いいね!?」
幻覚だ。幻覚なのだ。幻覚でなければ、おかしいのだ。
だってそうだろう? あんな、あんな……!
「ビキニ水着の上にフリルたっぷりのエプロン一枚身につけただけの女の子が、沈んだ顔で、父さんのベッドの上に座りながら、シーツにのの字を書いている! そんな光景、現実で起こるはずないでしょ! オラァ! 消えろ、幻覚めぇ!」
怒声でもって自らを鼓舞しながら、陽子は再びドアを押し開けた。
玄関から僅か数メートル先に見える、父のベッドの上で、ビキニ水着の上にフリルたっぷりのエプロン一枚だけを身につけた少女が、くの字に曲がった両の膝を抱えた姿勢で座りながら、沈んだ面持ちで、白いシーツにのの字を描いているのが見えた。
「チクショウ! 現実だった!」
陽子は思わず叫んだ。その声に反応して、部屋の奥から鬼頭が顔を見せる。娘の顔を見るなり、ぱあっ、と表情を輝かせた。
「陽子! 助かった。ようやく帰ってきてくれたか」
「父さん、こりゃあ、どういう状況なん!?」
靴を脱ぎ、上がり框を踏んで我が家へと入室した陽子は、ベッドの上の娘を指差した。ルビー色の双眸に昏い輝きを宿した少女は、俯きながら、自らの両膝が形作る谷間に唇を添えて、なにやら、ぶつぶつ、呟いている。
「簪ちゃんに見られちゃった~……。うふふふふ……。簪ちゃんに、軽蔑されちゃったぁ~……。あははははは……」
「ううん、説明が難しいんだが……」
「まさかとは思うけど、父さんが連れ込んだわけじゃないよね?」
「そんなわけあるか」
怪訝な顔で訊ねると、鬼頭はげっそり溜め息をつき、部屋の奥を示した。目線をそちらに向けると、意外な顔を見つけて面食らう。
「その点については、あの二人が証人だよ」
「あっ、ヨーちゃん、お帰り~」
「お邪魔してます」
クラスメイトの布仏本音と、夜竹さゆかだった。二人とも、学習机とセットで国が用意した椅子に腰かけている。さゆかは分厚い専門書に目線を落とし、本音は両の足を、ぶらぶら、させながら、テレビに夢中になっていた。陽子も視線をテレビ画面に向けて、ははあ、と頷く。古いイギリス映画だ。《ミニミニ大作戦》。IS学園への入学が決まったときに、暇潰し用にと父が持ち込んだ、お気に入りのDVDだった。
「あら、マイケル・ケインですか。いつ見ても、男前ですわね」
陽子に続いて室内に足を踏み入れたセシリアが、テレビ画面いっぱいに映じる主演俳優の名前を呟いた。まったくだ、と頷きながら、鬼頭は彼女の顔を見る。
「ああ、セシリアも来てくれたのか」
「ええ。それでおと……」
いつもの癖で、お父様、と呼びそうになるのを、寸前のところでこらえた。本音とさゆかの目線を気にしながら、セシリアは訊ねる。
「鬼頭さん、いったい何があったのですか? どうしてお二人がここに?」
「今日は授業が終わった後、解析室に行くつもりだったんだが……」
鬼頭はゆっくりと言葉を選びながら話し始めた。ベッドの上で落ち込んでいる彼女は何者なのか。なぜ、さゆかと本音の二人が、この部屋にいるのか。いったい、何があったのか。すべてを知ってもらうには、最初から説明するしかないが、なるべくなら手短にすませたい。最小限の言葉ですむよう、物語を組み立てていく。
「解析室に向かう途中、学生寮に、忘れ物をしていたことに気がついたんだ。それで寮へと向かっている途中で、同じく寮に帰るところだった夜竹さんと会ってね。せっかくだからと、一緒に向かうことにしたんだ。その道中、彼女の読みたい本を、私が持っていることが分かってね」
鬼頭は一〇九四ページもある大著に挑戦しているさゆかを見た。三人の視線に気がつき、表紙を見せてくる。《ヒルガードの心理学》。いかにも、“らしい”タイトルに、陽子とセシリアは納得した。なるほど、あの本を鬼頭から借りるため、この部屋まで着いてきたのか。
「夜竹さんがここにいる理由はわかったよ」
陽子は次いで、B級カーアクション・ムービーの大傑作を面白がっている本音に目線をやった。ユニオン・ジャックの色が鮮やかな三台のミニクーパーが、小さなテレビ画面などところ狭しとばかりに大暴れしている。
「本音ちゃんがいるのはなんで? そしてアレはなに?」
「夜竹さんと一緒に学生寮のこの部屋に戻ったら、いきなりだった。ドアを開けると、いきなり彼女が、あの格好で出迎えてきたんだ」
「あの格好で?」
驚いた様子で聞き返す陽子に、鬼頭は頷いた。
「うん。あの格好で」
「……痴女?」
「日本少女はスケベなことしか考えないのかしら(偏見)」
「はぐあ!」
ぼそり、とした呟きが心の傷を抉ったか。ベッドの上で体育座りをしている少女が悲鳴を上げた。
あえて無視を決め込み、鬼頭たちは会話を続ける。
「勿論、私は彼女のことを知らないし、会ったこともない。そんな相手が、あんな裸同然の格好で、私たちの暮らすこのプライベートな空間に隠れ潜んでいた。その事実にショックを受けた私は、思わず、その場で大騒ぎをしてしまったんだ。すると、その声を聞きつけて、周りの部屋で暮らす子たちが、外に出てきてしまって……」
ははあ、鬼頭たちだけでなく、他の生徒たちにもあの痴態を見られてしまった、と。だから、落ち込んでいる、と。にゃるほど、にゃるほど……あれ? でも、それって、
「自業自得じゃね?」
「ぐっはあ!」
この様子を鑑みるに、父に対し、ハニートラップを仕掛けるつもりだった、とは考えにくい。そもそもこの部屋は、鬼頭だけでなく、自分も暮らしている部屋だ。いつ自分が帰ってくるかも分からないこの場所で誘惑するなんて、どこの手の者にせよ、考えなしがすぎる。
とすれば、単に自分たちを驚かせるために、かくも破廉恥極まりない格好をしていた、ということになるが。そうだとすれば、完全な自業自得だ。
「勿論、それもあるんだろうが」
鬼頭は自身のベッドで体育座りをする少女に対し、気の毒そうな眼差しを向けた。
「落ち込んでいる理由は、どうやらそれだけじゃないらしいんだ」
「というと?」
「布仏さんによれば、」
「え? なんでそこで本音ちゃん?」
「うん。どうやら布仏さんと彼女は知り合いらしいんだ」
「そだよー」
ご近所の皆さんともども大騒ぎしていたときのことだった。悲鳴混じりの喧噪を聞きつけてのことか、混乱の坩堝と化していた廊下に、本音が顔を見せた。以下に述べることは、彼女より得た情報だ。
「こちらの彼女は更識楯無さんといって、このIS学園の生徒会長らしい」
「……え? 会長? この痴女が?」
「うん。らしいよ」
「IS学園の生徒会長というと……」
セシリアは学生鞄の小物入れから生徒手帳を取り出した。生徒会組織とその執行部の活動内容について書かれたページを探しながら呟く。
「たしか、学園の生徒の中で、最強のISパイロットが選ばれる決まりだったはず」
「ってことは、この痴女がいまの学園最強ってこと?」
「そういうことになりますわね……ああ、ありました、ありました」
目的のページを見つけたセシリアは、生徒会長の選定方法について書かれた項目を黙読した。それによると、一年に一度、生徒会長を決めるための考査があり、全校生徒の中で最も優秀な成績を収めた者が就任する決まりとされている。
「やはり、成績最優秀者が就任する決まりですわね」
「えぇ、この人がぁ……」
陽子は失望から顔をしかめた。IS学園は世界屈指の難関校だと知った上で、自らの意思で進学先に選んだ彼女だ。学園最強の座に憧れる気持ちは、当然ある。自分の目指すゴールに待ち構えているのがこの痴女だと思うと、やるせない気持ちを禁じえなかった。
「そのときに起こった問題は二つだ」
鬼頭は右手の人差し指と中指を立てると、二人の前に示した。まず、中指の方を折り畳んで言う。
「布仏さんは、みんなの前で更識さんのことを会長と呼んでしまったんだ」
「失言でした。反省してま~す」
反省しているようにはまったく聞こえない口調で、本音が言った。もっとも、これは彼女の話し方の癖であり、本人は自分が原因で起こったこの事態を、しっかり受け止めている。
およそ一ヶ月の付き合いで布仏本音の為人を知っているセシリアは、特に不快に思うこともなく、これまでの話を総括した。
「つまり、騒ぎを聞きつけてやって来た野次馬の方達に、更識生徒会長は痴女である、と認識されてしまったわけですか。……それはたいへんなショックだったでしょう」
それが我が身に降りかかっていたならば、と思うと、胴震いを禁じえなかった。異性からよりも、同性から冷ややかな眼差しとともに痴女認定をされる方が、精神的にきつい。
「それで、もう一つの問題って?」
「うん。いまはこの場にいないんだが、そのとき、布仏さんは友人と一緒に、廊下にやって来たんだ」
「うん」
「はあ」
「その友人は更識簪さんといって……」
「さら、しき、さん……」
「まさか……」
「うん。更識さんの妹さんだったんだ」
鬼頭、陽子、セシリアの三人は、ベッドの上で、「うふふ~……あっ。大きな星がついたり消えたりしている……。あぁ、大きい! 彗星かなぁ? いいえ、違うわ。違うわよね。彗星はもっとこう、バァーッって動くものね!」などと呟いている、学園最強の女に、同情した眼差しを向けた。
「それは……きついね」
陽子がしみじみと呟いた。もし自分が、目の前の父から痴女だと思われ、両手で顔を覆いながら泣かれでもした暁には、悲しすぎて死んでしまうかもしれない。
「妹さんにこの痴態を見られたことが、相当ショックだったんだろう。その後はずっとこのありさまだ。壁に自ら頭を打ちつけるなどの自傷行為に走っていたかと思うと、突然、ベッドの上で膝を抱えて、もう、二時間もこうしているんだ」
「ベッドの上からまったく動いてくれないんです。それで、こんな状態の会長と、鬼頭さんを二人きりにするのは不味いと思って、わたしもこの場に残ることにしたんです。本音は状況説明に必要だろうから、ここにいなさい、って言いました」
鬼頭の言葉を、さゆかが補足した。なるほど、ようやく状況が飲み込めてきた。
「その、本音ちゃんと一緒にいた、簪さんは?」
「かんちゃんは整備室に行っちゃったよ~」
小型車ゆえの軽敏な動きでもって、イタリア警察のアルファロメオを翻弄する三台のミニクーパーの活躍に手を叩いてはしゃぐ本音が応じた。察するに、かんちゃん、とは件の更識簪のことだろう。彼女には名前に由来するあだ名をつけたがる癖がある。
「かんちゃんってば最近、放課後は整備室に篭もってばっかりだったから。それじゃあ体に悪いよ~。たまにはお日様の下でのんびりお茶でも飲も~、って。強引に連れてきたんだけど……」
「……お姉さんのこの姿を見て、彼女の方もショックを受けてしまったらしい」
鬼頭たちが呼び止める暇もなく、その場を立ち去ったという。後で本音の携帯電話に、整備室にいる、と連絡があったから、あちらはもう落ち着きを取り戻しているようだが。
「問題はこちらだ」
鬼頭はベッドの上の更識生徒会長を見た。いよいよ精神が崩壊し始めたか、「お兄ちゃん、さっきから変です! きっと疲れているんです! 先に帰りますか? 三人で暮らしているあの幸せな部屋に」などと、違う世界のことを話し始めた。山田真耶の方が似合いそうな発言だ。こう、緑髪的な意味で。
「さて、どうしよう?」
「お父様、もしかしてメールですぐ帰ってこい、っていうのは?」
「ほら、こういう、年頃の女の子のメンタルケアは、同年代のお前の方が得意だろうと思ってな」
「巻き込まないでよ、こんなことに……」
陽子はズキズキと痛むこめかみを押さえながら、改めて更識生徒会長に目線をやった。「ウワアアアッ! タスケテ! ユルシテ! ユルシテぇぇぇぇぇ~ッッッ!!!」と、帝王トランザが栄光への道を着実に歩んでいる彼女を見て、ふうむ、と黙考。
やがて名案が思い浮かんだか、システムキッチンのある部屋を見た。
「……とりあえず、会長にはまず正気に戻ってもらおう」
鬼頭たちを驚かせるためだけに、こんな格好をしてわざわざ部屋の中で待ち構えていたとは考えにくい。きっと、何か別な目的あってのことのはず。けれでもいまの精神状態では、まともに話すこともままならぬ。
それならば、と、陽子はキッチンへ向かった。冷蔵庫を開けると、一・四リッターサイズの冷蔵庫ポットを取り出す。
ポットの中では、琥珀色の液体が、たぷたぷ、と波打っていた。食器棚からグラスを引っ張り出し、注ぎ口とフレンチキスをかわせる。なみなみと注いだところで、最後に調味料棚から怪しげな白い粉の入った瓶を取り出し、スプーンでたっぷり山盛り一杯、サッー! と混ぜ入れた。うむ。気分を落ち着かせるには、ハーブティーがいちばんだ。グラス一個だけをお盆に載せて、ベッドのある部屋に戻る。
「お待たせ。アイスティーしかなかったんだけどいいかな?」
「いいわけないでしょう!」
セシリアが思わず突っ込んだ。まだ汚れていない鬼頭、さゆか、本音が、怪訝な表情で二人のやり取りを見つめていた。
「いったい何をするつもりですか!?」
「いや、とりあえずアイスティーでも飲んで、落ち着いて(眠って)もらおうかと思って」
陽子はコップをうつむく更識生徒会長に差し出した。
「はい、生徒会長。とりあえずこれでも飲んで落ち着いてください」
「いけません、生徒会長! それを飲んでは駄目です!」
「え? え、え、え?」
「ほら、グイッ、と。グイッ、と」
両の掌を上に向けて勧めてくる陽子に頷いて、更識はグラスに口をつけた。傾ける。こく、と喉が上下する。陽子の野獣の眼光。「あら、おいし……」と、言いかけたところで、更識生徒会長は、ぱたり、と倒れた。何事か、と腰を浮かすさゆか。陽子は動じることなく、彼女の唇に自らの耳朶をそっと寄せた。すぅすぅ、と寝息。どうやら眠ってしまったらしい。思わずガッツポーズ。
「……よし!(適当)」
「何が、よし! ですか?!」
「とりあえず、落ち着きはしたよ?」
「その代わり話しも出来なくなってしまったじゃないですか!?」
「大丈夫、大丈夫。二十分くらいで目を覚ます量に抑えておいたから」
「スプーン山盛り一杯で、二十分なのか。えらく効率の悪い睡眠導入剤だな」
「鬼頭さん、突っ込むべきはそこじゃないと思います」
さゆかは知らぬことではあるが、つい十分ほど前に、陽子とセシリアの間で交わされたやり取りと、よく似た反応だ。この親にしてこの子ありか、セシリアは呆れた溜め息をついた。
インフィニット・ストラトス二次創作
「この小さな世界で愛を語ろう」
Chapter26「暗部組織の女」
更識生徒会長が目を覚ましたのは、アイスティーを飲んで十分後のことだった。
「うぅ……頭がズキズキする……」
親指と人差し指の腹で眉間を揉みながら、更識楯無はベッドに腰かけていた。そのかたわらでは、アイスティーを振る舞った陽子が、「あっれぇ? おかしいなあ」と、訝しげな表情でぶつぶつ呟いている。
「たしかに二十分相当の量を入れたはずなのに……」
「会長は生体用ナノマシンと、微量の毒物を普段から常飲しているからね~。身体が毒に慣れている上、分解も早いんだ~」
薬物を使った眠りからの覚醒に特有の、気持ち悪さを伴う頭痛に顔をしかめる楯無の背中をさすりながら、本音が言った。その言葉に、鬼頭は思わず怪訝な表情を浮かべる。
ISの登場がもたらした技術的ブレイク・スルーによって、かつてはSF映画の中にしか存在しなかったナノマシンの技術は、いまや医療の現場でも当たり前のものになりつつある。その一方で、ナノマシンの研究はいまだ歴史の浅い分野でもあり、それを用いての治療法は、日本においては保険適応外の高度先進医療にとどまっていた。そんな高価な医薬品を、普段から常飲出来るとは、よほどの資産家の産まれなのか。それとも、彼女自身がセシリアや鈴のような、国家代表候補生などの特別な立場にあるのか。
しかし、そうだとすると、本音が次いで口にした、毒物を常飲している、という言について、合理的な説明がつかない。微量とはいえ、自ら進んで毒物を常飲しているなんて、はっきり言って異常な習慣だ。仮に資産家の娘であれば、将来その財を継ぐ立場から、そんな倒錯的な嗜好は許されぬだろうし、ましてや国家の代表や、代表候補生ともなれば尚更だろう。
アラスカ条約によってISの軍事利用が禁止されている現在の情勢下では、競技スポーツ・ISバトルは、国家間の代理戦争の意味合いを与えられることが多い。国家代表などのIS操縦者の双肩には、まさに国の威信が懸かっていると形容してよいだろう。ために、その体調はいついかなるときでも万全を期しておかねばならない。毒物の摂取なんて、もってのほかだ。
はたして、彼女はいったい何者なのか。本音は、毒を常飲している理由は、毒に身体を慣らすため、と説明しているが。
――まるで山田風太郎の小説だな。
普段から毒物を口にすることで、あらかじめ体内に抗体を作っておく、と聞いて、鬼頭がまず思い出すのは山田風太郎の忍法帖シリーズだ。少年時代に夢中になった小説で、特に伊賀忍者達の活躍が印象深い。
目の前の少女は現代に生きる忍びの末裔なのか。一瞬、突飛な考えかとも思ったが、あながち間違いではないかもしれないな、と鬼頭は口の中で呟いた。その証拠に、自分と同じ発想に思い至った陽子が、「まるで忍者みたいだね」と、口にすると、本音は「当たらずも遠からずだね~」と、応じた。
「会長の実家は、代々そういう家系なのだよ」
「本音ちゃん、それ以上は私から話すわ」
背中をさする本音の手を制し、楯無が言った。ようやく気分が落ち着いてきたか。顔色はいまだ優れぬものの、瑞々しい唇から紡ぎ出される口調は明瞭としていた。
「まず、改めて自己紹介をさせてください。私の名前は更識楯無。二年生の生徒で、このIS学園の現生徒会長を務めています」
「……丁寧な挨拶、痛み入ります」
この場合、どちらが目上になるだろうか、と一瞬躊躇してしまった。年齢は自分の方が圧倒的に上だが、学年の序列や、生徒会役員と一般生徒の間を隔てる立場の差でいうと、自分の方が目下となる。とりあえず相手を立てる方針でいこう、と腹に決めた鬼頭は、学習机の引き出しから名刺入れを引っ張り出すと、中から一枚取って差し出した。
「アローズ製作所の、鬼頭智之と申します。こちらの学園では、一年生をやらせていただいております」
両手でつまんだ名刺を、同じく両手で、恭しく受け取られた。迷いのない所作に、鬼頭は、おや、と内心小首を傾げる。この年齢の少女にしては、やけに慣れた手つきだ。こういった名刺交換をする機会が多いのか。何者なのか、という疑念がますます湧いてくる。
名刺を受け取ると、楯無はエプロンの前掛けに縫い付けられたポケットから生徒手帳を取り出した。表紙を開くと、カバー裏のビニールポケットに、名刺を大切そうにしまい入れる。さすがに、名刺入れまでは持ち歩いていないらしい。
「父さんの娘の、鬼頭陽子です」
楯無が名刺をしまったのを見て、今度は陽子が自己紹介をした。セシリアとさゆかも、それに続く。既知の間柄らしい本音を除く全員の名乗りが終わったところで、鬼頭は早速、本題を促すことにした。
「それで、学園の生徒会長が私に、いったい何の用なのでしょう?」
わざわざ部屋に忍び込んで待ち伏せしていたくらいだから、用件が驚かせることのみとは考えにくい。しかも、ここは自分と陽子の暮らす部屋だ。世界にたった二人しか見つかっていない男性操縦者を目当てにやって来たことは明らかだった。
「その話をする前に……」
楯無は本を読むさゆかを見た。ぱんっ、と両手を打ち鳴らして合わせると、顔の前に持っていき、謝罪のジェスチャーを大袈裟にやってみせる。
「ごめんねー。これから鬼頭さんたち親子に大切なお話しがあるから、夜竹さんは席をはずしてくれるかしら?」
「はあ、それはいいんですけど……」
さゆかは、ちら、と本音とセシリアに目線をやった。
「二人はいいんですか?」
「セシリアちゃんはイギリスの代表候補生として、これから私が話すことを、英国政府に伝えてもらう必要があるのよ。本音ちゃんについては、もう事情を知っているから」
「ふっふーん。わたしはこう見えても、生徒会の一員なのだ~!」
十代半ばにしては豊満な胸を強調するように揺らしながら、本音は得意気に言った。
その発言に驚きながらも、さゆかは得心した様子で頷いた。彼女もIS学園への入学を許されるほどの才媛だ。楯無たちが口にした僅かな言葉から、政治絡みの話だと察すると、読んでいた《ヒルガード》の心理学を閉じた。
「鬼頭さん」
「ええ。どうぞ、持って行ってください」
「ありがとうございます。大切に読ませていただきますね」
ぺこり、と可愛らしくお辞儀をして、さゆかは分厚い専門書を抱えて鬼頭親子の部屋を退室していった。その後ろ姿を見送った後、楯無は改めて鬼頭に向き直った。
「さて、」
「はい」
「今日、私が鬼頭さんたちに会いに来たのは、お二人に、日本政府からのメッセージを伝えるためです」
「日本政府の?」
楯無は頷くと、愛らしい形をした唇から、衝撃的な発言を口にした。
「私はIS学園の生徒会長であると同時に、日本政府の保有する、暗部組織の一員なのです」
二つの理由から、鬼頭の心臓は動揺した。一つは、そんな組織の人間が、自分たちに直接接触を図ってきた事実に対する驚きと恐怖から。いま一つの理由は、自分の娘と大差ない年齢の少女が、そんな後ろ暗い素性の組織に属している事実に対する嫌悪から。自然、目つきの鋭さが増した鬼頭に、陽子が訊ねる。
「父さん、暗部組織って?」
「……おそらくだが、この場合は、情報機関という意味だろう」
軍事マニアで戦史マニアの桜坂ほどではないが、鬼頭も日本の情報機関については、彼仕込みの知識をそれなりに持っていた。
「日本には内閣官房所属の内閣情報調査室をはじめとして、公安警察や法務省の公安調査庁、防衛情報本部などのスパイ機関がある。それらの組織の、いずれかに属しているということじゃないだろうか?」
「半分正解で、半分はずれです」
楯無はほんの少しだけ口角を吊り上げた。微笑というよりも、冷笑という表現の方がしっくりくる笑みだ。
「いずれか、ではなく、そのすべてに。そして、それ以外の組織にも、です」
「……というと?」
「更識の家は古い家名で、代々の当主が、その時代の政権が持つ情報機関に人員を派遣し、協力することで独自の地位を築き、現代まで生き残ってきました。武家政権の時代には忍者や御庭番に。帝国時代には陸軍の中野学校や特高警察に。そして現代では、鬼頭さんがいまおっしゃられた四大情報機関や、それ以外の様々なスパイ組織に、更識家の者が出向しています。
私は、更識家の当代の当主なんです。現在、内調などの組織に所属している更識の者は全員、私の命令で動いています。彼ら出向者に内調などの組織が何か命令を下す際には、私のもとにも情報が届くような仕組みになっているんです。その意味で、私は内調の職員であり、公安の警察官であり、情報本部に勤める自衛官でもあるのです」
「……まるで漫画みたいな話だなあ」
陽子は楯無の顔を胡散臭そうに見つめた。たしかに、楯無がいま口にした内容は一から十まで突拍子もなさすぎて、すぐには信じがたいが。
「漫画というのは、言い過ぎだろう」
鬼頭は思わず苦笑した。
「それを言えば、このIS学園や、そもそもISの存在自体が漫画の世界の住人のようじゃないか」
「……それもそっか」
「更識さんの言っていることは、多分、事実だろう。そういう古い家ほど、家名を残すことへの執着はすさまじいからね。たとえば戦国時代には、徳川家と豊臣家、両方に協力して生き残りを図った、真田一族のような例もある。家名の存続のため、現代にいたるまで陰働きに徹してきた一族があったとしても、おかしくはない。そして、」
鬼頭は楯無の面魂をじっくりと眺めた。美人ではあるが、年相応のあどけなさがまだ残る顔つきだ。胸が痛んだ。
「更識さんがその若さで当主を務めているというのも、おそらく、本当だろう。そういう古い家には、現代の価値観基準では考えられないような伝統を、いまだ大切にしているところも多い。十代での当主就任も、そう考えれば頷ける話だ。
……私としては、自分の娘とさして変わらない年齢の更識さんが、そんな組織に関わっていることについて、それを許した前代の当主殿に、言いたいことがあるがね」
もっとも、それを口に出せば最後、今後生徒会と付き合っていく上でしこりとなるだろうし、この場だけのことに限っても話が脱線してしまうだろうから、これ以上の言及は避けるが。
「それで、日本政府からのメッセージというのは?」
「その前に確認させてください。先日、鬼頭さんは織斑先生たちに、ゴールデンウィーク期間中の、外出許可を求めていましたね?」
「そうなの、父さん?」
はじめて聞く話だった。驚く陽子に頷くと、鬼頭は、
「うん。名古屋に帰って、やっておきたいことがあってな。二日か三日ほど、外泊の許可を貰えないか相談に行ったんだよ」
「それで、結果はどうなったのです?」
「残念ながら」
セシリアの問いに、鬼頭はかぶりを振ってみせた。
「男性操縦者を島の外に出すことは危険すぎる。その上で、私や織斑君が島の外に出るためには、厳重な警備態勢をとる必要がある。しかしIS学園には、そういう特殊作戦のための装備や人材が、圧倒的に不足している、とね」
「織斑先生たちの立場では、そう答えざるをえないのよねー」
鬼頭の言葉を、楯無が引き継いだ。意味深な発言を受けた陽子とセシリアはたっぷり一秒、その意味するところを考えて、まったく同じタイミングで、ははあ、と得心した様子で頷いた。
「そっか、警護態勢の構築には、日本政府の協力が不可欠だけど」
「IS学園から、日本政府に協力するわけにはいかない。それをやれば、IS学園と日本政府の禁じられた蜜月関係を、学園自ら認めることになりかねない、ということですわね?」
「その通り!」
いつの間に握っていたのか、楯無は手にした扇子を、ぱんっ、と広げた。扇面に、『ご名答!』と、楷書体で記されている。
「IS学園の職員である織斑先生たちは、鬼頭さんの求めに応じることが出来ません。ですが、私は違います。なにせ私は日本政府の……それも特殊作戦が得意な、暗部組織の人間ですから。政府に対し、大手を振って協力を要請することが出来ます」
「すると、政府からのメッセージというのは……」
「はい」
たまらず、期待に声が弾んでしまった鬼頭に対し、首肯する楯無生徒会長の口調は落ち着いていた。
「この私、更識楯無に依頼してくれるのであれば、日本政府にはあなたの島の外での活動を保障する用意がある。それを伝えにやって来ました」
鬼頭は唸り声を発した。薄々そうじゃないかと勘づいてはいたが、政府の大胆不敵な決断に、驚嘆せずにはいられない。いまだたった二人しか見つかっていない貴重な生体サンプルを、動物園の檻の外に出そうというのだ。しかも、その間の身の安全については、政府が全面的に責任を請け負うつもりだという。これは裏を返せば、何が起こっても対処する用意がある、という日本政府の自信の表れにほかならない。
――司馬内閣になって以来、年々、強気の姿勢が増していくな、この国は……。
白騎士事件以来続いているこの混迷の時代に、日本国の舵取りを任された現首相の顔を思い出して、鬼頭は小さく溜め息をついた。彼が総理に就任して以来、日本を取り巻く内外の状況は、おおむね良い方向に向かっている、と鬼頭も思うが、その一方で、どこか向こう見ずというか、危うさのようなものも見出せるようになってしまった、とも思う。
「おうかがいしても?」
「はい。なんでしょう?」
「私はその道の素人ゆえ、要人警護の態勢を整えるのに、どれだけの労力が必要なのか分かりません。ですが、かなりのヒト・モノ・カネを動かさずには出来ないと、なんとなくの想像くらいはつきます。日本国にとって、少なくない出費でしょう。それを踏まえた上で、日本政府はなぜ私に好意的に接してくれるのか、その理由、そちらの目的をお聞かせ願いたい」
「当然の疑問ですね」
楯無は頷いた。
「細かい理由まで含めれば、いくつもありますが、大きなものとしては三つです。一つ目は、鬼頭さんに恩を売るためです」
「恩、ですか?」
意外な言葉に、鬼頭は怪訝な表情を浮かべた。学生寮の自室を陽子と同室にしてもらったり、専用機に打鉄をよこしてくれるなど、日本政府からはすでにかなりの援助をしてもらっている。勿論、何か目的あってのこととは分かっているが、それでも、施しに対する感謝の念が湧き上がらぬほど、性根の腐った人間ではないつもりだ。日本政府がこれまでの援助に対する対価として何か要求してきたときには、可能な限り応えるつもりだし、そもそも一人の日本人としての愛国心だってある。自分を今日まで生かし、育ててくれた日本という国に対して、何か尽くしたいという想いは、常に懐に抱えていた。
そんな自分に対し、これ以上恩を着せて、どうするつもりなのか。あまりにも過剰な施しは、かえってこちらの嫌悪や、警戒心を煽ることになる、と知らぬわけでもないだろうに。
「鬼頭さんご自身に、その自覚は薄いかもしれませんが、いまやあなたは国家の重要人物なんですよ」
天才的な頭脳を持ちながらも、自分自身のことになると理解力を鈍らせてしまう鬼頭に対し、楯無生徒会長は苦笑した。
「男性操縦者というだけではありません。たとえば、先日お嬢様とセシリア・オルコットさんの間で行われた、クラス代表決定戦」
「む?」
「あなたがお嬢様のために用意した《トール》は、素晴らしい性能を発揮してみせました。強力で、それでいてコンパクトで、初心者でも扱いやすく、それでいて生産性にも優れている。こんな恐ろしい武器をたった一人で、しかも一週間足らずで設計・開発し、二挺も作り上げた。この事実を知った日本政府は、鬼頭智之という技術者の腕前は尋常ではない、と判断しました。こんな優秀な人材が、他国に流出するなんてあってはならない、と」
「……もしかして、私たちイギリスのせいですか?」
それまで黙って話を聞いていたセシリアが、神妙な面持ちで呟いた。英国はBT兵器開発への協力に対するお礼という名目で、鬼頭に対し、多額の金銭や、高級車のプレゼントを約束するなどしている。これら一連の行動が、日本政府を刺激してしまったか。はたして、楯無は「まあね」と、苦笑いした。
「懐柔工作としては、あからさますぎたし」
「……なるほど。それで、不安になった日本政府は、お父様にさらなる恩を着せようと、なりふり構わなくなった、ということですか」
「そういうこと。ついでに言うと、これは二つ目の理由にも絡んでくることよ」
楯無は再び鬼頭に目線をやった。
「二つ目の理由は、他国に対して、日本政府の実力を見せつけるためです」
鬼頭たち男性操縦者の動向は、世界中の国々が注視している。そんなある種の衆人環視の中で、日本政府が男性操縦者たちの護送を成功させれば、それはすさまじい示威の効果を発揮しよう。『どうだ? お前達に我々と同じことが出来るか?』と、国内外に強くアピールすることが出来る。たとえば、鬼頭智之の勧誘に努めている、イギリスなどに対して。
「……どうやら、わが国からの数々の施策が、眠れる獅子を起こしてしまったようですわね」
セシリアは小さく溜め息をついた。なるほど、さゆかのように自分をこの場から追い出さなかったのは、牽制のためか。自分の口からイギリス政府に対して、『彼にこれ以上アプローチするようなら、ウチも黙っちゃいないよ? んん?』とでも、言わせたいのだろう。
「三つ目の理由は、データ収集のためです」
「データ収集? 何のためのデータです?」
「男性操縦者が島外で活動するのに、どんな警護態勢が必要なのか、その実戦データです」
楯無の言葉に、鬼頭は得心した表情で頷いた。自然と、自分よりも二回り以上も年若い少年の顔が思い浮かぶ。
「一夏君のことですね?」
「それもあります。今回、外出許可を申請してきたのは鬼頭さんだけでしたが、今後は、一夏くんからも申請があるかもしれない。むしろ、申請を受け止める機会は、鬼頭さんよりも多いと考えるべきでしょう」
自分以外はみな女性ばかり、という環境がもたらすストレスは、大人の鬼頭よりも、若い一夏の方がきついだろう。自分を取り巻くいまの環境から脱出したいという思いから、外出許可の申請はより多くなることが予想された。
「そのすべてを断り続けるのは、いくらなんでもナンセンスです。日本政府やIS学園の対応に不満を感じた彼が、他国になびいてしまいかねません。勿論、これは鬼頭さんにも言えることですが。……イギリスとか」
「どうしよう、セシリア? 日本政府の方々、すごく根に持っておられる」
「XJが不味かったのかしら? 車格を一つ落として、XFなら怒られなかった……?」
「いやあ、値段の問題じゃないと思うよ」
親子三人顔を寄せ合い、溜め息をつく。楯無は構わず、話を続けた。
「それだけじゃなく、IS学園にも臨海学校や、修学旅行など、島外での活動を余儀なくされてしまう行事はあります。そういったときに、一夏くんや鬼頭さんを毎回お休みさせるのは、本人や学園は良くても、周りの生徒たちの心象が、ねえ……」
「なるほど、たしかに」
「他国から、男性操縦者たちの人権が無視されている、など抗議の口実も与えかねません。まったくの自由とは言えないまでも、お二人が島外で、自分の意思である程度自由に活動出来る仕組みを整えることは、日本政府にとって急務なんです」
そのためには、実際の状況に即したデータが不可欠だ。たとえば、男性操縦者が外食をしたい、という理由で半日島の外に出たい、と言ってきたとする。ディナーの予約を入れた店に辿り着くまでと、到着してからの食事時間、食事を終えてからの帰路。この間に起こりうる、イレギュラーな事態。たとえば、事故で電車の到着が遅れてしまい、駅で一時間足止めをくらってしまった、とか。道中で偶然、知人と再会し、話し込んでしまって到着が十五分遅れてしまう、とか。そういった諸々の要素を踏まえた上で、半日間の外出中、彼の身の安全を確実なものとするには、どれだけの人員が必要で、どんな装備が適当で、地元警察などの機関にはどの程度話を通しておくか、店の安全性などの事前調査にはどれだけの時間を割くべきか、など。そういったことを判断する上での、基準となるデータが。
「なるほど……」
鬼頭は束の間、瞑目した。楯無生徒会長の口から聞かされた一連の話を、自分なりに整理し、その意味するところを咀嚼する。やがて切れ長の双眸を、かっ。と見開いて、鬼頭は言った。
「そちらの事情は分かりました。日本政府としては、私に協力したい、というよりも、協力させてほしい。させてくれなければ、そちらの方が困る。と、そういう状況にあるわけですね?」
「ご理解いただけたようで、幸いです」
おとがいを撫でさすりながら、鬼頭は、ふうむ、と考え込んだ。
先述した通り、日本政府に対してはすでに多くの借りを作ってしまっている。ここらで一つ、恩返しをしてあげたい気持ちはあるが。本当に、自分の身の安全は保証されるのか。
「質問を重ねますが」
「はい」
「そういった裏事情を踏まえると、日本政府にとって、私を名古屋へ護送することは絶対に失敗出来ない、重要なミッションということになりますね?」
「はい」
「ということは、当然、具体的なプランは、もう考えてあるのですよね?」
「勿論です」
「どのような手段を使ってどんなルートで行くのか、といった細かいことは、情報漏洩対策で、この場ではお話し出来ないでしょう。それ以外の、大まかなことでよいので、聞かせていただけませんか?」
「まず外出の期間ですが、これは一泊二日を予定しています」
楯無の言葉に鬼頭は頷いた。はじめに彼が千冬たちに希望として告げた日数は二日ないし三日間だが、これは仕方のないことと納得する。滞在が長期になるほど、襲撃などのリスクは高くなる。はじめての護送任務でいきなり二日も、三日もというのは、危険すぎるし、欲張りすぎだろう。
同じ理由から、陽子をはじめ、他の同行者の存在も許してはくれまい。自分一人の護衛ですら、どれぐらいのリソースを割くべきなのか、実際のところはまだ分からないのだ。
ただ、そうすると、当初希望していたやりたいことのうち、いくつかは諦めねばならないが。
「外出の間、鬼頭さんのスケジュールはすべて私たち日本政府の者が管理します。何時までに、どこへ行って、何をやってもらうか、といったことですね」
「当然ですね」
「鬼頭さんが名古屋で何をしたいのか、その希望については、織斑先生たちから事前にお話をうかがっています。その中から、我々がピックアップした内容を、予定に盛り込みました。行動計画は、それをベースに組み立ててあります」
鬼頭は過日の千冬たちとの会話を思い出した。あのとき口にした希望のうち、個人資産を売却することで桜坂からの借金の返済にあてる、という件については、《トール》の買い取りという別方向からのアイディアによって、解決の道が示されている。ということは、残る二つ……アローズ製作所に顔を出したい、という希望と、堂島弁護士と週刊ゲンダイ編集部への訴訟のことで話し合いたい、という希望を、叶えてくれるのか。
「具体的には?」
「一日目は、アローズ製作所に行ってもらいます。IS学園で学んだことを、会社のためにアウトプットしたい。そう、聞いていますよ?」
なるほど、一日目がそれか。ということは、堂島弁護士との話し合いは二日目か。
「二日目は、鬼頭智也さんのお墓参りに行ってもらうつもりです」
鬼頭は驚きから目を剥いた。陽子とセシリアも、茫然とした眼差しを楯無に向ける。
三人に見つめられながら、日本政府からの密命を携えやって来た暗部の女は、淡々と告げた。
「これが、日本政府の判断です。鬼頭智之に恩を売るのであれば、会社への訪問や、弁護士との面会時間を作るよりも、亡き愛息の墓前に足を運ぶ機会を設けた方が、効果的である、と」
「……まいったな」
鬼頭は、これ見よがしに溜め息をついてみせた。
「完全に、見透かされてしまっている」
「では……」
「智也のことを、天秤にかけられては、私に否はありません」
鬼頭はベッドに腰かける楯無に向かって、深々と腰を折った。
「名古屋への護送を、ぜひお願いします」
◇
四月も残すところあと三日というタイミングで訪れた、ゴールデンウィークの初日。
まだ日の出を迎えたばかりで、人工島全域を朝靄が包み込んでいる、早朝のIS学園。
島内連絡用に設けられた産業道路を、一台のコンパクトカーが北へと進んでいた。時間帯のせいか、他に車通りはなく、まん丸の形をしたヘッドライトの灯りが、黒灰色の路面を孤独に照らしている。その歩みはいたって静かで、タイヤと路面の摩擦がもたらすロードノイズの他は、注意して耳を澄ませてようやく、きぃん、というモーター音が聞こえてくる程度でしかない。
白色のホンダeだ。二〇二〇年にデビューしたホンダのEVカーで、Bセグメント級の車体に、三リッター級のエンジンに匹敵するトルクを発揮する交流同期電動機を搭載した、新世代のシティ・コミューターである。IS学園には、学園職員の大半を占める女性でも扱いやすいコンパクト・ボディと、それでいながら大人四人がなんとか着座可能な居住性、そしてなにより、ガソリンを使わないインフラ投資への経済性から、島内の連絡移動用に四台が配備されていた。一回の充電で走行可能な距離は二五九キロメートルだが、島内でしか使わないということを考えると、必要十分な航続力といえよう。
島内に四台しかないEVカーのステアリングを握る鬼頭智之の表情は、上機嫌に明るかった。自動車は見るのも乗るのも好きという彼だ。久しぶりの運転体験を、彼はほくほく顔で楽しんでいた。
そのナビシートには、更識楯無が座っている。二人ともIS学園の制服は着ておらず、楯無は胸元の開いた白シャツの上に七分丈のデニムのジャケットというカジュアル・ファッション。鬼頭の方も、ネイビージャケットに白デニムのパンツという、一見、かっちりとしたシルエットながら、よくよく見ると気楽さを感じさせる装いをしている。二人の関係や事情を知らぬ者の目には、休日のドライブを楽しむ親子の姿と映じるだろうか。
「……楽しそうですね?」
だらしなく口角を綻ばせる鬼頭の横顔を見つめながら、楯無が呟いた。
メーカー、ディーラー、そしてユーザーの、国産スポーツカーへの熱意が最も激しかった八十年代、九十年代に少年・青年期を過ごした車好きの男は、「楽しいですよ」と、目線は前方へと据え置いたまま応じる。
「実を言うと、ホンダeに乗るのはこれが初めてなんですよ」
「あら、意外ですね?」
「なかなか運転する機会がなくて。この頃のEVカーだと、リーフや、プジョーe208には乗ったことがあるんですが」
そのどちらともまったく違うハンドリングの新鮮さに、鬼頭は喜びを感じていた。同じEVカーでも、日産のリーフやプジョーe208は前方にパワーユニットを配置し、前輪で駆動するFF車。これに対して、ホンダeは後方にパワーユニットを置き、後輪で駆動するRR車。加減速のスムーズさは段違いだ。前後の重量配分も五〇対五〇と、理想的バランスを実現しており、運動性能が、まるで違う。
「いいですね、これ。笑ってしまうくらい、加速が速い」
アクセル・ペダルを、ぐっ、と踏み込めば、ドンッ、と加速する。最大トルク三二・一キログラムを誇るモーターのパワーと、RR方式がもたらす、非常に楽しい加速だ。ハンドリングも楽しい。ステアリングをちょいと切ればクイックに反応し、まるで独楽鼠のように車体が、くるくる、と回る。ここがうねうね道の多いワインディングでないのが残念でならない。FFやFRにはない楽しさだ。
「走りだけでなく、乗り心地もこのクラスのコンパクトとしては素晴らしい。静かなのは勿論ですが、Cセグ……いや、下手をすればDセグ・セダン並みかもしれません」
舗装の新しいIS学園の道路だから、ということもあるだろうが、サスペンション・ノイズはほとんど感じない。誤って大きな突き上げを踏んでしまったときでも、衝撃はキャビンに届くまでの間に、かなり柔らかく処理されている。
「ルックスや、内装の質もいいですね。この時代のEVカーがガソリン車に比べて高額なのは仕方のないことですが、少なくとも、三百万円代後半クラスの質があるように思います。作り込みが細やかだし、クルマに篭められた開発者たちの想い、世界観の統一加減や表現が非常に上手い」
試乗こそ叶わなかったが、以前、モーターショーでテスラのモデル3のシートに腰かけてみたことがある。五百万円から乗れるテスラのエントリーモデルだが、塗装や内装の質感は、およそ四六〇万円のホンダeの方が勝っているように思う。もっとも、あちらは走行性能と、なによりバッテリーの温度マネジメントに重きを置いた製品造りをしているため、同じ物差しでの比較は出来ないが。
温度マネジメントといえば、冷却システムに、液冷方式を使っているところもポイントが高い。空冷式の二代目リーフは、バッテリー容量が十年で三割程度劣化するという。中古車市場のことも考えて作らねばならない自動車という製品にとって、十年後のバッテリー寿命というのはかなり重要な点だ。中古車市場での価格が安定しないクルマというのは、新車市場でも選ばれにくい。
総括すると、非常に良く出来たクルマだと思う。走って楽しく、所有することの満足度も高い。唯一、航続力の短さが気になるが、用途を限定するのであれば、それも気にならない。
「短い時間しか乗れないのが、残念ですね」
二人を乗せたホンダeは、学園校舎の裏手側に設けられた、飛行場を目指して進んでいった。
人工島に築かれたIS学園と日本国本土とをつなぐ、交通手段の一つだ。三五〇〇メートル級の滑走路を二本と、大型の輸送ヘリが離発着可能なヘリポートが四つ有した立派な施設で、主に海外からの軍関係者や、IS関連企業所有のプライベート・ジェットなどを迎え入れるときに使われている。
やがて飛行場に到着した二人は、駐車場にホンダの楽しいEVカーを駐車すると、ヘリポートのあるエリアへとつま先を向けた。商業用の空港ではないから、上質なホスピタリティを約束してくれる案内役などはない。不親切な案内板を頼りに、目的の場所を目指す。
ヘリポートではすでに、嘴を尖らせた猛禽のようなデザインのA109ヘリが待機し、エンジンを回していた。
イタリアのアグスタ社が一九七五年に世に送り出した、美しき軽双発タービン・ヘリコプターだ。欧州ヘリコプターのベストセラーであり、政府機関、民間問わず、世界中の空を飛び回っている。日本では都道府県警察航空隊に配備されている、青い塗装の機体が有名で、鬼頭たちの前で、バリバリ、と音を立てているブルーの機体の側面にも、『警視庁 はやぶさ』と、明朝体で記されていた。プラット・アンド・ホイットニー・カナダ製のPW206Cターボシャフト・エンジン五六七馬力を二基搭載し、巡航速度は時速二八五キロメートル。航続力は九三〇キロメートル。関東の海に築かれたIS学園から名古屋までは一時間ほどか、燃料を節約したり、飛行ルートを工夫したりして、一時間半といったところだろう。
「なぜ、ヘリなんです!?」
ヘリというものは軍用でなくとも騒音が大きい。鬼頭は声を張り上げて楯無に訊ねた。
「勿論、安全を考えてのことです!」
応じる楯無も、腹の底から声を出す。傍目には怒鳴り合っているようにしか見えぬ二人だった。
「モノレールにしろ、地下ハイウェイを使うにせよ、陸路での移動は襲撃の危険と、その際に無関係な人たちを巻き込んでしまう危険があります! ヘリコプターで海の上を飛べば、そういったリスクをかなり減らせます!」
「なるほど!」
「仮に襲われたとしても!」
「はい!」
「高速で巡航しているヘリコプターを攻撃出来る手段は限られます! 対空ミサイルや、大口径の機関砲! そういった武器で武装している相手なら、ISを使って反撃しても、緊急事態ゆえやむをえず展開した、という言い訳が立ちます!」
「なるほど、スマートだ!」
アラスカ条約には、ISの基本的な運用は国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合には、その国の刑法によって罰せられる、と定められている。最強兵器ISが持つ戦闘力は強大であり、その力がみだりに振り回されたりしないよう、こうした制限が必要とされたのだ。
ただし、何事にも例外はある。たとえば、操縦者の生命が危機的にさらされ、それ以外に現況を打破する手段がないと判断されるようなときには、政府の認証なしにISを展開しても処罰の対象にはならない、という正当防衛などがそうだ。しかしこれも、相手や周囲の状況次第では過剰防衛と判定されてしまい、かえってこちらが不利益を被る場合がある。素手で殴りかかってきた相手に対し恐怖を覚えた。たまらずISを展開し、銃火器で反撃した。反撃によって相手は死亡、周りの家屋や、たまたま通りがかった通行人などにも被害が出た、というような状況では、さすがに正当防衛は認められない。
しかし、楯無がいま口にしたような状況でならば、どうか。音速の速さで襲いくる対空ミサイルを見て、命の危機を感じた。自分だけでなく、同乗者の楯無や、ヘリコプターのパイロットの命も守るため、ISを展開し、反撃した。これならば、正当防衛が成立する公算は高い。
移動手段にヘリを選んだのはそこまで考えてのことだったか、と鬼頭は暗部家系の頭領を名乗る少女に、感心した眼差しを向けた。しかし、すぐに表情を引き締めると、重ねて問いかける。
「ところで!」
「はい!」
「本当に、楯無さんも着いてくるのですか!?」
「当然です!」
鬼頭の問いに、楯無は毅然とした態度できっぱり言い切った。
「今回の島外活動では、基本的にお忍びの作戦を採ります! 護衛団をぞろぞろと連れ回して、周囲を威嚇するようなことはしません! 出来る限り最少の人数で、鬼頭さんのことを二四時間ガードする必要があります!」
「だからといって、そのボディガードを、楯無さんがする必要はないのでは!?」
「あら、私ではご不満ですか!?」
楯無は好戦的に笑ってみせた。
「学園最強が護衛につくんですよ? ちょっとは信頼してくれても、いいのでは!」
「実力云々じゃなくて、年齢の話をしているんだけどなぁ……!」
「なんです!? 聞こえませんわ!」
両の耳を掌で押さえながら、にやにやと笑った。聞く耳持たぬ、という意思表示だろう。
鬼頭は深々と溜め息をついた。陽子とたった一歳しか違わない彼女がボディガード役というのは、彼としては受け入れがたいことだが、本人がやる気な上に、この態度では退けようがない。
――俺たち男性操縦者の存在を疎ましく思っている者は多い。
たとえば、過激思想に取り憑かれた女性権利団体などがそうだ。自分の護衛に就く、ということは、彼女たちのような存在から襲われるリスクを背負うことになる。もし、そういった連中が、包丁などの刃物を持ちだしたり、投石などしてきたとしたら、娘と同年代の彼女の身が、危険にさらされることになる。
――何事もなければいいのだが……。
二人はヘリに乗り込んだ。アグスタのキャビンには、すでに先客がいた。いかにも商社マンといった感じのビジネススーツを着た、それでいて、いかつい体つきが只者ではない雰囲気を醸し出している、三十そこそこの若い男だ。
彼は鬼頭の姿を見るなり、人懐っこい笑みを浮かべた。右手を差し出しながら、
「内閣情報調査室の高品です。今回の名古屋行きで、鬼頭さんのサポートを担当する一人です」
と、自己紹介した。鬼頭がそれに応じて握手すると、ヘリのドアが閉じた。
それ以上の会話は、名古屋に到着してからということになりそうだった。
Chapter26「暗部組織の女」了
巻き戻す。
時計の針を、巻き戻す。
内閣情報調査室の叶和人内閣情報官が、霞ヶ関の首相官邸で司馬総理大臣らとの会談を終えたのは、午後八時十分のことだった。
一仕事を終えた開放感からか、どこかすっきりした表情の彼は、あらかじめ官邸正面の駐車場に待機させておいたクラウンのリアシートに腰かけるや、ほっと安堵の吐息をこぼした。室内長が一九八〇ミリもあるクラウンの後部座席は広い。悠々と足を組み、ネクタイを緩めていると、運転席でステアリングを握る内調職員から、「今日はこの後、どうされますか?」と、訊ねられた。叶情報官は間髪入れずに、「今日はこのまま自宅に向かってくれ」と、応じた。たったいましがたまで、侃々諤々の会議の場に身を置いていたのだ。今日はこのまま自宅に帰って熱いシャワーを浴び、汚れとともに疲れを洗い流した上で、愛妻の作った手料理に舌鼓を打ちながら、きつい酒を一杯やりたい気分だった。
叶情報長官の命令一過、システム出力三五九馬力という三・五リッター・ハイブリッド・システムが静かに目を覚まし、クラウンはスムーズな滑り出しとともに日本の中枢を離れていった。首相官邸前交差点を南に進み、六本木通りへ入ったところで、胸元に震動を感じた。スーツの内ポケットへと手を伸ばす。国内メーカーが内調職員のために開発した、盗聴防止機能を搭載したスマートフォンだ。一見、普通のAQUOS携帯にしか見えないが、電話はすべて、内調専用の秘匿回線につながる仕組みになっている。
ディスプレイに表示された着信相手の名前を見て、叶情報官はしかめっ面になった。《チェシャ猫》。当代の更識家当主が好んで使っているコードネームだ。
通話ボタンをタップして、端末を頬に寄せる。待つこと半秒、専用回線につながり、艶やかな声が聞こえてきた。
「私だ」
『チェシャ猫です。鬼頭智之に接触し、名古屋行きの護送を依頼する言葉を引き出しました』
「よくやってくれた」
若くして色気たっぷりな暗部組織の頭領の声に対し、叶情報官の声質は重々しく、威厳のようなものを感じさせるが、どこかくたびれていた。
「鬼頭智之の件については、引き続ききみが主導して、島外活動の護衛計画のプランを練ってくれ」
『了解しました。……少し、お疲れのようですね?』
いたわりの言葉。声に含まれた疲れの気配を、鋭敏に感じ取ったらしい。
叶情報官は「うん」と、首肯した。
「先ほどまで、司馬首相や、藤沢官房長官らと会っていた。昨日の、IS学園を襲った所属不明の無人ISと、鬼頭智之の戦闘の様子。そして……」
叶情報官は、そこで一旦、言葉を区切った。ちら、と運転席に座る男の後頭部を一瞥する。バック・ミラーの角度の問題から、叶の着座位置より彼の表情を覗うことは出来ないが、なぜだか、笑っている顔が想像できた。
「アローズ製作所を襲った、同じく所属不明の無人ISと、かの人物との戦いの様子を報告したところだ」
『……首相は、何と?』
「詳細については、後日、報告書をまとめて、きみにも送る。……結論だけ言おう。日本政府は秘密裏に、アローズ製作所と協力体制を結ぶよう交渉する方針で話がまとまった。そして首相官邸内における、かの人物のコードネームが決まった」
『何と?』
「《ウルトラマン》だ」
情報官は唇を舐めた。生身の人間がISを殴り壊すという衝撃的な映像を見て動揺する首相たちをなんとか落ち着かせようと奮闘したときの気苦労がよみがえってくる。
「総務省出向組の、城山君の提案だ。アローズ製作所の桜坂室長のことを、我々は今後、《ウルトラマン》と呼称する」
『……特撮ヒーローの名前と同じですね?』
「城山君曰く、地上に降りた神の名前に相応しい、とのことだ」
『情報部の人間が、神ですか……』
通信端末に組み込まれた小型マイクが、小さな溜め息の音を拾った。
『ナンセンスですね』
「まったくだ」
叶情報官は頷くと、こちらもまた、深い溜め息をついた。
不信感に満ち満ちた眼差しのその先では、城山悟が意気揚々とステアリングを切っていた。
ライトノベル特有の日本風SF現代ではなぜだか影の薄い、内調などの組織に前面で出てもらいました(影の組織なのに、前面とは……)。
たぶん、おふざけ回は次か、その次で終了します。
ウルトラマン
DCコミックに登場するスーパーヴィラン。
多次元宇宙における、悪のスーパーマン。