長くなってもあれですし早速行きましょうか。
果南ちゃん、Happy Birthday!!
「ハロー、カナン」
「あっオリヴィア、ハロー」
「久しぶりね、もうこっちでの生活には慣れたかしら?」
「ん~慣れた、と言いたいところなんだけどね...(笑)」
「確かに、なんだか少しやつれてる様にも見えるわ」
「実は、1週間前からまた座学がメインになっててね...」
「ハハ、それはカナンにとっては辛いでしょうね(笑)」
「その通りだよ...それでオリヴィアの方は?順調?」
「そうね、キツイ時もあるけど...なんとか頑張ってるわ」
「そっか」
「じゃあワタシ、そろそろ行くわね。カナンも頑張って」
「うん、声かけてくれてありがと」
「そんなの当たり前でしょ?(笑)時間あったらいつか、またウチに来てくれたって良いんだから」
「そうだね、私もまた遊びたいかも」
「きっとそれが良いわよ。…それじゃあね、バイバイ、カナン」
「うん。バイバイ」
去りゆく友人を見送り、手を振る。
オリヴィアは、私がこの国に来て初めてできた現地の友達。
初めて出会ったのは海辺にあるカフェ。
私がその店に入った時、対応してくれたのがオリヴィアだった。
すごくフレンドリーな応対で、私のたどたどしい英語にもしっかりと耳を傾けてくれた。
ただ何よりも、彼女の金色の髪と緑翠色の瞳に強い既視感や懐かしさを感じた。
色々な本を読むことが好きと言っていて、日本の漫画も以前いくつか読んだことがあり、そこから友達となるのに時間はかからなかった。
同い年だという事も大きかったと思う。
また、とある事情から私がこの国での滞在期間を延ばすことにした時。
住むところや働き口も、オリヴィアにはとても世話になった。
彼女と話すことで英語力も向上したという自信が持てるまでになったし、恩はとても返しきれない。
「さて、そろそろ私も学校に戻らないとね...」
独り呟く。
もうこの国に来て3年目だけど、一人の時はやっぱり日本語を話す。
そこまで海外に染まってしまったら、きっと何かを失ってしまうような気がするから。
その時、だった。
「...ん?」
違和感を感じてポケットに手を当てると、スマホが震えている。
母さんからの電話通知。
これまで一度もなかった経験だけに、何となく心がざわつく。
少し慌てながら、ランチをとっていたお店から出る。
「おっ...と...危ない危ない」
机の上の食器に手提げのポーチが当たり、落ちそうになるところをなんとかキャッチ。
会計を済ませて店を出ると、スマホの通知は止まっていた。
「…もしかして、大した用事じゃなかったのかな?」
安堵の心から、そう言葉が零れる。
ただ、無視したと思われるのもなんだし、こっちからかけ直すことに。
コール音が鳴る。
そして、電話が手に取られた音も。
「…あ、もしもし?果南です。さっき電話あったけど――」
そう切り出した私の耳に入ってきた母の第一声は。
「…え?」
とても予想外なもので。
私は、握っていたスマホを手から滑り落とした。
* * * *
翌日。私は、日本に帰ってきていた。
その目的は――。
「果南...」
目的の場所に到着すると、入り口で母が待っていた。
「ただいま、母さん。それで...?」
帰郷の挨拶に重ねて、尋ねる。
母の顔が、曇る。
「…そっか。連れてってくれる?」
表情から全てを察した私は、大きく息を吐いた後、問う。
それに掠れたような声で大丈夫、と言った後、母は室内へと入っていく。
そうして連れられた先。
そこには、まるで眠っているかのようにしてベッドに横たわる、祖父の姿があった。
「…本当に、突然だったのよ」
母が、途切れ途切れにそう話し始める。
突然に発作が起きたこと。
急いで病院に駆け込み、私に電話が入ったこと。
その後...息を引き取ったこと。
それらの話を、私は何故か落ち着いた気持ちで聞いていた。
「葬儀は明日から?」
「ええ、果南にも無理はさせられないなと思ったから」
「…そう」
「荷物とかあるでしょ?帰ってきていきなりだし、今日のところは...」
「うん。家、帰っとくよ。それと連絡ありがとね」
「そんな...」
それじゃ、と一旦別れを告げ、私は病室を後にした。
* * * *
「…久しぶりだな、ここも」
私は、歩いていた。
「それにしても暑い...そういえばこっちは夏なのか、忘れちゃってたな」
気候と、懐かしいはずの周りの景観に少し違和感を抱きつつ、私は家に向かう。
よく来た道。いつも通っていた道。日課で走っていた道。
全てが思い出だ。
そして、ようやく目的地に辿り着く。
「…ただいま」
家の扉を開け、そう呼びかける。
出迎えは、いない。
「そりゃそっか、皆出払ってるよね」
考えてみれば当たり前のことだ。
かくいう私は...何をしていればいいのだろうか。
そう考えを巡らせながら室内を歩いていると、一つのものに目が向く。
そして、思い当たった。
「…久しぶりに、潜るかな」
* * * *
眼前に広がる、海、海、海。
向こうで潜っていたのと繋がっている同じもののはずなのに、どこか懐かしさを感じる海。
その全てを感じたくて、私は目を閉じた。
『おじーちゃん!すごいすごい、海だよ海!』
「…っ!?」
『わたし、海がこんなに大きいって知らなかった!どこまであるのかなあ?』
『うん!もっともっと、遠くの海も見てみたい!』
「………」
聞こえてきたのは、懐かしい声だった。
昔は、仕事に忙しい父の代わりに、よく一緒に潜ってくれた祖父。
いつしか一人で潜るようになったけれど、潜る時にいつも思い出すのは祖父との事だった。
視界が、滲む。
「(おかしいな...受け入れた、はずだったのに)」
違う。
逆だったのだろう。
受け入れられていなかった。
祖父の死が現実だと、受け入れることが出来なかったのだ。
「(あーダメダメ、海の中でこんなしんみりしてちゃ、おじいちゃんに笑われちゃう)」
ふとそう思った私は、海から上がる。
浜辺に目を向けると、人影がある事に気付いた。
「(ん?あの長髪は、もしかして...)」
とある親友に似たその姿を見て、吸い寄せられるようにそちらへ。
浅瀬に来て歩いて上がる。
「…違うじゃん」
その人は、長く美しい青い髪をもった女性だった。
見間違えるとは情けない。
きっと、心の不安がそういう風に見させたのだろうか。
目が合う。
「…突然人が現れたので驚きました」
第一声ははきはきとした、力強いものだった。
「あ...少し潜ってて...驚かせてしまったのならすみません」
「いえ、お気になさらず。それとすみません、目元のそれは...?」
言われ、ハッとする。
「え、いや、これは別に、何でもなくて...」
「…潜ってらしたんですもの、愚問でしたね。変なことをお尋ねしました」
確かにそうだ。
私はなぜ、こんな変な弁解をしているのだろうか。
「…っていや、そうじゃなくて、頭、あげて下さい」
丁寧に頭を下げたその女性は、私よりもかなり大人びている印象。
4つくらい上だろうか。
「それであなたは、どうしてこんなところに?」
見たところ、フリーターとかでもなさそうだけど。
「…簡潔に言うと、ただの私用ということになりますか」
「はあ...」
分かったような、分からないような。
「逆に貴方は、どのような理由で潜って?」
「それは...何となくです」
「ほら、理由なんてそういうものですよね?」
「…意地悪なんですね」
「たまに言われます」
この感じ、少し苦手だ。
こっちの言ってること全てを受け流されてる気がするから。
「実は...祖父が亡くなったんです」
だから、言ってやった。
どうだ、と。
こんなことを言われるなんて思っていないだろうと、虚をつく言葉で出し抜こうと思った。
この時がやってきました...と、いうことで。
今回はかなまるうみの三人で展開していくことになります。
一か月以上にわたり展開するにあたって、今回はとりあえず花丸誕生日までの間に、あと2話挟もうと思っております。
ぜひ、最後まで見届けて頂けると嬉しいです。
…てか、勝手に果南ちゃんの祖父を〇してしまった件に関してはここで謝罪を。
すみませんでした。
それでは今回はこのあたりで。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
次回はおそらく来週日曜になるかと思います。そうなるといいなあと思ってます。
いやほんと、グダグダにならないよう注意して頑張りますので!